16層への道 1
お待たせしております。
非常に短いのには理由があります。あとがきをご覧ください。
翌朝目を覚ますと、レイアの姿はなかった。どうやら夜明け前に意識を取り戻し、自らのホテルに帰ったのだ。俺の寝台の上には書き置きが残されており、そこには謝罪の言葉が記されていた。このような隙を見せるような印象はなかったので逆に新鮮で面白く、別に怒ってはいないのだが。
昨夜、あの後セラ先生から聞いた話では、レイアはしばらく先生の店である八耀亭で働くようだ。もっとも店員としてではなく魔族ならではの仕事があるそうで、レイア本人も乗り気であるようなのでこちらも異論はない。
もっともセラ先生にしてみればアリアと仲良く話せる相手が増えたことに主に喜んでいるようだ。姉弟子もあまり社交的な性格ではないからきっと店からあまり出歩かないだろうし、同性の友人が増えたことを喜んでいるに違いない。互いにこの大陸では希少な種族であるから、助け合える部分も多いといいのだが。
さて、今日もダンジョンだ。さっさと稼いで王都にいた分の利息を払ってしまいたい。
朝風呂を喰って体調に変化がないことを確認し、とうに起き出しているハンク爺さんと挨拶する。未だ夢の中の相棒をひっつかみ、朝食をかきこんでそのままダンジョンへ直行だ。
今日は稼ぐ事よりも、ある検証を行うつもりなのだ。
実は昨日はレイアに付き合って時間をだいぶ使ってしまったが、それでも行程としてはかなり運の良い日だった。階段が比較的近くに出現し、午後2時近くに地下11層にたどり着いているのだ。そう考えると、今日も上手く行って昼前位に11層に着けば良い方なのだろう。
となると俺が1日でたどり着ける最下層はこのままだと13か14層ということになる。日帰りする方がおかしいと言われれはそれまでだが、やはり人間たるもの夜は地上で眠りたいのだ。何が悲しくて地下の穴蔵で一夜を明かさねばならないのか! と声を出して言いたいが、他の冒険者から見ると多分俺が少数派なのだろうな。
とにかく、1日で行けるだけ降りてみようかと思い立った。幸い、昨日はかなりの収穫を得られたので今日を検証に使ってもさほど問題はない。ただでさえ10層のサイクロプス打倒だけで金貨100枚は固いのだから、稼ぐのは程々に抑えて何処まで降りられるのか試してみようと思う。
正直に言えば、ダンジョンをひたすら下りるだけなら実は簡単である。なぜなら<隠密>を使えば敵に発見される事なく先に進む事ができるからだ。
<魔力操作>で階段を探すと階層内のモンスターを刺激する事になるが、それでもこちらの位置を把握しているわけではないので、<隠密>なら安全に行動できる。さらに王都で手に入れた丸石のような姿を消せる魔導具を使用すれば、視界内にいるモンスターさえ騙し得ることが可能になったのだ。
普段はドロップアイテム目当てのため、敵は発見し次第殲滅しているがやろうと思えばこういうことも出来るのだ。尤も、一番使っている時は他の冒険者グループをやり過ごすときだ。流石に階を下りれば下りるほど冒険者グループと遭遇する機会が増えた。昨日の11層にも2パーティが探索を行っていたし、下りるだけしておいた12層でも魔法を使った戦闘音が遠くで響いていた。ギルドで聞いた最深探索層が16層だいうことを考えると11層でも相当な実力のある冒険者たちが闘っている計算になる。
実際の所、あのゴブリン軍団はかなり美味しい敵だと思う。魔法職に重点をおいたバランスの良いパーティなら危なげなく対応できるはずだ。正直、暗闇の階層の方がよほど鬼畜難易度だと思う。上級パーティになればなるほど余裕のある戦いができるウィスカのダンジョンはまさに『初心者殺し』そのものであるといえる。
俺は<隠密>を使用しつつ足早に階層を進んで行く。例外は実入りの大きいレイスダストとリリィたっての希望である蜂蜜だけは進行上の敵のみ倒して進んでゆく。透明化の魔導具は常に魔力を消費し続けることによって効果を発揮するようだが、幸い俺の魔力回復量は異常を通り越して変なほどだから移動に支障はない。
今日は階段の位置の面では可もなく不可もなく、といった状況だがそれでも敵をできるだけ無視して進んだだけあって午前9時過ぎには10層のボスを討伐していた。
異例の速度だが、敵を無視しているので収入はボス以外は金貨にして10枚程度にすぎない。
今日の収穫は魔石と例の鉈と言う名の鉄塊だ。中々の引きに喜びながら更に降りる。11層は昨日十分楽しんだのでさっさと先に行く。12層も基本的な所は変わらないようだ。せいぜい罠の種類が増えたかなと思う程度の差はあるが、敵の構成もゴブリンからコボルトなっただけともいえる。もしかすると1層から5層までが同じような階層だったから11層から15層も似通った階層なのかもしれないな。
ちなみに敵はコボルトレンジャー、コボルトシューター、コボルトマジシャンの3種類で、敵の動きも同じだったが、強さがかなり上がっていた。ゴブリンウオーリアが盾を構えて後衛の攻撃を待っていたのに対し、こちらは果敢に攻め込んできた。弓兵もきちんと同士討ちにならない瞬間を狙って矢を放ってきたし、マジシャンの初手は見方の守備を挙げる補助魔法を選択する手堅さだ。
残念ながらこちらの魔法攻撃に耐え切れずいつも通り一発で壊滅に追い込めたが、前衛が攻め込んでくるので早めに攻撃に移らないと敵の散開を招いてしまう。どのパーティも魔法職を多く抱え、範囲攻撃を主としているだろうから不用意に散開させると打ち洩らす可能性が増えるだろう。
そんな危険もあるが、そのような失態を犯す力量の劣る連中ではそもそもここには来れないだろう。
戦利品は前衛がコボルトの蒼玉というちいさな宝石だ。驚くことに通常ドロップ品のようで一度に12個も手に入った。レアドロップはレンジャーの額当てという装備品だ。特殊効果付きの非常に珍しい防具で身に付けた者の敏捷性を2割も上げる効果をもつ金貨10枚の価値がある品物だ。蒼玉の方は金貨3枚だった。
シューターの方は一見何の変哲もない銀の矢だったので落胆したが、鑑定するとただの銀ではないらしい。法化銀という特殊な処理を施された代物で、特定の魔物に絶大な威力を発揮するようだ。その価値がたった30本で金貨5枚というだけで理解できる。消耗品であるはずの矢種とは思えない額だ。レアの方が合成弓で現在の技術では再現不可能という代物だ。金貨11枚の価値だった。
マジシャンはマナポーションと、マジックハットという帽子がドロップした。この付近の魔法系は揃ってマナポーションを落とすのかもしれないな。収穫で言えば物足りないがそう決まっているなら仕方ない。レアの帽子は装備者の魔法威力を1割上げるという優れものでこちらも金貨12枚だ。しかも驚くべきことに額当ての上から帽子を被ると二つの効果か同時に発動したのだ。魔法威力と敏捷の組み合わせは俺くらいしか意味を成さない気もするが、効果が重複することもあると知れたのは良かった。しかし、いかにも魔女が被っていそうな中折れ式のとんがり帽子を俺がかぶっている姿がリリィのツボに嵌ったらしく腹を抱えて笑っている。
いくらなんでもそこまで笑わなくてもいいと思う。
楽しんでいただけると幸いです。
今回は3000文字程度です。なろうにおいて毎日更新の標準文字数と勝手に判断しております。
世間様はせっかくの夏休みですし、ここは毎日更新でもカマしてみようかなと思った次第でございます。量が少なくても毎日更新されると嬉しいのは自分も同じなので理解しています。
文章量としては毎回一万文字をベースに考えておりましたので結果としては変わらないと思います。一週間で2話ペースで20000文字、3000文字で7日書いて21000文字なので。
ラストにステータスを乗っけるのですが、話のナンバリングの最後にしようと思っています。
とりあえずは今月一杯は夏休みとしてやってみようかなと。
サラリーマンに夏休みも盆休みもありませんが、毎日が”夏休み”になるのはさすがに怖いです。
普段と違い、明日からは予約投稿にするので載ってないことはないと思います。(不安)
最後に謝辞でございます。見てくださった方、ブックマークしてくださった方、評価を下さった方
本当に感謝しております。私のモチベーションが続くのは皆様のおかげです。本当に。
これからも頑張ります。




