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アフターウォー  作者: IF太郎
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一話 「駆け抜ける剣」


 「楽しくなってキタねえ!」


 コンピューターから声が聞こえた。その声は古びた合成ボイスのようで、イマイチ聞き取りずらい。


 「なにが?こっちは整備で忙しいんだけど」


 機械・・・というよりマシンの整備をしている自分、「ミクリ・マッケンジー」。


 「いヤさ、こっチに向かってキてるヤツのことでサ」


 「ん?それって・・・」


 接近音がビービー鳴る。驚いてモニターを見てみると反応が複数も。


 「なんで言ってくれなかったんだよ!!」


 「言っテましたヨ~。鈍感すギるンじゃないノ~」


 うざい口調で話しているAIは、「アイビー・プロセッサー」

 ミクリの相棒にして、最高最悪の仲間である。


 「来てマすよ~!来てマす来てます来テますきってまース!!」


 「わあったよ!ちょっと黙れ!!」


 エンジンがかかったような音がして機械が起き上った。


 起き上った機体は人型をしていた。一部に丸びを帯びたグレー色の鉄の塊は左手を広げて握った。


 「よし、反応速度調整成功」


 「キタ――――!!」


 ブワっと砂が舞い上がり、ミクリの頭上を飛んでいく。

 その機体は灰色で、背中に大きな羽が生えていた。

 

 「早いよ!もうちょっと遅く来てよ!!」


 「敵さンは待ってくレないよ~ン」


 ずっしりとした機体が方向を変えてこちらに向かってくる。


 「行くよ!『アーノルド』!!」


 彼がそう呼んでいるのは、彼自身が乗っている機体「アーノルド」

 超馬力のスラスターと、大型の近接兵器「ジェノサイド・キャリヴァ―」を使う、小柄ながらありえないほどの力を持つ兵器だ。


 「また来たヨ!どうセまた斬るんダろ?」


 「良くわかってるんじゃないの。行くぞ!」


 足元のアクセルを踏み込んで突撃する。

 背部と脚部のスラスターが一斉に火を噴き滑空する。同時に左手を背中に持っていき、出っ張っているグリップをつかむ。

 

 カッターの様な見た目の大剣が刃をキラつかせた。見るところ、刃の後ろにもスラスターが付いている。


 「喰らええ!!」


 大剣を振り下ろす。同時に敵機体も腕に仕込んでいた短剣を抜いてきた。


 ギギィ、と音を立てて敵の腕が切り裂かれた。


 「もういっチョ!やれェ!!」


 スラスターを噴射させて体を一回転させた。そのまま遠心力に任せて斬り込む。

 ミスリル合金のフレームが裂かれて、不協和音のような音を響かせる。


 飛び散った金属片に昇りかけた太陽が当たり、アーノルドを暁色に染め上げる。


 「やっパりジェノサイド機構はミクリにハ宝の持ち腐れだネ、痛感したヨ」


 「お前それが言いたかっただけだろ」


 「キャハ!」と返事を聞いて再びアーノルドの整備に戻った。


-----------------------------------------]


 灰色の機体がスラスターを吹かして降りてきた。警戒していないことから味方機だろう。

 角ばった機体のハッチがスライドして、中から中年の男が出てきた。


 「よう!お疲れ」


 「それはこっちのセリフです。どうでした?」


 男の名前は「ガウェイン・バルトーク」

 特殊装甲が煌めいている機体の名前は「ドゥラッペン・フェルガー」。大型のウイングとブースターを兼ね備えた高機動機だ。


 「おう、残党は今レイがおっかけてるよ」


 「言い方が悪いわね、おこぼれの後処理なんて犬のすることだわ」


 自動操縦で降りてきた銀色の機体は「リッツ・ショウダー」。ロングライフルとダガーで戦う機体。こちらも高機動機のようだ。


 「犬って・・・僕ですか・・・」


 「ああ!ごめんね・・・そんなつもりはなかったんだけど」


 ミクリには優しいこの女性の名は「レイ・バルトリア」

 ガウェインにはめっぽう冷たい。そして、その戦い方も迅速で素早い撃破が、戦場を冷たい弾丸がほとばしらせる。

 このなかで一番有名な「傭兵」だ。


 ガウェインが何か気になったのか、ミクリに聞いた。


 「お前、ここで戦闘あったのか?」


 「はい、やっぱり分かっちゃいますか」


 さすが歴戦を駆け抜けてきた傭兵だけのことか。匂いを嗅いで分かったようだ。

 

 稼働機には特有のエネルギー波が生じる。その波は、使用している機器に応じて変化するため、中には肌で感じ取る者もいるという。

 ガウェインの場合は鼻が敏感なのだろう。


 「どんな機体だった?」


 「はい、灰色で、フェルガーみたいな大型のウイングが付いていました」


 するとアーノルドの機械から声が聞こえた。


 「なんナらデータ見せよっカ!」


 「おっ、助かるねぇ」


 機械に負けた自分が悲しい。

 アイビーがデータを見せるとガウェインが


 「やっぱり撃ち漏らしたやつか、カノープス系統だな」


 「カノープス」というのは、この世界のマシンや機神、ロボットなどの物を類称して「アフターマシン」と呼ぶ。

 その中で、一部の企業が兵器を開発して、傭兵などに売っているのだ。討伐、防衛、大規模戦争などは、国や政府ではなく、企業ごとのもつれ合いや、兵器の性能比べの為に行われることが多い。

 

 事の発端はSFの中だけであったはずの機械が世に出回り始め。企業が機械にかける税金と制限をなくすためにはじまった「ルヴィエル紛争」が原因だった。

 おかげで今はレーザー兵器がもたらした急速な温暖化で地球の約半分が砂漠化。荒野や市街地での戦闘から砂漠での戦闘へと移行した。


 「シャイン社製ですか。また裏で入手した機体ですかね。カスタムしてたみたいですし」


 本来傭兵はそれぞれの会社に専属し、その会社の機体を使うその場合ロゴマークや小隊番号が符ってあるが、この機体にはそれがなかった。

 ということはどこの社にも属さず、金儲けの為にAMを狩っている荒らし。傭兵達の中では「遊び人」と言われている。

 ミクリ達はどこの社にも属していないが、国家所属機構の一団「マッセ―ラ隊」の一員である。その仕事は、傭兵として活動し、隙があれば社と和平交渉。もしくは社を根絶やしにすることが主な役目であるが。同時にその存在が広まればさっきのように遊び人を使った暗殺が多くなる。


 「改造がヘタくそだネ。俺なラまずドでかい砲を積むネ」


 「相変わらずでかいのが好きだねぇ」


 「デかケりャ十分。それ以外ハパス」


 ごそごそと何かを準備していたレイが起き上り、呼びかける。


 「そろそろ行くよ。ここもなんにも無いみたいだし」


 「そうだな。次はどうする?」


 「一応ヴルックリンに行く予定だけど」


 ヴルックリン。昔は「ニューヨーク」とも呼ばれていたが、今は国連が確保した保護区のことだ。数少ないアジトの一つでもある。


 「ここから結構遠いぞ。食糧持つか?」


 機体制御のエネルギーは永久稼働装置「インフィニティドライヴ」で供給している。

 機体のエネルギーよりも人間のエネルギーの方が心配なのである。


 「今どこらへんだ?」

 

 「おk!俺に任せとケ!!」


 威勢よくアイビーが叫ぶとすぐに見つけ出した。


 「バーミンガムとアストラマンタの間かナ」


 旧名はアラバマ州とジョージア州。

 次に発声した時、ミクリ達の間に電撃が迸った。


 「それト。今こっチに大型機が向かっテるヨ!クスクスッ」


 「!?ッ」


 


 

 

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