Chapter001
Chapter 001
「羅装!っっっ!!」
周囲から緑色の光とともに体全体を覆うように水のような空気のようなものが集まってくる。エーテル体と呼ばれるものだ。
エーテル体は、体を覆うようにして獣に似た形に変化していく。徐々にではあるが、変化するべき状態に近づいた瞬間に、すべてが消えてなくなった。
これで何度目の失敗だろうか。
自分の才能の無さに嫌気がさしつつも、付き合ってくれているヨーデルに対して
申し訳ない思いでいっぱいになってしまう。
「前よりはうまくなってるよ。ほら、ちょっと足の部分は色が変化してるし」
よく見ると足元だけは霧散せずに獣の足になっている。ただ、獣のかわいいスリッパを履いているようにしか見えず、なにかの能力が身についているわけでもなさそうである。ただのスリッパだ。
褒めてくれたヨーデルはこの町の長老の息子であり、一族の中でも優秀な男だ。当然羅装も得意であり、バリンチュースの村では一番優秀だろう。その一番の使い手が一番へたくそな奴の修行につきあっている。なんともいいやつなことだ。
「いや、前とそう変わらないのは自分でもわかるんだ、、、あー、くそ!っ。」
自分の才能に情けなくも感じるも、どうしよもない。幼いころから修行しているわけだからさすがに割と諦めている。
もともと、緑陽の民の生まれではない。ほかの人たちと大きく違うようなわけでもないが、拾われてきたことは両親から伝えられている。それを知ったのは最近だが、両親には育ててもらった感謝もしている。特に気にすることもない。