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21層への挑戦 5

お待たせしております。


すみません。時間が間に合わず無理矢理投稿した結果、少し分量増えてます。ほんの僅かですが改稿もしています。再読が必要なほど変えてはいませんが、どうか再度見ていただけると幸いです。




 21層の敵の出現率の分布はデスハウンドは必ず出現するが、ブラッドイーグルが混じって出現するのは3回に1度程度の確率に過ぎない。しかし、始めの頃は確実に乱戦に持ち込まされ、一度は撤退を余儀なくされたほどだ。ギリギリまで追い込まれての敗走したわけではないが、忌まわしい敗北の記憶であることは間違いない。



だが、相手に主導権を渡したまま乱戦を繰り返す訳には行かない。このような危険な綱渡りを続けていけば近いうちに破綻するのは見えている。これから先を楽勝でガンガン進むために20層以降の戦い方を最適化する必要がある。



 戦闘ではブラッドイーグルを真っ先に倒すのは当然だが、そうなるとデスハウンドに危険を覚えるほど接近を許すことなる。もちろん同時に攻撃してはいるのだが、確実に鳥を仕留めるためにどうしても犬の方が撃ち漏らしが多くなる。これまでの階層では一発必中だったのだが、デスハウンドは接近する時に一直線ではなく僅かに位置を調整してくるのだ。相手の頭を狙って魔法を放っているので、鳥にばかり集中しすぎると犬の方が至近距離に迫ってきているのが現状だ。

 そういった敵には範囲魔法で倒してはいるのだが、上手く範囲外にさっと逃れる本能を持っている奴が一定数いるようで、やはり一筋縄ではいかない階層だった。



 この難敵を効率的に叩く方法を今実践中だ。あれこれ考えたが、結局は自分の手持ちを駆使して対応するのが一番信頼できた。人間、最後の最後に頼れるのは鍛え上げた力と経験だという結論に達した。スキルは一長一短が大きく、長時間の戦闘に不向きなものが多かったりする。

 能力を底上げする魔法もあるが、効果時間が切れた後の体の重さというか違和感がひどくて戦闘中では危なくて使えない。乱戦の中では戦いの呼吸を乱されるというのは致命的だった。

 これが連携の取れたパーティなら補助に入るなりなんなりで上手く対応できるのだろうが、一人ではそれは無理だ。

 相棒は側に居てくれるだけで十分なのだが、時には索敵もしてくれる。だが、戦いに参加するときは攻撃一辺倒なので、戦いの中の連携という点では不安が残る。その場合、リリィが攻撃担当をして俺が防御になり、稼ぐ効率が最悪になってしまう。

 それに高速で動く的に魔法で迎撃するのは至難の業だ。俺は<空間把握>や<迷宮補正>で上手くやっているが、同じスキルを使えるはずの相棒の命中率はいまひとつだ。これはスキルよりも”当て勘”の問題のようで、俺がそれに優れているだけの話のようだった。

 その俺でもデスハウンドとブラッドイーグルを同時に相手取ると撃ちもらす事が多いのだ。直線の迷宮でもそれなので、それほどに素早い相手なのだ。だから普通の魔法職は範囲魔法を多用して点ではなく面の攻撃を主としていることが多いのだという。威力は下がるが、必ず攻撃を当てる事を重視しているのだ。範囲魔法を受けて弱った敵なら前衛で簡単に対応できるというわけだ。



 俺はブラッドイーグルを気付かれる事なく殲滅したが、頭上で魔法を使われて気がつかないほど鈍感な生物ではないデスハウンドは即座に俺を発見し、襲いかかってきた。その数32匹。

 


 俺は襲い来るデスハウンドたちに向かって、こちらからも距離を詰めた。最初はこの時点で範囲魔法を撃っていたが、自分の魔法で敵を見失いかねない事に気付いてからは止めている。<マップ>で敵の生死は確認できるが、密着しすぎると<マップ>上の点が重なりすぎてしまって逆に確認しにくいのだ。

 <マップ>は縮尺できるものの、戦闘中に一瞬だけ見たい時には非常に不便だ。そもそも戦闘で使うスキルではないので仕方ないけれど。


 やはり目視で塵に帰るのを確認する方が確実なので、敵の一匹一匹の頭に魔法を置いてくるように配置するのがコツだな。全速力で突っ込んで来るから自分から魔法に当たりに来ているようなものだ。


 あえてこちらから接近するやり方は最初はどうかと思ったが、やってみるとかなり効率的な戦法だった。というのも、デスハウンドは後先考えなく突っ込んでくるようでいて、猟犬の本能なのか対象に飛び掛る順番と位置をちゃんと調整している。10匹以上で攻め込んできても、実際に攻撃に移る時にはせいぜい4匹、最大でも8方向からの攻撃しか出来ないのだ。それ以上の数で襲っても他の犬たちはそこいらで出番を待っている形になる。

 なので俺が突入しても一人分くらいの隙間くらいは開いているのだ。


 たぶん襲い来る途中に隊列を整えているのだろう。だから最初に撃った俺の魔法が当たらないのだと思う。魔法を曲げて当てる様にも出来るのだが、発見して即座に撃たねばならないのでそこまでの芸当は時間的に難しい。どのように曲げて当てるかをちゃんと考えなくてはならないのだ。


 隊列を整えた敵、その隙間をすり抜けるように交差すると、デスハウンドたちは全て倒されているという寸法だった。


 名付けて突撃戦法(何故かリリィから冷たい視線を浴びた)を繰り出しながら先に進むも、21層はその難易度と全ての宝箱を検める必要があるので非常に時間がかかる。その分敵との遭遇が多いので収入的には1000枚を越える程度にはなっているが、この額なら11~13層でも同じ時間で稼げるので、割に合わない。

 ドロップアイテムはデスハウンドが牙を落とす。これが金貨5枚しかならず、13層のスケルトン軍団の方が儲かるという悲しい事実だった。

 レアアイテムは死の毒牙と呼ばれる猛毒を持つ黒い牙だが、これが金貨15枚の価値だ。なんでも猛毒過ぎて他の毒を殺すらしく、解毒薬として用いるようだ。死の毒牙自体は市販されている解毒薬で十分に対処できるらしく、何の毒かわからないものを盛られた時、最後の手段としてこの牙の毒で『洗い流す』という強引な方法をとるらしい。牙一本で5回分は処方できるようで、高級なライフポーションや高価な薬を買い求めるよりも、結果的には安上がりでいざという時の備蓄として人気ということだ。かなり危険なはずだが、それでも教会の神官や治癒師ギルドにかかるよりかは金銭的に楽みたいで、あいつらどんだけボッているんだと憤慨した。



 ブラッドイーグルはさすがに深層に生息するモンスターらしく、アイテムも非常に高額だった。ブラッドイーグルがもう少し出現すれば収益的にもだいぶ改善するのだが、世の中上手く行かないものだ。

 通常アイテムは黒鳥の喉笛と呼ばれる物だった。喉笛といっても骨ではなく、小さな白い箱状のものだ。セラ先生に言わせると魔導具の原型というべきものらしく、箱に向かって声をかけると別の方式に変換されて出力されるとかなんとか……。

 そのような説明を受けた後、有無を言わせず3つほどその場で買われた。価値は金貨10枚もするので、もう少しこの敵が出てくれればと願わずにはいられない。

 レアドロップは黒鳥の濡羽という思わずため息をつきたくなるほどの美しい飾り羽だった。羽ペンにも使えそうな大きさで、男で服飾には疎い俺でさえ思わず見入ってしまうほどの蠱惑的な魅力のある羽根が20本ほどで一揃いになっている。

 試しにソフィアに渡してみて、彼女がそれを身につけて夜会に出たようなのだが、反響が物凄かったと聞いている。護衛(エスコート)を頼んだバーニィは、女性の視線は全てソフィアの黒い羽根に釘付けだったという。彼女のランヌ王国での人脈作りに使えそうなので、そのままくれてやった。価値は一揃いで金貨20枚もするが、バーニィは価値を聞いてもあれほどの人気なら頷けると言っていた。なので、バーニィにも一羽根くれてやった。渡す相手は……言うまでもないだろう。



 さらにブラッドイーグルは価値金貨15枚の4等級の魔石を落とすのも大きい。デスハウンドが5等級なのと比べるとあの犬コロのひどさが本当に際立つ。モンスターの出現率が1対9なので21層で倒した累計は圧倒的にデスハウンドのほうが上だが、収入の累計はほぼ均等なのではないだろうか。


 そんな苦行に近い21層の探索だが、帰還石を探すのが目的なので宝箱を良く開ける。宝探しをしていた17層とはやはり入手するアイテムの価値が段違いだ。宝珠としても使用可能な拳大の宝石が入っていることもあるし、なにしろ宝箱自体の装飾が明らかに豪華になっている。

 宝箱に罠も仕掛けてあるので油断は禁物だが、宝箱を開けるこの瞬間が迷宮探索の醍醐味だ。特に敵が面倒くさくて得られる報酬が少ないとそれが顕著だ。

 

楽しんで頂ければ幸いです。


相棒のリリィは、迷宮探索というより主人公にくっついて来ているだけ。という扱いです。

主人公は本心から側に居てくれれば全然OKだと思っていますから、始めから戦力としてカウントしていません。手伝ってくれれば嬉しいけど、何もしなくても気にしません。

主人公としては、自分の事情に相棒を巻き込んでいる認識です。

リリィとしては良くこんな借金払ってるよホント、と内心呆れていますが口にはしません。


そこのあたりは次の話の鍵、というか全体の鍵ですので、そこで詳しくやれると思います。具体的には4日後になるかと。(後書きでネタバレしていくスタイル)

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