獣神の宮 3
お待たせしております。
「みなさん、始めまして。私は獣神殿で神官長を務めているソウカと申します。まず、この度は私達の要請に応じて頂いたことに最大の感謝を。そこの彼から既に聞き及んでいると思いますが、この件は秘匿性が高くて表沙汰には出来ないのです。それでもこうして女性の実力者の皆様が集まって下さったことに篤くお礼申し上げます。そして偉大なる獣神よ、貴方様のお導きに感謝致します」
俺達はソウカから概要の説明を受けていた。場所はアードラーさんの邸宅の一室を使わせてもらっている。本当はラナをアルザスの屋敷に連れてゆく予定だったのだが、ソウカが自分で説明すると言い出して場所を変更したのだ。
実際に神殿中の文献をひっくり返して調べ物をしたのは彼女たちなので説明するには最適の人物ではある。彼女の要求を受けて既に集まっていた参加者にはこちらに移動してもらった。
「本当は依頼主である巫女様から事前情報をお伝えすべきなのですが、本件の担当者である私からこれまでに判明した事を説明いたします」
この部屋は教室のように椅子と机が数多く置かれていたので俺達はソウカとラナを囲むように席についている。ソウカはいくつかの紙片を手に概要を話し始めた。
「我が獣神の神殿には王国内に大小様々な修業場を設けていますが、巫女様専用の修養の場である”木漏れ日の洞窟”の最奥にて地下へと続くダンジョンの入口が発見されました。この事は既に彼から皆さんにはお伝えしてあると聞いています」
ソウカの顔にはなんとも言えない苦味がある。これまで何人もの巫女が精神修養に活用してきた場所の地下にはモンスターが蠢いていたなどと公表できない事件だろう。情報の扱いを一つでも間違えば獣神殿の存続に関わりかねない大問題だ。もし俺が当事者なら誰も不幸になっていないし見て見ぬふりをしたいところだが、真面目な彼女達は放置できないと調査に乗り出したというわけだ。
「神殿の記録を当たってみたのですが、約500年ほど前に気になる記述がありました。”獣神の宮”なる名称がいくつか散見されます。その他にも私達の聖典には”深淵に至る顎”という呼称や、”獣神の20の試練”など言葉だけで何を意味する物か判明していないものもあります。これらの名称は長らく神官たちで議論の対象になっていましたが、修業場の最奥からダンジョンの入口が発見された事で様々な謎に答えが出るのではないかと思っています。色々と細々した情報は他にもあるのですが、今はこれくらいにしておきます」
そう言ってソウカはラナと共に近くの席に座った。
……座ってしまった。あれ、わざわざついてきたのに話はこれだけなのか? 訝しんで彼女の顔を見るが、犬の獣人であるソウカは済ました顔をしている。終いにゃ全員が俺を見る始末でラナが申し訳なさそうにこちらを見てきた。
なるほど、ソウカはこの会議の神殿への報告役としてここにやって来た感じだな。
神殿内の政治か、大所帯になるとややこしいもんだな。
どうやら俺が続きを引き継がなきゃいけないようだ。そもそも俺が声をかけて集めた面子である事だし、その必要はあると思っていたからそう嫌でもなかったが。
会議の隙を突いてラコンのメイドであるコーネリアが皆に茶を配し始めた。それを見て俺も菓子を幾つか取り出してゆくが、ここにいる皆は実に俺に慣れている。風のような速さで手が伸ばされ、菓子がそれぞれの前に移動するのにかかった時間はごく僅かだった。あっと言う間に完食され、追加も出す羽目になった。この後夕食じゃないのかと視線で問うたが、甘い物は別腹ですと全員が返してきた。
初見のソウカが菓子を口にして歓声を上げているが、菓子も目的だったのかもしれない。
俺は席を立つと中央まで歩き、口を開いた。
「さて、それじゃ仕切りなおしといくか。皆、集まってくれてありがとう、協力に感謝する。聞いてのとおり、ダンジョンを探索してもらうわけだが、今回はちと事情が違う。みんなには”攻略”ではなく、”探索”してもらうからそのつもりでいてくれ」
俺は敢えてその二つの説明をしなかった。案の定、この面子の中では一番楽しみにしていたリーナが声を上げた。
「ん? それはなにが違うんだ? ダンジョンを進んで地価への階段を下りるのは変わらないんだろう?」
リーナの問いに答える前に俺は他の皆の顔を見た。既にいくつかのダンジョン踏破経験を持つエレーナは当然だが、二つの違いを正しく理解しているのは半数に満たないようだが、これは仕方ない。
ここにいるのは女性冒険者だけのパーティばかりで、ダンジョン経験者は皆無なのだ。むしろ経験を積むために呼んだくらいなので無知を責めるつもりはない。
「俺達が獣神殿から依頼されているのはまず第一にこのダンジョンの把握であって踏破は二の次だ。ダンジョンの種別や階層数、出現するモンスターの種類や数、そして頻度。そういったものの情報収集をまずは主眼に置く。そうして情報を蓄積して全貌をつまびらかにすること、それが”探索”ってやつだ。攻略となるとただ敵を倒して下に降りるが、それは大抵の場合既に”探索”を済ませて情報を得ているからな」
「なるほど、情報収集をしながら進む必要があるんだな、よくわかった」
うんうんと頷いているリーナを尻目に俺は話を続ける。
「ギルドを介してはいないが獣神殿からの依頼という形になるから、ダンジョンの詳細な情報を報告する必要がある。それぞれのパーティーの中で誰かに記録係を担当してもらう事になるから、そのつもりでいてくれ。俺もやるつもりだが、多くの視点があった方が報告に幅が出るからな。なによりお前達の良い経験になるだろうさ」
極秘依頼の扱いになるのでギルドに報告も出来ないが、今回の第一義は皆にダンジョンの経験を積ませることである。全員が腕利き冒険者とはいえ、この状況を利用して訓練を目論んでいる事を神殿側には隠している。フランとソウカには正直に話しているが、もしこれが漏れれば厄介な問題に発展するかもしれない。
だが男子禁制の結界があるからどうしても女性限定の布陣にならざるを得ず、ダンジョン経験の豊富な女性冒険者パーティーなど皆無だろうから、そこは納得してくれた。
実際は俺が同行するという条件付きで認められたが、俺も停滞しているウィスカ攻略に飽きを感じていた頃あり、新たなダンジョンに興味があったので了承したのだ。
「最終目的はダンジョンコアの捕捉になるが、破壊するかどうかは依頼主の判断次第だな。それと今さっきソウカが色々言ってたが、話半分に聞いておいてくれ。新発見のダンジョンだから誰も此処の事を何も知らない状態だ。ソウカの話した情報が正しいという保証は何一つ無いぞ。思い込みは致命的な失策に繋がる……これ以上は言う必要はないか」
姉弟子とリーナを除けばダンジョンの経験が少ないだけであって、誰もがいくつもの修羅場を乗り越えた実力者ばかりだ。余計な言葉を重ねるのは彼等の矜持を傷つけかねない。
「ちょっと、それじゃまるで私が来た意味なかったみたいじゃないの!」
ソウカが文句をつけてきたが……ラナと共にチーズスフレと格闘中なので迫力はない。あれっぽっちで話を終えた事といい、こっち目的じゃないのかと思いたくなる。
「そうは言ってないぞ。ある程度の事前情報があった方が物事の方向性を決める事が出来るから有益だ。実際にあの話を聞くとあのダンジョンが20階層で構成されていることと、出てくるモンスターは獣が中心かなという予想が立てられる」
あくまでも予想だが、無策で初めてのダンジョンに挑む愚は避けられる。俺だってウィスカに挑戦する時は事前に情報を得て準備を整えたのだ。どんな脅威があるのか不明なのだから、ある程度の心構えはしておくべきだろう。
「探索開始は明後日を予定している。明日は休養と準備に当てて欲しい。ダンジョンの特性如何で使う道具類も変わってくるぞ。王都のギルドには話を通せるから、必要な物資が有れば調達できる。事前の準備が命を拾う事もあるから遠慮なく申し出てくれ。それに獣系が多いとなるとダンジョンは環境層である可能性も高いが、欲を言えば経験を積むために通常の迷路型を望みたい所だな」
「環境層だとダンジョンで経験を積む意味がないしね。やる事は屋外と変わらないわけだし」
俺の意見にエレーナが同意する。こればかりは運が絡むが、女が野郎に煩わされる事なくダンジョンに挑めるという機会が貴重なので、そこは理解してもらうしかない。さきほど弟子のキキョウと話したが、彼女達が所属するクランでもダンジョンに挑むと聞いて大層羨ましがられたと言う。
「探索行は最長で20日を予定しているが、その間は全員予定は空けてあるな?」
「はい、この後の予定は入れてませんから、大丈夫です」
ライカが代表して答えたが、皆もこの前情報が何一つないダンジョンを前に後の予定を入れることはなかった。
「この20日はあくまで予定の話だ。規模が小さくてあっさりと完了する事も、広大すぎてとても終わらない可能性もある。その時は第二次を計画するつもりだが、それに皆参加しろというつもりはない。そして、3日に一度は休養を入れるつもりでいるから、これくらいはかかると見ている。とりあえずはこんな感じかな」
今の段階で話せることは全部話したので、この場は解散することにした。ソウカは久しぶりに自宅へ戻ったラナと共に過ごすようで、連れ立って部屋を出て行った。
さて、ここまでが外部に漏らしていい情報であり、此処からは完全に内輪だけの話になる。
手間ではあるが、アードラーさんの邸宅で話せる内容ではないから、参加者全員が転移環でアルザスの屋敷に戻る事になる。
「お帰りなさい、兄様」
あちらでセレナさんたちに礼を告げていたから戻ったのが遅れた俺を出迎えてくれたのは珍しい事にソフィアだった。
そのまま俺の腕を取って抱え込むように抱きついてくる。
「ああ、ただいま」
至福の笑みを浮かべる妹に内心嘆息した俺はソフィアに抱きつかれたまま屋敷内を歩く。
全てはセリカが色々と暴発したお陰である。そのせいでソフィアの攻勢が強まったのだ。彼女はしきりにくっついてくるが、俺がソフィアを膝の上にのせて色々やりだすとすぐに赤面して大人しくなってしまうので、可愛らしいものだ。
本当なら頭を撫でて可愛がってやりたいが、今のソフィアは子供扱いだと機嫌を損ねるので気の済むようにさせるしかない。
妹を引っ付かせたまま俺は皆が居る談話室に向かうと、そこには先ほどまでの面子と俺の仲間達が顔を揃えていた。
「手間を取らせて悪いな、ようやく本題に入れる」
「仕方ないわよ。クライアントが顔を出したいってのを断れるはずもないんだし」
開口一番謝った俺をエレーナが慰めてくれた。ソウカの参加は想定外であったが、あの娘にも神殿の都合があったのは言葉の端々から窺えた。獣神殿は巫女を頂点とする組織である事は確かだが、獣王国で最大規模を誇るだけあって信徒は数百万人を数え、関係者だけでも数万人いるというとてつもない巨大組織だ。当然のように国からの干渉もある、というか俺達が出会う切っ掛けとなった事件も国からの横槍だったな。神殿内も大鉈を振るって”掃除”したと言っていたが全てを排除し切れなかったと見るべきだろう。
「もう大分遅くなってきたし、用件だけを話しておこう。今回の探索に参加するのはライカの所の3人、”緋色の風”の4人、エレーナたち3人の他に、俺と如月が参加する。玲二は不参加でいいんだな?」
「ああ、すげぇ行きたいけど学院関係が忙しくてさ。特に大会関連で休めなくなっちまった」
最初はダンジョン探索に乗り気だった彼だが、取り止めとなった。初開催となる武闘大会が異様な盛り上がりを見せていて、こちらよりも優先したいらしい。王都のリルカのダンジョンを既に経験済みと言うのもありそうだが。
「他にはハクが参加する。こいつもダンジョンは未経験だが、ユウナが色々仕込んでいるから足手まといにはならんはずだ。スカウトとしての技量も期待できるはずだ。スイレン、面倒をみてもらっていいか?」
「解りました。ハクとは何度か依頼を共にしていますから、期待してします」
「色々と勉強させて頂きます!」
ハクは俺がランヌ王都のギルドに詰めている時に付けられた元暗殺者の少女だが、色々あってユウナの元で修行中だ。単独行動を許されるくらいには成長したが、修業の一環として今回の探索に加入させた。本人は努力が認められたと喜んでいる。
”緋色の風”たちとは幾度か依頼を共にこなしているので気心も知れているし、彼女達はスカウトが不在なパーティーなので歓迎された。
「それとユウナも不参加になる、レイア、君はどうする?」
「我が君の命令とあれば従うが、アリアと私が両方ともいないとセラ大導師が寂しがるからな、遠慮しておこう」
例のギルドとクランの件でユウナも情報収集を頼んでいて、参加は不可能だ。熟練のスカウトであるユウナが来ないことにダンジョンの恐ろしさを身に沁みて知っているエレーナは顔を強張らせた。
初心者揃いの今回はそこが一番危ぶまれる所なので、一応手は打っている。
「索敵や罠を察知するスカウトの不在は不安だからコイツを連れて行くといい。肉の盾に使うも良し、罠に突っ込ませるのも好きに使ってくれ」
俺はロキの文身体を3体呼び出した。いくらでも創り出せる都合の良い存在だから便利に使い倒せばいいと思っているが、女性陣の反応は違った。
「か、かわいい!」「師匠、この子を盾になんて出来ません」「お師様、どうかご再考を!」
何故か子犬の姿で現れた駄犬はあざとい格好で皆の同情を引いていた。何度でも再生するし痛覚もないんだからいくらでも死ねるってのに、何を言っているのだか。
「お前等が痛い目見るよりかマシだろう。ダンジョンの罠は初見じゃ見抜けない物も多い。活用しろ」
まだ何か言いそうなので駄犬に命じて馬のような大きさに巨大化させると途端に黄色い声は消えた。少なくともこいつは愛玩に耐えられる生物ではない。
「どんなダンジョンなのか分からんうちに細かいことを言い出せば切りが無いからな。パーティー間の連携やらはおいおいやっていこう。だが、今のうちに探索の指揮官だけは決めておきたい。エレーナに頼みたいが、構わないか?」
複数のパーティーが参加する合同探索において物事の指針となるべき判断を下す存在は大事である。責任は重大だが、居ないとただの烏合の衆になってしまうからだ。
ダンジョンに関する経験と知識にかけてはこの中ではエレーナが随一だ。自信家のライカでさえ不満はなさそうだったが、当の本人から異論が出た。
「えっ、私なの? てっきりあんたが仕切ると思ってたけど」
「このダンジョン探索は基本全部お前達に担当してしてもらうぞ。求められれば手は貸すが、情報を集めて決断するのはそっちだ。俺は大人しく荷物持ちでもやってるよ。見知らぬダンジョンなんて、気分転換にはもってこいだからな」
「気分転換って……師匠、お疲れなのですね」
ふと遠くを見た俺の目はどのようなものだったのだろう、ライカが労るような声をかけてきた。
「ここ最近、宝箱開けてばっかりでな。ちょいと他のことをやってみたくなったのさ」
かれこれ数千個は宝箱を開けているが、未だに揃わない鍵に心が疲れ始めていた。
最初の内はあれ程楽しかった行為がいまでは億劫になってきている。今朝などは回収だけして中身はまだ確認していない位だ。後で欲しいもの幾つか渡すからライカにでもやってもらおうかと思っている。
俺には気晴らしが必要なのだ。
「じゃあ、師匠と如月さんはどのパーティーと一緒に探索をするんですか?」
「特に決めずに適当にやるさ。どこかに合流してもいいし、二人だけで組むのもいいかもな」
本当なら戦力の不均衡が起きているエレーナの所を中心的に見てやるべきだろう。”緋色の風”はダンジョン経験は浅いがハクにロキまで加われば戦力的に死角はない。ライカの所はタイチが居なくなったが、スカウトのシズカに鉄壁の防御力を誇るカオルがいるし、何よりライカが強すぎる。ダンジョンの罠にさえ注意すれば何も不安はないだろう。
だからエレーナの所が不安といえば不安だ。リーナは浮き足立っているし、今も姉弟子は不安げな顔をしているが、なんと言っても百戦錬磨のエレーナの存在が俺を安心させている。全員後衛だからロキを盾にしていれば危なげなく敵を倒せるはずだ。
よくよく戦力を確認してみると、やはり全く心配ないように思える。これから向かうダンジョンがウィスカみたいな超絶鬼畜難易度でもなければ恐れるべきはダンジョン特有の仕掛けや罠だけだろう。
「まあ、現状で詰めるのはこんな所か。別に失敗したからって何かある訳でもないんだ。肩の力抜いて気楽にやろうぜ、こういうのは楽しんだもの勝ちさ」
そして二日後、俺と”緋色の風”とエレーナたち3人を連れて木漏れ日の洞窟に馬車で向かっている。馬車を用立ててくれたのは獣神殿であり、当然ながらラナとソウカも同乗している。大神官であるフランが居ないのには……理由がある。
「ねえ、本当に大丈夫なんでしょうね?」
姉弟子がしきりに俺に声をかけてくる。この場にいないライカや如月をアルザスの屋敷に置いて来ているので、それを心配しているのだ。
「問題ない。洞窟の入口に原理のよく解らない結界があるんだが、それさえ越えてしまえば転移環で呼べるのは確認してある。一応男子禁制らしいからな、建前くらいは守ってやらないと彼等の面子もあるし」
あの時の感じからするに多分力ずくで押し入ろうと思えば不可能ではないと思う。そこまでする意味がないからしないが。
「あんたって意外とそういうの気にするわよね。普段はもっと傍若無人なのに」
実に失礼な事をいう姉弟子だが、ここまで俺に遠慮がないのは彼女とエレーナくらいなものだ。その意味で二人が同じパーティーを組んだのは運命的なものを感じる。
「どんなものにも最低限通すべき筋ってものがあるだろ。周囲全てに喧嘩を売って生きるつもりもないからな」
「ユウキさんならどんな障害でも叩き潰せると思う」
姉弟子の問いに答えた俺にモミジがぼそりと呟いた。そりゃこの力を使えば大抵の事は叶うだろう。
「そうなると俺は全てを破壊して、その瓦礫の上で一人嗤うことになるだろう。それは趣味じゃない、俺は気の合う仲間達と楽しく過ごしたいんでね。そのためにはある程度の不自由を受け入れる必要があるのさ」
「それでは、あれもその不自由の一つ、ということになりますか?」
弟子であるキキョウが馬車の外を眺めつつ、とある一点を指差した。<マップ>で既に掴んでいたが、俺達の向かう先に数十人もの獣人が待ち構えているのだ。
「身から出た錆びなら甘んじて受けるが、あれは違うだろ。ラナ、ソウカ、どうやら客人のようだ。俺達を歓迎してくれるみたいだぞ」
「そこなる馬車、止まられよ! 我等は憂国の士である。巫女様にお聞きどけ頂きたき儀ありて、参上仕った!」
目的地である木漏れ日の洞窟前に獣人たちが集っていた。ご苦労な事にその数は50人以上に上るが、ラナとソウカを驚かせたのは彼等の装束だった。
「彼等は神殿戦士団! なぜこのような場所に!」
「それもあの意匠、中央の男は隊長格よ、面倒な事になったわね」
驚くラナとは対照的に舌打ちしたソウカは馬車から降りて彼等に向かってゆく。神殿戦士団とはその名の通り、神殿に所属する武装勢力だ。教会には聖堂騎士団が、暗黒教団にもバーニィのような暗黒騎士団が存在するが、獣王国の神殿戦士団は俺でも知っているくらい勇猛で名高い。
そして同時に厳格な教義原理主義者の集団であるとも聞いている。その彼等が俺達に立ち塞がる理由など考える必要はない。
流石は戦乱の最中にある新大陸、それも力に重きを置く獣王国だ。やはりここは退屈とは無縁の土地だな。早速俺を楽しませる催しを用意してくれたとは。
「貴方達、何か目的で私達の道を阻むのですか!?」
神官長として彼等を問い質したソウカだが、その回答は怒気と共に返された。
「大神官よ、貴殿こそ何を考えておられる! 教えにある”待ち人”とは我等に救いをもたらす偉大なる存在。矮小な人間如きにその神聖なる称号を与えるとは、言語道断である! その愚行、断じて許せぬ。大いなる獣神も嘆いておられるであろう。その馬車に”待ち人”を騙る偽物が乗っている事は解っている! 直ちに引き渡されよ、不遜な愚者に我等が天罰を与えてくれるわ!」
さて、面白くなってきたじゃないか。
楽しんで頂ければ幸いです。
うーん。やはり不調なのでしょうか。どうにも話が上手くまとまらない今日この頃。
花粉もあるとは思うのですが、書いた文章が何故か気に入らなくて手直しばかりで先に進みません。
日曜予定がこのザマです。量も微妙に少ないし。
でも次は水曜予定で頑張ります。
もしこの拙作が読者様の興味を引いて頂けましたら評価、ブックマークなど入れていただくとこれに勝る喜びはございません。何よりも作者のモチベーションが超絶鰻登りになります。更新の無限のエネルギーの元になりますので、何卒よろしくお願いします!




