親友が動く!
春休みを心待ちにしていた輝に突然の悲しいメッセージが届く。
輝の元気のない様子を見て、涼も心配になる。
涼はついに茜に自分の気持ちを打ち明ける。
それを聞いた茜は思い切った行動に出る!
夏休みも終わり2学期が始まった。
涼は、学校に行くのがとても憂鬱だった。2年になった時、輝と同じクラスになれた事は、神様に感謝するくらい涼にとって嬉しい事だったのに、今は同じクラスと言う事が却って辛い。
輝に、どう話せばいいのか、なんて声をかけたらいいのか・・・。言葉がまるで浮かばなかった。 本当であれば、おめでとう。彼女できて良かったね。 そう言うんだろうが、心にもないような事を笑顔でスラスラ言えるほど涼は器用ではなかった。
涼がクラスに着いた時、まだ輝はいなかった。
『茜ちゃん。おはよう。久しぶりだね。』
『おはよう。うん。そうだね。ちょっと心配してたんだ~』茜は涼に言った。
『えっ 何を?』 涼は茜に尋ねた。
『涼ちゃんをだよ。私が勝手に心配してただけだけどね。でも何か悲しい事や辛い事あったら、私聞くくらいはできるよ。話して少し楽になる事もあるかもだから。 まぁ なければいいし。気にしないで。』
茜にそう言われ、涼は少し沈黙してから、『茜ちゃん。ありがとう。』と言った。
輝が教室に着いた。 涼と茜に『おはよう。久しぶり。夏休みはどうだった』?と尋ねた。
茜は『普通だよ。特に楽しい事もなかったけど、学校ないから良かった程度。』とそっけなく答えた。
『涼ちゃんは?』
涼は、『うん。私も普通かな~。』とだけしか答えなかった。
『そうか~ まぁ普通なら悪くないね。』 そいう言って輝は席に着いた。 涼ちゃんも茜ちゃんもなんかそっけないな~。茜ちゃんは俺が彼女できたこと渉から聞いてたのにそういう話題もしなかったし・・・。 自分からする話じゃないし、まぁ いいか。 輝はそう思った。
俊が来た。
『俊おはよう。』
『輝君おはよう。』
『俊 まじびっくりしたわ。』
『僕だってびっくりしたよ。』
『お前って見た目と違ってかなり積極的なんだな。』
『輝君からどう見えるか知らないけど、僕は必要と思えばなんでもやるよ。 だってもし、明日香ちゃんに誰かが付き合って欲しいって言って、明日香ちゃんがOKしちゃったらもう遅いでしょ? OKしてくれる自信なんてなかったけど、自分が付き合いたいと思ったから言わなきゃって思っただけだよ。』 俊はさらりと言った。
『まぁ そうなんだけどさ。もしダメだったらと思うと怖くなかった?』
『そりゃ結果聞くのなんて誰でも怖いでしょ? ダメって言われたらうまく友達と切り替えて付き合うってそんな簡単なことでもないし、しばらく会うのもつらいしね。だけど、もしOKだったら、夢が叶うって言ったら大袈裟かもしれないけど、好きな時に会えるし同じ時間もたくさん過ごせるじゃない!? そういうチャンスを僕は大切にしたい。そう思ったから怖かったけど、言って見たよ。OKって言われた時は、その夜眠れないくらい嬉しかったよ。』
『理屈はそうだし俊の言ってる事はもっともだとも思うよ。けどそれが中々出来ないんだよな~ 俺 俊を尊敬するわ。』
『そんな事言ったら付き合ってる人たちを全て尊敬しなきゃいけなくなるよ? だってどっちかが言い出さないと付き合えないでしょ?』
『まぁ そうだな。でもさ告白する側を俺は尊敬するな~。』
俊は笑いながら『そうかな~ 僕は明日香ちゃんに付き合ってって言われた方が楽だったからそっち側になりたかったな~』と言った。
『輝君も彼女できたじゃない!。それもすっごく可愛い子!』
『うん ありがとう。でも俊たちみたいにいつでも会えるわけじゃないのがな・・・。』
『それはそうだね~。』
始業のチャイムが鳴った。
涼は、俊の話を聞いていた。 俊君の言う通りだ。結局私は何もしなかった。輝君がもし言ってくれたら・・・ そんな期待ばかりして勇気を出さなかった罰なんだ。そう思った。
最近、涼は輝に数学を聞きに来なくなった。 それは恐らく自分に彼女が出来たからだろうと輝は思った。彼女のいる男に、聞くのはやっぱり気を使う。自分が涼にもし彼氏が出来たら少し距離を置くべきだと考えるだろう。 それと同じだと思った。 幸い茜は、成績も上位で数学も結構出来る。 今まで輝に涼が数学を聞きにきたのは、涼の女友達にそれほど数学が出来る子がいなかったせいもある。 茜が友達になったことでその問題は解消されている。 涼とあまり話せなくなったのは、彼女ができたとは言っても寂しいものだ。 男は大抵、自分に彼女がいたとしても、今まで仲の良かった、自分のお気に入りの女性が遠ざかってしまうと、欲張りと言われようがやっぱり寂しいものなのだ。
しかし、それは仕方の無い事でもある。 自分に彼女ができれば、自分の周りに女性が減るのは当然だ。
輝は、自分が涼から避けられてるのではなく、涼が輝の事を気遣って距離を置いてくれてるのだと思った。
涼は輝の事を、彼女が出来たとは言っても、簡単に好きと言う気持ちをなくす事はできなかったし、なくしたほうが良いとも思わなかった。真琴が言っていたように、自分が今まで足りなかった事をできるだけ一つ一つ出来るようにして、ワンランク上の自分にならなければいけないと思った。 真琴が言ったような輝との距離を利用して、輝を彼女から奪い取るようなしたたかさは、純粋な涼にはとてもできなかったが、輝と彼女が距離が壁になって、もしもうまく行かなくなってしまった時、自分が今以上の女性になっていれば、今度こそ輝に告白するチャンスもあるかもしれない。 もしそうならなくても自分のためにも、努力して損する事はない。 涼は、それが勇気がなかった罰のように思っていた。
輝と智美は、毎日一度必ずメッセージを送りあっていた。通話も出来るだけして、毎日の出来事やお互いの気持ちを話した。
輝も智美も、お互いに会いたいと言う気持ちは、ものすごく大きかった。 しかし、遠距離恋愛ではそれが難しいので、お互いにその辛さを我慢できる忍耐と、普通の恋愛よりも、もっと強い気持ちで相手を好きでいないと続かない事もわかっていた。
輝は最近、少しル・シエルのバイトを減らし始めていた。京都大学医学部は、輝の能力を持ってしても、今までのようなペースで勉強をしていては、とても合格などできない。 渉は、時々輝の家に来ては、勉強を教えてもらっている。 理恵と同じ大学に合格するために渉なりに努力していた。
ただ、渉は、学園祭が近づく頃になると、最後にもう一度バンドをやりたいと言って、またそちらの方を頑張りだした。 3年になれば、流石にもうそんな余裕もないだろうから、実質的には2年が最後と言ってもいい。 昨年は直前の病気で参加できなかったキーボードの女の子も今年こそは、舞台に立ちたいと言っていたので彼女のためにも渉はもう一度やりたかった。
今年の学園祭でも、輝のいるクラスは昨年と同じようなカフェにしたが、輝の負担が重くなり過ぎる事の無い程度でやった。 それでも、今年は輝のクラスには涼がいる。涼は輝がいなければ恐らく学校中で一番料理が上手い生徒なのだから、昨年に比べたら輝の負担は自然に少なくなった。
学園祭は活況のうちに終わり、やがて冬休みが近づいて来た。
旭川はすでに雪が降り、最近は智美が美瑛の風景を写真に撮ってはLINEで添付して送ってくれていた。輝は、智美に電話した。
『智美ちゃん、写真ありがとうね~。 すごく雪が光って綺麗だね。』
『うん。写真で撮ると寒さまではわからないから綺麗なだけだけど、すっごく寒いんだよ~。まだまだこれから寒くなるんだけどね。』
『そっか~ 大学生になったら、一度冬にも行ってみたいな~。』
『輝さんは寒いの大丈夫なの?』
『う~ん。どうかな~?こちらの寒さくらいは平気なんだけど、美瑛の寒さはまるで違うだろうから寒さに強いとか言って、そっち行ってブルブル震えてたら恥かしいから迂闊に強いとは言わないほうがいいな(笑) でも大丈夫でも寒いふりして、寒い寒いっていいながら智美ちゃんにひっつくのもいいかな~(笑)』
『それ大歓迎!』智美も笑った。
『私ね、期末テストで頑張って学年で10番になったよ。 今までは40番くらいだったんだ~。』
『おお~ 頑張ったね。おめでとう!』
『うん。ありがとう。 でも、まだまだ京大は無理だな・・・。 私、看護婦になろうと思ってるの。 もし輝さんが京大合格したら、どこか関西の国公立の大学の医学部看護学科を受けるつもり。 お父さんも国公立ならなんとか行かせてあげるって言ってくれてるから。』
『そっか~ まず俺が受からないとだね。もし俺が医者になって智美ちゃんが看護師になったら、もしかしたら結婚して小さな診療所とかで二人で頑張るなんて出来たら最高だな~。』
『うん!それとっても素敵!そういうのいいな~。頑張ろうね。私も頑張る!』
輝は本当にそんな風になれたらな~と思った。
『北海道から帰ってもう4ヶ月か~ 智美ちゃんに会いたいよ。』
『私も・・・。 私、春休みに輝さんところ行こうと思ってるの。お父さんも輝さんのお母さんが良いと言ってくださるなら行っていいって言ってくれてるから。』
『ほんとに!?』
『うん。ほんとだよ。』
『ちょい待ってね。』
輝は典子に、春休み智美が来たら、うちに泊めていいか典子に尋ねた。典子は『あー君も向こうでお世話してもらったんだから、うちもそりゃしなくちゃ。それにお母さんも智美ちゃんに会いたいわ~。』と言ってくれた。
『智美ちゃん、お待たせ。お母さん 大歓迎だって。 だから楽しみに待ってるよ。 俺さ、何かこれでまた頑張れるような気がしてきたよ!』
『ありがとう。私も輝さんに会えるのずっと楽しみにしてるから、そちらに行ったら忙しくてもデートに連れてってね。』
『もちろんだよ! 待ってるからね。』
智美との会話は終った。 これを楽しみにまた頑張ろう。
冬休みになった。 今年の初詣は、明日香は俊と二人で、渉も、理恵と二人で、そして涼は茜と行くことになっていてみんなバラバラになった。
涼はこの頃になると、少し明るさを取り戻し、茜といつも仲良くして二人で出かけたり、お互いの家にも行き来しているようだった。 輝は、涼が少し明るくなってくれて良かったと思っていた。
そして時は流れ、もうすぐ春休みというある日。
輝は、智美からのメッセージを見て、愕然とした。ショックと動揺でしばし呆然とした。
智美から来たメッセージはちょっとした事故で足を怪我してしまって、普通に歩けるようにはなるけれど、時間がかかるので、春休みに輝の家に来るのが難しくなった。と言うものだった。
輝は心配で、まず智美に電話した。
『智美ちゃん。足はどうなの!? 』
智美は泣きながら『ほんとにごめんなさい。 足は、今は松葉杖で歩いてるけど時間かかるけど普通に歩けるようにはなるみたい。 でも春休み中には完全に治らないから、こんな状態じゃ輝さんに迷惑かけちゃうから、行くの無理になっちゃった。』
『足は治るのね?』
『うん。また普通に歩けるようになるってお医者さんは言ってた。』
『そうか。とりあえず少しだけ安心したよ。 会えないのは悲しいけどまずは智美ちゃんの身体が大切だから。ちゃんと治さないとね。』
『うん。でも私すごくショックで・・・。』
『俺もそうだよ。やっと会えるって思ってたから。 でも仕方ないよ。無理せずしっかり治すんだよ。』
『はい。輝さんごめんね。』
輝は、口ではそう言ったものの智美と会えないショックは輝の精神をズタズタにするほど大きかった。智美に会える。それだけを楽しみに冬休みから頑張ってきたのに・・・。 もう半年以上も会えてない。
最近は勉強のためにバイトもかなり減らしてるから、北海道まで往復できるような余裕もなかった。
輝は学校に行ってもその事ばかり頭に浮かんで、俊に話しかけられても気づかないほどだった。
『輝君。 輝君って どうしたの?』 俊が輝の肩を揺らして尋ねた。
『あっ 悪い。ちょっと考え事してた。 なんだった?』
『なんだったじゃないよ。どうしたの今日は、授業でも先生が呼んでも全然返答しなかったんだよ。』
『えっまじか? ああ~ だめだな俺。』
『僕で良かったら話聞くけど。』
『うん。俊ありがとうな。』
輝は俊に色々話し始めた。
『俺さ、もうめちゃくちゃショックでさ。もちろん彼女の足の事もすごく心配だし・・・。』
『そうだったんだ~。そりゃ輝君の気持ち少しは僕もわかるよ。僕と明日香ちゃんはいつでも会えるからいいけど、輝君はそうじゃないもんね。 そのわずかなチャンスまでなくなると落ち込むよね。僕なんかいつでも会えるのが普通だから会えることにそんなに感激もないけど、もし僕が輝君たちと同じようならやっぱりきついもんね。』
『遠距離ってやっぱつらいな・・・。難しいわ。』
『だね~会えないって事は付き合う上でものすごく大きな障害になるもんね。 そもそも僕だったら会えないって覚悟して付き合うなんて無理だよ。 会える人じゃないと付き合ってる実感ないような気がするもん。』
俊の言う通りだと思った。 智美ちゃんは好きなんだけど、俺これにどれだけ耐えられるかな・・・。
輝は、自分に自信がなかった。
春休みまで後4日という日だった。
涼は、茜の家に授業が終ってから遊びに来ていた。茜の好きな音楽を一緒に聞いていた。
『涼ちゃん、どうしたの? 今日はちょっと顔色悪い気がするんだけど。』
『あっ ごめん。ちょっと考え事してて・・・。』
涼がそう言うと茜は『輝君の事でしょ? 輝君ここ2日くらいおかしいから。 涼ちゃんも知ってるよね? 彼女が来れなくなったって話。』
『うん・・・。 茜ちゃん。 私輝君の事が好きだったの・・・。』
『知ってたよ。でも好きだった。じゃなくて今でも好きなんでしょ?』
『多分そうかも・・・茜ちゃんはどう思う?遠距離恋愛って?』
『私は、絶対しないよ。 だってさ。高校生の恋なんて一緒にいるから楽しく付き合えるんだよ。遠くにいていくら思っててもそんなの辛いだけだもん。辛いってわかっててどうしてそういう相手と付き合わなきゃいけないか私にはわからないよ。 そんなだったら、近くでいいなって思う人見つけて恋したほうが、お互い楽しいじゃない。 高校生なのにそんな苦しい恋選ぶ事はないと私は思うな。』
『そっか~。私も遠くに好きな人いても付き合えないかな~ 寂しすぎて耐えられそうにないもの。』
『涼ちゃんは輝君に自分の思いを伝えないの?』
涼は、しばらく黙っていた。 そして話し始めた。 『私ね。本当は輝君が北海道から帰ってきたら、勇気をだして伝えよう。そう思ってたの。だけど、北海道で彼女ができちゃって、言えなくなっちゃった。茜ちゃんが言うように、私今でも輝君が好き。けれど彼女のいる人にそんなこと言えないよ。私はね。輝君の彼女に比べて勇気が足りなかったの。 私が北海道に行く前に伝えたとしても輝君がOKしてくれたとは限らないけど、それでも輝君の彼女は多分1回だけのチャンスを勇気を持って伝えたと思うのね。 その時点で私は負けちゃった。 お姉ちゃんからもアドバイスはされてたのにね。』
『それで涼ちゃんは、もう輝君の事あきらめるの?』
『あきらめきれないから辛いんだよ。あきらめられたら楽なんだけど・・・。』
『わかった。』茜はただわかったとだけ答えた。
涼が帰ってから、茜は色々考えていた。涼ちゃんが今言えないのは、勇気がないからってわけじゃない。輝君が彼女がいる状態で告白するのは、普通に考えて良いことじゃないって思ってるからだ。私にもそれはわかる。それをすれば上手く行っても横取りしようとしたと思われても仕方ないし、もし涼ちゃんが智美ちゃんの立場だったらそういうことされたら嫌だって思うだろうから、涼ちゃんの性格ではできないんだ。 でも、私は涼ちゃんの思いを輝君に伝えてあげたい。 親友があんなに苦しんでる。なんとか気持ちだけでも伝えなきゃ。 茜は自分が悪者になってでも涼の気持ちを輝に伝えようと思った。
『ねぇ 輝君。今日放課後って少し時間無い?』 茜は輝に尋ねた。
『うん。 大丈夫だけど何?』
『ちょっと話があるからさ、屋上のベンチ来てもらっていいかな?』
『わかった。』
放課後になった。 茜は、屋上まで来ると、輝はベンチで座って待っていた。
『茜ちゃんから話って珍しいね。』
『そうだね。今まで二人で話したことはなかったもんね。私ちょっと輝君に聞きたいことと伝えたい事があって、それで来てもらったの。』
輝は直感で、涼が関係しているのだと思った。
『茜ちゃん、聞きたいことから言ってみて。全部答えられるかは約束できないけど・・・。』
『うん。 それはそうだよね。 輝君はさぁ~ 今 北海道の智美ちゃんと付き合ってて楽しいの?』
『そうだね~ 難しいな~。もし智美といつも会えるならきっと楽しいと思う。けど本当は彼女、春休みこちらに来てくれるはずだったんだよ。でも事故で足を怪我して来れなくなっちゃてさ。 俺ももちろん彼女も相当ショックでさ。 付き合う最初から遠距離だから簡単には会えない事なんて十分わかってたけど、現実に会えないのがこんなにつらいとはって感じかな。 正直言えば楽しいというより苦しいほうが多いかなぁ~。』
『じゃあ聞くけど、智美ちゃんにとっても輝君にとってもそんなに辛い恋愛をなぜ続けなければならないのかなぁ~?』
『お互い好きだから、失いたくないからだと思うよ。 もしかしたら、智美にとっても身近で付き合えるような男性と付き合ったほうが、今この時は充実して幸せなのかもしれないし、それは俺にも同じ事が言える。 けど、それは同時に智美が俺を俺が智美を失うって事にもなるでしょ? 苦しくても失うよりはましって思える相手だから付き合ってるんだと思う。』
『輝君も智美ちゃんもその辛さに耐えられるの?』
輝は沈黙した。『智美の事は俺にはわからない。けど俺は正直かなりきつい。このままこの状態が続けば無理かもしれない。それはわからないよ。 でもさ 今は智美を失いたくないだけじゃなくて彼女を傷つけたくないんだ。 もし彼女の方から無理と言ってこれば、あきらめられるかもしれないけどね。 智美も多分俺の気持ちと同じじゃないかな~。俺からもう無理だって言えば、悲しいけど仕方ないって言うような気がするよ。』
『そっか~。 輝君はさ~ 涼ちゃんの事はどう思ってるの?』
『どうって? いい友達だよ。』
『それだけなの?』
『茜ちゃん。俺ね。北海道に行くまでは涼ちゃんの事すごく意識してたんだ。 好きだった。そう言っても間違いない。でもね、涼ちゃんは俺にとっては憧れの存在だったんだよ。 近くにいても俺には不釣合いなほど綺麗で可愛い。茜ちゃんは知らないかもだけど、あのバスケ部の伊達さんだって涼ちゃんをいいなって言ってたぐらい。 古賀が断られたって聞いた時、益々俺じゃ手が届かないような気がしたんだ。
でもさ、近くにいて憧れの女の子のために何か出来たら幸せだな~って思って俺なりに涼ちゃんにできる事はしてきたつもりなんだよ。』
『輝君。 あなた全然自分の事わかってないよ!』
『えっ どういう事? 意味がわからないよ。』
『じゃ 教えてあげるよ。 今うちの学年の女子の間で誰が好感度が一番高いって言われてるか知ってる?』
『そりゃ古賀じゃないの?』
『輝君だよ!』
『え~~~俺? それはないでしょ? だって渉だって俺より人気あるはずだし、俊も結構女子に人気あるって聞いたよ。』
『確かに、古賀君も渉君も俊君も人気はあるよ。 でも断トツで輝君なんだよ!みんなさ~ 最初は涼ちゃんが輝君の彼女になるって思ってたんだよ。だから流石に涼ちゃんに勝てるなんてみんな思えないからあきらめてたんだよね。 それがさ~ 夏休み帰ってきたら北海道で彼女ができて、またその子が涼ちゃんに並ぶくらいレベル高くてさ・・・。 そりゃみんなあきらめるよね。
古賀君は確かに見た目もいいし、悪くはないと思うけど、輝君だって古賀君に負けてないし、好みの問題ってだけでルックスも同じくらいだとみんな言ってるよ。 それにさ~ これは私も輝君と友達になって初めてわかったけど、輝君って誰に対しても親切なんだよね。 結局そういう人間的な面を考えたらみんなが輝君が一番いいって言うのも私にもわかる。』
『そんな・・・。俺そんなに大したことないよ。』
『何言ってるのよ!あの涼ちゃんが輝君を好きなのよ!』
『えっ? 今茜ちゃんなんて言った?』
『涼ちゃんはずっと輝君の事が好きだったのよ! そう言ったの!』
『まさか・・・。』
『涼ちゃんはね。本当は輝君が北海道から帰ってきたら告白するつもりでいたらしいの。あの大人しい涼ちゃんが勇気を出してね。 でも その前に智美ちゃんって彼女が出来ちゃった。 涼ちゃんすっごく落ち込んでたよ。 でも輝君への思いをそんなに簡単に捨てきれないって今も苦しんでる。
彼女がいる輝君に告白するなんて涼ちゃんにはできないから。でもね私は涼ちゃんの親友で、悪者になっても輝君に涼ちゃんの気持ちだけでも伝えなきゃ。そう思ったんだよ。』
輝は何も言えなかった。 まさか涼ちゃんが・・・。俺は一体どうすればいいんだろう? 全くわからなくなった。
『茜ちゃん。 教えてくれてありがとう。俺さ もう正直、頭がぐちゃぐちゃで混乱してて今は何も答えられない。 もう少し自分で今の話を考えて整理しないと・・・。 茜ちゃんにも相談するかもしれないけどいいかな?』
『いいよ。 でも私は涼ちゃんの親友だからそういう立場でしか話せないよ。それでもよければいいよ。』
『うん。それはわかってる。 ちょっと帰って色々考えてみるよ。』
輝と茜は屋上から降りて行った。
輝は未だに信じられない気持ちだった。 まさか涼ちゃんが・・・。
茜から涼の気持ちを聞いた輝は、混乱してしまう。
そして、渉や俊に相談する。
輝はどうするのか?