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カイ×カイ   作者: 棒王 円
カイ×カイ ~人食い怪異と怪異狩り~
6/9

6




お、男の人に抱き上げられているう!?

恐怖心よりも羞恥心が勝った納音は、祝の腕の中で身体を固くする。


「…怖い思いをさせてすまなかったな」


祝がそんな台詞をぼそりというものだから、納音は全力で首を横に降った。

驚いた祝が落とさないように腕に力を込めた事には気付かない。


「あの、ほふりくん」

「ん?」


見降ろしてくる祝の顔が近すぎて、納音は見あげていた顔を高速で俯かせる。


「さっきの、なに?」


それに返事はない。

ゆっくりと歩いている祝が足を止める。

納音が気付くと、最初に影が揺らいだように見えた電灯の少し手前だ。

何だか嫌な臭いがして、納音は電信柱の下の方を見ようとする。


「見るな、初川」

「え?」

「目を閉じろ。良いと言うまでは開けるな」


その言葉で、納音は今ちらりと見えたものの正体を追及する事をやめる。

何かが置いてある。

肌色と赤い色と黒い色と。ぴくりとも動かない何か。


ギュッと目を閉じて、納音は祝にしがみつく。

納音を抱えたまま、祝はその横を足早に通り過ぎた。


臭いが薄らぎ、嫌な気配も消え去った気がする。


「…目を開けても良いぞ」


祝がそう言うだろうと思っていた納音は、ゆっくりと目を開ける。

周りは何時もの住宅街。塾の帰りに見てきた風景は昨日となんら変わらない。


「あれは、なに?」


納音が祝に同じ質問をする。

小さく溜め息を吐かれて、納音は首を竦める。


「…忘れろ。初川には縁のない世界だ」

「そう、なの?」

「そうだ」


腑に落ちないが、説明する気がない祝から、それ以上の言葉は聞けそうもなかった。



「あ、納音だ」

「あ、納音だ」


見えない頭の方向から、聞きなれた声がユニゾンで響く。

ぱたぱたと足音が近づいて来て、見慣れた顔が二つ納音を覗き込んだ。


可音かおん未音みおん


納音が安心したように小さく呟く。


「私の妹を降ろして」

「ボクの妹を降ろして」


祝はそう言われて納音をチラッと見た後に、腕から解放する。

抱きかかえられていた間に、震えも抜けていた腰も収まっていた。

しっかりと自分の足で立った納音は、祝に礼を言おうとするが、待ち構えていた双子にダブルでガシッと抱き締められた。


「う、苦しい」

「帰ってこないから心配したよ?」

「ずっと家の前で待っていたよ?」

「うん、ごめんね、有難う」


別の言葉を言われても、さすがに長年の付き合いで、それぞれを理解できる納音は、二人に別個にお礼を言う。


そして気付けば、祝はとっくにその場からいなくなっていた。


「あ、あれ?」


まだお礼も言ってないのに。

納音がきょろきょろしていると、双子はぼそぼそとしゃべりだす。


「納音が男に姫抱っこされて来たよ」

「初めて見たなあ」

「うん。じゃあ今日が納音の」

「姫抱っこ記念日?」


双子の呟きに納音が真っ赤になって怒鳴る。


「そ、そんな記念日いらないからねっっ!?」


ぎゃあぎゃあ言っている納音の肩を両脇から抱え込んだ姉妹は、納音を真ん中に挟んだまま仲良く家の中へ入っていく。




離れた場所からその姿を見ていた祝は、やれやれと頭を振った。





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