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第1章18『慈悲深き女神様』
「は?」
俺は、考えるよりも先に、口が動いていた。
俺の発言におっさんとお姉さんも気づいたらしく、「何を言っているんだこいつは?」と、言ったような表情を浮かべている。
意外にも、この三人の中で、沈黙を破ったのは、おっさんだった。
「いやいや、『は?』はないだろ。てゆーかこの慈悲深き女神様に、文句の一つでもあるのか?」
おっさんは、厳つい顔をするが、俺は怯える素振りを見せなかった。いや正直クソ怖いけど、俺は言う。いや言ってやるさ!
「いやいや、お前バカじゃないの?怒らないからすべて話してって言って本当に怒らなかった人を見た事ないよ。17年間。俺はそのせいで、怒らないからすべて話してが、怒らねえからすべて話せやぐへへ、にしか聞こえなくなったよ!」
俺の今持てる最大の声量と、ともに放った言葉を、聞いた張本人たちの顔を見てやろうと、俺は、ずっと下を向いたままだった顔を上げると、お姉さんたちの顔が見える。
その表情は、半分呆れ、半分笑っているように見えた。




