第1章20『悲しいを通り越す過去』
「なあああああああにいいいいいいいい!!」
俺の雄叫びを聞いた、おっさんの顔には、戸惑いと安堵の表情が浮かんでいる。
ともかく、おっさんの言っている事が、本当だったら---
---死んでもいい。
あ、いや俺もう死んでたわ。
『死んでもいい』俺の幸福を表すには、実に最適な言葉である。
そう思えるほどに、数分前の自分は、絶望していた――――
『どうして?』と、理由を聞かれると答えは一つであり、実に単純明確だ。
ただただ俺は、おっさんにはなりたくないのだ。
俺はもとにいた世界―――日本でも、この信念を豪語していたし、この信念を、ゆがめる気もさらさらない。
そして俺はこうも言っていた。
『いくら世間で、おっさんと一括りされる歳になっても、俺は厳ついダンディ路線で行く!あれ?自分で言っても何だが、厳ついダンディ路線って何だろう?』
最後の方は少し腑に落ちんが、大体合っているだろう。
そもそも俺が、おっさんを毛嫌いしているにはわけがある。
俺の実の父がクソ野郎だったからだ。
毎日酒に、入り浸り、ろくに働きもせず、その腹いせに母を殴る。
そんな日々だった。
幼い俺に、親父を止める術はなかったし、母を守る力もなかった。
だが、そんな日々に遂に終止符は打たれる。それも最悪な形で。
俺が、9歳の時母が死んだ。
死因は素手による暴行。
まさしく、父のDVによるものだった。
俺はその事実を知ったとき、怒りよりも、悔しさを感じた。
どうして何も出来なかったのか?と、俺はこれまで何をしていたのか?と
毎日毎日毎日毎日毎日後悔し、泣き喚いた。
それは、仕方のないことだった。
まだ9歳だった俺に気持ちを整理する時間も余裕も力もなかった。
そんな中、俺が長年葛藤し導き出してしまった答えは
『おっさんを嫌う』




