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アフターウォー  作者: IF太郎
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十九話 「緋色の恒星」

 数多く前線に出ている敵機体「プロキオン」は、シャイン・マスプロダクションが製作した新型機である。高い汎用性と扱いやすさから期待の目を向けられていた。が、それも会社内だけである話。他の者からすれば脅威のほかならないものである。

 基本青のカラーリングだが、戦場を駆け抜ける機体に一機だけ赤い機体がいた。その機体も同じプロキオンであるが、追加スラスターや装備している武装が明らかに異なる。

 重たそうなバックパックには、推進をサポートするプロペラントタンクが増設されており、さらには機体色の赤と同じ色をした大剣が装備してある。


 「!?・・・」


 その機体の俊敏な動きを見て、一同が絶句した。

 早さが段違いだったからだ。その図体からは想像もできないような凄まじい速さでの高速移動を可能としていた。だがそれは機体だけでなく、中に居るパイロットにも影響があるはずだ。

 それほどの機体を操れる技量を見せつけられ。戦場を赤い閃光が駆け抜けたのである。


 「おもしれぇ。アイツの手は出させねぇから安心しな。お前らは他のを殺ってくれ」


 一緒に付いてきたイナクト二機と艦隊に向けて言い放ち、そのまま敵の隊群に突っ込んでいく。

 敵もそれを見て撃ってくる。だが四枚の翼で華麗にそれを避け、メガランチャーで敵を撃ち抜く。

 だが放たれたビームは肩の装甲で弾かれ、敵の瑠弾がよろよろと接近する。すぐに迎撃し、もう数発放つが、それもすべて弾かれる。


 「クッ、だったら力づくでッ!!」


 ランチャーをバックパックに戻して、大鎌を両手に持ちかえる。そのまま振り切って赤い装甲に叩きつけた。


 ガキンッ


 聞き覚えのある音に身に覚えのある感覚。その感覚に身を震わせながらコンソールを操作し、丁度向きが合っている三連装甲砲で至近射撃をする。だがこの距離で撃つ少し前に機体を捻り、するりと力の枠から抜け出した。

 目の前から赤い機体が消え、コクピットのモニターから反応も消える。だが感覚で後と判断し、振り向く。


 「クッソォ!ちょこまかと!」


 後ろを振り向く勢いで鎌を振り落とすがそれも避けられる。だが代わりに当たった物があった。


 カキュンッ


 「誰だぁ?」


 さらに音は続いて、装甲に激しい光が点った。それが瑠弾と分かった時にはアンクには見覚えのある機体がモニターに映っていた。ピンクと白の特徴的な機体は、アンクにとっては運命的なものだった。

 デュアルアイセンサーの青いカバーが特徴の頭部もピンク色に塗られていて、胴体部、腕部共に角ばった機体形状をしている。体当たりをしているように見えたが、腹部あたりに火花が見えたことから、短剣での接近戦を試みたと思えたアンク。


 「誰とは失礼ね。君みたいな単細胞だとすぐ死んじゃうかと思って急いで来てやったのに」


 女性の声、というよりは幼い女子にも聞こえる。通信モニターに顔も映り、ツインテ―ルの少女が写り込む。


 「フッ、だからって俺の獲物を横取りとは意地汚ねぇぞおい」


 少女に向けて不気味な笑みを浮かべる。

 少女の名は『アニー・ハンプティ』。アンクの第一発見者であり保護者である。

 施設から出たアンクがデビルカイザーに乗るまで、サポートしてくれたのが彼女だ。そして彼女の乗る機体は『ガルシオン』。本来は蒼い塗装なのだが、合計四機あるうちの一機をアニー用にカスタムした機体である。バックには高機動長距離飛行装備『ハイウィングストライカー』という専用パッケージを装備してある。そのおかげでここまで来れたのである。

 武装も軽めで、腰に二つずつ装着してある振動式装甲剣『対装甲アサルトナイフ』と、試作90式アサルトライフル。オプション兵装として、頭部ファランクス砲、ハイウィングストライカーの『ストリームキャノン』及び、複合連結式多連装ミサイルランチャー。と、小柄ながらも充実した装備である。

 赤いプロキオンに突き立てているのはその対装甲アサルトナイフであろう。


 「酷い言われようだわ。だったら取り返してみなさい」


 「言うじゃねえか。お前よりも俺様の方が上なのは分かってるだろぉ?アニー」


 脅すような口調で言うが動揺もせず、そのまま機体を押しつけて離さない。装甲からは常に火花と鉄が削れる音が聞こえる。超高速で振動しながら切り込む為、装甲を通常よりは簡単に切り裂くことが出来る。が、シャイン社のマシンであるプロキオンはどうやらハニカム構造を使用しているからなのか、装甲へ切り込みにくい。


 「チッ、全然入らないわね」


 「俺に任せな。」


 「だめよ、あんたが出来なかったんだから。そうだ、アンクこいつ押さえといて」


 気安く命令する。そんなアニーにアンクが苛立っている。


 「・・・・わあったよ」


 仕方なく承諾。今までのアンクならこんなことはなかったのだが、アニーには優しいということなのだろうか。

 デビルカイザーが代わりに押さえ、ガルシオンが後方へ下がり、ストライカーのキャノン砲を展開した。

 

 「おいお前まさか!!」


 その行動を見てアンクは悟った。それはアニーがしていることに自分が巻き込まれると思ったからだ。

 プロキオンは足掻き周り、飛ぶことも出来ないくらいに足止めされている。撃つならこの瞬間がチャンスである。


 「ハイウィングストライカーアクティブ。ショルダーセット」


 展開された翼とキャノンが連動して動き、両肩に構えるようにキャノンがセットされた。

 『EXウェポン』と呼ばれる兵器に入る武装であるストリームキャノンは、インフィニティドライヴで動く機体では使えない。ガルシオンの動力源は『グラヴィティ・エンジン』と言う物で出来ている。所謂『重力子エンジン』と言うものだ。

 人工的に発生された圧縮エネルギーを使って、超巨大エネルギーを撃ちだすことが出来る。


 「重力子エネルギー融合収縮。では、久しぶりのイってみよう!!」


 コマンドカーソルをプロキオンに合わせる。三重の丸いカーソルが、充填率に合わせて赤くなり、最後の枠が赤くなった。


 「ストリームキャノンッ!!いっけぇぇーーーーーっ!!」


 嬉しそうで楽しそうな声で叫びながら引き金を引いた。その瞬間、両肩にそれぞれ乗っていたキャノンの砲門から眩い光が撃ち出された。若干黄色にも見えるその光線は真っすぐプロキオンへ向かっていったが、同時にデビルカイザーが手を離し、離脱した瞬間で、赤いプロキオンはその光線をかわすことに成功してしまった。しかし代わりに丁度後ろにいた別のプロキオンに直撃し、激しい光が辺りを包んだ。

 何らかのコーティングを施してあるのか、プロキオン達はビームやレーザーを弾くことが出来るようだ。しかし、さすがにこの大出量の光線は弾き切ることが出来なかったようで、弾いた辺りから赤く溶けだし、膨張して爆発四散した。


 「チッ、外しちゃったー。でもまあ当たったからいいかな」


 「あぶねぇ所だったぜぇ。あの赤いやつも命拾いしたなぁ」


 そう呟くが、もちろん向こうには聞こえていない。だが悟り取ったように赤いプロキオンは去って行った。代わりに通常のプロキオンが多数投入されたが、その後何とか切り抜け、最終ラインまでもう少しのところまで来ることが出来た。その場に居合わせなかったミクリ達も、最終ラインで合流することになっている。

 結果分かったことは敵の戦力が想定とは桁外れに増幅していたことと、分散させて出撃させたことにより、無駄な死を招いてしまった自信の愚かさだけであった。


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