表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイ×カイ   作者: 棒王 円
カイ×カイ ~人食い怪異と怪異狩り~
3/9

3





仕方なく納音は、彼の傍に近寄る。


「…なんで人の事じっと見ているんだ」

「あうう」


後ろから見ていた事に気付かれて、納音は更にわたわたと動く。

その動きを斜め上からじっと見ていた祝が、小さく笑った。


「え?いま、笑った?」

「…笑ってない」

「え?うそ、笑ったよね?」

「笑ってない」


ああ、ツンデレってこんなものだよねえ、と納得しつつも、初めて見た笑い顔を心のアルバムに収める納音だった。

そんな納音の気持ちを知らない祝は、コンビニの壁にかかっている時計をちらりと見上げる。


「もう、遅い」

「え?あっ。本当だ、半になっちゃった」


納音が慌ててレジへ向かい、会計をすますと、ほぼ同時にコンビニのドアに向かった祝が納音の横に並ぶ。


「ん?」

「…送っていく。遅い時間だから」


ええっ!?

ビックリした納音がビョンと跳ねると、また祝がふっと笑った。

その顔を見ながら、やっぱり美形だなあと納音はしみじみ思う。


私は本当にラッキーだ。そして君たちは本当にラッキーちゃんだ。

こんな美形が天火くんと戯れているなんて。


「…何を考えている?」

「ううん。なんにも」


ニヤニヤしている納音を見て、祝は小さく溜め息を吐く。

それを見て納音はぎくりとする。

まさかこの心のBL魂、ばれていませんよね?


祝が心配するほどに、夜は更けていた。

コンビニを過ぎると住宅街で、明かりはぽつりぽつりとしか灯っておらず、納音は何時も懐中電灯で足元を照らしながら早足で帰っている。


隣を歩くほふりを見上げながら、納音は久々に普通の速度で歩いていた。

二つ先の電柱まで明かりがないが、隣に人がいるのは安心感がある。


ふと。

電灯のある電信柱の影が動いた気がした。

納音は立ち止まり、いったん丸い眼鏡をはずす。それから目をぐりぐりと擦った。


「…どうした?」


隣から掛かる声が、少し冷たい。


「ううん。何でもない」

「……そうか」


眼鏡をかけなおして納音はもう一度、電信柱の影を見つめる。

きっかり3秒見つめてから、歩き出す。

納音と一緒に立ち止まっていた祝も、また歩き出した。


「ごめんね、祝くん」

「…いや」


納音は自分が何に対して謝ったのか言わなかったのに、その名詞をくみ取って答えた祝を不思議そうに見上げる。

見下ろしてきた祝の顔を正面から初めてしみじみと眺めながら、納音はやっぱり美形だとグッと心の中で拳を握った。


サラサラの銀髪。白い肌。少し釣り目の二重の中に納まっているのは、幾重もの光を集めて作られたのではないかと思う琥珀色の瞳。

その双眸が自分を見降ろしている。


はっと納音の頬が赤くなる。

このシチュエーションは何事!?どうして天火くんがいないの!?

何で見つめられているのが私なの!?違くない!?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ