三話前 「主君の艦長」
白い巨体がゆっくりと降りてくる。
それはずんぐりとした熊のよう。砲台が付いていることから、今を生きる戦艦と言えよう。
「久しぶりだなぁ、機体の修理もついでに頼むか」
陸上共修戦艦「オルゲンゲーテ」は、マシンや他の艦の修理、及び、陸上空母などの機能を持つ、連合国の主力艦の一隻だ。
オルゲンゲーテと言う名前は、国連が唯一持っていたマシン生産機関の通称名だった。現在は解体されてそのような組織はない。しかしその名にふさわしい艦だ。
「補給が出来るのは助かるわ。ちょうどいいからミクリにも教えないとね」
「初めてみましたこんな船・・・でっけー」
全長が10mに及ばない機体もいれば、30m級の大型機もいる。どの機体も修理できるようにするため、ここまで大きくなった。
大気圏内での活動を主としているため、潜水も行える。船体が丸びを帯びているのもこのためだろう。
「機体装備の調整も兼ねて色々教えないとなぁ」
笑いながら通信が途切れた。
艦のお腹が大きく開き、中への誘導ビーコンが光った。
艦内は広く、修理用の機械が数多く並べられていた。
すべてを見回ることはできないだろう。それほど大きいのだ、何故さっきまで気づかなかったのかが不思議だ。
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「艦長、失礼します」
「入れ」
分厚い自動ドアが重々しく開き、部屋の中に女性が入る。
中には40代ぐらいの男が座っていた。
「報告。本艦前方で戦闘中だった味方機を収容いたしました」
「また国連の厄介者か?」
国連はなにかしようと手をうっているが、それもいやがらせレベルの小さいことだった。それが、適当に傭兵を雇い、他社を潰すという行為だったが、結果行きつくのは死かこの艦だそうな。
「いえ、本艦が遠征任務に出していた部隊です。新型機を受領してきています。適任パイロットも同任」
「なるほど、東洋方面に出していた部隊か?」
オルゲンゲーテには複数の部隊編成があり、大型艦のためにこのような仕様になった。
「いえ、北米に出していた部隊です。D・フェルガー、Re・ショウダー。そして受領してきた機体が『アーノルド』です。」
丁寧に応え、艦長の欲している情報を端末に提示した。
型式番号RD-2-01 機体名「アーノルド」
ファットファクトリーが製造した単機構想機。特徴は大型の近接兵装「ジェノサイド・キャリヴァー」の装備・運用。特殊なマニュピレートシステムを使用したことにより、より人間に近い柔軟性と動きを実現。高機動を維持するために、薄型のハニカム構造の装甲板を幾つも重ねた、「ペシュトレイド装甲」で軽量化に成功。
キャリヴァー本体にもブースターを装備したことにより、高機動を維持したまま突貫ができます。問題点としては、高速移動に耐えれる人員がいるか。
「問題児が一人増えたな。また厄介だ」
「東洋方面にも同じような荷物があるとか」
さすがに頭を抱え込んだ男。すぐさま立ち上がり、部屋を出た。
「発進の準備をしておけ。私も行く」
「了解しました」
女性も男の後ろを歩き、長い通路を歩いて行った。
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