【プロローグ】本作について
2021年3月に「ジャカロ」と呼ばれる奇妙な生物が全世界に出現した。
ジャカロとは、一言で言い表すなら「ウサギの耳と、鹿の角、鹿の尻尾が生えた人間」とでも言うべき生物だ。性比は雄:雌で1:10程度であり、ほとんどの個体が雌である。
ジャカロが出現した当初は、人々は強く警戒していた。
だが、ジャカロ達は善良な性格と美しい容姿をしており、人々に無償で奉仕をしたがる。そして、全世界で大流行中の新型コロナウィルスをはじめとした疫病に一切感染しないのである。
そんなジャカロ達を重宝した人々は、やがてジャカロを社会の一員として受け入れるようになった。
しかし、ジャカロを受け入れたことによって、新たな問題も起きるようになったのである。
ジャカロが暮らした土地では、樹木がどんどん枯れ始めていったのである。
ジャカロを強制排除する試みをした国もあったが、ジャカロがいなくなっても尚、樹木の枯死は途絶えていない。むしろジャカロを暴力で撲滅した後、さらに枯死が加速していったという報告もある。
ジャカロと樹木枯死現象の因果関係は、未だに解明されていない。
……それが、ジャカロ出現から3年が経過した「現在」の状況だ。
物語が大きく動き出すのは、まさにこの「現在」からなのだが……
その前に一度、ジャカロが出現してから現在までに、社会がどのように変遷してきたのかを、整理しておく必要がある。
本作「奉仕ジャカロ 序章」では、ジャカロが出現してから「現在」に至るまでの過程を描いていく。
物語は、ジャカロが出現したまさにその瞬間から始まり、そこから3年が経過した「現在」でひとつの区切りを迎える。
それ以降に発生する怪事件については、「序章」とは別の場で描かれるだろう。