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世界最強になった俺、史上最強の敵(借金)に戦いを挑む!~ジャブジャブ稼いで借金返済!~  作者: リキッド


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11層へ!

お待たせしております。



 さて、今日からダンジョン攻略を再開だ! と言っても本格的に探索をするのは明日からになるだろう。今日は適当に切り上げてセラ先生のところに顔を出さなければならないからな。昨夜はウィスカに到着したのが遅く、店に訪問するような時刻ではなかったので遠慮したのだ。

 だが、セラ先生はおそらく何らかの方法で俺の帰還を把握しているだろうから、挨拶に出向かない訳には行かない。



 王都への護衛依頼は様々な出会いがあり、行って良かったと心から思えるが、借金の負債は重くのしかかってきた。依頼の最中にもなんだかんだと収入を得る機会はあったものの、やはり利子だけで1日金貨300枚はどう考えても暴利すぎる。

 暗殺者たちの財産や悪魔たちという臨時収入はあったが全体としては大きくマイナスだ。まずは端数である2562枚分の金貨を稼がねばならない。自分で言っていて頭がおかしくなるような額である。端数で金貨4桁とか金額設定した奴、絶対に狂っていやがる。

 だが、今日から頑張って稼いで稼いで稼ぎまくってやるつもりである。俺の考えだとそろそろ何か”動き”があっていい頃ではないかと思っているしな。



「良い朝だな、我が君よ」


「そっちも早いな。もう少し寝ていて良かったんだがな」


 宿を出てダンジョンに向かう俺にレイアが声をかけてきた。俺は冒険者ギルドと交渉を行った後、いつもの”双翼の絆”亭に夜遅く戻ってハンク、ハンナ夫妻に帰還の挨拶をしたが、レイアをそのままというわけにもいかない。中身は凄腕の経験豊かな戦士で一国の騎士団さえ簡単に壊滅できそう(事実昔にやったことがあるそうだ)な女魔族だが、外見は男どもの視線を集めそうな美女である。

 街一番の宿として名高いホテル”紺碧の泉”を紹介し、そこに宿を取らせた。レイアは俺と共の宿がいいと主張したが、あそこは正直に言って若い女が泊まる宿ではない。

 現状では俺の他に宿泊客はおらず、問題ないとは思ったものの、夫妻にすべき彼女の説明も面倒だったので無理にでも泊まらせた。

 

 俺が先に”紺碧の泉”で宿泊費を一月分前払いしてしまえばレイアに否応はない。受付の女が俺をレイアの召使いか何かだと思っている節があったが、普通は逆の関係だとは思わないだろう。

 しかし、公爵邸で金貨を貰っておいてよかった。宿泊代で高価なアイテムを出すわけにも行かないから、現金の重要性を思い知らされた。それまでの資金はリノアへの依頼とレイアへの当座の金でほぼ出し尽くしてしまった。早急に現金を手にする必要があるが、それはギルドへアイテムを買い取りに出せばいい話だ。



 そして、レイアがこんな早朝に姿を見せるのには理由があった。


「本当に来るのか? レイアの実力なら心配はないだろうが、こっちもあまり構っていられないぞ」


「ふむ、露払い程度は任せて欲しい。これくらいでしか力になれぬからな。むしろ他の事もどんどん頼って欲しいくらいだ」 


 レイアは俺の従者になると言い出したものの、俺は何かを強いるつもりはなかった。あの銀髪魔族がなにかとレイアを束縛する性質の男だったようで、逆に何もしなくて言いといわれると困ってしまうようだ。

 昨日の帰りの道中でレイアが考え出したのが、ダンジョンでの俺の護衛だった。正直要らないのだが、口で言って理解するには難しい話だろうから、実際に同行して判断してもらう必要が合った、


 相変わらず俺の懐で夢の中の相棒を見ながら尋ねるが、彼女の意思は固いようだ。力量は全く問題ないだろうが、このダンジョンで重要なのは速度なのだ。こればかりはやってみせる他あるまい。



「お待ちしていました」


 ダンジョン前の衛兵の詰め所前に思わぬ人物が待ち構えていた。ギルド職員にしてAランクスカウトのユウナだ。


「こんな朝早くに会うとは思わなかったな。昨日の件は考えてくれたのか」


「その件について我々の見解を伝えますのでギルドに出頭してください。では、また後程」


言うだけ言ってユウナは去っていった。相変わらずの無表情だが、動きにキレが無い。もしかして寝てないのか? 夜通し話し合う必要があるほどの無茶を突きつけた訳でもないだろうに。とりあえずの契約は交わしたが、詳細はおいおいつめてゆく話になったものの、まさかこっちの要求を断るような展開になったのか? あの流れから? お互いに利益のある話だろうに。やはり確実に書面を交わすべきだったか。


「我が君に向かって出向けとはなんと生意気な。不遜な連中の思い上がりを叩き潰して来ようか?」


「止めろ、俺はそんなことをさせるために同行させた訳じゃない。来いと言うなら行ってやるさ」


「承知。我が君の仰せのままに」


「なあ、いい加減それ止めないか?貧乏人が貴族の真似事をさせてるみたいで痛々しいんだが」


「ふむ、生憎とこれしか作法を学んで来なかったのでな」


「普通にしろ、身内に対する言葉使いでかまわない、というかそうしろ。ただのガキが美女に傅かれるのはどう見てもおかしいんだよ。変な噂が立つだろうが」


「逸脱した力を持つ者はどのような立場でも嫌でも衆目を集めるとは思うが……我が君がそういうならば従おうではないか」


 やれやれ、これ以上ごねるようなら彼女との契約を見直す必要が出てくるところだった。ようやくダンジョン攻略を再開できるというのに余計な手間をかけさせないでほしい。それにいちいち美女に反応して喜ぶのもどうかと思う。この外見で言われ慣れていないとは思えないが。




 俺には不要なのだがレイアがどうしてもダンジョンに付いてくると言うので、俺の探索行に適した力を持っているか試す事にする。しかし、結果は惨憺たるもので一層の突破すら不可能の有様だった。


「ま、待ってくれ我が君。これは想定外…だ……」


「次が来るぞ、ゴブリン28匹。あと4秒で会敵だ」


 魔力は充分に残っているはずだが、完全に息が上がっている。これ以上は思わぬ不覚をとりかねないので俺が魔法で殲滅した。


「相手がいくら雑魚でもここは物量で押して来るんだ。その体でまだついて来るか?」


 レイアは悔しげに顔を顰めるが、経験を積んだ戦士らしく己の引き際を弁えている。


「ここは一旦引かせてもらう。私がここに挑むには些か準備が足りないようだ」


「解った。出口まで送る、参考にはならんだろうが俺のやり方を見ておくといい」



 レイアに諦めさせるためにかなり時間を使ってしまった。本来のレイアの実力ならば難なく突破できる程度の敵でしかでないが、ウィスカの最大の特徴である数の暴力に対応する技を持っていなかった。多分大規模攻撃魔法も使えると思うが、それをせずに律儀に敵集団を相手にしていたからな。数十回目で流石に息が切れた。ここは派手にやれば更に敵が寄ってくるからな、無限地獄みたいな状況になっていた。

 ほぼ一時間近く連続で延々とゴブリンを狩り続けていたため、流石に限界が来たのだった。


 最悪、俺の後ろを走ってついてくるだけでもいいのだが、それは彼女の矜持が許さないようだ。

 だが、あれほどの実力者だ、すぐにでも対応してくるだろう。疲れた足取りでダンジョンを後にするレイアを見たあと、俺は階下へ向かって走り出した。今日の目標は地下11階層だ、あまり時間はないから急ぐ必要はある。



「付いて来ない方がレイアのためだとは思うけど、あの性格じゃ無理だよねぇ」


 流石に戦闘音で目が覚めたリリィが呟くが、俺は取り合わなかった。かといって俺の邪魔をしてもらっても困る。別にダンジョン攻略のお供が欲しいわけでもない、レイアも故郷に帰るまでの自由時間を有意義に過ごせればいいのだ。のんびり冒険者稼業でもやればいいのではないか。昨日の内にユウナに依頼して冒険者登録を済ませてあることだしな。




さて、気を取り直して探索再開だ。既に地下への階段は見つけてあるのでそのまま突撃する。ゴブリンどもを蹴散らしてあっという間に階段を降り、すぐに第3層への階段を魔力で探し始めた。


 そこからの行程は慣れたもので特に問題はなかった。ソフィア達に置き土産として大量の蜂蜜を渡したリリィがひたすら蜂蜜ハチミツはちみつと俺の耳元で囁くので、キラービーが出る階層は念入りに敵を探して殲滅する羽目になった。結果として40個以上の蜂蜜を入手したがリリィはまだ不満顔だ。帰りもあると伝えなければまだあの階層にいた可能性は高い。

 あとは俺の友人であるレイス君を適当に狩ってアイテムを得た後、俺は更に階層を進んでゆく。暗闇が支配する6層からも、その前あたりから目を閉じて<空間把握>でダンジョン内の構造を把握する事によって目を慣らす事で対応する。前に使っていた<暗視>は意外な弱点が判明したのだ。使用中に強い光を受けると、瞬間的に視力を失うのである。王都にいたときに暗闇での隠密行動中、誰に放ったわけでもないライトの魔法が視界に入ってしばらく視力が戻らない事があった。どうやら<暗視>は僅かな光を数百倍に増幅して暗闇に対応する技能のようで、魔法の光を数百倍に増幅した事により視力を失ったようなのだ。

 自分の魔法の光で視力を失うようなヘマはしないが、ここには俺以外の冒険者もいる。そして彼らは間違いなく光源を持って移動しているから、彼らへの対策というわけだ。



 10層のボスであるサイクロプスも問題なく撃破した。毎日再出現するという情報は得ていたが、今日はまだ他の冒険者に討伐されなかったようだ。前回と全く同じ場所に立っていたので遠慮なく魔法を打ち込んだらそのまま頭が吹き飛んでアイテムをドロップした。討伐時間は……8秒くらいか?

 

 今日のドロップアイテムは魔石と暴虐の大鉈とか言う棍棒?だ。前回出た宝石は出なかったがこれだけで金貨130枚は確実なのだから、やはりボスは美味しい敵だ。しかも前回と同じ場所に出現していたな。実際は何度か検証が必要だが、もし再出現場所が固定なら毎回簡単に討伐できる事になる。ボスのみの10層が非常に美味しい階層になるかもしれない。そのような希望を抱きつつ、俺はついに11層に本格的に足を進める。



 前回、一度だけ覗いたときと同じく11層は暗闇から通常階層に戻っている。いつものように<魔力操作>で階段を探すと同時に、ここからは真剣に宝箱を探す事にする。ここまでは銅貨や銀貨が数枚だったり古ぼけた安い装備が出てきたりと正直探す方が時間の無駄なものばかりだった。だが、ここからは少しは良い物が入っていてもおかしくない。先行者がいるから先に取られている可能性も高いが、ダンジョン内は定期的に宝箱の中身の補充がされていると聞く。今日の分は未だ残っているかもしれない。


 魔力で宝箱を探しながら、やはり今までと難易度が変わっていることを理解する。これまで数えるほどしかなかった罠がかなり設置されているのだ。幸い、通路の全てを塞いでどうあっても罠が作動するような場所はないが、多人数のパーティでは危険度が跳ね上がるだろう。誰か一人でも発動させたらパーティ全体に被害が及びかねないからな。

 俺は一人なのでまだ走り抜ける事ができそうなので安心する。罠解除は面倒なのでいっそのこと起動させてもいいのだが、その結果大きな音でも出したら間違いなく敵が殺到してくるだろうからここは回避する事にしよう。


 ほどなく地下に下りる階段を見つけ、その他にも様々な情報を手に入れる。中身が入っている宝箱の最短の道をどう行くかと思案するうちに、数多くの敵反応が現れる。距離的にもうすぐ会敵するはずだ。とりあえず曲がり角に身を寄せて、相手の情報を得る事にする。


「あれは……!!」


「今更またゴブリン? でも前よりかは強そうな感じだね。一番前の奴はちゃんとした鎧着てるし」


「むしろ問題はその後ろの奴らだな」


 視線の先には、鎧兜に盾まで装備したゴブリンの集団がいる。油断無く周囲を警戒しつつ進む姿は訓練された兵士のそれだ。さらに俺が指で指し示したその先には弓、それもかなりの強弓を手にしたゴブリンがいた。更にその中心にはとんがり帽子を被った杖を持ったゴブリンまでいた。どう見ても弓兵と魔法使いにしか見えない。急いで<鑑定>する。


 ゴブリンウオーリア ゴブリン種

 かのゴブリン帝国に最盛期における中級主力兵種とされる。モデルはその胸甲の文様からイフルスの戦いで敵戦列を打ち砕いたハリンジャー将軍麾下の第一重突撃猟兵団から取られた。(”突撃”はその功により時の皇帝ゴブレシアス4世から下賜された)鋼鉄の鎧に身を包んだ彼らはまさに鉄壁となって敵の進撃を受け止め、跳ね返す。

 HP 216/216 MP 0/0 経験値 153

 ドロップアイテム ゴブリンメダル ウオーリアナイフ


 は? いや、ええ?? 前々から疑問だが<鑑定>の説明文は誰が書いているんだ? 気になる単語が多すぎるぞ。かろうじてその相手がどういう存在なのかは読み取れはするが、どうでもいい解説が多すぎる。なんだよゴブリン帝国って。何とか将軍とか聞いた事もないわ! 突込みどころ満載過ぎるぞ。

 

 幸い未だこちらに気付いてはいない。とにかく残りの二種も<鑑定>だ。情報はどんなときでも必要だ。


 ゴブリンアーチャー ゴブリン種

 ロングボウを備えた遠距離専門兵種。ロングボウの形状からサルカークの戦いで活躍したウォレス古参親衛隊(ロイヤル・ガーズ)ものか。また使用する鏃の特徴的な形がニシンの戦いで名を馳せたファルストフが配下のコボルト傭兵が用いた物という説もある。優れた射手は曲射で500メトル以上の距離を命中させた記録があり、これまで全盛だったクロスボウの優位性を揺るがした。

 HP 152/152 MP 0/0 経験値 184

 ドロップアイテム 鋼鉄の矢 イチイの弓 


 ゴブリンハイメイジ ゴブリン種

 ゴブリン種の中で魔力の扱いに特化した種。攻撃、補助、回復魔法を使いこなす難敵。

 HP 86/86 MP 75/75 経験値 207

 ドロップアイテム マナポーション 集魔の指輪 


 ……魔法使いの説明が他の奴等に比べて雑じゃないか? あまりに解説の熱量に差があるが、知りたい事は知れたので良しとするか。つまり、一番警戒すべきなのはあの魔法使いだという事だ。


 ここで俺の悪い癖が出てしまった。初見の相手は一応どんな攻撃をするのか知りたくなってしまったのだ。土魔法で大地から厚い土壁を作って底から相手の出方を窺う。


「そんなことしなくても先手必勝でいいじゃん」


「そう言うなって。もし危なくなったときにこいつらの情報が何もありませんじゃ大変だろう? 初めの一回だけだからさ」


「安全策で行くという割にはユウって自分から危ない事するよね」


 仕方ないなぁ、と相棒が<結界>を使ってくれ、万が一の事態も防いでくれる。敵集団も俺を認識したのか整然と隊列を直し始めた。一層のゴブリンが無意味に叫び声を上げて突っ込んで来たのとは対照的だが、その動きには一切の淀みが無い。

 相当に訓練された錬度の高い兵士の動きだ。まず一番多いウオーリアたちがその場に膝を付き、手甲や盾を用いて隙無く完全な壁を作り、その後ろのアーチャーは弓を引き絞る。最後尾のメイジは既に魔法詠唱を開始している。


 思わず感心の声を上げたくなるような連携の巧みさだった。前列が防御を固め、中列の弓兵が攻撃を仕掛けて時間を稼ぎ、後列の魔法使いが勝負の決め手となる一撃を放つ。

 11層がこの迷宮でどの程度の位置なのかわからないが、敵は少なくとも戦術を用いてくるようだ。けして派手さはないが、堅実な戦術を用いてくる敵集団か、これは中々手強いぞ。勿論、普通の相手ならばだが。


「へー、魔法使いも全員違う魔法使ってるね。攻撃と補助かぁ。さすが11層って感じ? 弓兵は……残念だけど」


 迷宮は横幅はそこそこ広い場所があっても高さはそれほどでもない。折角の長弓がただの直射になってしまっている。脅威である事は事実だが、こういう場所じゃ水平に打ち出せるクロスボウのほうがよほど脅威で、長弓である意味がなくなっている。天井が曲射を出来なくさせているので仕方ないのではあるが。

 それに引き換えメイジたちは多彩な魔法を繰り出してくる。5人いた内の3人が<火球>(ファイアボール)の魔法を、残りの二人が<盾>(シールド)<対魔>(レジスト)を使用している。どちらも下位魔法だが、戦いに際して初手から補助魔法を撃ってくるのは冒険者たちにとって実に嫌な相手だろう。何しろ冒険者にとってこの戦いは数多く経験する一回に過ぎない。


「んじゃ、<火球>(ファイアボール)


 相手の攻撃を一度受けたことだし、もう見るものはない。俺は隊列の中央上空に魔法を放つと、そこで炸裂させた。既に魔法防御を高める支援魔法が使われた後だが、その薄布の様な防御膜を易々と貫いて爆発が隊列全てを包み込んだ。隊列を組んで密集していた事が仇になって一発で仕留める事に成功した。

 相手の魔法使いの<火球>(ファイアボール)はまっすぐ飛ぶだけで終わる程度のものだが、俺の一撃は違う。任意の場所で爆裂させる範囲魔法として使っている。


 ソフィア達と王都のダンジョンに潜ったときに解ったのだが、どうも世間での<火球>(ファイアボール)と俺の物は全く違うようだ。セラ先生に教わったわけでもなく、スキルで取得できたものだから比較のしようがないが、俺は魔法一つに上級下級があるのではないかと思っている。確か俺は<火魔法LV5>だったはずで、3種類の火属性魔法を覚えている。皆これを(クラス)で分けていたが、多分レベルで覚えられる種類に過ぎないのではないかと思う。

 実際、俺が普段使う<火球>(ファイアボール)は球じゃなく矢の形に変えているし、その軌道や爆裂させる場所まで任意に指定できる。そうでなければダンジョンで撃ち漏らしたとき簡単に接近を許してしまうからと、訓練時に一生懸命練習したものだ。

 

 魔法の腕に覚えのあったメイドのサリナは俺の魔法に驚いていたが、時間のあるときに魔力の使い方を説明して実践させたら彼女も俺と似たような<火球>(ファイアボール)を放っているし、<雷魔法>だって習得している。どうも俺の魔法とこの世界の魔法の使い方が根本的に異なっている気がするが、俺は魔法のあり方に興味があるわけではない。重要なのは魔法をどのように使い、敵を倒すかだ。俺が気にするべき事はそれだけでいい。




「敵が強くなっても、まだまだユウとの力の差は縮まってないみたいね。しばらくは無双できそうで安心だよ」


「ああ、そうだな。さて、連中は何を落としたかな」


 余計なことを考えていた俺をリリィの声が現実に引き戻す。いつものようにアイテムを回収するが、それを確認する前に<マップ>に新手が現れた。やはりこの層も敵の数が多く、再出現も異様に早いようだ。確認のために轟音の出る魔法を使ったが、次からはいつものように<風魔法>で音も無く倒すのが先を進むためには正解だな。




<火球>(ファイアボール)はぜったい使用禁止ね! あの音、この階層全部に響いたんじゃないの?」


「同感だ、まさか第6波まで来るとは思わなかったよ」


 アイテムを回収しながらうんざりした様子のリリィに答えた。いやあ、倒した倒した。連中、耳が良いのか俺の魔法がよほど煩かったのか、ひたすら襲い掛かってきたのだ。苦労したわけでもなくただの作業でしかなかったが、それだけにうんざりしてしまう。ちなみに敵は全てゴブリン達だった。今までの階層は2種の敵が出てきたのだが、考えてみればコブリンが3種いたようなものか。それに他のやつらが混じるとあいつらの連携の邪魔になるだろうしな。

 とりあえず敵の波は引いたので、この層の宝箱を探しに行く事にする。数えるのも馬鹿馬鹿しいほどのドロップアイテムの確認は階段を見つけて安全を確保してからでいいだろう。



「何が出るかな!? さすがに層が変わったから良いのが出るといいよね」


 リリィは俺の前を先行しながら一番近い宝箱に向かう。10層までの宝箱は時間の無駄として無視していたから、普通に考えれば少しはマシな物が出ると期待したいな。


「宝箱の更新は毎日変動するダンジョンの唯一の良い所だよね」


「だから、冒険者も危険を冒して潜るんだろうな」


 王都のダンジョンは10日に一度宝箱の中身が更新されるそうだが、ここウィスカは日付の変わり、階段の場所と共に宝箱の中身も変わる。数は少ないが、Sランクまでいるというこの街の冒険者が異常な難易度に悩まされながらもここに潜り続ける理由の一つだ。ほとんど迷宮の情報を提供しないギルドも産出されたアイテムだけは他の冒険者を呼び込むために公表している。

 俺が知りえた情報では、かつて一日に一回しか使えないがどんな怪我も治す力を持つ短杖がもたらされ、王家に献上されたらしい。勿論その冒険者は貴族の仲間入りだ。その他にも綬爵されるほどの名品がいくつか発掘されているようだ。これから先の宝箱で俺達もそういうものに出会えるのか。


「これは……ハズレだね」


 俺の手にあるのは鋼鉄の剣だ。鋳造品だろうがしっかりした作りで安物ではない。<鑑定>では金貨一枚と銀化5枚の価値があるようが……。


「普通の品だろ。ハズレではないんじゃないか? 宝箱がこの程度ならあえて探す価値はないと思うけども」


「うーん、スキルの影響とはいえユウのドロップ率が異常すぎて普通に戦っている方が効率が良いみたいだね。少なくとももう少し降りてみないと宝箱の中身は良くならないかなぁ」


 冷静に考えてみると11層で金貨一枚ほどの価値があるアイテムはけして悪くない相場なのだろうが、俺も常識が壊れているせいで時間効率が悪いと思わざるを得ない。今日の11層では五個の宝箱が出現し、他の中身はそれぞれ金貨1枚と2枚、それとマナポーションが計2本だった。いちいち回り道をして手に入れるアイテムではないな。


 階段に辿り着いた頃には午後二時を回った頃だった。今日はこの後も予定があるし、12層を覗くだけ覗いて戻るとするか。その前にこの階層で得たドロップアイテムを確認する。

 ウオーリアが落とした通常ドロップアイテムがメダル、というか勲章だな。価値は金貨2枚だ。レアドロップがナイフなんだが、どう見ても純金製だ。金貨7枚の価値があるようだが、重さを考えると金貨にしてそれ以上の価値がありそうだ。ギルドに持ち込んで価値を聞いてみたい。数はそれぞれ108枚と31本だ。

 

 アーチャーは矢と弓を落とした。矢は一抱えもある50本セットがかなり落ちていた。価値は消耗品にしては高く金貨一枚だ。何しろ鏃だけでなく矢そのものが鋼鉄製で50本だ。正直矢として使うより、溶かして他のものに利用すべきだと思う。鏃さえ鋼鉄ならば問題ないはずだからな。

 

 弓の方は元々アーチャーが手にしていたものと同じ弓だが価値は高く金貨8枚もする品だった。矢が20セット、弓が五張だ。アーチャー自体の数が少ないのでこんなものだろう。ただ、鋼鉄製の矢が1000本あるのだ。この重量だけでえらい事になるから俺には関係ないとはいえ、マジックバックが無いととても持ち帰れないだろう。

 

 メイジはもっと数が少ないが、通常品がマナポーションだった。これは市販品と同じ効果で金貨一枚だ。

レアドロップは魔法攻撃の威力が上がるという魔導具でこちらも金貨10枚の価値があった。メイジはほぼ確実にマナポーションを落とすようで、集団の中で数が少ないなからも54本も手に入れていた。指輪はあまり振るわず3個だけという結果だ。

 だが、11層が他と最も顕著な違いは敵がかなりの高確率で魔石を落とす事だろう。今までの層では体感で一割も無かったような確率だったのだが、ここへ来て各金貨8枚の価値を持つ魔石が二匹に一匹の割合で落としている。落とすのは6等級の魔石だが、その魔石の収入だけで500枚を越えており、今までの最高記録更新は間違いない。


 12層も11層と同じ石畳の階層だった。周囲に敵の反応は無かったのでそのまま階段を上り、そのまま撤退を開始した。特に何事も無く地上に戻ったときには午後4時半を回った頃だった。

 

 しかし、そろそろ日帰りも限界が見えてきたな。今日は最初にレイアのためにかなり時間を使ったが、それでも探索のペースはまずまずだった。運悪く階段までの距離が長い階層が続いたら10層が限界の日もあるかもしれない。

 だが、ダンジョンで休息とか取りたくないんだよな。穴倉で一夜を明かすなんて御免蒙るんだが……多分俺がおかしいんだよなぁ。他の冒険者たちはきっと数週間位はずっと潜っているはずなのだ。でなければ毎日潜っている俺とダンジョン低層でもっと頻繁にすれ違っているはずである。それに奥深くで戦い続けた方が収入的にも美味しいはずだ。少なくとも彼らは俺のように毎日安いゴブリンソードやコボルトの杖を手にするようなことにはなっていないだろう。まあ、安いアイテムも量が揃えば馬鹿には出来ない。実際今日も金貨20枚分程度の稼ぎにはなっている。

 今度、試しに一回ダンジョン内で一夜を明かしてみるのもいいかもしれないな。こんなとき意見を聞くべき相棒は今役に立たない。大きく目減りしていた蜂蜜が大幅に補充され、帰りの行程でついに所持数が3桁になった事により怪しい笑みを浮かべて悦に浸っているからだ。そっとしておこう。


 残りの借金額  金貨 15002262枚 


 ユウキ ゲンイチロウ  LV145 


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75


 職業 <村人LV168〉



  HP  2358/2358

  MP  1723/1723


  STR 413

  AGI 406

  MGI 417

  DEF 389

  DEX 351

  LUK 241


  STM(隠しパラ)601


  SKILL POINT  615/620     累計敵討伐数 5632

楽しんでいただければ幸いです。


活動報告にも書かせていただきましたが、タイトルを変更しています。


これからもご愛顧していただければこれに勝る喜びはありません。


この章からようやく借金返済が本格化します。今借金が減っていないのは

まだ魔約定に入金していないからです。次話でようやく返済が始まります、


次はまた水曜日の目標でがんばります。毎度のご挨拶となってしまいますが、

閲覧、ブックマーク、誤字脱字の報告、誠に有難うございます。

何らかの動きがあるだけで、見てくださっているんだなと喜びがあります。

これからもよろしくお願いします。

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