奈落の底から 7
お待たせしております。
番犬を安易に引き受けたのは失敗だった。
俺は店舗の椅子に崩れ落ちるようにだらしなく座っていた。疲労感が全身を覆い、ずり落ちそうになる態勢を戻すのも億劫である。
「ちょっと、店の中ではちゃんとしてよね」
机に肩肘ついて店番をしているポーション屋姉妹の妹、サラが俺の態度を見て注意をしてくるが、お前さんも褒められたもんじゃなだろと言葉を返すのも面倒なほどだ。のろのろと体を戻し、元の体勢に戻るだけでも深いため息をついてしまう有様なのだ。
この疲労感は魔導書を用いた時のものとは質が違った。あれは言ってみれば時間を引き延ばしその分の労力をまとめて引き受けているので主に肉体的に疲れており、体が猛烈に睡眠を必要とする。
しかしこれは主に精神的なもので頭がずっしりと重い倦怠感がのしかかっている感じである。
<我が君、精神的な疲労回復には甘味がよいとされているぞ>
俺の状態を見て取ったレイアが<念話>でそう訴えてくるが、俺はあまり頷きたくない。
<甘い物が苦手な俺にはあまり効かん気がするな。大丈夫だ、こんなのほっときゃ治る>
<しかしユウキ様、あまりに長時間の連続稼動はお体に障ります。どうかご自愛を>
<だが、これは紛れもない俺の失策だ。だからこの疲労も甘んじて受けるさ、良い訓練である事は確かだしな>
レイアの他にユウナも俺を案じてくれるが、本当に自分が悪いので罰と鍛錬と思って受け入れた。
<しかし我が君は流石だな。分身体をこれほど長く、しかも機敏に動かすとは。私も試してみたが、満足に歩かせる事さえいまだ叶わないというのに>
レイアがこの不調の大元を言い当ててくるが、今俺は異世界の日本で分身体を動かしている最中だ。それも既に半日近く経過していて俺の精神的な疲労はかなりのものになっている。
こんなことになっているのは幾つか理由がある。
まず第1に俺が日本に行く気がなかったので出来るかぎり分身体を派遣しようと思っていたことだ。最近は訓練もこなして大分思い通りに動かせるようになってきたので、このロロナのポーション店での番犬も何とかなるだろうと油断していた。
そして第2にイリシャとシャオの護衛である動物2匹が居ないことだ。サボった訳ではなく、今出向いている夢の国が原則動物禁止だそうなのだ。聞けば例外もあるようだが、当日それを知った俺は二匹に休日を与え、俺が神経をすり減らしているというわけだ。
そして第3に頼みの綱であった玲二が無力化された事が一番大きい。もとよりあの夢の国来訪は、かつてかなりの頻度で訪れていたという玲二がイリシャにせがまれて案内を約束していた(同じくらい雪音も詳しいそうだが、彼女は日本行きを拒絶している)。記憶喪失の俺としても玲二に全て任せるくらいの認識だったのだが、厄介事に巻き込まれた事で案内どころではなくなってしまった。
幸いこの場には代理がおり、俺の妹たちは彼の不在の影響を受けてはいないが、俺の身内を守るための人材が一人減った事には変わりない。ジュリアや双子メイドも戦える力を持ってはいるが、誰もが普段見せないような笑顔でこの場を楽しんでいるので彼女達を当てにする気はない。俺としても普段仕事ばかりしている彼女達の羽が伸ばせれば良いと思っているので、それはそれで構わないが……その分俺と如月が周囲を警戒している。
相棒は……始めから期待してない。今もソフィアの肩の上で次はあそこに行こうと提案していて満面の笑顔である。
異世界で妹達に危機が訪れる可能性は限りなく低いが、俺の身内は全員がすこぶるつきの美しさなので今この瞬間も常に注目を集めている。俺はこちらでも番犬をする事になり、比較的空いてる日を選んだそうだが、それでもかなりの人混みなので全く気を抜く事が出来ないのだ。
本来なら俺の感情など無視して日本に向かうべき状況だ。身内に無遠慮な視線を向ける連中が山ほどおり、それらを威嚇するだけでも分身体ではなく自分の体でやった方が圧倒的に楽だからだ。
前にも触れたが、分身体を動かすことは容易ではない。訓練を重ねて何とか形になってはいるが、所詮はロキの権能の借り物に過ぎないのでいくらでも分身を生み出し、同時かつ自在に操れる駄犬とは比較になるはずがないのだ。
それでも便利なので使ってはいるが、今の俺は分身体一つを動かすのが精一杯だ。それもしっかり動かすなら本体が身動き取れなくなるほど集中する必要がある。なにしろ先ほどレイアが告げたとおり歩くだけでも人間の脳味噌は大変な作業をこなしている。二本足で立つだけで均衡を保たねばならないのに、歩行するということは足を動かし交互にその重心を移動させる必要があるのだ。
さらには呼吸など、無意識下で行っている本能の行動も分身体では一々意識してやらねばならない。馬鹿みたいな話だが、呼吸しないと分身体は酸欠に陥るという芸の細かさだ。
俺以外の仲間が分身体をほとんど使わないのはそういった手間が多すぎるのを嫌っている。便利ではあるがそれ以上に面倒臭いのだ。ロキは意識しなくても出来てるそうなので、やはり奴だけが使いこなせる能力なのだと思われる。
そういう訳で完全に自業自得であり、俺は安易に番犬を引き受けた事に後悔していたが、救いはある。とりあえずソフィア達の日本旅行は明日で終了なので、辛いのは今日だけなのだ。今日を何とか乗り切れば明日からは普通に戻れるのでここは我慢の一手だ。
「ねえ、大丈夫? だから部屋があるって言ったのに納屋で寝るからよ。風邪引いたんじゃないの?」
「いや、体調が悪いわけじゃないから問題ない。それに同じ屋根の下になんてそっちに迷惑がかかるだろ」
サラの言葉通り、彼女達の家に案内されたあとで部屋を用意されたのだが丁重に断り、裏庭にあった小さな納屋で眠る事にしたのだ。従者二人は俺がここで寝る事に不満があるようだが俺が不用意な事をしたくなかった。彼女達の事を考えたのではなく、俺が身内に潔白を証明する為だ。既に理由を考える事も諦めたが、俺が美人姉妹の住む家に案内されたことは全員に知れわたっていたので対応は取らなくてはいけない。納屋で寝る事は特に苦でもない。貧民窟の安宿と大して変わらんし、周りの盗っ人を警戒しなくていい分、こっちのほうがだいぶマシだ。
そういう訳なので外で寝た事が原因ではないのだが、説明する気はないがサラにしてみればこの不調はそれが原因しか思えないだろう。
俺は腰掛けた椅子から立ち上がり、大きく伸びをした。頭は鈍痛を訴えているが、妹たちの弾けるような笑顔という報酬の前ではたいした問題ではない。無理をしてでも連れてきてよかったと思う。
シャオは……ほわー、と口を開けてずっと如月の腕のなかにいる。昨日からずっとこんな感じでどうやらまだ現実と夢の区別がついてないようだ。異世界のこともいまいち認識していないようだったし、仕方のないことかもしれない。
「裏で顔洗ってくる」
「はいはい。裏手の行き方は解る?」
俺の不調は見てわかるほどなのでサラも席を外すことを許してくれた。
この店舗兼住居はかなり大きい。特に裏庭は子供が駆け回れるほど広く、なんと井戸まで掘られていた。大抵の家が町の中央にある井戸から各家庭にある水瓶に汲んでおくのが当たり前なのに、個人宅で井戸があるのはかなり珍しい。
それにこの店は町の中心部と言ってよい好立地にある。塀に囲まれ、それ故に土地の限られた街中でこれだけの広さを確保できるとなると、色々と想像を働かせたくなるが頭痛がそれ以上の思索を押し留めた。
それに新たな客のようだ。さっさと顔を洗って番犬の仕事に戻るとしよう。
「あ、レオンさん! 来てくれたんですね!」
「やあ、サラちゃん。ロロナは元気かな?」
「はい、もちろん。せっかくレオンさんが帰って来たのにお姉ちゃんたら仕事ばっかりしてて……」
「はは、彼女らしいね。むしろ僕がいた頃と変わってなくて安心したよ」
「今も仕事中ですけど呼んできますね。せっかくレオンさんが訪ねて来てくれたんですから」
店舗の方から聞こえてくる声は俺をここまで連れてきてくれた飛竜騎士のレオンだな。彼はこの町出身だから近所に挨拶周りでもしているのだろうと呑気に考えていたら、会話の内容は思いのかけない方向に進んでいた。
「いや、今日ここに立ち寄ったのは別件なんだ。今僕は人を探していてね、この店に金髪の少年が訪れなかったかい? 年齢は大体サラちゃんくらいだけど随分と大人びた雰囲気を出している人なんだ」
「え、それって……」
「その人の性格ならこの店に立ち寄っていてもおかしくないんだが……」
「なんだよ、俺を探しているのか? レオン」
二人の会話に割り込んだ俺だが、サラとレオンの顔は驚愕に染まっている。
「あ、やっぱりあんたの事なのね。でもどうして飛竜騎士のレオンさんがあんたを?」「ユウキさん、どうしてロロナの店の奥から出てくるのですか!?」
サラが純粋な驚きだったのに対してレオンのそれは幾分かの焦りが混じっている。どうやら……まあ俺には関係ない話か。
「二人同時に話すなよ。俺とレオンとは知り合いで、今朝からこの店で番犬をやっている。これで納得したか?」
「本当にそれだけなのですか?」
疑いの眼差しをレオンから受けるが、こちらに疚しい事などない。
「俺があの宿を追い出された事は聞いたんだろ? 夜に外の林でサラと偶然会ったんだよ。その時に番犬してくれって頼まれたんだが、まあ疑われてまでやる仕事じゃないな」
未だ不信感の残る瞳でレオンが見てくるので、俺は背後にいるサラに話しかけた。
「そういう訳で番犬の仕事はここまでのようだ。悪く思うなよ」
思いがけず短期で開放されそうなので俺の声は嬉しさを隠しきれない。あとはゆっくり頭を休めれば頭痛も収まるだろう。
短い間だったが世話になったなと声をかけたら、サラはこちらが戸惑うほど強硬に嫌がった。
「駄目よ! まだお願いした仕事は終わってないし」
「店の周りをちょろちょろしてた奴等は対処したから大丈夫だろ」
俺を雇った原因は掃除したし、後始末もしておいたから二度と姉妹を悩ませる事はないはずだが一体どうした事だろうか。
「でも、それじゃ……」
店を出ようとした俺の腕を掴んで引き止めるサラに俺は困惑する一方だ。逆にレオンからの疑惑の眼差しが強まる一方なので無実を証明したいのだが……ああ、もしかしてあれか?
俺は今朝も日課をこなした後、いつも通りに朝風呂と朝食をとった。その際は意外なほど広い裏庭を有効活用させてもらったのだが、もちろん土地の所有者である姉妹にも風呂に入る権利はある。場所代として朝食も共に誘ったのだが、やりすぎたのかもしれない。
「あー、そのなんだ……どうしたもんかな」
そういえば昼飯は何がいいと聞いた気がする。姉妹は特に表情を変えてはいなかったはずだが、この世界では一日2食が普通だ。皆それで足りるほど腹持ちがいいのではなく、3食食えるほど食い物がない事が原因だが……もしかして楽しみにしていたのかもしれん。
どう声をかければ正解なのか悩んでしまったが、その葛藤は僅かな時間で済んだ。
外から大きな歓声が店の中にまで響き渡ってきたからである。
「わっ、なに今の? なにかあったのかな?」
「どうやらそっちの注文の依頼主一行が到着したみたいだな」
<マップ>で探るまでもない話だが、武装した集団が約400人ほど町の南門から入ってきていた。これからこの町に襲い来る災厄に比べれば微々たる数で、一国の皇太子が直率する数としてはあまりにも少ない。
この少なさは色々と政治的な問題も絡むので一概に皇太子の力量を責めるつもりはない。状況を悪化させてくれやがってと文句をつけたい気持ちはあるが。
それに最早ここまで来ると数の問題でもないし、<マップ>にはこの町目指して数多くの戦士団や他領の騎士団、そしてもちろん魔物も移動して来ている。レイアが暇を見ては魔物を3桁単位で間引きしてくれているので現時点では目に見えるほどの数が迫っている訳ではないが、あと数日もすればその数は加速度的に増えてくることはこれまでの調査で解っている。
「じゃあ、王子様がいらしたのね!」
そう言うや否やサラは俺とレオンを店の外に追い出して鍵を閉めると隊列を見物に向かうのだろう、町の大通りに向かって駆け出していった。
「ようやくのお出ましか。これでどうあれ状況は一つ進むな」
「はい。冒険者ギルドの要請で王子殿下出座のもと状況説明、あるいは作戦会議が行われると聞いています」
「レオンは行かなくていいのか? 飛竜騎士ともなればこの国の顔の一人だろ」
「今の私は貴方付きですから。だからサイオンさんの宿にいないと聞いて肝を冷やしましたよ。この町から離れてしまったのかと思いました」
どうやら俺を探し回ってくれたようだ。それは悪い事をしたな。
「一応ドーソン翁からの要請で来てるからな。不義理はしないし、その時はレオンに一声掛けてからにするさ」
俺のいまひとつやる気のない返事にレオンが微妙な顔をする。家族や故郷の壊滅の危機ともなればもっと焦って俺を脅すくらいはしてもいいもんだが、意外と理性が働いている。
「現状ではグラン・マスターはお前さんになんて言ってるんだ?」
「貴方がこの地にいる限り希望はあると。他にもありますが、それは部外秘で願いますよ」
あの老獪なギルド総帥が俺一人放り込んでお終い、なんて適当な事をするはずがないと思っていた。だから俺以外にも誰かと連絡を取り交わしているはずだとカマかけのつもりで聞いてみたが、あっさりとレオンは白状した。彼の手にはギルド用と思われる通話石が握られている。
きっとドーソン翁から俺の攻略法、あるいは操縦法を聞かされているのだろう。
「俺一人が頑張って解決するなら苦労はないと思わないか?」
「目の前にいる人がその名を世界に轟かせる<嵐>でなければ私も諦めていました。ですが、貴方がまだここにいてくれる。ならば絶望するにはまだ早すぎますね」
「だから個人でやれる事には限界があるだろって言ってんだがなぁ」
そんなに期待されても困る。何度も言ってるが俺個人がどうというより王子達の会議次第でこの町の命運が決まるはずだ。
「私としてはまず何よりもロロナとサラちゃんとの関係が気になりますね。女性に手が早いと聞いていましたが、まさか初日でこうなるとは……」
レオンの目は先程よりよほど真剣だったので俺は辟易した顔で弁解した。
「さっき言った以上の事はないって。誘われたのは機能の深夜だし、寝たのは納屋だ。疑うならレオンも一緒に泊まるか? 口振りからするに相当親しそうだしな」
「い、いや。私などロロナの幼馴染に過ぎませんよ。親密な関係など……」
これまでは冒険者ギルドの最精鋭と言う顔を見せていたレオンだが、一気に年相応になった。まだ朝食を食べていなかった彼を誘って話を聞いてみると、どうやら飛竜騎士になって故郷に錦を飾ってからロロナに告白するつもりだったらしい。だから突然の帰郷に戸惑っていたのか。
「なら丁度いいじゃないか。今のレオン以上の有望株はこの町にいないだろ、状況も状況だし一気に行っちまえよ」
俺は他人事ならではの気楽さで適当な事を言ったが、当のレオンは渋い顔だ。
「私も今なら、という気はするのですが、その、ロロナはかなり変わった女性なもので……」
鍵が閉まっているので店の前からレオンは中にいるであろうロロナに視線を向けた。
ちなみに姉である彼女はレオンが来たというのに一度も顔を出していない。それどころか朝食を食べて以来、部屋から全く出てこなかった。製薬に夢中で外界の事など一切気に止めない性格のようだ。
「確かに大変そうだな。彼女の方も立て込んでるし、そんな暇ないかもしれない」
「そういえば昨夜サラちゃんと町の外の林で出会ったと言っていましたが、まさかそんな時間に採取を?」
「ああ、昨日いきなり大量の注文が入ったからだそうだが、あの歳の娘が深夜に一人で出歩いてたからな。余計な世話だとは思ったが」
俺と出会った一連の流れを把握したらしいレオンの顔に納得の色が広がった。
「貴方の厚意に彼女の友人として感謝申し上げます。後で一言言っておかないといけないですね」
「ああ、そうしてくれ。それでこれからレオンはどうするんだ?」
「ギルドに詰めていますよ、何かあればこちらに報せに来ます。出来れば貴方もこちらに居て欲しいのですが」
「嫌だよ、用も無いのにあの高慢なエルフ野郎と顔を合わせるなんて御免だね。ここで番犬していた方がまだマシだ」
レオンは飯時にこちらに顔を出すことにしたようだ。その理由はいちいち言葉にしなくてもいいだろう。
<しかしこの店の者達、ユウキ様を都合よく利用するなど……>
<まだ言ってるのか。俺が気にしてないから良いんだよ>
今はこのキルディスから南方にあるラヴェンナ連合王国の王都で情報収集を頼んでいるユウナがその報告の折りに愚痴ってきた。
<それでそっちは俺がレオンから聞いていた通りの状況なのか?>
<より悪いです。王都の状況を見る限り、そちらの異変になんら対応をしていません。ユウキ様の危惧した通りかと>
ユウナの報告は想定内だったので特に何も思うことはない。ただ一つ思う事があるだけだ。
<今回の一件は、なんというか作為的なほどに時期が悪いな。状況から見て偶然の積み重ねなんだろうが、ここまで性質が悪いといっそ清々しいくらいだな>
<これが魔王健在の頃なら魔族の策略と思いたくなるほどですが……>
<ははは、先代魔王陛下ならここまで手の込んだ事はなさらないな。かの方は直情的な性格だった>
まるで見てきたように数百年前に滅んだ魔王を形容するレイアに益体もない事を考えたが、言葉にすることはない。魅力的な女に謎は付き物だ。
<ユウナは引き続き情報を集めてくれ。レイアはそろそろ戻って来い、昼飯にするぞ。ついでに君をあの姉妹に紹介するつもりだ。このままだときっと君の力が必要になるからな>
<承知した。周辺の魔物は順調に数を増やしている、じきに誰の手にも終えなくなるだろう>
不幸中の幸いなのは魔物達が一直線にキルディスの町を目指しているので周辺に被害が及ぶ恐れがないことだろうか。恐らく”奈落の底”とやらの効果で呼び寄せていると思うが、それはもう一つの問題を生み出しているとも言えた。
<ユウキ様。この国を北方の拠点としてよろしいでしょうか?>
<解った。何をどれだけ使っても構わないから好きなようにやれ。仔細は任せた>
ユウナはこれまでに独自の諜報組織を作り上げてきた。その手段は大っぴらに褒められたものではないが、その原因は彼女に無茶振りする俺にあるので全て俺が悪い。
そしてその組織は順調に拡大していた。今ではランヌ王国を中心に大陸南方、新大陸に広がりを見せ最近ではオウカ帝国にまで触手を伸ばしている。特にオウカ帝国はあっと言う間に傘下に収めてしまい、大陸東部(オウカ帝国が大陸東部全部だと思ってくれていい)の地下世界は勢力図が激変したといわれている。
実際は帝国摂政宮の凛華の指図とライカの仲間でその分家であるシズカの実家がそこそこ大きな”草”の一族だったので、それが全てこちらの勢力化に納まったからだ。
形としてはユウナの配下だが、実際は同盟者の扱いなのでオウカ帝国はユウナが手にしている地域の情報をも入手する事が出来るようになり、あちらの得の方が圧倒的に多い。
この決定は政治になるのでランヌの国王と凛華で話し合いがもたれたが……ウチの屋敷で国家会談をするのは今回限りにして欲しい。余談だが、その席には通話石でライカールの国王も参加していたのはまず間違いない。何故なら使われた通話石の魔力の補充をしたのが俺だからである。
そしてユウナの野望は留まる所を知らず、今回北方諸国にも手を伸ばすようだ。俺としても仲間や家族に飛竜にみんなで乗ろうと約束したのでこちらに拠点を設けるつもりだから丁度良かった。
この一件に関しても数日後には魔物で周囲を埋め尽くされて身動き取れなくなるので外部の情報は重要になる。彼女には忙しく動いてもらう事になるだろう。
<畏まりました。この北の地の全てをユウキ様にお捧げいたします>
何かが違う気がしたが、<念話>で首を傾げても相手には伝わらない。俺の了承を聞いて彼女は行動を開始してしまった。
まあいい、俺は俺の仕事をする事にしよう。
サラからは自分達の周りに居る薄気味悪い連中を遠ざけてくれと言われたが、番犬の仕事はそれだけではない。むしろそれ以外の要件で忙しくなるのは解っていた。
この町に一軒しかないポーション屋なのだから、他所からやってくる冒険者やら戦士団やらがこの店に殺到するのは当然でもあった。
そして店を切り盛りするのは歳若い美人姉妹とあれば、いざこざが嫌でも押しかけてくるのは解りきっている。
「このポーションで在庫全てです。これ以上は本当にありません」
「おいおい嬢ちゃん、いくらなんでもそりゃないだろ。店の在庫がポーション10本足らずなんて誰が信じるってんだ。冗談も大概にしろや!」
「本当なんです。先ほどから皆さん大量に買って行ってしまって……」
顔に大きな傷のある筋肉質な男がサラに凄んでいる。おっさんがいたいけな少女に下らん事をしていると思うが、この光景はこれが始めてではない。既に3回目になるがこれまでは客が寝言を吐く前に俺が割って入っていたから事なきを得た。だがサラは何が気に入らなかったのか、この程度の客あしらいは自分でできるから引っ込んでてくれといわれたので今は黙っている。だが、これはもう時間の問題だ。
大きな物音がした。見れば男が受付台の上にナイフを突きたてたようだ。馬鹿じゃねえのか、こいつは?
光り物を前に思いっきり怯んでいるサラだが、気丈にも頑張って耐えているようだ。中々肝が据わっているじゃないか。
「嬢ちゃん、俺もガキの使いで来てるわけじゃねえんだ。こっちが優しく言ってる内に大人しく持ってこい。これ以上俺の時間を無駄にするつもりなら俺にも考えが……」
「営業妨害だ、とっとと失せろ」
背後から近づいた俺はおっさんの首根っこを掴むとそのまま引きずって店の外に放り出した。
「なっ、テメっ。うごあッ」
宙を待って店の外に放り出された男だが、雪の上に落ちたので怪我はないだろう。石畳に叩き付けるのが馬鹿の目を覚まさせるには一番なのだが、生憎と雪が降っていて路面が露出していないのだ。
「ああ、失せる前にお前が傷つけた机の修理費を置いてけ。俺は優しいから金貨一枚で許してやるぞ」
「なんだ、このガキ! 舐めた真似しやがって。俺を誰だと思ってやがる!」
おっさんの顔が怒りで染まっていくが、雑魚はどれだけ喚こうが雑魚のままだ。
「誰って。ナイフ出して女に凄んでた糞雑魚だろ? 情けなさすぎて俺なら舌噛んで死んでるな」
「死んだぜ、小僧!」
「あぶないッ!!」
店から出ていたサラの悲鳴が上がる中、おっさんは怒りに任せて突っ込んでくる。その手には先ほどのナイフがあるがその刃が届く前に俺が放った石礫が眉間に激突している。
「うがああぁあぁああ!!!」
急所に一撃を食らったおっさんは激痛にのた打ち回っているが、おっさんのタコ踊りを長々と眺める趣味はない。
「目を潰されなかっただけでも感謝しろ。この安物は修理代として回収しとくぞ、優しい俺に感謝するんだな」
みぞおちを蹴ってまたも襲う激痛に身を固めるおっさんを掴みあげるとそのまま通りの外れに投げ捨てた。結構な騒ぎを起こしたと思うが関わりを恐れてか周囲に人影はなかった。
「あ、あんた。やっぱり只者じゃなかったのね……」
サラが俺を見て顔を高潮させてている。人間を叩き潰した後だが、流血沙汰など物騒な始末の仕方にしなければ周囲の空気は驚き程度で済む。これは俺が何度も実践しているので慣れたものだ。
「いや、俺は何処にでもいる普通の冒険者だぞ」
「嘘。普通の冒険者はマジックバッグを持ってないし、特にダンジョン産の蜂蜜なんて絶対持ってない。私知ってるもん、ダンジョンの蜂は腕利きだって避けて通る厄介な敵なんでしょ。あれだけの空き瓶全部が蜂蜜瓶だったとしたら、あんたは凄腕の魔法使いってことになるでしょ」
「そこらへんは想像に任せる」
俺の想定以上にサラは聡明だったな。いくつかの要素を元に俺の力量を予想してみせた。昨夜あれだけ俺を推したのはその見立てがあってこそか。
「冒険者ギルドの総本部にいるレオンさんと知り合いだって言ってたし、きっと総本部の専属なんでしょ。ふふん、その顔は図星みたいね」
どう答えたものか悩んでいるとサラは更にに推理を重ねていた。それもかなり正解に近い。姉のロロナは優秀な薬師だし、その妹のサラも明晰な頭脳を持っている。神は美人姉妹に更なる才能を与えたようだ。
「それより受付台に穴が開いちまったな。俺に任せておけばそんな事も無かったのによ」
「あ、あれはしょうがないでしょ。私もまさかあんなことするなんて思わなかったし。とりあえず蝋で埋めとけば大丈夫よ」
こんな感じで無頼のような連中が何人もやって来たのはこの町に数多くの戦士団が集まってきているからだ。冒険者ギルドは戦力をこのキルディスに回せと布告を出さなかったが、王子が突然この町に騎士団を率いてやって来た事で何かあると見た奴等が足を運んでいる。
そして更に悪い事に<マップ>を見る限りではその流れは加速しているようだ。魔物と共に戦士団もこの地に向かっている。戦力が増えるとだけ考えれば良い事のように思えるが、それがもたらす悪影響が現状ではこの地に破滅をもたらす事に繋がっている。
王子が気付いていれば回避もできるだろうが、ここに来ているという事は無理だろうな。
その後も迷惑な客が続いた事もあってサラに店を閉めないかと提案した。今はポーションの在庫がないというより昨夜依頼された500本をこなす為、他のポーション作成をする余裕がないというだけだ。
だからそれが終わるまで一端店を閉めた方がいいだろという俺にサラが渋っている。彼女の言い分は両親はどんな時も店を開けていたらしく、自分もそれに倣いたいそうだ。
俺はこの店の番犬なのでその仕事はするが、このままでは客と喧嘩するだけになりそうだ。それをわかっているサラも難しい顔をしているが、感情の問題だけになかなか折り合いがつかなそうだ。
だから面倒な相手がやってきてしまった。
「サラにポーションを300本追加なんて無理です! 今の500本でも限界なのに」
「何を言っている。こんな田舎町の魔法店が我等が騎士団に貢献できるのだ。つべこべ言わず用意せよ。期日は明朝だ」
相手は昼ごろこの町にやって来た騎士団の一員らしい。爬虫類じみた容貌の痩せた男で、その口調も相まって酷く酷薄な印象を受ける。昨日の注文もしていたという事は先触れにやって来た男なのかもしれない。
腰にある長剣は飾りじゃないな。空気からして何人か殺っているだろう。これが小競り合いの絶えない北部ならではなのか、この男だけなのかはまだ判断がつかない。
「明日の朝なんて絶対に無理です。私どもでは対応しきれませ……」
「ちょっと待った。ポーション300でいいなら用意してやってもいい」
俺は訳あって二人に割り込んだ。
「ちょっとあんた、いきなりなんなのよ」
小声のサラを背後に下げ、俺は爬虫類男と相対するがその顔には不遜さと怒りが見て取れた。俺が割って入って事は正解だったようだな。
「”やってもいい”だと? 言葉を慎め平民風情が! 騎士である私に対する態度か!」
挑発に乗った騎士は俺に対して怒りをむき出しにした。これでサラは視界から外れただろう。
「へえ、そりゃ失礼。騎士サマ。で、ポーションは用意してやってもいいが条件がある」
「条件だと!? 愚物め、舐めた事を言える身分か? 身の程を教え込まねば獣は理解できぬようだ」
剣を抜いて俺の眼前に切っ先を突きつけたので、それを指先で押さえた俺は口を開いた。
「なに、当たり前の話さ。先払いしろ、注文済みの500本と合わせて計800本分の料金を今ここに持って来い。まさか注文しておいて金がないとか言わないよな? 栄光ある騎士サマのいる騎士団サマならな」
「貴様ッ! くそッ、おのれッ」
爬虫類騎士はその顔を朱に染めたが、俺が切っ先をつまんでいる長剣が動かせなくて焦っている。
「なあ、どうなんだ? 注文するなら金は持っているはずだろ? 子供だって買い物する時は金を持って行くもんだ。偉い偉い騎士サマなら当然持ってるはずだ、持っていないはずがない」
この爬虫類が金を踏み倒すつもりなのは追加注文の際にサラが無理だと言いかけた瞬間に見せた歪んだ笑みで理解した。無理難題を吹っかけてできないと言わせ、そこから難癖つけるつもりだったのだろう。
普通ならそんな無茶は通らないが、こっちが非武装で相手が武装してたら話は違う。有無を言わせずここにあるポーション全てを奪われていたに違いない。
とんだ騎士団だ。いや、違う。こいつらは盗賊だ。武力で脅して金目の物を奪う、それが盗賊でなくて何なのだ。
そこまで考えたら後は簡単だ。俺は盗賊に対する対処は一つしか知らない。
「潰すか」
我ながら感情の無い声が出た。特に何も考えてなかったからだが、相手は悪魔に出会ったかのような顔をしている。
「うあ、ああっ……」
後ずさりをして俺から距離をとると、脱兎の如く逃げ出す爬虫類騎士。
「あ、おい、待て」
俺の手には奴の長剣があるのだ。このまま奴の背中に突き立ててもいいが、店の中を汚い血で汚すわけにはいかないと思い直す頃には爬虫類騎士は店の外に逃げ出していた。
「面倒な……サラ、今日はもう店じまいにしようぜ。これ以上の面倒は勘弁だ」
「あ、うん。わかったわ」
心ここにあらずといった感じの彼女を置いて俺は奴を追った。どこへ逃げようと一度俺の<マップ>で捉えれば逃がす事はない。町の中央へ向かって走っているが、恐らく騎士団の駐屯地に向かっているのだろう。正直盗賊団を街中に入れているようなものだし、ここは町の美化に協力しておくか。
「なあ、追いかけっこで遊ぶなら一人でやってくれよ。俺を巻き込むな」
「こ、この化け物め」
騎士団まであと少しというところで追いついた俺は奴の肩に手を置いた。それを振りほどくように裏拳が俺の顔を目掛けて放たれるがそんな見え見えの攻撃を受ける気は無かった。
「剣を返すぞ。長剣は騎士の魂じゃなかったのか? ああ、悪い。そういえば騎士じゃなくて盗賊だったな」
先ほどまで恐怖に染まっていた顔が平常に戻りつつある。何故なら目とは鼻の先には騎士団員がおり、俺達は当然のように注目を集めていた。奴にとっては自分の領域に来たと思っているのだろう。
その思い違いを打ち砕いてやるのも一興か。
「騎士である私を賊扱いか!? 貴様、調子に乗るのも大概にせよ」
「へえ、じゃあ俺の手にあんたの剣がある事はどうするんだ? 俺は大事な大事な剣を届けに来てやったってのによ」
そこで爬虫類は俺ではなく周囲の騎士達に呼びかけた。
「みな、聞いてくれ! この少年は私の長剣を盗み、あろう事か罪無き民を殺害したのだ! それを弾劾しようとした私を今殺そうとしている!」
爬虫類の叫びは大声だったので周辺から多くの騎士や住民が集まってきていた。奴は得意満面で御高説を垂れているが、その言い分を信じているのは半分もいないだろう。
「なあ、俺はあんたに剣を返しに来たんだが。どう見てもあんたを殺しに来た態度じゃないぞ」
何しろ俺は奴に剣を返す為、刃を手に持ち柄頭を相手に向けている。自分に刺すならともかくこれで殺意を疑われたらそいつの頭を心配したくなる。
「みんな騙されるな! こいつは悪辣な殺人鬼だ! あそこに奴が殺した犠牲者がいるぞ」
どんな妄言を吐き続けるのか逆に楽しみなってきたくらいだが、奴が指差した先に俺が殺した被害者がいるらしい。みなの視線が奴の指差す先に向かうその一瞬、俺の<結界>が何かを弾く感触がした。
「そ、そんな馬鹿な。鋼鉄も切り裂く我が糸が……」
「おいおい、あんた鋼糸使いかよ、随分と後ろ暗い武器だな。騎士の筈がまるで暗殺者だ。そうやって自分で死体をこさえるつもりだったんだな」
周囲に死体がない事は<マップ>で解っていたので、奴が自作自演するなら何か行動を起こすはずだと思って準備していたが案の定暗器だったか。こいつ絶対に騎士じゃないな。騎士団連中がざわめいているから所属自体は間違いないのだろうが、実態は暗殺者なのだろう。
「おい、双方落ち着け。事情を聞くから剣を下ろせ」
騎士達も状況の異常さを知って腰の剣を抜きつつある中、俺達を囲む輪から年嵩の騎士が声をかけてきたが、俺はうなずいたが同時に肩をすくめた。なにせこちとら剣を突きつけてさえいないのだ。
「皆、騙されるんじゃない。こいつはバケモノだ。人間を食い殺す魔物だぞ!」
「そういうお前は無作為に人を殺そうとする下種野郎だな」
「おのれおのれおのれ! 貴様さえ、貴様さえいなければぁ!」
勝手に熱くなって俺に突っ込んでくる爬虫類。その両の手からは鋼糸が出されているが、当然<結界>に全て阻まれた。奇声を発している奴を放置する気も一切無く、手にしている剣の柄頭を向かってくる爬虫類の顔面に叩き付けた。
「ぶぎゅるっ!」
顔面が陥没した爬虫類がそのまま地面に叩きつけられた。一瞬の静寂が場を支配したが、それを打ち破ったのは駐屯地の奥から聞こえてくる拍手だった。
「我が騎士を打ち倒したのは見事な技量であった。だが、どうやら揉め事のようだな」
現れたのは腰までの銀髪を持つ先の細い男だった。年の頃は20台の後半に差し掛かった所だろうか、ともすれば女と見間違えられそうな美形であるが、俺には名状しがたい違和感を覚えさせた。
喉まで答えが出かかっているのに解答が導き出せないもどかしい感じを味わっている。
<ユウキ様……>
ユウナ。言わんでいいぞ、君は何でも教えてくれるが、たまには自分で考えたい。
「は、これから事情を聞くところであります。が、状況から見ますに……」
「解っている。非はこちらにありそうだ。少年よ、話を聞かせてくれまいか?」
相手の正体に見当はついていたが、まずは現在起きている問題の話をつけなくてはならない。
「悪いが、盗賊と話をするつもりはない」
「盗賊だと!?」「我等を賊呼ばわりするか!」「小僧、命が要らんようだな!」
俺の言葉が悪いのはわかっているが、当然ながら周囲の騎士は激昂した。
「ふむ、我等が盗賊であると。そう断ずる理由があると言うのか?」
銀髪の男はそう尋ねたが、その顔は痛みを堪えているかのようだった。
「俺はこの町のポーション屋の番犬だ。ここで寝ている男が昨夜注文した500本に加え、更に300本を追加してきた。到底一人の作業でこなせる数ではない。真意を確かめるため料金の先払いを要求したら突然暴れて逃げ出した。追いかけてここにいるが、金を持たずに店に訪れ、武器を出して奪いとるのは盗賊の所業と何が違うのか?」
そのようなことがあるはずが、と悔しそうに告げる騎士が睨みつける先は地面が大好きな爬虫類だ。この男のせいで彼等の誇りは地に堕ちた。
「それは誠に失礼した。料金は我が名にかけて必ず支払う。これはフェルディナント・トーレス・アルバイアとしての約定である。今の発言は皆が証人となり、我等の命に掛けて護れ。既に第一騎士団に誇りはない、なれば命で護る他ないと知れ」
このラヴェンナ王国皇太子、フェルディナント王子の宣言に周囲の騎士たちが膝を折り臣下の礼を示した。住民は王子の登場に雪の上である事も構わず平伏している。
俺はといえば別の事に気を取られていた。
この王子様、名前に”ラヴェンナ”が入ってないぞ。この国の問題は思った以上に深刻そうだ。
「少年よ、先に注文した料金は今支払おう。ついて来てくれ」
「殿下、そのような些事は我等にお任せください」「殿下がなさることではありません。ここは我等に」
王子の暴挙に周囲の騎士が止めているが、彼が聞き入れる事は無かった。
「先ほど申した通り、既に我等に誠意などない。ならば一つ一つ行動で示す必要があるのだ。そしてまず第一にそれを行うべきは団長である余自身であろう」
そう言って配下を下がらせると俺についてくるように告げるのだった。
騎士団は町で一番大きな宿(と言っても10部屋程度しかない中規模の宿だ)を確保していた。騎士団なら従兵も山ほど揃えていそうだが、今回は純粋な戦力だけで揃えてきたようだ。
確かにグラン・マスターから一報を受けて2日で現地に到着するのだから、まず動ける連中だけで先発したと考えるべきだろう。普通の行軍ならまだ出発の準備を整えている最中だ。
一番贅沢そうな部屋に王子自ら通されるという気味の悪い厚遇を訝しんでいたがその理由は次の王子の行動で明かされる事になった。
なんと一国の王子ともあろう人間が俺に深く頭を下げてきたのだ。
「貴殿は名高き<嵐>殿とお見受けする。どうか、どうか国難にある我が国をお救いいただきたい!」
楽しんで頂ければ幸いです。
日曜は間に合いませんでした。その分多いから許してください。
そしてようやく話が進んできました。とっても主人公は準備に一番時間をかけるタイプなので事が創めれば一気にいくと思います。
日本は玲二君が頑張って解決してくれるでしょう。主人公はあっちだと普段はほとんど喋らない置物ですがやるときはやります。
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