十五話 「ザ・ビギニングトリガー」
出港してから時間が流れ、他の艦艇も配置についた。
それに伴って問題も発生していた。それは戦力の差が激しいということであった。配置についている艦艇にも大小あることと、マシンの有無だ。
マシンは物によるが使いにくい物もある。さらに大きさも関わるため、連携が出来ない。完全にバラバラである。
「作戦内容を見返してみてもこれは無謀だろぉ。上部の野郎が考えそうなことだなぁ」
誰かと同じことを言っているガウェイン。彼らの隊も随時発進するために機内で待機している。
耳に付けていたイヤホンから声が聞こえる。
「作戦開始間地点まで間もなくです。開始と同時にE-6地点に降下。進行を開始します」
「りょーかい」
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「作戦時間合わせ。3・・2・・1・・作戦開始!」
ブリッジの時計がリセットされて再び動き始めた。それと同時に周辺の艦艇からマシンが降下を始めた。
同じようにこちらも下ろすようにハッチを開けた。
「マッセ―ラ隊は第二カーゴから、ミューラ隊は第一カーゴから出撃してください」
「わかりました」
「オーケー。行けるわ」
ミクリとレイが返事をし、開いたカーゴから外へ降下する。
左右のハッチから複数機体が降りていき、岩肌の目立つ荒野へと降りていく。砂漠ではなく、茂みも多いことから隠れやすい地帯になっている。高低も激しいため、マシンだけでなく、戦車なども活躍できる有利な戦場だ。
しかしそれは敵にも同じこと。廃墟と化した民家や街もあるため、機体を隠している可能性もある。油断しているとすぐに落とされ兼ねない場所だ。
「この地形・・・狙撃には持って来いの場所ね」
降下しながら地形を目視。射撃が得意なレイは自分の狙撃ポイントを探る。
同時に敵が狙撃に使いそうな場所も予測する。
機体が地面に足を着き、周りの木々に身を潜ませながら進行する。
周りの機体を見ると頭部に変な文字やデカールが見える。体にも変な塗装をしていたりと、傭兵というのは本来汚い言葉を使うようなイメージがある。
『今日はよろしく頼むぜ!』
通信でそう呼びかけてきた隣の機体『イナクト』は、ストライカーと呼ばれる部類の機体だ。装甲が十分あり、なおかつ素早い攻撃と豊富な武装で人気が高い機体だ。だが有能な物にはそれだけ代償がつく。それは突然の機能不良である。
「おう、ほどほどにしてくれよ」
『心配いらねえやい。こちとらどれだけ戦ってきたと思うか」
イナクトの信用性は薄く、保有しているものはそれを何とか裏返ししたいのだ。そのために使うものも多い。
「まあ、それほどには期待しておくよ」
『見せてやるぜ』
自信の満ちた声だ。だがイナクトの不点が後々厄介なことにならなければいいが。
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「敵部隊と開戦した模様」
「よし、我が艦も砲撃準備だ」
そう点呼するのはオルゲンゲーテと同艦隊のミリオン級浮遊巡洋艦『マダラ』だ。
38.9cm砲を四基搭載する中型艦である。AM搭載能力もあるため、近年造船の数が多い艦艇の一つだ。
他にも、同型艦のミリオン級が二隻、ザック級が四隻、バスク級が二隻、同部隊居る。
「オルゲンゲーテが先行していきます」
オルゲンゲーテを見てその大きさに圧倒されるマダラ艦長。オルゲンゲーテ以外の艦ではバスク級が最も大きいが、それでも五倍は差がある。
「さすがにこれの後ろをついて行ったらなあ。なんだか集ってるみたいだ」
戦力ではかなりのものだが、これでは周りの艦艇が要らないように思えてしまう。
警戒があまりなされていない時だった。
「ロンデル被弾!!」
「なにっ!?」
オルゲンゲーテの右側のザック級装甲巡洋艦『ロンデル』が敵の攻撃を受けたのだ。
ザック級は装甲が厚い艦のため、損傷は軽微で済んだ。だが索敵範囲が広いオルゲンゲーテからは何も報告がなかった。だとすると考えられることは―――――――
「範囲外からのアウトレンジ攻撃と思われます」
「一番厄介なのがここで来るとは・・・」
索敵範囲外、もしくは射程範囲外からのアウトレンジ砲撃。これほど有利な攻撃手段はおそらくないであろう。必ず先手を取れる攻撃は誰もが欲する。
「敵部隊を補足!数が異常です!!」
レーダーが真っ赤に染まっている。このことから考えられることは唯一つ。
「作戦が読まれたか、あるいは・・・」
「情報が漏れていた・・・!?」
「その可能性は否定できない」
作戦がどれだけ漏れているのかは分からない。が、この作戦が序盤から失敗の方向に向かい始めたのは確かだ。
だが今はそれでも足掻き続けなければならない。
「仕方ない。前部主砲撃よーい!!」
「主砲内エネルギー収縮率68.9%」
「目標が見え次第撃て」
連装主砲二基四門の砲身内にビームの赤い光が輝く。
そして索敵範囲内に新たな反応がエネルギーを持ったまま現れた。
「目標捕捉!射程まで残り150!!」
「敵エネルギー反応増大!!」
それを聞いて艦長が決断を下した。
「構わん!撃て!!」
「敵対収縮率臨界!!前部主砲フルファイア!!」
束となったビームが赤く輝き、発射された。
同時に敵長距離砲台の金黄しい煌きが轟いた。その光が、赤と黄金の間に干渉を生じさせた。
これがこの戦いの第一の引き金となった。