二話 「三機同心」
「それト。今こっチに大型機が向かっテるヨ!クスクスッ」
「!?ッ」
瞬間ブザー音が鳴り、素早くコックピットに飛び乗った。ミクリも急いでアーノルドに乗った。
乗った瞬間、熱源レーダーが真っ赤に色づきガウェインが叫んだ。
「避けろ!!」
二人には「ヨケロ」と聞こえたが一瞬戸惑い、すぐさまアクセルを踏んだ。
フルスロットルで飛び出し。カーゴの姿が光に包まれた。
青く濃い光線が自機の下を通過する。その光の先には図太い光線を吐いている巨体があった。
「デカブツのご登場だ!これは骨が折れるぞ!!」
いくら高機動機で編成された編隊でも、その装甲は薄く軽く出来ている。武装の反動はスラスターで維持している為、あまり反動の大きい物は搭載出来ない。
その所以、どの機体もビーム兵器やレーザー兵器、無反動砲やミサイルなどの換装兵器等。どの兵器も開発が難しく、高価になってしまう。
「敵機動兵器実弾発射!!この量は多すぎる!!」
追加装甲の様な四角いモールドが入っている機体は、ミクリ達の機体よりも遥かに大きい。
その装甲が薄皮一枚めくると、その先には多数のミサイルランチャー。あの大きさだと拡散型のようだった。
「 クッ!さすがにこの量は!」
ライフルや内臓式機関砲で応戦するが、一向に数は減らない。
普通機のように機関銃や散弾銃なら応戦しやすかったが。高性能機だけあって、装備しているのはビーム兵器ばかり。
「アイビー性格悪すぎッ!!俺を殺す気か!!」
「スミマセン、ヨクキキトレマセンデシタ」
急に元のボイスに戻した。腹立たしい奴で頭が良すぎる。
そんなミクリの元へミサイルが殺到する。
「こんちくしょぉぉぉぉぉ!!」
精一杯操縦桿を引き絞り、機体を持ち上げる。
腕部インパルス機関砲で迎撃するが、「アーノルド」は接近戦に特化した機体構成のために射撃兵装が少ない。オプションとして、手持ちのハンドガン程度しか装備できない。
「右かラ来てルけド余裕アるかナ~」
「えっ!?」
ミサイルの迎撃に神経を使っていた為、周囲の状況に気づかなかった。
あのでかい機体が突っ込んで来たのだ。
とっさに腕を後ろに回し、大剣の持ち手をつかんで放り投げた。
「うりゃあぁぁぁぁ!!」
ブンブンと剣が回って飛んでいき、遠心力の限りが巨体に激突した。
刃が装甲に突き刺さり、火花が散った。
しかし依然として敵は向かってくる。
横からレイ達の弾幕も飛んでくるが効いていない様子。
「硬いぞ!レイ!PDBの使用を許可する!!」
「言われなくても!!」
そう言い放つとレイは長いライフルの銃身を開け、中に特殊弾頭を挿入した。
そのまま流れに任せて撃ち放った。
レーザー弾ではなく実弾兵器。その弾丸は敵の装甲に当たり、吸いついた。
弾丸が装甲内部に浸透していき。
爆発。
誘暴したエネルギーが飛び散り、爆発四散した。
表面だけが硬く、内部は柔らかかったようだ。
「ふぅ~焦ったぜ」
「心臓に悪いからやめてほしいものだわ。無人機でよかったわ」
さっきの機体。「メァッサー・パンツァー」は大型のAI搭載兵器だ。
さまざまな社がいるが、中でも厄介な部類の機体だ。
戦闘に決着がついた時、ミクリは刺さったままだったジェノサイド・キャリヴァーを取りに行った。
その時にミクリは大きな影を見た。
「なんだ?またさっきのみたいなのか?」
アイビーに聞くと。
「あンりゃ?こんナとこロにオデマシかイ?」
不思議そうな声で答えられた。
まだ入って日が浅いミクリには知らない機体、いや「船」だった。
「なんなんだ?」
聞き戻すとアイビーがデータを出して言った。
「国連の戦艦。『オルゲンレ―テ』だヨ。俺たチの家サ」
白で統一された救急車のような船は徐々にミクリ達の方に降下していった。