【シオン開】無道戦術対峙【没版】
前線は、静まり返っていた。
神聖国の防衛線は乱れもなく、
攻撃陣と法陣が幾重にも重なり、
そのまま城壁となって立ちはだかっている。
誰もが悟っていた。
――ここは破れない。
防衛隊は壊滅。
民は支配され、前進は死。
この場に立つだけで、総身が凍りつくような圧力。
だがその絶望を、ただ一人、燃えるような瞳で見つめる男がいた。
草薙悠弥。
蒼生大和の軍主であり、 日本の無道
彼が一つみていたのた敵の布陣の“呼吸”を見ていた。
陣形の間隔。
法者のリズム。
伝令の流れる速度。
火力集中の方向性。
側面警戒の甘さ。
そして——勝者の慢心。
敵は気付かない。
己の絶対を信じきった者は、揺らぎに鈍感になる。
無道戦術が牙を研ぐ
周囲の空気が変わったわけではない、そのはずだ。
風が鳴ったわけでも、光が揺れたわけでもない。
それでも蒼生軍の者たちは、確かに感じた。
“何か”がはじまる
まるで見えない巨大な盤面で、
すべての駒が一気に整列したかのように。
「……主様」
美女軍団が息を呑む。
女騎士は握った拳をわずかに震わせる。
踊り娘は胸元を押さえ、鼓動の速さに気づく。
草薙は、まだ動かない。
だが――
この一歩手前の“静寂”こそが、戦術の発動を示していた。
敵はまだ気付かない。
味方もまだ知らない。
ただ、草薙だけが知っている。
ここから先、この防衛線は“守りではなくなる”。
静かに、ゆっくりと、草薙は息を吸う。
無道戦術。
守りの理を切断し、
布陣の意志を奪い、
絶対の堤防を“無”へと転じる戦略。
その序章が—— いま、始まろうとしていた。




