十話 「唸るアーノルド」
今回大分長いような気がする。
「ハッ!やってくれるな!」
強気ではいるが、奴のスペックは未知数だ。
さらにミサイルを複数撃ちこんでくる。距離を離したドゥラッペンフェルガーは、頭部機関砲「シュターレン」で迎撃する。
この距離で撃ってくるとは、敵は戦闘に慣れていないのだろうか。
リッツショウダーのライフルがさらに閃光を吐き出し、敵の装甲に弾かれる。
「チッ!なんて硬さ、これだからデカブツは!」
終始この戦闘は消耗戦だ、しかも敵の方が圧倒的に強い。急所に当てない限り倒すことはできないだろう。
カキュンッ
敵の装甲に弾丸が当たった。音からして軽機関銃のものではない、バズーカといった重火器の類でもない。
遠くの方から青い鉄の機体がジャンプしながら飛んできた。どうやらあの機体のものらしい。
「ミクリか!いいところに」
「遅くなりました」
脇に挟んで抱えているのは筒状の大砲だった。
「それはどこから?」
「こちらに向かう途中に落ちてました、弾もあったので」
整備班が置いていったのだろうか。しかしその兵器は「対物砲」であることには間違いない。
「援護します」
しかし返答は意外なものだった。
「いや俺たちが援護する、お前が行け」
「そうね、私たちじゃ歯が立たないのは分かったしミクリ君が行ってちょうだい」
すこし戸惑ったがすぐに整理し直して返事をした。
「はい!」
アクセルを踏み、対物砲を向けて突進する。
地面を蹴って滑空する、操縦桿を前に出してトリガーを引く。
「発射!」
一発、二発と敵に当たる、だがその効果は微々たるものだ。しかしパイロットへの負荷は少なくはない。
「クソッ!やっぱり効かない」
その時、弾かれた弾丸を見て思った。
それは分厚い装甲の繋ぎ目、関節の間なら装甲は薄いはず、と。
いくら分厚い装甲でも、それを動かすにはそれなりの柔軟性が必要だ。
「ガウェインさん!隙を突きます。援護してください!」
「分かった、援護する。レイ、分かったな」
「ええ、任せなさい」
笑みを浮かべてリッツショウダーの腰のグレネードを撃ち放った。
だがやはり装甲に阻まれて効果が無い。しかし煙幕にまぎれてフェルガーが右手のライフルを撃った。
黄色いレーザーが装甲を反射させる。同時にライフルの下部から鉄の針が飛び出した。
「パイルランサー」と呼ばれるそれは、敵に猛スピードで突っ込んでいった。
キィィイッ!、と音を立てて弾かれる。黄色い装甲に薄い傷がついた。
「虎の子があっさりと落ちちまってまあ」
さらにグレネードを当てて黒い煙が立ち込める。
「今よ!ミクリ君!」
「了解!!」
右腕があった辺りに弾丸を撃つ。煙が少し捲れ、その部分に弾丸を撃ち尽くす。
画面のポイントが点滅し、弾切れなのを報告する。
「弾切れ!クッ!」
舌打ちをしてアイビーに言い放つ。
「アイビー!!」
「あいヨッ、キャリヴァー展開!」
怒っていたアイビーはすでに居らず、普段のアイビーがそこに聞こえた。
弾切れの対物砲を投げ捨てて地面を蹴った。
展開されたキャリヴァーのグリップをつかんで振り下ろした。
ガキィィィッン!!
運悪く装甲に阻まれた。しかし得意の反転切りで切り裂こうとする。
「うぉぉぉぉおお!!」
レバーが外れるかと思うくらいに引き絞った。
キャリヴァーのスラスターが思い切り噴射し、キャリヴァーに吊られるように斬り込んだ。
「右腕もらったァァァァ!!」
他の部分とは比べ物にならないくらいにやわらかい関節が砕け、右腕が二つに分離した。
飛び散った破片と共に離脱、距離を取った。腕を取っただけとはいえ、大型機にはかなりのダメージだ。
「まずは一撃やった」
「さすがだミクリ、見直したぜ」
通信でほめられた。とっさに思いついた案とはいえ、ぶっつけでもうまくいった。
「ユイ、パターンβに変更」
「了解。セプターを要請」
通信機のレバーを下げて何かを発信し始めた。
特殊な電波を使っていたらしく、ミクリ達の通信機にもノイズが生じた。
「あれ・・・クリ・・・ど・・」
「なんだ?」
「ノイズダ、周波数が影響してるみたいだナ」
「敵は外部と更新してるのか!?」
するとノイズはすぐに消えた。
「さっきのはなんだったんだ」
「・・・ッ!、ねえ、エネミー反応がこっちに向かってきてるわ」
「チッ、やっぱりさっきのは!こうも堂々とやってくれちゃって!」
基地内部のレーダーも察知したらしく、ブザー音が鳴り響いている。
黄色いデカブツが体制を立て直し、右腕をすべてパージした。
「じゃあユイ、一度引きますよ」
「退却、セプター班に誘導」
機体が後ろに後退する。
「待てッ!」
ババババババッ!
連弾が飛んできた。
その機体は複数存在していた、マシンガンやバズーカを装備している機体がいた。
青い機体はこちらを向いて、デュアルセンサーを光らせた。