十四話 「オペレーション」
キャリーベース強襲から五日が経った。また襲ってくるかとひやひやしたが、あれから敵に音沙汰がない。
その間にかなりの戦力が集まった。
南米の小隊、太平洋艦隊、ベルリン艦隊の一部。さらにはアジアからの参戦もあった。
「集まった総戦力は敵を遥かに凌駕していると思われます。艦艇だけでも五十を超えます」
「数で押せるか。まったく、上層部が考えそうなことだな」
性能の良し悪しで決めるのではなく、数で攻めれば勝てるという、なんとも楽観的な考えだ。その考えが今までの敗北を意味していると自覚しないのだ。
「どちらにせよこの作戦は勝ったも同然ですよ」
「私はそうは思わんな」
頑なに否定するのは、キャリーベース司令官、ジョニ―エイモンド将軍だ。彼はこの作戦には賛同の意を表さなかったが、止む負えず作戦を承諾した。
「この作戦、何か裏があるような気がする」
「裏、ですか。私は何も感じませんが」
少しの沈黙の後、将軍が口を開いた。
「ステーツは整備出来ているか?」
「は?あ、はい。ユナイデット・ステーツの修復は二日前に完了しております」
「では、私が出る」
「将軍がですか!?司令が出るなんて、指揮はどうするんです!?」
「指揮ならステーツからでも出来るだろう。私はこの戦いに出たくなった。それだけだ」
「りょ、了解しました・・・」
不思議そうな顔をした部下が部屋から出た。
司令官である彼は、普段戦闘に参加しない。だが今回の作戦、彼に思うところがあるようだ。
服装を正して、士官帽を被った。
「さて、私も老いたな。こんな歳でも、まだあの頃を忘れられないなんて」
過去を思い出していたのだろうか、何かを呟いて部屋を後にした。
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「出港準備!」
オルゲンゲーテのエンジンが動いた。整備が完了し、万全の状態での出撃は久しぶりである。
「やっぱり違うねぇ。音も馬力も違うような気がするよぉ」
整備班の班長「ドリー・キャリミラン」。この艦でも女性は力強い人が多い。とくにドリーは、筋力もあり、男性陣に負けない精神を持っている。
「味方艦も続々と浮いてきてるねぇ。こりゃ大海戦だ」
「今回が大型だからな」
目標地点はアントモン。旧名はカナダ、エドモントン。
作戦内容は
北米基地奪還、及び北米社「シャイン・マスプロダクション」の破壊、撲滅作戦。マイルズシティ、グレートフォールズ、スポーカンからの進撃。その間にハドソン湾へ進入した潜水艦隊が上陸するといった流れだ。作戦コードは「プラヴァ―作戦」、つまり「千鳥作戦」だ。
「さて、作戦通りにうまくいくかな」
オルゲンゲーテが行うのは作戦の一部である別作戦、ミネアポリスから進軍する「オストリッチ作戦」、「駝鳥作戦」だ。
名前の通り。駝鳥は飛べない鳥、つまりAM主力の部隊である。AM以外にも戦車や自走砲などもいる。主導隊にもAMはもちろんいるが、量で押しているのが千鳥、質で戦闘を維持するのが駝鳥、と、上層部の作戦をエイモンド司令官がすこしいじったものだ。
「司令が出ると言っていたが・・・・」
「大丈夫ですよ。きっと」
ランがいつになく優しく話した。
その言葉に寒気と恐怖を感じた。すこし気が引けたオルガスだった。




