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実話怪談

【実話怪談】渡り廊下にいたモノ

作者: 七宝

※実話です。

※なぜか途中から常体になります。

 私が中学生の頃の話。何年生かまでは覚えていないが、確実なのは遠足の前日だったということだ。


 私は下校した後、遠足のしおりを教室に忘れたことに気が付いた。それがだいたい18時頃で、外は薄暗くなってきていた。


 遠足の日の朝は教室に行かず、直接グラウンドに集合してそのままバスに乗るという話だったので、今日中に取りに行かなければ! と思い学校まで戻った。


 中学生の頃は先生が鬼のように怖かったのでこんな些細なことも言い出せず、私はこっそり忍び込んでしおりを取りに行こうとした。

 だが、昇降口に鍵がかかっていたため学校に入ることは出来なかった。


 仕方がないので職員室の方の入口から入ることにしたのだが、こちらから入ると職員室を通らなければならないので、100%先生にバレてしまう。だが他に方法もないので腹を決めて入ることにした。職員室に入ると学年主任の先生が私の存在に気付いた。


「お、どうした?」


「遠足のしおり忘れちゃいまして」


「そうか、じゃあ俺と行くか。鍵探すからちょっと待ってくれな」


 意外なことにすんなりと解決してしまった。先生に怒られるか怒られないかというのが最大の難所だったので、後はもう何も気にする必要がない。


「はいお待たせ」


 職員室から私の教室に行くには2つの鍵が必要だ。校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下があるのだが、その渡り廊下の校舎に繋がっている扉が施錠されている状態だった。こちら側とあちら側の両方だ。


 先生が渡り廊下の鍵を開け、先導してくれた。3段ほどの小さな階段を上り、渡り廊下を進んでいく。向こう側にも同じように3段の階段がある。そこまで辿り着いたところで、私は不思議なものを目にした。


 3段の階段を下りたところに、高校生くらいの男子2人が体操座り(体育座り)をしていたのだ。2人ともまっすぐ目の前の壁を見つめていた。


「この世のものではない⋯⋯」


 2人のうちどちらかがこんなことを言った。先生は2人には目もくれず、扉の鍵を開けようとしている。この2人はいったい何者なのだろうか。渡り廊下の扉は両方とも施錠されていたので、ここにずっと閉じ込められていたことになる。


 先生が何も言及しなかったため私も言い出すことが出来ず、そのまましおりを取りに教室へ向かった。思った通り机の中に入っていた。とりあえずひと安心した私は、先生にしおりがあったことを伝え教室を出た。


 当然帰りにも渡り廊下を通る。まだ居たら嫌だなぁ、と思いながら渡り廊下の前まで来た私は、思い切って覗き込んでみた。

 そこには、先ほどと同じように目の前の壁を見つめる2人が座っていた。


 先生は渡り廊下に入ると扉の鍵を閉め、やはり2人に目もくれずそのまま3段だけある階段を上り、渡り廊下を進んでいく。私も置いていかれないよう早歩きで先生についていった。


 渡り廊下を渡り終え、校舎の廊下に出ると、やはり先生は扉に鍵をかけた。さっきの2人はまた閉じ込められてしまったのだ。


 私は先生にお礼を言い、学校を後にした。渡り廊下にいた2人はいったい何だったのだろうか。

 怪談としてはここまでだ。ここからは私の意見となる。私は幽霊否定派なので、その当時は考えに考えた。

 何か悪いことをして、お仕置として閉じ込められていたのではないだろうか。いや、それならば通った時に先生が私に何か言うはずだ。こいつら悪いことしてここに閉じ込められてるんだぜ、といった感じで私に言うはずなのだ。


 私を驚かそうとしていた可能性も考えた。示し合わせてあそこに待機しておいて「この世のものではない⋯⋯」という発言をする。もしそうなら私はまんまとハマってしまったことになる。


 しかし、私が来ることが分かっていなければそんな作戦は成立しない。先生が鍵を探している時に2分くらい待たされたが、先生が探しているところを私は見ていた。示し合わせている時間などなかったはずだ。


 こうなると、いよいよ幽霊だったのでは、という話になってくる。しかし私は幽霊の存在を認める訳にはいかない。なぜなら、幽霊がいたら怖いからだ。あんなものがいたら毎日寝不足になってしまう。


 なので、幽霊ではないという可能性をもう少しだけ考えてみる。一旦あそこにいた理由を推測することから離れよう。


 そういえば、あの2人の姿を思い出してみるとおかしな点が浮かぶ。幽霊があんな座り方をするだろうか。呪怨の俊雄じゃあるまいし、幽霊ならもっと怖い体勢をするだろう。


 また、幽霊だとするならばあの発言にも違和感がある。「この世のものではない⋯⋯」こんな直接的な幽霊宣言があるだろうか。私を脅かしたいのならもっと他に方法があるはずだ。


 私は次の日に遠足のバスの中で友達にその話をしたのだが、そこで1つの事実が判明した。


 3年前に自殺した生徒がいたということ。ちょうど私たちが通ったあの渡り廊下から飛び降りたらしく、しばらくの間自殺防止のために青い網が張られていたそうだ。


 その話を聞いた時は正直ゾッとしたが、自殺したのは1人なので、2人が体操座りであそこにいたことの説明がつかないことに気が付いた。やはり幽霊ではなく、何かしらの事情があって生身の人間があそこにいたのだろう。


 幽霊が出る可能性より、とんでもない理由があってたまたま変な行動をしている人をたまたまタイミング良く見る可能性の方が高いと思うのだ。まあ私は幽霊否定派なので、確率的には0%だと思っているのだが。


 

 何者だと思います? 怖くないご意見お待ちしてます。



【追記!!】

感想欄でめちゃくちゃ腑に落ちる考察がされているので、絶対に見て行ってくださいまし!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  合理的な説明が付くミステリなのか? はたまたホラーなのか?   ものすごく面白い! です。 [一言]  「この世のものではない」というセリフを活かすための、ミステリ寄りの解釈を考えてみま…
[一言]  たいへん面白い体験ですね。  基本は唯物論者なのですが、怪談は大好きです。人間はどうしても見えないものを見てしまったり信じてしまったりする、という脳科学のレポートもあります。ヘンな体験と唯…
[良い点] いやもうこれね、普通に怖いです。おもっくそ心霊体験だと思います。 ありえるとしたら見回りの先生を驚かそうとしてこっそり渡り廊下に2人で隠れて幽霊感醸し出してたのに、先生が本物の幽霊だと思っ…
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