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散々玩ばれた納音は、眠そうな二人を寝かしつけて、食器を洗った後に自分も自室に戻った。双子は同じ部屋で寝ているが、納音は一人部屋だ。
シンとした部屋の中、納音は考えないようにしていた帰り道の不可思議な現象を思い出す。
どうして祝くんは、あのコンビニに居たのだろう。
いつもは見かけないのに。たまたま?あの変なものが出たのも偶然?
もしかして。
納音はベッドに横になってからも考える。
もしかして、アレが出ることを祝くんは知っていたのかも知れない。
それに刀を持っていた。
帰りに抱きかかえられた時は、何処にやったのか持っていなかったけれど。
折り畳みって訳でもないだろうし。
納音は、折り畳み式の刀なんてないだろうなと、小さく笑ってから目を閉じる。
時折、外の風が窓を揺らした。
ガタリ。
それは何時もの音のはずで、ウトウトとしていた納音は気にもしなかったのだが。
ガタリ。ガタガタ。
続く音に、納音はうっすらと目を開けた。
風が強いのかなと、意識が眠りから覚める。
ガタ。ガタガタガタ。
「え。」
酷い音だ。
風の音でもこんな音はあんまりない。せいぜい台風直撃の時ぐらい。
ガタガタガタガタガタ。
まるで窓を揺すぶられているみたいに、激しい音がする。
起き上がった納音が窓を見る。
カーテンの向こう。
外の薄明りを透かして、何かの影が動いている。大きな形。
大きな、熊のような。
「…ひっ。」
納音が小さく悲鳴を上げる。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。
それは両手で窓枠を持って、揺すっているように見える。
なにか。おおきな。
二人の所へ行きたい。
だけど納音は怖くてベッドの上から動けない。
ただ窓を見ながら、自分を抱えて震えている。
窓を外されたら、何かが入って来る。
窓を揺らしている何かが。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。
「…たすけてえ…。」