九話 「青鳥の轟音」
ミクリ達がジャマー機を探しているころ
北側、進入港で敵の出待ちをしていたガウェイン達。
「さあ、どっからでもかかってきやがれ!!」
「あんまり意気込むと早死にするわよ」
「縁起でもないこと言うなよ。こっちは現状解してやってんのに」
フェルガーは新型装備「フォトン・バンカー」を左腕に装備している。
それを見てレイは。
「紅茶がまずくなるでしょ」
「ちぇッ。気取っちゃって」
「聞こえてますからね!!」
マイクの近くで叫んだのか、スピーカから大音量でレイの声が聞こえてきた。
「殺す気か!!」
「あら無駄死に?よかったわね特進出来て」
どこまでも腹立たしい奴だ。そう思いながらモニターを見てると。
ゴゴンッ
何かの足音が聞こえた。
「おい今の!」
レイはイヤホンに手を当てて音を聞く。
「大型機ね、隊群で来ると思ったら。厄介な奴からお出ましよ」
「また大型機か、俺たち好かれてるんじゃね」
「それは不愉快ね。マタタビでもついているのかしら」
ゴゴゴンッ
「さあ、お出ましだ」
鉄の巨体が露になる。
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作業用のような巨大な機体が滑走している。足裏に付いたローラーで走っているようだ。
「ユイ。例のポイントに進入する」
「了解」
銀髪の女の子。その容姿に見覚えがある。それは湖の森でみた女の子だった。
フードをかぶった少女と男が乗っているのは大型のアフターマシン「シリウス」だ。
シャイン社によって生み出された大型のAFだ。
量産機であるカノープスは、シリウスの援助機と言ってもいいだろう。
ゴゴンッ
ローラーを収納し、直の重く太い足で鉄の地面を踏みしめる。
鉛と鉛がこすれあう音が響き、光が差す方に向かって歩く。そして―――――
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「さあ、お出ましだ」
露になった巨体は惜しくも人型をしていた。太すぎる足は鋼鉄の上に立ちはだかった。
「シュトレンティアー発射!!」
レイの機体、リッツショウダ―のライフルから淡い青色の光線が飛び出す。
「シュトレンティアー」と呼ばれるライフルは、エネルギー弾と実弾の両方を使える長銃だ。
「ユイ。攻撃を」
「了解」
この間までの目の色どりはもうそこにはなかった。
殺戮を主根とする傭兵の体と化していた。
「エネルギー反応!この距離で撃たれたら!!」
「やらせねえよ!!」
飛んできたビームにフォトンバンカーを向けて飛んでいく。
バンカーの先端からピンク色の粒子が出てきて機体を包み込んだ。
「クソ喰らえぇぇぇ!!」
突進していって突然、爆発した。
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ガウェイン達が向かった北側で爆発音が聞こえた。
同時にサイレンが鳴り響き、森の鳥たちが一斉に飛び立った。
「なんだ!!」
悪い予感がする。ガウェイン達にも。そして・・・
「いこうか。君が知りたい真実があそこにあるよ」
「ああ。行こう」
真実なんてどうでもいい。今しなくちゃいけないことはガウェイン達を助けることだった。
レバーを引いてアクセルを踏む。
スラスターが一斉に噴射し、光のように飛んでいく。
それは、飛んで行った青い鳥にも似ていた。