表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の恋風  作者: 空蝉 明
14/18

新しい恋が始まる!

智美を助けた輝は、智美の家に泊めてもらうことになり、次の日登る予定だった大雪山旭岳に智美も一緒に行く事になった。 そこで智美は輝に・・・

バスは旭岳に着いた。

山麓からはロープーウェイに乗って姿見駅まで行く。 姿見駅の標高は1600m。 山頂まで登山しなくてもここを散策するだけでも十分楽しめる。

しかし、輝は出来れば山頂まで登って見たかった。 幸い、正が輝と足のサイズが同じで、登山靴を貸してくれて、正の登山装備品を揃えてくれたので、十分な備えがあった。 智美は、陽子のを貸してもらった。

飲み物は、陽子が揃えていてくれて、バス停まで行く途中でコンビニに寄ろうと思ったが、食べ物も用意してあるので心配ないと言われ、寄らずに来た。 正に昨日の夜、注意すべき事をちゃんと聞いたし、流石にこれだけ快晴なら、大丈夫だろうと輝は思った。日帰りなので、それほど重装備でもなかった。


姿見駅に着いてしばらく歩くと噴煙がいくつか見えた。 そして、姿見の池までゆっくり登ってきた。

そこで二人は荷物を降ろして、休憩した。小さな高山植物のお花畑があって、智美と輝はそこでシートを広げ、智美が朝作ってきたと言うおにぎりを食べた。 本当に美しい景色だった。


智美は輝に、輝が通っている高校の話が聞きたいと言った。

『俺の、高校は愛心高校って言う高校なんだ。』 輝が言うと、智美は驚いたように 『えっ あの愛心?』と聞き返した。 『あのがなんなのかわかんないけど、愛知県の愛心高校だよ。』 

『え~ じゃ輝さん めちゃくちゃ頭いいんだ~。 だって愛心ってすごい進学校で北海道に住んでる私だって知ってるもん。 凄いな~。輝さんは、彼女さんっているの?』  

『いきなりだね~』 輝は苦笑いした。 

『いや いないよ。 智美ちゃんは、本当はどうなの?』  

『私、今まで、男の人って本当にダメだったんです。 勿論、お父さんや翔は平気。

なんか怖くて・・・。』 

『じゃ 俺は怖くないの?』 

『それが凄く不思議なんですけど、最初に助けてもらった時から、輝さんは怖くなかったんです。』 

『あっ それはもっと怖そうなやつから助けられたからだけじゃないの?』輝が苦笑すると、智美は真剣な顔つきで 『違います!』とはっきり言い切った。 

『ごめんごめん。怒らせるつもりじゃなかったんだ。』 

『あっ ごめんなさい。でも怒ってはいないんです。』 

そう言うと 少しの間、池の美しい水面を見て、 『多分・・・ 私 輝さんを、一目で好きになっちゃったんだと思います。』 真剣な表情だった。 

輝は突然の言葉にどう返して言いかすぐには言葉が出なかった。

『智美ちゃん。 ありがとう。なんか凄くうれしいよ。

俺もね、本当は智美ちゃんの事、最初ちゃんと見たとき、天使みたいな子だな。すっごい可愛い子だなって思ったよ。これは真剣にね。 でもね。俺は多分、智美ちゃんだから助けたわけじゃなくて、ああいう状態なら誰にでも同じ事したと思う。 特別な気持ちは最初なかったから。 でも君をバイクの後ろに乗せた時、心臓の鼓動が自分の耳にも聞こえるほど、君に聞こえちゃうんじゃないかと思うほどバクバクしてさ、君を送って別れる時もなんだか寂しくて、平静を装うのにめちゃ苦労した。 すごいきつかった。』

『私の彼氏になってもらえませんか?』 智美はいきなり直球を投げてきた。 

『私、輝さんしかだめなんです。 だってこんな気持ち始めてだもん。』  

輝は即答しようとしたが少し考えた。 

『智美ちゃん。俺を好きだって感じるのは、君を俺が助けたからって言うだけじゃないのかな? そういうのって一時いっときは凄くかっこよく見えちゃうから。 そういうので俺を選ぶと後悔すると思うよ。 本当に、なんだろうな~ 上手くは言えないけど、普通の状態で好きになってくれてたら、躊躇なく彼女になってと俺のほうから頼みたいくらいなんだけどね。』 

『勘違いとかそんなんじゃないです。絶対間違いないもん。 眠れないくらい好きになっちゃったんだもん。』 

『俺が旭川に住んでたら、いや北海道なら、すぐOKする。 でも俺と智美ちゃんは離れすぎてる。それでもいいの? それに耐えられる?』  

『私頑張る! 絶対とかは約束できない。 でも今の気持ちは絶対本物だし、LINEとかでも話せるし、きっと来年は私から輝さんに会いに行く。 だからお願いします。』 

智美は輝の腕を両手で掴んで輝に頼んだ。 

輝はその両手を握って、『わかった。 俺のほうから智美ちゃんに頼む。 俺の彼女になって。』

智美は涙を流して、『はい。』と言って輝の胸のところに顔を埋めた。


『さぁ 元気になったみたいだし上まで頑張って登るよ。』 

『はい。』 智美は笑顔で返事をした。

山頂まで、無理しないように休憩と給水をしっかりしながら登った。 そしてやっと山頂についた。

山頂には4人いて雄大な景色を眺めていた。

『綺麗だね~ すごい眺め。』 輝が言うと、 『本当~ すごいね~』 智美も言った。

向こう側に見える山には真夏なのに結構雪も残っていてそれも北海度らしい気がした。

 輝と智美は、ゆっくり登ってきたので、姿見の池から山頂まで1時間40分くらいかかったが、慣れた人ならもう30分くらいは早く行けるかもしれない。

リスにも出会えて本当に可愛くてそこで少し時間を食ったけど、それもいい思い出だった。

山頂は割と広くて、先に来た4人が降りて行って、智美と輝の二人になったので、智美が作ってきたと言うサンドイッチを食べた。

『智美ちゃん、これいつ作ったの?』 

『朝5時に起きて作ったよ。美味しい?』 

『うん すごく美味しいよ。俺さ、人に弁当作ったことはあるけど、お母さん以外に作ってもらったなんてないから、滅茶苦茶感激してさ。 これ智美ちゃんが朝早く起きて頑張って作ってくれたんだな~って思うと・・・ なんだかさ 胸が熱くなるというか・・・。 感激だよ!』

『嬉しいな~』と智美は笑った。

『それにこのサンドイッチまじ美味しいわ!』 

『輝さんに褒めてもらえるなんて またまた嬉しいよ~』 

智美は誰もいないので、初めての彼女を満喫するように甘えた。

お弁当を食べて、時間に余裕をもって下山したかったのでゆっくりと降りはじめた。

30分くらい降りた時、急に天候が変わって、すこしガスが漂い始めた、 しかし、まだ視界はそう悪くはなく、登山道もしっかり確認ができたのでしばらく降りた。 しかしもう10分くらい降りたところで、霧が濃くなってきて、視界も悪くなってきた。 輝は昨日、正に教えられたように、しばらく視界がはっきりするまで待つことにした。 

『智美ちゃん、ちょっと視界が悪いから安全考えて少し霧が晴れるのここで待とう。』 

『はい。』 

智美と輝は少し大き目の石の上にシートを広げて座った。 少し霧のせいか温度も下がっているようで寒くなってきた。霧はすぐには晴れなかった。智美は少し寒そうで、わずかだが震えているように見えた。

輝はリュックからフリースのベストを出して、智美のコートの下に着せた。 それでも智美は寒がっている。 

仕方ない。 

『智美ちゃん、俺の方にもっと来て。』と言って後ろから抱えるように智美の体を抱きしめた。 

『どう?』 

『暖かいです。』

仕方ないとは言え、彼女になった直後にこのシチュエーションは、やばすぎる。 輝はどうかなりそうだった。 15分か20分かそうしていたと思う。 わずかに霧が薄くなり始めた。 すると智美は輝の方にクルッと向きを変えて、じっと輝を見つめて目を閉じた。 輝は直感でそういう事か。と思った。 ゆっくり智美の唇に重ねるようにキスをした。ほんの20-30秒だったと思う。 すると霧が晴れて来て視界がよくなった。 人の姿はまだ見えなかったが、遠くで人の声がする。 輝は、智美を一度軽く抱きしめて、頭をなでた。 智美ははずかしそうに、微笑んだ。

『さぁ もう大丈夫。降りるよ。』 

『はい。』

二人は無事に姿見駅まで下山し、ロープーウェイとバスで朝、陽子が送ってくれたバス停に着いた。智美が陽子に連絡してくれていて、バス停まで陽子が迎えに来て待っていてくれた。

『お母さん ありがとう。』 

『おかえり。輝さん。今日は智美をありがとう。』 

『いえ、こちらこそ、色々ありがとうございます。』 

陽子の車に乗り、智美の家に戻った。

『輝さん、先にお風呂に入って。』 陽子が輝のいる部屋に来て声をかけた。 

『僕より先に智美ちゃんに入ってもらってください。 僕はその後入らせてもらいます。』 

『ありがとう。わかったわ。智美が出たらまた呼びに来ますね。』 陽子はそう言って出て行った。

輝は、荷物を整理し、正に借りていたものを返した。

『輝君、山はどうだった?』 正は輝に聞いた。 

『山頂へ行くまでは、天気もよくて、姿見の池辺りの花もとても綺麗でした。 山頂に登った時は達成感もあって、山に登る人の気持ちが少しわかった気もします。

眺めも素晴らしかったですしね。』 

『そりゃ よかったな~。眺めも抜群だからな~。』

『ただ、帰りに途中で30分くらい濃い霧が出て、少し降りる時間が予定より遅れました。 昨日お父さんに色々教えて頂いてて本当によかったです。 落ち着いて待って、安全になってから出発したので、問題なかったです。』 

『そうか~ 山は時々そういう事もあるからな~。でも無事で帰ってこれて良かったよ。』

『はい。 ありがとうございます。』 

『智美も喜んでたし、無理言って連れて行ってもらってありがとうな。』

正は輝に礼を言った。

陽子が来て、『輝さん。 リビングにいたのね。お風呂空いたからどうぞ。』と言った。

輝は、『じゃ すみません。先に使わせて頂きます。』と言って風呂に入った。

霧の中での智美との事を思い出した。 よく自分をコントロールできた方だと思った。そして姿見の池で智美に告白された事が、頭に浮かんだ。 輝の中には、自分がこれだけ遠距離でこの後うまく智美と付き合えるのだろうか?と言う一抹の不安があった。 けれど、智美は自分が必要で自分しかダメだと言ってくれた。輝も智美に最初から惹かれていたし、智美を抱きしめた感触と、愛しいという気持ちははっきりと身体も心も記憶している。 明日には旭川を離れ、次の目的地に行かなければならないし、次に智美にいつ会えるのかもわからない。 折角彼女ができたのに、一緒にいられないのは寂しくて仕方ないと思った。 何か智美の心に残るような思い出がもっとできないかな~。 輝は考えた。

風呂から出て、陽子の準備してくれた夕食を食べた。 智美と輝以外はまだお風呂には入っていなかった。 翔が夏休みの宿題で、数学がわからないというので30分ほど見てやった。

翔は、『輝兄ちゃんに教えてもらうとよくわかる。学校の先生よりよく理解できた。』と言った。

時間は夜の9時を少し過ぎていた。 輝は少し外を散歩したくなって、陽子に、『すみません。ちょっと外を散歩してきます。』と言って外に出た。 

外灯もなく、家の明かりだけがポツンと光っていた。

牧草地で、凸凹もなさそうなのでゆっくり歩けば少しくらい暗くても問題なかった。

風も爽やかで、輝の住む街と同じ日本だとは思えないほど快適な夜だった。 草の上に寝転んで、空を見上げると、星が綺麗に輝いていた。 

すると、智美が『輝さ~ん。』と呼んでいる。 

『ここだよ~』 と言うと智美はゆっくり輝の方に歩いてきた。 

『横に座っていい?』 

『うん いいよ。』 

智美は輝の横に座った。そして輝にペタッと引っ付いて来た。 輝は、智美の肩に手を回した。 

『ここは星がすごく綺麗だね~。』

『そうなのかな~ ここにずっと住んでるから、いつもこんな感じだよ。』

『俺の住んでる所はこんなに綺麗には見えないよ。 夏でもこんなに涼しくて気持ちいいし。』 

『でも、冬はすっごく寒いんだよ。』 

『そうか~ 俺には想像ができない寒さだろうな~。俺ね、医者になりたいんだ。 だから、高校出たら、京都大学に行けたらいいな~と思ってる。京大は難しいから、無理かもしれないし、国立の他の医学部も受けるつもりだけどね。』 

『そっか~ 京大 行けるといいね~。』 

『うん。今まで考えてなかったけど、京大だめなら北大受けて見ようかな~。そしたら智美ちゃんとも会えるしね。』 

『私も輝さんが北大に入ってくれたら嬉しいけど、もし京大受かったら、私も関西の大学受けたいな~。』 

『智美ちゃんは何になりたいとかあるの?』 

『う~ん 今はあまりわからない。 でも輝さんがお医者さんになるなら、頑張って薬剤師か看護師になろうかな~。』 

『あはは それいいかもな~。』

智美も輝も一緒に笑った。 

『でもね。私、今彼女にしてもらっても中々会えない分、絶対、大学生になったら近くにいたいの。 だから、同じ大学は無理でも近くの国公立行けるように勉強がんばる。』 

『なんかそんな風に言ってもらえるとすごくうれしいな~。 俺も智美ちゃんと一緒にいたいからさ。』

少し沈黙が続いた。そして二人は見つめ合った。 星空の下で長いキスをした。

そして輝は、智美の肩を自分のほうに寄せて手を回して二人で星空を見た。

『そろそろ戻ろうか?』 輝が智美に言った。 

『うん。』 智美はうなずいて二人は智美の家に戻った。

時間は10時を少し過ぎていた。 輝はふと思いついた。 『智美ちゃん、キーボード持ってない?』

『私の部屋にピアノならあるけど、キーボードはないかな・・・ 輝さん弾けるの?』

『少しね。 あまり弾いてないからそんなには弾けないけど。 じゃあさ ちょっと智美ちゃんのピアノ貸してもらっていいかな? 俺 明日ここを出て、霧多布の方に行くんだ。 だからさ~なんか智美ちゃんのためにできることないかな~って思ってね。 大して上手くはないけどピアノ弾こうかなってね。』 

『ほんと!?嬉しいな~。 うちのまわり何もないからピアノ夜中に弾いても平気だし、お願いします。』と智美は言った。 

智美は、『お母さん 輝さんがピアノ弾いてくれるんだって!』と言った。 

『えっ 輝さん ピアノも弾けるの!?』 

『そんなに上手くはないですよ。でも記念にと思って。』 

『私も聞いていいかしら?』 と陽子は言った。 どうやら陽子も少し弾けるような感じだった。 『智美ちゃんはどのくらい弾けるの?』

『私はそんなに上手くないです。 だから無理です。』 

『じゃ とりあえず俺が弾くね。』

『よろしくお願いします。』 

正と翔も智美の部屋に来て、俺たちも聞きたいとみんなが集まった。

輝は、ゆっくりと弾き始めた。輝が弾いた曲はLittle WestのBreezeという曲だった。

輝のピアノはとても美しい音だった。 弾き終わると、みんな拍手した。

陽子は、『こんな素敵なピアノ中々聴けないわ。本当に感動したわ。』と言った。

智美は何も言わずにちょっとだけ目が潤んでいた。 

翔は、『輝兄ちゃん すげ~ めちゃくちゃ上手いな~』と言った。

正は、『輝君、もっとうちにいて欲しいくらいだよ。 また北海道に来たらうちに泊まってくれ。いつでも大歓迎だから。 俺は明日早く仕事に出るから、会えないけど、元気でな。』と言ってくれた。

『お父さん、本当にありがとうございました。 すごく楽しかったです。 北海道はまた来たいですけど、すぐに来れるほど近くないのが残念です。 でも大学生になったらきっとまた来ます。』

『うんうん 待ってるからな』

その夜は、夜中から雨になり、次の日の朝も雨だった。


『色々 お世話になりました。 みなさんお元気で。 それではありがとうございました。』

輝は、レインウェアを着てバイクに乗り、智美達と別れた。

今日は、霧多布湿原にあるペンションに泊まる。

霧多布湿原はその名前のように夏でも霧がかかることが多く、温度が低い。 そして沢山の花が湿原に咲いている。 そして、運が良く快晴なら、星がものすごく綺麗らしい。こればかりは天気が良くないと無理だし、恐らく今日は無理だろうと思っていた。

旭川からは約350km。 6時間くらいはかかる。

輝は、雨も降るし、無理をせず、ゆっくりと走ったので、宿に着くころには夕方になっていた。

やっと宿に到着し、バイクを停め、チェックインした。 宿のオーナーは気さくな人で、優しそうな感じだった。 シングルルームを2泊予約しておいたが、運よく部屋に空きがあって、オーナーのご好意で、湿原側のツインルームを使わせてもらえた、

部屋は綺麗で、窓から湿原が正面に見える、素晴らしい眺めだ。 雨もいつしか止んでいた。

輝は、少し湿原を散歩した。 ペンションを出るとすぐ近くに湿原の木道があり、湿原の中を歩く事が出来た。 湿原には黄色いエゾカンゾウや、紫色のヒオウギアヤメが数多く咲いていて、とても美しかった。 湿原の奥には川が流れていて、鶴のような鳥が2羽見えた。

少し暗くなって来たので、宿に戻り食事をした。

オーナーは元漁師をされていたらしく、海の幸の夕食はとても美味しかった。 オーナーの奥さんも可愛らしい人で口数は多くはないが、何かと気のつく優しい人だった。

食事の時は、オーナーの趣味かどうかはわからないが、エンヤの曲が流れていて、夜の食事の雰囲気に絶妙にマッチしている気がした。

明日は、晴れていれば、オーナーにカヌーのツアーに連れて行ってもらう。 湿原の中を流れる小さな川をカヌーに乗って楽しめるツアーだ。

雨は すっかり上がった。 食事をして、お風呂に宿泊客が交代性で入って、輝もお風呂を終えた。

外に出てみた。 湿原の木道まで持っていた小さなライトで足元を照らしながら歩いて行った。

木道に着いた所でライトを消して空を眺めると、まるで星がこぼれ落ちてきそうなほど、満天の星空だった。 智美と一緒に見た星空も美しかったが、ここは桁違いに美しい。 智美とここで手を繋いでこの星空を見れたらどんなに感動するだろう。 輝の心にはもう智美が住み着いているような気さえした。 首が痛くなるほど星空を見ていた。ここは周りに明かりが全然ない。 それが一層、星空を見るのに良い条件にしているのだろう。

輝は、部屋に戻ると渉にメッセージを送った。 渉。今俺 霧多布って言う湿原の近くのペンション。渉に報告がるんだ。 俺にも彼女できたわ。 智美と一緒に撮った写真もLINEで送った。

すると、渉からすぐ返信が来て、おいおい、どんだけ可愛い子彼女にしたんだよ! 輝 今話せるか?

 あぁ 大丈夫だよ。 すると渉からすぐに電話がかかってきた。

『おい 輝、どこでどうなってどうなった?』 

輝は渉に智美との出会いや、一緒に山に登った事を話した。

『しっかし この子凄く可愛いな! 涼ちゃんは綺麗だけど智美ちゃんは可愛いよな。レベルは同じくらいかもな。』 

『渉、正直言うとさ、俺、涼ちゃんには憧れてたんだ。 付き合えるなんて思ってはなかったよ。 あれだけ綺麗だからさ。でも結構仲良くなれて、色々楽しい事もあったしな。 でもさ、何か大きな壁があってさ。』 

『そうかな~ 俺は涼ちゃんも輝の事が好きじゃないかと思ってたけどな。だって中学の時なんて、俺は近所だから少しは話してくれたけど、他のやつとは全くっていほど話さない子だったんだよ。 それがさ、輝とはすごく明るく話してたし、輝と仲良くなってからは、他の男とも少し話すようになって随分あれでも変わったな~って俺は思ったし、輝の事がきっと好きだと思ってたわ。』 『まさか~ そんなはずないわ。俺、涼ちゃんからそれらしい事言われた事もないし。』 

『そうか~ でも俺は、涼ちゃん輝が好きだと思ってたわ。 まぁ でも智美ちゃん可愛いし、自分から輝に彼氏になって欲しいってちゃんと言ってくれたんだから、輝良かったよな~。 遠いのだけがちょいきついけどな。』 

『うん。 俺もそれだけがな・・・ 会いたいと思ってもすぐに会いに行ける距離じゃないからな。

東京や大阪くらいなら無理してでも行くけど流石に北海道はな・・・ LINEとかで毎日話せたりはするけど会えないのはつらいわ。 だってさ、昨日別れたばっかなのに、もう寂しい感じがするもんな~。』

『それ、なんとなくわかるわ。』 

『まぁ あれだけ思ってもらえてるし、俺も本当に好きになったから頑張ってみるわ。』 

『おう! 頑張れ! それとお前 明日香ちゃんと俊の事は聞いた?』 

『うんうん。行きの船で俊からメッセージ来てさ まじびっくりしたわ。 それもさ 俊から告白したって言うじゃない!? あの大人しい俊がやる時はやるなって感じでさぁ~ 俺よりよっぽど勇気があるわって思ったわ。』 

『輝も聞いてたんか~ 俺も2日くらい前に聞いて驚いたわ。 でも俊と明日香ちゃんならお似合いだよなとも思ったよ。』 

『あぁ~ それは俺も思った。』 輝も同意した。 

『とりあえずビッグニュースだな。お前に彼女が出来たって(笑)』 

『渉!あまり 言うなよ! お前は親友だから教えただけだからな。』 

『わかったわかった。 じゃ 北海道楽しんで来いよ。』 

『おう ありがとうな それじゃ。』

輝がベットに寝転がると、智美からLINEで通話してきた。 

『もしもし 輝さん。無事着いてます?』 

『うん、ありがとう。着いてるよ。』 

『霧多布って同じ北海道でも旭川からは遠いからいった事ないんですけどどうですか?』 

『いいところだよ。 今日ね。雨が降ってて、でもこっちは夕方には止んでてね、それで湿原の木道歩いてたらものすごく星が綺麗でさ~ 智美ちゃんと一緒に見た星空も綺麗だったけど、ここのは桁違いに綺麗でね。 横に智美ちゃんがいたらいいな~って思っちゃったよ。』 

『ほんと?うれしいな~私も輝さんの横で見たかったな~。』 

『いつか智美ちゃんと一緒に来れたらいいね。』 

『はい。私も行きたいです。 輝さんの声がききたくなっちゃって・・・ 迷惑じゃなかったですか? 休んでました?』

『ううん 全然迷惑じゃないよ。俺も智美ちゃんと話したいな~って思ってたから。 なんかね。おかしいけど離れたら余計に好きだって気持ちが強く感じられちゃってさ。』 

『私も。今日の朝別れたばかりなのに凄く寂しくて・・・。 お母さんに話したら、そんな事でこれからどうするの!? って言われちゃいました。』 

『そうだよね~ これからこういうのがしばらく続くわけだから俺も離れてる事に慣れないとダメだな。 智美ちゃんは俺の初めての彼女だからさ。』 

『えっ ほんとですか? 私だけかと思ってました。私は初めてなんですけど、輝さんは今までもそういうの沢山あるのかと・・・。』 

『いや 彼女は智美ちゃんが初めてだよ。 だからよろしくね。』 

『私こそです。』 

『また時間あればメッセージも送って。』 

『はい。長旅で疲れてるところすみません。 早く休んでくださいね。』 

『うん。ありがとう。声が聞けてうれしかったよ。おやすみ~。』 

『おやすみなさい。』 

智美の事を思い出すと、離れてるのがさみしくて仕方なかった。 11時を少し過ぎていて明日はカヌーに乗れるかもしれないから、もう休もうと思ったら、俊と明日香からも おめでとう。何この美人?みたいなメッセージが届いていた。 ありがとう。と返信して輝は眠りについた。


渉は、輝から彼女ができた。と報告を受ける。そして、これをすぐにみんなに言いたくて、理恵、明日香、俊には知らせる。 しかしなんとなく涼には、知らせにくかった。 しかし、明日香が涼にこのことを知らせる。涼の気持ちは・・・

(注) 輝が智美のために弾いた曲はこれです。よかったら聞いてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=w8I7iX1UkWg

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ