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北の恋風  作者: 空蝉 明
9/18

期末テストの前に

数学が、苦手な涼。 このままだと、来期の授業料免除は危ない。

そこで、涼は・・・


新しい年が始まった。 水主家では、元旦は女性が台所に立たないのが決まりである。

そして、お雑煮を男性が作る。 水主家のお雑煮は、京風の白味噌のお雑煮である。 

輝は、小学校4年生の時、父親から教えてもらった。 もし、次の年だったら、父親の代で、伝統の水主家の雑煮は終っていた。 もう次の年に父親は亡くなってしまったのだから。

輝は、父親から、水主家に伝わる伝統的な味噌雑煮の他に、あっさりとした澄ましの雑煮も教えてもらっていた。 同じものばかりで飽きが来ないように、父は2種類の雑煮を作っていたようだ。

父の出身は京都の山科やましなと言う所で、水主の家もそこら辺りが発祥と聞いた。

だから、澄ましの雑煮も関西風で、白醤油はくじょうゆを使って作る。 今は白醤油よりも、白だしと言って、白醤油に昆布だし等を加えた調味料の方がよく見かけられる。 輝は澄ましのお雑煮を作るときは白だしを使った。


『お母さん。 お雑煮作るけど、澄ましか、味噌かどっちがいい?』 輝は典子に尋ねた。

『う~ん どっちも美味しいから 迷うな~。 じゃ 今日は 味噌の気分だから、味噌でよろしく~』

『OK わかった。 少し待ってね。』

輝は、典子と出来た白味噌雑煮を食べた。

『お正月はお雑煮よね~』 典子が言う。 『そうだね。これ食べると正月って気分になるよね。』輝が言った。

『お母さん。今日はどうするの?』 『テレビ見て~ まったりよ。明日から仕事だしね。あー君は?』

『俺は、昨日遅かったから、お雑煮食べたら寝るわ。』

元旦は典子も輝も、家でゆっくりと過ごした。


1月5日。 今日は典子と1泊で温泉旅行だ。

少しまだどの宿も、全体的に料金は高めだったが、母と二人休みが揃う事も多くはないし、この年齢になると、母と一緒にどこかに出かける事はほぼない。 もし輝が娘であれば、もしかしたら、買い物とかに母と出かける機会もあったかもしれないが・・・。

輝が予約した宿は知多半島にある旅館だ。 輝は本当はもう少し安い宿にしたかったが、今回は、いつも頑張って働いてくれている母のために、大奮発した。

内海駅うつみえきに着くと事前に輝が連絡しておいたので、宿の人が迎えに来てくれた。

旅館の部屋に入ると、典子は歓声をあげた。 『うわ~ なんて素敵なお部屋。 眺めも凄くいいね~。

え~ お部屋に露天風呂まであるの~!? すご~い。』 母のこんなにはしゃぐ姿は始めてみた。

『あー君 ここ凄すぎるけど、大丈夫なの?』 『お母さん! 大丈夫だから。落ち着いて。』

部屋に案内した係りの女性が、母の喜ぶ姿を見て、にこやかに微笑んでいる。

一通り部屋の説明をして、係りの女性は戻っていった。

典子はまだ興奮している。 そして部屋やらテラスからの眺めやら、お風呂やらを、携帯を持って写真を取りまくっていた。 まるで子供のようなはしゃぎようだ。

輝は、かなり無理をしたが、母のこの笑顔で、無理してもこんなにお母さんが喜んでくれたなら良かった。と思った。 この旅館は、輝が夏休み稼いだバイト代がほぼなくなるほど、高かったが、料理も部屋も素晴らしかった。


一泊だったが、母と楽しい旅になった。こんなに母とゆっくり過ごせたのは、輝の記憶の中では始めてだった。 典子は、自分の子供ながら、まだ高校生なのに、母親のためにこんなに頑張ってくれる息子に感謝し、本当に優しい子に育ってくれたと胸が一杯になった。

輝も、今まで大して親孝行らしいこともできなかったし、生活のために頑張ってまじめに働いている母に、やっと少しだけ恩返しできたかなと思うと嬉しかった。


輝は、典子との旅でかなり予算オーバーしたので、3学期に入ってから、少しだけバイトの時間を、増やした。 中型の免許は取ったが、未だに原付に乗っていて、中古でいいからもう少し大きいバイクが欲しかった。

冬休みも終わり、3学期が始まった。

2学期までは昼食を食べると、机で寝ていた輝だが、涼から、昼休みに少し数学を教えて欲しいと頼まれ、お弁当を食べると図書館に行った。 涼はまだ来ていない。 輝は、適当に本を取り、涼が来るのを待った。 5分くらい経つと涼が、プリントと筆記用具を持ってやって来た。

『輝君、お待たせ。 よろしくお願いします。』 『そんな 待ってないし、大丈夫だよ。お昼はゆっくり食べてからでいいよ。涼ちゃん来てなかったら、適当に本読んで待ってるから。』 『うん ありがとう。』

輝は、『じゃ 始めよう。 どこがわからないの?』 と言って涼のプリントを見ながら教え始めた。

教室では、数学は輝が得意で説明もわかりやすいので、男子も女子も聞いてくる。 女子と1対1で教える事も珍しい事でもなく、特別の意識もない。 しかし、違うクラスの女子に、昼休みに1対1で、図書館で教えるというのは、他の生徒からみたら、やはり特別な関係に見えるだろう。

ただ、輝の場合は、何においても男女の区別なく、頼まれれば、丁寧に誰にでも教えていたので、今、涼に教えてる姿を、同じ学年の生徒が見ても、そこまで特別だと言う目では見られなかった。

事実、涼が教えてもらっている時、同じクラスの女子が、『私も一緒に教えて』と言って、入り込んできた事も何度かあったし、明日香が来た事もあった。

涼は、そんな時少し寂しげな表情をするのだが、輝は気づかなかった。

それでも、二人は、少しの時間だけでも一緒にいる事ができて、以前よりはお互いに近づけた感じがして、嬉しかった。 涼は、今までの自分からしたら、かなり頑張って輝に、近づこうと努力していた。

今まで男子に自分から話しかけるなんて、ほぼなかった。自分の家に、それも姉がいない時、男子を入れるなんて事は、もし姉が見たら、え~~っと叫ぶほどの事で、涼にとっては、外国で見知らぬ外人に英語で道を尋ねるよりも難しい事だった。 そんな涼の気持ちに、輝は気づく事が出来ず、涼の事を、いつまでも憧れの存在としか考えられなかった。 古賀でもだめだったんだ。 俺でいいわけがない。 そういうおかしな理屈ばかり頭で考えてしまう。 

期末テストが近づいたある日、図書館でいつものように涼に教えていると、涼が、『輝君。お願いがあるの。』と言った。 『うん なに? 俺にできる事ならするよ。』と輝が言うと、『もうすぐ期末テストで、数学が初日にあるんだけど、今回は対策とか、出そうな範囲とかをちゃんとやらないと、私、来年の学費免除どうなるかわからない。 もし学費を払う事になると、経済的に無理だから、近くの公立の編入試験受けようかと思ってるの。 でも何とか頑張って、愛心に残りたい。せっかく友達もできたから。』

涼の成績は愛心でもかなり良い方だった。 しかし学費免除となるには、それなりにハードルも高く、特に涼のように、両親が揃っていて、親の年収もそこそこある生徒には更に条件が厳しい。

実際の所、涼の生活費は、姉が負担していたが、学校では涼の家庭の事情まで詳しくわからないので、特別な配慮をすることはない。

輝は、涼の話を聞いて考えた。

『ねえ 涼ちゃん。 もし 嫌じゃなかったら、俺んちで俺が数学教えようか?

俺の部屋もそう広くはないけれど、多分 涼ちゃんちよりは少し広いと思うんだ。

今週は、土日お母さん遅番で3時からのシフトだから、午前中 そうだな~ 10時くらいに来れたら来て貰って、うちでお昼食べて、2時までくらい。1時間休憩しても3時間は教えられる。 俺も今週のバイトは夕方からだけなんで、土日の2日間 合計6時間教えれば、何とかなると思うんだけど。 勿論 涼ちゃんが気が進まないなら無理しなくていいよ。』 輝も結構勇気を出して涼に提案した。

『輝君。私すごくうれしいよ。 輝君も自分の勉強あるのに私のためにそこまで言ってくれて。 でもお昼までご馳走になるのはあまりにも、図々しすぎるよ。』 『涼ちゃん。うちにあるもので簡単に作って食べるだけで、特別な事をするわけじゃない。 だから そんな事遠慮しないで。 お昼 家まで戻ってまた来るなんて時間のロスになるだけだから。 もし 昼食の事で遠慮してるとかなら、ほんと大丈夫だから。』

涼は、少し考えて、『迷惑かけるけどお願いします。 10時に輝君の家って事だけど、私輝君の家を知らないからどこまで行けばいい?』 

『じゃ 俺が涼ちゃんちに9時45分に迎えに行くよ。歩いて15分くらいだけど大丈夫?』

『うん 全然大丈夫。 じゃ よろしくお願いします。』


勉強が理由とは言え、涼と二人で長い時間を過ごせる。 輝は胸が高鳴った。

輝の部屋は、シンプルで、物が少ないせいもあり、割と普段から綺麗だった。 自分の部屋の掃除は自分で基本的にはするのだが、掃除好きの典子が、ついでにしてくれるので、いつ誰が来てもそれほど、恥かしいほど汚くはない。 

輝にとっては、始めて自分の部屋に入る女子だ。自分も玲奈の部屋に入ったのが母以外の女性の部屋に入った初めての経験だったが、そのたった一度だけで、逆はまだ経験がない。

輝は、家に帰ると、どうやって涼とここで勉強するか考えた。 椅子はこう並べるとか、リビングから椅子を持って来て並べてみたりしていた。

典子が、『ただいま~』 と帰ってきて、『あー君。 何やってるの?椅子部屋に持ち込んで?』 と聞いた。

『あっ お母さん お帰り。明日さ~ 友達にうちで数学教える事になったんだよ。10時から2時くらいまでね。 それでさ、 俺が昼ごはん作るから、お母さんと三人で食べてもいいかな?』

典子は、『じゃ お母さん外で食べるよ。邪魔しちゃ悪いし。』 

『いや、 邪魔じゃないから出来たらお母さんもいてくれたほうが助かる。』輝は言った。

『えっ どういう事? 意味がわからないけど・・・ あっ もしかして教えるの女の子なの?』

『うん。 同級生の子。』  『おおお~ 何々 ついに彼女!?』

『そんなんじゃないよ。 少し仲がいいってだけだよ。』

『ふ~ん まぁ いいわ。 何か お母さんも楽しみになってきた(笑) じゃあ いいわ。お母さんも一緒に食事してあげる。 あー君一人じゃ 間が持たないかもだからね(笑) お昼お母さんが作ろうか?』『いや、 俺が作るから。』 『あら 彼女のために作ってあげたいのね。 じゃ任せるわ』 典子は笑顔で言った。 『だから 彼女じゃないって!』 『はいはい わかった わかった。 着替えてくるね。』典子はにこにこしながら、自分の部屋に戻って行った。


輝は、涼に明日のお昼何を作ろうか考えた。 本当は涼のために、手の込んだフレンチをつくりたかったが、そこまでしてしまうと、自分の意識が涼に向きすぎてると丸わかりになる。 シンプルで食べやすい、普通のものが、やはり一番良いように思えた。 そうだ! 昼食は簡単でも何かデザートを作ろう! これだったら、涼もお母さんも喜んでくれそうだ。 輝はひらめいた。

デザート何にするか? そう言えば先日、明日香と話してた時、明日香と涼が、ケーキバイキングに行って、涼ちゃん、生クリームがめちゃ好きで。 と言うような話をしていたよな。 だったらロールケーキを作ろう! 材料あるかな? 輝は冷蔵庫の中を見た。 うん 全部行けそうだな。 輝は、早速ロールケーキの生地を作り始めた。 

典子がやってきて、 『あー君。何作ってるの?』と尋ねた。 『明日、なんかデザートがあったらいいなと思って、ロールケーキ作ろうと思ってさ。 お母さんも好きでしょ?』

『おぉ~ 彼女の力は偉大だね~(笑)』  『だから!彼女じゃないって!お母さんも好きだから、二人が喜んでくれたらと思ってだよ。』  『ありがとうね~ あー君 優しいもんね。 楽しみにしてるよ。』 典子は微笑みながら、リビングでテレビを見始めた。

ジェノワーズ生地は出来た。後はさますだけだ。 輝はクレーム・シャンティイ(生クリーム)を作り始めた。そして、それも完成し、生地にクリームを塗り、ゆっくりと巻いてケーキの端をブレッドナイフ(パン切り包丁)でカットし、クッキングペーパーで包んで更に、ラップで巻いて冷蔵庫に入れた。

『お母さん。 端っこだけど、味見する?』 輝は小さな皿に、両端の切れ端を乗せて持っていった。

『食べる~』典子は、『フォーク出すの面倒だからお箸取って。』と輝に頼んだ。『うん。』 輝は、『俺も片方味見してみよっと。』と言いながら自分の箸も持ってきた。 『じゃ お母さんからどうぞ。』 『じゃ 頂きます。』典子は、片方を箸で少し切って食べた。 『うわ~ お店みたいに美味しいよ。 これなら彼女も大喜びだよ。』と言った。 輝は、もう彼女という言葉を否定するのも面倒になって、 『じゃ 俺も』 と言って同じように食べた。 『うん かなり行けるわ。』 思ったよりもかなり上手く出来ていた。 甘さもいい感じだった。 『これさ~ 半日くらい後の方が美味しくなるらしくってさ。佐川さんに聞いたんだよ。』 典子は 『これより まだ美味しくなるって。これでも十分過ぎる美味しさだよ。明日が楽しみね。』と笑った。


輝は、何かもう一つさっぱりした、デザートもあった方がいいかな?と考えて冷蔵庫の中をみた。

野菜室を開けると、大きな黄色の果物が入っていた。 『お母さん。この黄色い大きい果物って何?』

輝は典子に尋ねた。 『あ~ それ文旦ぶんたん。土佐文旦って言うらしいけど、クリスチャンのお友達が、高知の方でね。今が旬らしくて実家から沢山送ってきたから、水主さんにも2つで悪いけどおすそわけ。って言ってくれたの。』 『お母さん、これ使ってもいい?』 『うん いいわよ。何作るの?』 『これでフルーツゼリー作ろうと思って。』 『へぇ~ 頑張るね。 何か手伝おうか?』『 いや、今のところいいわ。また、何か頼みたいことができたらよろしく。』 

輝は、文旦の皮を剥き始めた。 袋を開けると結構、種が多い。 味は酸味も強いが甘みもほのかにある。 少しゼラチン液にオリゴ糖入れたらちょうど良くなるかな? そんな事を考えながら、袋を開け果実だけを切り離し、小さなボールに入れて行った。 『お母さん。悪い。手伝って。これ種多くてさ。身だけにするの大変なんだ。』 『わかった~』 典子が手伝いに来た。 『ちゃんと果実だけね。白いのが入らないように。』 『は~い。』 二人でやっと果実だけにした。『ねー あー君。もう一つもやろう。1つじゃちょっと少ないし、作るなら2つ分、沢山でもいいでしょ。』 『うん いいよ。じゃもう一つもやるから手伝って。』 『は~い。』 二つの文旦から身だけを取り出し、白い陶器のカップに身を詰めて、ゼラチン液を流し込み、ラップをかけて冷蔵庫に入れた。

これでデザートは完成。 あとは食事を何にするかだ。輝は考えてオムライスにしようと思った。

卵ってまだあったかな~。 輝は包み込むオムライスではなく、チキンライスの上に、中が半熟状態のオムレツを乗せ、真ん中から切り込んで広げるタイプのを作りたかったので、少し足らなかった。

『お母さん、俺 卵買って来るわ。 ちょっと足らないから。』 典子は、 『あー君 今いるの?』と聞いた。

『ううん。明日オムライス作りたいけど足らないから。』 『じゃ お母さん明日の朝買いに行くよ。うちのスーパー土曜の9時からの特売で卵10個98円なのよ。 朝一番で走って買って来るよ。』 『自転車ででしょ?(笑) じゃ お母さんにお願いするわ。』 『うん わかった~。』

夜11時頃、ゼリーが固まってるか見てみたら、いい感じになっていた。 典子はまだテレビを見ている。

『お母さん、ゼリー味見する?』 『するする。』『じゃ持って行くわ。』 輝は小さなトレーにスプーンとゼリーを二つずつ乗せてテーブルに置いた。 『どれどれ~ 頂きます。 うん!美味しい! 甘さが絶妙にいい感じ!』 典子が言った。 輝も食べて見て、 うん これは結構上手くできたかも。明日、涼が喜んで食べてくれたらいいな~ と思った。


土曜日 今日は、いよいよ涼が、輝の家に来る日だ。

輝は、早朝から目が覚めてしまって、もう少し眠ろうと思っても、落ち着いて眠れない。

輝の部屋には、椅子が一つしかないので、涼に教える時はリビングから椅子を持ってくるのだが、それを持って来て、自分がどの位置に椅子を置いて座り、どんな感じで教えるのか、シュミレーションしたりした。 あっ これ昨日もやったっけ? 昨日やった事を、またやっているような始末だった。


涼の方も、9時45分に輝が迎えに来ると言うのに、6時くらいに起きて、クローゼットの服をあれこれ眺めている。 涼の姉は、土曜日が休みなので、寝ていたが、あまりに涼がごそごそと煩いので、目を覚ましてしまった。『ねえ 涼。 今何時?』『6時20分だよ。』 『何やってるの?』 『今日ね、友達の家で勉強教えてもらうんだけど、何着ていこうかと思って。色々見てるんだけれど決まらなくて。』 『そんなのジーンズとTシャツでいいじゃない。 勉強でしょ?』 『そうだけど。今日はそれじゃダメなの。』 『明日香ちゃんち行くんじゃないの?』 『明日香ちゃんもそうだけど、私の女友達みんな数学そんな得意じゃなくて・・・。それで、別の友達に教えてもらうの。』 

『ねえ 涼。もしかして男の子?』『うん・・・』 『え~~ 涼が男の子に教えてもらうの?』 姉はびっくりして飛び起きた。 『まさか その子涼の彼氏!?』 『ちがうよ。 ただの友達だよ。私、林間学校の時、調理担当の係りになった事はお姉ちゃんにも話したでしょ?』 『うん。』 『その時、その人も同じ係りだったの。となりのクラスだけどね。その人フレンチレストランでアルバイトしてて、すっごく料理が上手だったの。 それで私だけじゃなくみんな教えてもらったりして。 で 偶然なんだけど、私とその人が食材の買出しを二人で行く事になって、その時ほんの30分くらいだけど二人で話す機会があって、仲良くなったんだよ。 明日香ちゃんとも仲良しで、みんなで初詣も行ったし。

その人、数学が学年でトップなの。 だから 無理言って教えてって頼んだら、いいよって言ってくれたから。』 

『じゃ その彼の家で勉強するって事だよね?』 『うん。』 『よし!お姉ちゃんに任せなさい! まぁ 涼は何着てもかわいいけど、そういう時にバッチリ合う服お姉ちゃんが選んであげる。』 『ほんと!?ありがとう! お姉ちゃんセンスいいから助かるよ。お願いします。』

そうして、涼の姉は服を色々出して、選び始めた。

ようやく、決まった。姉が選んでくれたのは、全体をブラック系でまとめたワントーンのコーディネートだった。 インナーにはグレー系のタートルネック。アウターにはapart by lowrysアパートバイローリーズのブラックのMA-1。ボトムスには、LOWRYSローリーズ FARMファームのタックの入った黒のフレアスカート。 靴下も黒を選び、スニーカーもコンバースオールスターのブラック。

勉強に行くのには、動きやすく、それでいてお洒落な感じのコーディネートに仕上がった。

『うん!これならいいね。』 『流石 お姉ちゃん! ありがとう!』 涼はやっと落ち着いたようだった。

姉は、『でも男の子に今まで、全然消極的だった涼を、ここまで変えるなんてどんな男の子よ。』と言った。

涼は、『彼氏とかじゃないけど、とっても優しい人。凄く気遣いができる人だよ。』

『迎えに来るんでしょ?』

『うん。9時45分にうちまで来てくれるよ。』 

『お姉ちゃん ちょっとご挨拶だけするね。 今日は涼がお世話になります。勉強よろしくお願いします。って。』

『まぁ そうだね。じゃ挨拶だけお願いします。でも本当はお姉ちゃん、輝君が見てみたいだけじゃないの?』『輝君って言うんだ~。 挨拶するだけよ。』姉はいたずらっぽく微笑んだ。

期末テストが終わり、いよいよ成績の発表! 涼の結果は?

二年生になってクラス替え。 涼は、親友になる人に出会う。

輝も、渉とはクラスが別れ、別の友達ができる。

(注)涼が輝の家に行く時に、着て行く服のコーディーネートは下です。

http://wear.jp/mayumimayu/8515345/

選ぶのに2時間かかりました(笑) MAYUKOさん 素敵なコーディネート使わせてもらいました。

ありがとうございました。



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