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歓喜と最強
音が聞こえる。
音楽が流れている。
「外の音楽ですか?」
「ああ」
「出陣式で使われるとか。今度の出陣式でも使われるとか。日本の兵を送り出す式典です、日本の曲を使うべきだと思いますがねぇ。ただぁ……」
兵は言葉を詰まらせた。
「嫌いじゃあないですよ。これはえぇ。名前は、えぇと第……忘れちまった」
「歓喜の歌だ」
「歓喜……喜びってぇ事ですかい」
「そんな所だ」
「そりゃあいい。そうですか……喜びですか……」
兵は出陣式の新兵を遠目に見た。
歩く新兵たち。数日後には死地へと送られる
このうちの何人が生き残れるだろうか。
「この戦争に……」
そしてこの戦いの先にそんなものがあるのか。兵の目はそう言っていた。
「――俺がやる」
「えっ」
彼は死地へ送られる新兵をみた。
「あいつらは待機だ。出陣はしなくていい」
「ですが、西方砦には」
「『十三位』が行くと言っている。不足か?」
「バカな、今のその怪我では」
彼は聖枢騎士との戦いで総身に傷を負っている。本来なら
今の出撃は自殺行為のソレであり断じて認めるわけにはいかない。
「大丈夫だ」
だが関係ない
「最強、だからな」




