八話 「真実の箱庭」
今日も森へ走る。
「来たよ!・・・あれ?」
そこには例の少女はいなかった。
あったのは一通の手紙だった。その手紙の存在にミクリは不安を覚えた。
静かに何も言わず手紙を開く。中には下手ながらも頑張って字を書いたような跡があった。
ミクリへ
私がここに居ていられる期限が来てしまいました。
大丈夫です。私はミクリに勇気をたくさんもらいました。
この気持ちがあれば、私は何でも出来そうです。ありがとう、ミクリ。
さようなら
なんとも思わなかった。時間に限りがあると言うことは聞いていたことだったし。仕方がないとその時は目を瞑った。
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施設内のスピーカーから声が聞こえた。
「戦闘員各員に、第一種戦闘配置。繰り返す。第一種戦闘配置」
「なんだ!?」
ガウェインが椅子に座って一服していた。
シャワー室からも声が聞こえた。
「どうしたの!?なにが!」
声に反応してガウェインがシャワールームに行ってしまった。
「おい、なにかあったようd・・・あ」
「え・・・・」
バチン
殴られた。
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「なんだ!」
オルガス艦長がオペレーションルームに入った。
「オルガス艦長。実は先ほどからエネルギー反応が絶えなく続いておりまして」
「どういうことですか」
「レーダーに高エネルギー反応が複数見られるのですが・・・どれも反応だけで本体がいないのです」
つまりは目くらましを受けているのだ。ジャマー波をどこからか流しているに違いはないが、場所を特定できないのが現状。
「これでは出撃もできない。しかしここまでジャマーを張るとは。計画していたな」
「敵に先手を打たれましたな。こちらの隊はすぐ出撃できますが」
「では頼もう。敵の各個撃破、もしくは親玉を潰してくれ」
一礼して部屋を出た。懐に入れてある携帯機を出して連絡した。
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「どっから当たろうか」
「南のエリアが一番反応が多いそうよ。もしかしたらジャマー装置が置いてあるかも」
レイが推測する。南と言えば湖がある方面だ。
「ミクリ君はどう思う?」
深く考え込んでいるようで声が聞こえていない様子。
「ミクリ君?」
「えっ!はい」
「あんまり考え込んじゃ駄目よ。じゃあミクリ君には南を頼むわね」
「わかりました」
やはりミクリは少女の事を考えていた。友達というものをあまり知らないミクリには理解しにくい感情だった。
するとアーノルドから声が響いた。
「あラ久しブり。元気してタ~」
「アイビー・・・まあ、それなりにはね」
「その割ニは元気ないネ。平和ボケしテると死んジまうヨ」
励ましているのかなんなのか。不器用なAIだなと笑いつつ、湖の方向へ進んでいった。
すこし進んで湖の前まで来た。
「ここラへんだヨ」
反応の場所を探りながらはずれを取っていく。
すると最後に残った地点を探して草をかき分けていくと。
「ここは!」
木でできた椅子や机。カラフルな花と鳥の彫刻。
二人で過ごした思い出の場所。
「反応はここガ一番大きいヨ」
傷つけたくなかった。でもミクリがしなくてもアイビーがやった。
「アイビー!なんで!!」
「お前が出来ないなら俺がやる。俺はお前の右腕だ。だからお前は左腕だ。そんなお前が想いでごときに揺らされるな」
聞いたことのない声で怒られた。それはアイビーの声だったが、普段のおふざけ口調じゃなかった。
右手が勝手に動き、木の幹で出来た机を抜くと、下に小ぶりの機械がついてあった。多分これがジャマー装置だろう
「あった・・・」
その時、ガウェイン達が向かった北側で爆発音が聞こえた。
同時にサイレンが鳴り響き、森の鳥たちが一斉に飛び立った。
「なんだ!!」
ミクリは悪い予感がした。その感は悪くも当たってしまう。