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秘書課の若くて可愛い女の子からの言葉が、ずっと頭の中に響いていた・・・。
ずっと、響いていた・・・。
ずっと・・・
ずっと・・・
「伊藤!」
急に、呼ばれて・・・
その声の方を、振り向く。
部長だった。
部長が私の横に立っていた。
しばらく何も手が動いていない、私の横に・・・。
「今日は、もう帰れ!」
「でも・・・まだ、16時・・・」
「そんなんじゃミスするだろーが!」
「申し訳ありません・・・。」
「何言っても有休も使わねーで真面目に働いてるのは、ここの奴らは全員知ってる。」
そう、言ってくれ・・・
法務部のみんなを見渡すと、何故かみんなが優しい顔で私を見ていて・・・。
「今日はもう帰れ!それと、1日休め!!!
有休取れねーって、訴えられても困るから!!」
*
部長や法務部のみんなから帰るように言われ、16時過ぎには早退をした。
そして、会社を出た所で・・・
「ねえ!うちの社員?」
と、なんだか風が吹いたのと同時に声を掛けられた。
不思議にも思い、見てみると・・・
驚いた。
青田夏生だった。
うちの会社、“KONDO”の広報部に所属している、うちの社員にして広告塔でもある、夏生だった。
身長175センチ、
程よく健康的な肌の色と、短いのにお洒落な髪型・・・。
格好良いのに不思議と可愛くも見える・・・男性も女性も虜にしてしまう人。
そんな夏生が、少し明るめのネイビーのスーツを着ていて・・・
その姿は、私のスーツ姿とはあまりに違う・・・。
社内にいても会えたことが全然なくて、そんな夏生が私に声を掛けたのか心配になり・・・
念の為確認しようと、周りを見渡した。
周りに立ち止まっている人は誰もいないし、夏生は顔中を笑顔にして・・・私を見て笑っている。
「あの・・・はい、“KONDO”の社員で法務部に所属している伊藤と申します。」
「伊藤さんね、私は青田夏生。」
「はい、勿論存じ上げております。」
「急にごめんね、凄い良い身体してたからさ!」
と・・・。
そんなことを、顔中を笑顔にして、言われて・・・。
「良い身体、とは・・・?」
「綺麗な筋肉で・・・丁度良いよね。
スーツからでもよく分かる。分かる人には分かると思う。
身体の動かし方も綺麗だよね。」
「そうですかね・・・?
そんな嬉しいこと、初めて言って貰いました。
ありがとうございます。」
夏生・・・さんが、私の周りをウロウロと回りながら身体を見てきて・・・。
緊張はしたけど、真面目な顔をしているからジッとしていた。
「水泳はやってたでしょ?」
「超能力者ですか・・・?」
うちの会社は、超能力者が多いのか・・・。
「水泳やると、肩幅がね。
今は全体的に女性っぽくなってるけど、だからか余計にその肩幅は少し目立つよね。」
「小学校1年生から高校3年生までやっていました。」
「長かったね、結構良い所までいってた?」
「中学くらいまでは良かったんですけど・・・高校以降はみんなみたいに食べられなくて。」
「食べるのもトレーニングだからね。
水泳は有酸素運動だから、他のスポーツより遥かにカロリー消費が凄いから。」
それに、頷く。
「元々食が細くて、あまり食べられなくて。
高校になってからは選手コースにはついていけなくなって、部活1本でした。」
「だからある意味、丁度良い筋肉だよね。」
「丁度良い、ですか・・・?」
「うん、アスリートにはなりきれてない。
中学生とか高校生くらいで上手く止まってる。」
それには、苦笑い・・・。
「それは、良いのでしょうか?」
「うん、綺麗だよ。
スポーツしてるとさ、中学とか高校の時が1番輝いてた人生の人って多いと思うんだよね。」
その言葉に、心臓が大きく動いた・・・
「今の子達でも、そういう子が多いと思うよ。
学校とかその地域では、それなりに上にいるって錯覚出来る時期でもあるから。」
「それは・・・ありますね。」
「そういう時期を思い出させたり、今の子達はもっとそう錯覚出来るような・・・丁度良い身体だよ。」
夏生さんが顔中を笑顔にして、笑った・・・
「大人になるとさ、綺麗な思い出として残るんだよね。
あんなに辛かった練習も、全部綺麗な思い出になってる。」
「私もそうなってます、選手コースを辞めた時は凄く辛かったのに。」
「これ何の現象なのかな?
綺麗な思い出になった時、大人になってるのかな?」
夏生さんがそう言いながら、また私の身体を見て・・・
「伊藤さんの身体って、あの頃を懐かしくさせる綺麗な身体してるから、思わず声掛けたのかも!」
そう言って、笑っていた・・・。
夏生さんと別れた後、電車に揺られ・・・
自分の姿を見下ろした。
夏生さんが言うには、私の身体は丁度良いとのこと。
あの頃を懐かしくさせる綺麗な身体、そんなことを言ってくれた。
一人暮らしを始めて、1年・・・。
週に1回はプールに行く生活をしていた。
大学1年から2年生の夏までは、趣味としてもっと泳いでいたけど・・・辞めた。
それを、ここ1年はまた泳ぐ生活に戻していた。
あんなに辛かった練習も悔しかった思い出も、プールで泳ぐと気持ち良く感じることが出来るから。
そんな時間も、好きだった。
そして・・・
ここ1年、不思議なことが私に起きていて・・・。
一人暮らしのマンションから比較的近い区民プールに行っていたのだけど・・・
物凄く、ジロジロと見られていた。
中には、話し掛けられることもあったり。
女の人からも男の人からもで・・・。
これといって何かを言われるわけではないけど、世間話みたいな。
普段そんなことはないので、プールの時だけだった。
夏生さんとの会話で・・・その理由を教えて貰えた気がした。
そして・・・
思い付いた・・・。
思い付いた・・・。
思い付いた・・・。




