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06.癒やし、我が胸に。


「サイレント様ぁ~、今日も麗しゅうございます。今日のお昼、ご一緒してもよろしいですかぁ~?」

「申し訳ございません。昼はドォリィと取ることになっておりますので」

「ああん残念~。あ、私、サンドレア様がいらしてもよろしいですよぉ?」

「すみません、ドォリィは貴方のことが嫌いですから。それに、私も貴方のことはあまりよく思っておりません。嘘を言うのが下手で、申し訳ないです」

「そうですかぁ~私もサンドレア様のことが嫌いなんですよぉw。あっ、でもぉ~私、サイレント様のことは愛していますぅ!!」

 鳥肌が立つような猫なで声ですり寄ってくるヒロインを、笑顔で撃退する。こんなにストレートに拒絶しているというのに、リドリータはへこたれないどころか、スキンシップをヒートアップさせてくるのだから、ドポジティブ転生者は末恐ろしい。一体どういう思考回路をしているのだろう。


 あれから、俺はできる限りドォリィに加担してヒロインに嫌がらせを行っていた。クリスタにちやほやされているリドリータにドォリィが苛立ち、彼女は取り巻きたちと共に詰ったりを主にしている。

最近は比較的ドォリィと行動を共にしているため、その様な場にはよく遭遇した。リドリータに助けを求める目を向けられるが、その期待を完全に壊して俺も悪役面を造って陰湿に笑うのだ。

 例えば、『おほほ、なんて悪趣味ですこと。そんなドレス、貴方に似合わなくてよ』みたいな内容のことや、『姿勢が悪うございますわね。みすぼらしい。貴族の風上にすらも置けませんわ』のようなことを言ったりしている。

 口調がどこぞの嫌な夫人のようになっているが、そこは気にしないでいただきたい。

 リドリータが着ているドレスがまたもの凄く趣味が悪いのだ。クリスタからの贈り物らしいのだが、リドリータの髪の色とケンカしている配色だし、形も最先端だか知らないが変な形をしているし、全くエレガントに見えない。


「はぁあああ~~・・・・・・」

「サイ・・・・・・またあの馬鹿女?」

「ドォリィ、学校では言葉遣い、気をつけようね。ドォリィは可愛いから許されるけど」

「ぅ~・・・・・・わかった・・・・・・」

 むっとした後に目を伏せて口を閉じるドォリィ。おそらくあの女に丁寧な言葉を使いたくないのだろう。

 それにしても、疲れた。

 毎日毎日あの女は懲りずに俺の元へとやってくる。その他にもクリスタとのデートなど忙しいはずなのに、だ。

 いくら推しキャラだとしても、これほどまでに激しいアピールをするだろうか。それに、いい加減この世界のサイレンとは元の世界の彼とは違う人物だとは気づかないのだろうか。めげずにやってくるのが、もはやゾンビみたいで怖い。

 さらに最近気づいたことなのだが、俺が蔑んだ目で貶めると、彼女の瞳の奥が輝くような気がするのだ。これはもしかしたら・・・・・・考えたくない。

「サイ、つかれた?」

「っ!!」

 溜息を吐いていたら、ぽてん、と肩に重みがかかった。

 見るとドォリィは俺の肩に頭を乗せ、こちらを上目遣いに見つめていた。

「ングァ゛ッ!!!」

「サイ・・・?」

「な゛っ、なんでもない。気にしないで」

 『ああドォリィ 君こそ俺の オアシスだ』と、心の中で一句詠む。

 心地よい重みと温かさ。この幸せを、クリスタが知らないということに同情さえ湧いてくる。この際、もう彼のことはどうでも良くなった。

 ドォリィが側にいる幸せ。触れている部分から、まるでドォリィの鼓動のようにトクトクとした温かさが流れてきてとても心地よい。自分の中の鼓動もそれに混ざり、このまま眠ってしまいそうなほどの穏やかさが感じられた。

 願わくばずっと、我が側に。


――06.癒やし、我が胸に。



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