結果報告 3
お待たせしております。
ミスリルを騒ぎながら突っついている姉弟子を眺めていたが、セラ先生の視線は鋭さを増している。俺がまだ用件の全てを話していないことに気付いているようだ。
正直、アレにくらべればミスリルの存在も霞んでしまうからな。
「さて、ユウよ。お主の顔にはまだ隠し玉があると言っておるな。ここまできたのじゃ、出してみい」
「ご明察です。正直、ミスリルは貴重でも通常ドロップなのでこれから数が出てくるでしょう。問題は、奴のレアドロップ品なんです。どえらいものが出まして、先生に使い方などを御指南頂こうかと」
俺がアイテムボックスから取り出した転移環を震える手で鑑定したセラ先生の口から、聞き慣れぬ言葉が漏れた。
「やはり、あの迷宮はロストエデンの遺構なのかもしれんのぅ……」
「お師匠樣、その輪は一体? 強い魔導具であることは解るのですが」
姉弟子の質問に答えるセラ先生の声には隠しきれぬ緊張があった。
「これは、転移環という、個人で転移を行えるようにした失われた技術の結晶じゃ」
「転移を!? それではお師匠様と同じ力を?」
「ほう、転移か。なるほど、だから我が君は私の意見も聞きたいという話になったのだな。たしかに転移について私ほど経験した女はおるまい」
あの銀髪の魔族野郎が転移を使っていたからといってレイアに何ができるというものでもないが、少なくとも俺よりは実地で知識を持っているだろうし、転移を使いこなすセラ先生は言うまでもない。意見の出所は多いほうがいい。
「だが、これは入り口と出口で二個必要なのだろう?一つだけでは何も為さないのでは……ああ、もう一つあるとはさすが我が君だ」
レイアの言葉には最後に呆れが混じっていたのを俺は見逃さない。何故呆れる必要があるのか、じっくりと話し合う必要がありそうだ。
「まだ何も試していないので、先生がもしこの輪をご存知だったら教えてもらおうと思ってやってきたのですが」
セラ先生は転移環を随分と長い間手にとって眺めていたが、おもむろに立ち上がるとついて来い、とだけ呟いて店の奥に引っ込んだ。
俺達は訝しげな顔をしながら従うと、そこには淡い光を放つ魔方陣を描いて魔法を詠唱中の先生が居た。すぐ隣に転移環が置いてあるが、間もなく転移の魔法が完成しそうだ。慌てて飛び込むと、僅かな浮遊感の後、そこは何処かの屋内のように見える場所に転移していた。俺以外のメンバーは置き去りにしたようだ。
「ここは……なるほど、王都ですね?」
「ふむ、やはり現在地がわかるスキルを持っているのじゃな。ここは儂の隠れ家の一つじゃ、ここで転移環を使ってみよ。この転移環は持ち運びができる個人用となっておるようじゃから、後で場所は任意で変えたらええ」
言われたとおりに、転移環を床の上に置いてみた。セラ先生は何も言わないから、転移門を起動するのと同じように、適当に魔力を転移環に送ってみると突然、先ほどまでいた先生の店に到着している。
今の自分の足元には先程先生が置いていた二つ目の転移環があるから、転移そのものは無事に成功したようだ。
「ちょっと、ユウ。いきなり消えないでよ、心配するじゃない! で、王都へ行っていたの?」
「ああ、セラ先生の王都の秘密の場所らしい。そこから飛べたって事は成功したんだろう。転移門みたいに回数制限あるかもしれないからもう一回やってみるわ」
「私も行く!」
不測の事態が起こったときに備えて相棒にはここにいて欲しかったのだが、彼女の意思は固く、付いてくるといって聞かなかった。姉弟子とレイアに転移環の様子を見るように頼むと、もう一度起動させる。
その後、何回か試しても異常はなかった。もし不具合が出たときに備えてセラ先生が王都に居てくれたのだと思うが、そういうことは先に言ってほしいものだ。
あれやこれやと転移環を色々触ってみて解った事がある。人や物を瞬時に転移させるというとんでもない性能のせいか、この転移環はなかなか制限が多い……というよりも安全弁が大量に用意されているというべきだろうか。
まず、移動に必要な魔力はかなりのものだ。<鑑定>で前後を調べたが、MP換算にして約40ほど持っていくようだ。他の皆も俺に起動方法を教えられて跳んでみたのだが、俺は全く問題ないが姉弟子は結構ギリギリだったようだ。俺は姉弟子を鑑定してないので、能力はわからない。<鑑定>持ちでもある先生の弟子を鑑定するのは確実に気付かれるので無理だし、やはり他人の秘密を無遠慮に覗く<鑑定>は使い所を弁える必要がある。
姉弟子のステータスはわからないが、MPの問題はレベル上昇による解決が見込めるのであまり問題ではない。必要なら俺が護衛して11層で戦い続ければいい話だ。レベルなんざ数時間で10は上がるだろう。
次に安全弁だが、かなり細かく設定されている。たとえば輪の上に何か物が乗っていたら転移そのものが発動しない。より正確には輪の直線上に遮る物があれば起動しないと見ていい。色々検証したが、輪から服がはみ出しただけで全く動かなかったからだ。
だが、逆に考えると、腕を出した状態で転移できたら、その部分が輪切りになっていてもおかしくないという事なので、ちゃんと防衛機能が働いていると見ていいのだろう。
他にも僅かでも地面に接地していない場所があると起動しなかったり、当然だが片方に人でも荷物でもあれば起動はしない。完全な一方通行だ。
転移環自体はかなり狭い。個人用というだけあって、俺が一人なら問題ないが同行者が居たら抱き合うでもしないと範囲からはみ出してしまう。だが、利点もあった。一度の起動による消費魔力は固定のようで、二人で飛べば消費は半分で済んだ。それに特に使用回数の制限もないようで、さすがにボスのレアドロップという所だった。
セラ先生の店に戻った俺達だったが、その話題は専ら転移環をどこに置くかという点だった。あの便利な魔道具を売りに出す愚か者は居ない。自分達で有効活用するのは当然の流れだった。
転移環を置く場所も知人が多い王都にすることに異論はないが、どこに設置するべきかで悩んでいた。
さすがにセラ先生の隠れ家に置いてくれとは言えない。まず間違いなくソフィア達やバーニィ、クロイス卿なども使用すると考えられる。レイアもリノアに会いに行く時に使うだろう。リノアもこの転移環の存在にいずれ気づきそうなので、そうなった場合に備えて設置場所は秘密が守られる場所が良い。
だから適当な空き部屋を借りるという選択肢は取りづらかった。逆に誰もそんな場所に高価な魔導具があると考えないだろうとも思われるが、この転移環はおそらく埃が積もっても起動できなくなる恐れがあるので、定期的にその場所の掃除や事によっては補修まで必要だと思われる。
となると適度に人気がなく、秘密が守られ、かつ口が堅く、自分達に好意的な人間が居る場所というような無茶な場所が必要になる。
といっても、心当たりはあったりするのだが。
残りの借金額 金貨 14992201枚
ユウキ ゲンイチロウ LV253
デミ・ヒューマン 男 年齢 75
職業 <村人LV301〉
HP 3465/3465
MP 3025/3025
STR 671
AGI 669
MGI 685
DEF 601
DEX 598
LUK 391
STM(隠しパラ)810
SKILL POINT 1030/1040 累計敵討伐数 11044
楽しんで頂ければ幸いです。




