十七話 「鋼の行進」
「第二バーニアに損傷軽微」
「散謹弾。八番まで全部出せ!目標は任せる!」
「了解!火器管制に命令」
地面を這いつくばる砲台から攻撃を受けているオルゲンゲーテ。それに対してミサイルランチャーで迎撃を図る。
艦側面に内臓されてあるミサイル発射管が開き、右側面の発射口八門から筒状のミサイルが発射される。ミサイルは拡散式で、爆発すれば中から小型の爆弾を散布させるという物で『散謹弾』と呼ばれる。別物ではあるが『時雨弾』と言う物もある。
「目標まで3秒・・・2・・・1・・着弾」
一斉に爆発が生まれ、砂煙と同時に広範囲にばら撒かれた爆弾が衝撃と共に起爆。車両が吹っ飛び、レールも粉々になってしまった。
これで砲台の破壊は完了した。だがこちらでも予想してあるが、この砲台レーンが先にいくつも待ち構えていることであろう。
「状況はいいとは言えんな」
「このままですと艦隊戦での決着は見込めませんね。対艦兵装をいくつも用意してきているようですから」
「となると地上での白兵戦か・・・」
ヨーロッパ側から迂回してきている潜水艦隊はまだ距離がある。艦隊決戦では殲滅することおろか進軍することもままならない。
そのころミクリ達のいる地上は
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「レイ。見えるか?」
「ええ、よく見えるわ。ただここからの狙撃だと寝るより光学迷彩のほうがよさそうね」
レイは狙撃ポイントを見つけ、そこで敵機を狙撃する支度をしていた。
艦隊とはかなり離れており、通信も行われていないため、母艦が今どんな状況に置かれているのかを知らない。
「よし。この先5kmに建築物が見えるわ。何かあるかもしれないから気を付けて」
「わかった。だそうだお前達」
「おうよ。何があっても何とかなるだろ」
「了解しました」
透明な布を全身にまとったリッツショウダーは、覆った部分が見えなくなった。
実際には見えなくなったのではなく、光の屈折で周りの景色と同化しただけである。
保護色状態で移動する理由は、ホバー移動状態でも撃てるように、すぐに狙撃体制になれるようにするためである。
その時ジャミングを縫ってかろうじて通信がつながった。
「こ・・ら・・・と・・わん・・・」
「なんだ!?チッ電波が」
どの回線に換えても反応がある。どうやら全回線で飛ばしてきてるようだ。
周波数を上げてみる。
「こちらオクト1!応答せよ!!」
「オルゴ1。ヘクト1何があった」
「ああやっとつながった」
かなり焦っているようで、ノイズも酷い。
「何があった、説明しろ」
「実はこっちの艦隊が砲台の攻撃を受けているんだが、それ以上にまずい物が出てきた」
「まずい物?」
砲台という存在を知らないフェルガー達だが、それよりもその先の話が気になる。
「ああ、敵のマシンが出てきたんだが、これが桁違いの強さを誇っているんだ。すまないが何機かこちらによこせないだろうか?すでに多数の新型がやられてるんだ」
「新型?そんな話あったか?」
「ああ、少ないが配備されてたんだ。まだ数機残ってるが、もうそんなんじゃ相手にならない」
新型を凌駕する機体ということは、エース機。もしくはエース専用の特型機・特務機ということになる。
「分かった、こちらから三機回そう。それで持ってくれ」
「ありがとう。助かるよ」
三機回すと言ったはいいが、誰を回すのだろうか。
「じゃあ俺を回してくれ」
楽しそうな声が聞こえた。瞬間目の前を黒い影が覆いかぶさった。
そして見えていなかった敵機を串刺しにして立ち上った。
「死神なんて野蛮なことを・・・・」
敵を放り投げて、背中のウィングからレーザーを集中して照射した。
熱に耐えられずに溶けながら爆発四散した。
「やってみたかったんだよおい!」
「お前なぁ」
死神がニヤリとほほ笑み、イナクト機と共に北西へと飛んで行った。