転移門とボス戦 2
お待たせしております。
雷魔法の所ですが、私の至らなさでお叱りをいただきました。文章そのものは削除して似たような表現に変わっております。不要と思われる場所の削除ですので再読の必要はないと思います。
このようなことが二度とないように気をつけます。
ダンジョンには節目のフロアごとにボスがいるダンジョンは多い。多い所では一層に一匹のボスしか敵の出ない単層型と呼ばれるダンジョンがあるし、このウィスカのダンジョンは10層ごとにボスが出現するようになっている。
ボスは一回倒すと二度と出現しないダンジョンもあれば、ここのように一日経過すると復活するものや、先程出た単層型のダンジョンはボスフロアに入るたびに復活するような場所もあるようだ。ボスしか出ない単層型ダンジョンで再出現が一日一回だったら実入りが悪くて他の冒険者が寄り付かないからフロアごとに復活するのも解らないでもない。
ダンジョンボスがどのように再出現するのかは未だに良く解っていないが、こちらが中に入ったと同時に動き出すことが解っている。俺はその習性を逆に利用して片手だけ突っ込んで魔法攻撃する方法で簡単に倒せたが、普通の魔法使いでは不可能だと思う。
普通、魔法には有効射程距離が存在する。特に単体に使う高威力の魔法というものは遠距離になればなるほど威力が落ちるとされている。属性によって適正距離はまちまちだが、火属性と風属性はかなりの射程距離を誇るが、実体を伴う水属性と土属性は特に短くて30メトルほどが一番効率的に威力を保てるとされている。
俺が使用した雷魔法はそういった括りとは一線を画している。なにしろ攻撃が早すぎて魔法を撃てば敵はその瞬間にもう塵に返り始めているような有様だ。その分、使用魔力は他の属性に比べて倍近くあるし、魔法自体もかなり癖がある。俺以外の使用者であるアンナサリナの双子メイドは護身用の魔法として割り切って使用しているから、非常に強力だがほぼゼロ距離で使用している。
解りやすく魔法として使ってしまうとその分対策も取られてしまうから、必殺の隠し技として活用していくそうだ。
魔法学に詳しい者ならば、物理法則と魔力による世界の変容(より正確には侵食のようだ)の割合で、術者から離れれば離れるほど魔法の威力が低下する事は理論的に説明ができるというが、一般には経験則でそういうものだと思われている。
俺のように威力と射程を延ばすには魔法自体を高速回転させて打ち出す速度も加味しているのだが、セラ先生に少しだけ聞いたところによると通常の魔法使いはそういった事を一切考えず、魔法詠唱の正確さと魔力の強弱だけを重視しているという。創意工夫が足りない気もするが人は人、俺は俺だ。それになにより、もし俺と同じ方法が可能ならばもっと広まっていてもおかしくない。特に毎日ボスと戦っている単層型のダンジョンを攻略中の目端の効く者なら、これから戦う敵が無防備状態で待っているのだ。先制攻撃を仕掛けない理由はないだろう。
また、俺は魔法の威力を重視する時は使用する魔力を多めに投入しているが、一般の魔法使いはそれもしないようだ。決まった詠唱と動作をして、決まった現象を起こして想定通りの威力を出すことを目標としているみたいだ。それ自体は基本に忠実で悪い事ではないが、面白みに欠ける話である。ただ、魔法学院などではそういった型に嵌った教育を施すようなので、俺のようにほぼ我流で魔法を実地で学んできた人間としては首を傾げることも多い。
範囲魔法はダンジョン攻略には必須と言えるほど便利だが、大きい消費魔力の割にボスに放つにはイマイチな威力、味方への誤爆の可能性もあるし仲間の攻撃機会も奪うのでボス戦で使われることはありえないと聞いている。
であるので、大抵のボス戦は十分な準備を整えた上でお互いに対峙した状況で始まることが多い。
俺もせっかくなのでそれに倣い、わざわざ回り込んでボスに相対した。俺にとってはボス戦の仕切り直しの意味合いが強いので、なるべく初めて戦うような状況を作っている。相棒は普段は効率を最重視する俺の無駄な行動を呆れながら見ているが、こういうのは建前が大事なのだ。
このままでは20層ボスは俺の中で、扉の隙間から雷魔法を放って倒す敵という扱いになってしまうからな。
「やはり見た目は完全な人形なのか。さっき見た姿は間違いなかったんだな」
「いわゆるデッサン人形って奴だね。見ての通り、かなり精密みたいだよ。人間と同じ動きをすると思っていいんじゃないかな」
リリィの言うデッサンが何を意味するかはよく解らないが、関節までしっかりと曲げて伏せている白い人形は未だ動く気配を見せない。
だが、油断はしない。もう戦いは始まっているはずだし、先程手に入れたドロップアイテムから想像するにこいつは殺戮とか書いてあったから間違いなく戦闘用だろう。
さて、まずはいつも通り、この人形がどんな攻撃をするのか確認を……あれ、消え
「後ろ!!」
相棒の声がする直前に俺は真横に飛んでいた。同時に今まで俺のいた場所から白い光の線が一直線に伸びている。そのままあの場所に居たら俺は背後から貫かれていた事になる。
背後を振り返るも既に敵の姿はない。嫌な予感がして、俺はまたも横に跳ぶと間一髪で光の攻撃を回避できたようだ。そしてまた背後にはあの人形の姿は消えている。
「くそ、やはり転移使いか!」
<構造把握><空間把握>を活用して敵がどこにいるかを確認するが、居場所を掴んだと思えばまた転移しており、その転移の前にあの広い光で俺に向けて攻撃してまた転移、となかなかに戦いにくい敵だ。
ドロップアイテムの一つに転移系のアイテムがあったので最近縁があるな、とおもいつつ一応警戒をしていたのだが、こちらの方が数倍厄介だった。
「転移の前触れがわからない! 前兆が全然感じられないよ」
言葉を発する事も惜しい状況だ。なんとか動き回りながら<念話>で意思疎通をする。
<たぶんスキルの<転移>だと思う。あの魔族野郎やセラ先生の転移は魔法由来だったから発動前に魔力の動きがあったし、あの魔族は素人丸出しで表情が良く変わって先読みできたが、あの顔無しの人形じゃ先読むのは無理だな>
<それにあの白い魔法攻撃もえらい威力だよ。右!>
人形の癖に戦闘経験も豊富だ。跳んで回避した後の着地する瞬間を狙って例の光攻撃を放ってくる。何とか身を捻ってかわすが、俺の顔のすぐ横を白い光線が掠めた。何かが焼けたような匂いがするが……待てよ、俺に人形の攻撃が掠めた?
「<結界>が抜かれただと!」
事前準備として張っていた<結界>が容易く打ち抜かれた事に驚愕する。これまで多くの状況で<結界>を使ってきたが、一度たりとて不安を感じる事はなかった。あのグレンデルの攻撃をも易々と弾き返した<結界>がこうもあっさりと抜かれるとは思わなかった。
攻撃手段があの光線だから貫通力は高いかもしれないと思っていたが、こうも易々と抜かれると並みの魔法防御じゃ対応できないだろう。光線の太さはせいぜい指程度なのが救いだが、急所をやられればかなり危ない。さらに運が悪ければ頭を打ちぬかれて一巻の終わりだ……運が悪ければか、俺が一番危ないじゃないか!
「さすが20層ボスってところか。中々楽しめそうじゃないか」
久しく現れなかった強敵を前に、俺は体の奥底から沸き上がるものを感じつつも口元が獰猛な形に歪むのを抑えられなかった。
「お前の強さを喰って、俺はその上に行くぜ」
楽しんで頂ければ幸いです。
20層のボスは強いんです!(強調)
ほんの少し開いただけの扉から超威力の電撃が飛んでくるなんて
想像もしていなかったので仕方ないと思います!
全くこれだからチートは困りますね(憤慨)。
彼の強さはこれだけではありません、ボス君の強さはこれからです!
いつも閲覧、ブックマーク有難うございます。ストックは順調に目減りしてますが頑張ります。




