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魔法の園 38

お待たせしております。



「待たせたな。君の話を聞くとしようか、瑞宝」


 俺はこれまでの会話の中、一言も声を発しなかった瑞宝と向き合っていた。


 男連中は部屋の外から聞こえる宴の声に釣られて全員が出て行った。凛華たちは自分達の事は気にするなと言っているが……いやそういう問題じゃないんだが、流石の帝族だ。一般人とは感性が違う。



 込み入った事情かも知れんから席を外せと言ってもこうなので諦めるほかない。

 瑞宝の用件になんとなく察しがついてなければ無理矢理部屋の外に出したかもしれない。



「頭、今のリエッタ様の病状はいかがなのですか?」


 暗く沈んだ声で瑞宝が問いかけてきた。やはり彼女がらみの話なのか、ザインも瑞宝が同行を申し出たのは完全に自分達と別件だと言っていたし、凶報を聞いて居ても立ってもいられなくなったのだろう。


「リエッタ師の命は風前の灯だ。もってあと数日だろう」


 正確には数日で切れるのは時を止める魔導具の内臓魔力で、リエッタ師自身はもう既に死んでいるようなものだが、口で説明するのは複雑なのでそのように答えたら瑞宝はその端正な顔を険しくさせた。


「ああ、なんてこと……きっとあの方の病は私が原因なのです。リエッタ様、そしてご家族の皆様には、この命でお詫びをしなければ」


 本気で命を絶ちかねない空気の彼女を慌てて押し留める。何故彼女の病気が君のせいになるんだ。普段理性的な瑞宝からは考えられないほどの論理の飛躍だった。


「やめろって。落ち着けよ、君らしくもない。今の話を聞いていただろ? 俺達は彼女の命を助けるべく動いているんだ、こんな面倒な真似までしてな。だからリエッタ師は必ず助ける、俺が約束する。瑞宝は俺が信じられないか?」


 俺が決意を込めて言葉を発すると、涙が溢れる瑞宝の瞳にも力が戻ってきた。


「神を信じなくなって随分と時が流れましたが、頭の言葉ならば信じます。貴方様の御力、奇跡を幾度となくこの目に焼き付けてきましたから」


 イリシャの瞳の傷を癒した時に彼女は俺の魔法を側で見ているから、回復魔法の枠を超えた(普通、傷跡はどうあっても消せないそうだ。美の館で美容とは別に傷跡を見えなくする化粧が大流行しているのも納得である)治療が存在するのは知っているはずだ。

 瑞宝の瞳には縋るような光があった。これまで常に余裕を忘れない大人びた美女であった彼女がこうまで憔悴するとはリエッタ師は瑞宝にとってそれほどに大事な存在なようだ。


「リエッタ師とは知り合いだったんだな」


「弟共々、幼い時分に大恩を(こうむ)りました。命だけではなく将来まで救っていただき、言葉に出来ないほど感謝しております。いつまでもお元気な方だと信じておりましたが、今回の報せを聞きまして……頭、リエッタ様は今どちらに? せめて御姿をと思いましたが、今の在所がようとして知れず」


「ああ、場所を移ってもらってる。実は今の君のように見舞いを求める人々がクランに大勢押し寄せていてな、それを避ける意味でもな」


 本音は胸に魔法の短剣が刺さっているリエッタ師を見せられないから隔離しているのだ。実際に”母親”の様子を見に来ていたクランの子供達に気付かれないようにするのに一苦労だった。そうでなくても今回の一件は”リエッタ・バルデラ殺人事件”などと一部で呼ばれ始めている。あの光景だけを見れば間違っていないので否定は出来ないのだ。


 瑞宝が狂おしいまでの視線をこちらに向けてくる。言葉にしなくても彼女の望みはわかっているが……まあ、瑞宝なら俺の事を大分知っているし、問題はないか。


「解った、案内するがその前に身内の許可を取りたい。一緒に来てくれ」


 赤の他人の俺が眠りにつくリエッタ師の下を訪れる許しを出すのも筋が違う気がしたので、ザイン達と既に一杯やっているリッド(身内)の元へ向かう。


「なあ、リッド。盛り上がっている所悪いが、彼女をリエッタ師の元へ向かわせても良いか? 瑞宝の人となりは俺が保証する」


「なんだって? 身内以外は面会謝絶というルールを曲げるわけにはいかないだろうが……まあ、ユウキならいいか。そちらの方は母さんと面識が?」


「かつて家族共々命を救われました」


 必死さを感じさせる声音に周囲の幹部連中も驚きの表情だ。気持ちは解るぞ、俺もここまで取り乱す瑞宝は新鮮だ。新たな一面を見た気分だが、本人は本当に深刻そうなので口にはしない。


「ああ、そういう。解りました、ユウキが連れてゆくなら何もないと思うが、誰か何か言ったら私の名前を出してください」


「あ、ありがとうございます! このご恩は必ず!」


「そうお気になさらずとも大丈夫ですよ。母さんはしょっちゅう()()()()事をしている人なので、クランハウスの空き部屋には同じ目的の人が大勢宿泊していますから」


 瑞宝の必死さに比べてリッドが軽い感じなのはそのためだ。エルフという長き時を生きるリエッタ師は方々でその卓越した付与魔法を使い人助けを繰り返しており、本当に慕われている。

 彼女の行いは自作の絵本にも描かれており、功績を誇る方ではないのか描写はかなり控えめだが、普通に一地方の水不足を解消したとか土地に活力を与えて次の年は大豊作だったとか子供に読ませる創作絵本の内容ならともかく、実際に行っていたとしたら凄まじい大偉業が盛り沢山だ。


 世界的なクランの顔ともいえる存在であり、彼女の病気の噂(エリクシールの材料をクラン総出で集めている時点で隠しようがなかった)が流れると文字通り世界中から彼女の見舞い客やその偉いさんの使者がやってきていた。


 リエッタ師があの状況では面会謝絶だと繰り返すしかないクランの者達に一度は遠方からはるばる来たのに見舞いさえ許さないのか、と怒り出すものもいたが、俺達の目的を知って状況を静観する構えだという。

 そりゃあ魔法においては他の追随を許さないマギサ魔道結社の総本部が総力を挙げてお伽噺の産物であるエリクシールを作ろうと言うのだ、更に最早数が多すぎて適当に扱われているポーションはハイポーションの中でも最上等の部類とくればもしや本当に、と期待を抱く者も出てくるだろう。


「じゃあ俺達は彼女を連れて行くが、リッドはどうするって聞くまでもなさそうだが」


 すっかり腰を落ち着けてザイン達と話し込んでいるリッドを見れば俺達と同行するつもりはない事は解った。


 追加の酒と肴と大量に置くとそれを見た野郎共から割れんばかりの大歓声が上がる。どうもこいつらの参加理由が俺の話に乗れば美味い酒と飯にありつけると思っている輩が多そうな今日この頃である。


「これだから頭のヤマはやめられねぇんだ。幾ら金を積んでもこの酒と飯は食えねえ」「おうよ、選抜を勝ち抜いた甲斐があったってもんだ」


 というような赤ら顔の男どもの声が聞こえてきて、やはりそうなんだなと納得したのだった。




「頭、姉御とのお話はお済みになったので?」


 ゼギアスが俺達に対して声を顰めて話しかけてきた。


「ああ、個人的な話だった。お前にも大体想像はついてるだろうが」


「ええ、なんとなくですが。しかし姉御の顔を見れば無事解決したのはわかります。いやあ、今回は肝を冷やしましたよ、あの姉御があんなに取り乱すなんて始めて見ましたから」


 ゼギアスと瑞宝は同じ”ウカノカ”出身なので普段から気安い関係だ。組織内で誰とも知れぬ娼婦の子として生まれ、娼婦達を母や姉として過ごした彼にすれば瑞宝は頭の上がらない姉のような存在であり、先ほどの話し合いでも幾度か視線を瑞宝にやっていたのは知っていた。


 これ以上口を開いたら後でひどいわよと視線で語った瑞宝にゼギアスは硬直する。これだけで二人の関係性が窺える。


「ゼギアス、宿の主人達にこいつを渡しておいてくれ。今日は迷惑をかけるとな」


 俺は金貨の袋を彼に渡した。万事手抜かりのない彼だからそこのところはわかっていると思うが、集団の頭として通すべき筋がある。


「解りました。()()()()でよろしいのですね」


「その通りだ。あと明日の分の酒をこいつに入れておいたから、始まる前に飲んでおけ。もちろん()()に支障をきたさない程度にな」


「なるほど、了解です。後の全てはこちらでやりますので、頭は思うままに動かれますよう」


「クランの連中は腕利きはいるが、大集団での荒事はほぼ未経験だから不安で仕方ない。だからお前達を呼んだんだ。玄人の喧嘩の手際を素人たちに見せてやってくれ」


 頭の切れる彼にしてみれば、今の会話で全てを了解しただろう。お任せくださいとの言葉を背に受けて、俺達はリエッタ師が眠るダクストンホテルに足を向けるのだった。




「なんじゃ、そやつらは?」


「あれ、先生戻られていたんですか」


 リエッタ師が眠る部屋の扉を開けた俺は予想外の人物が中にいる事に驚きの声を上げた。

 珍しい事にセラ先生が寝台で眠るリエッタ師を診ていたのだ。


「この馬鹿者の顔でも見ておくかと思っての。自分の子供達に心配をかけおって、まったく」


「先生がこっちにいるという事は、今ポルカとマールの側には?」


「アリアとリーナ、それにレイアがついておる。監視の目は絶えておらぬが、それ以外はいつもと変わらずじゃ」


 何度見ても違和感が拭えない若い姿のセラ先生にやりにくさを感じながら、俺達は会話を続けるが。背後から驚きの声を上げる者がいた。


「あ、貴方様はセラ大導師さま! ”偉大なる(グラン)”・セラさまではありませんか!」


 驚愕の叫びを上げた瑞宝は俺が止める間も無く先生に向かって駆け出すとその場で跪いた。


「な、なんじゃお主は!?」


「かつてトラン大峡谷にて氏族全ての命を救われました。今この場に居ることが出来るのも、セラ様やリエッタ様のご温情あっての事でございます」


「あの古のトラン大峡谷じゃと……まさかお主、あの時の幼い姉妹か! おお! 見違えたぞ、健勝そうではないか!」


「ああ、リエッタ様の危機にセラ様が駆けつけてくださったのですね、”八耀”の御一人がいらっしゃり、頭までがお力を貸してくださっているなんて……これほど勇気づけられる事はございません」


「これ、頭を上げんか。異なる氏族とはいえ同種同士が力を貸すのは当然のこと。まずは立つがよい、今は私よりリエッタの馬鹿者を見舞うのが先じゃろ。と言っても本人は魔法の眠りについておるが」


 今度は涙ぐんでいる瑞宝にセラ先生のほうが戸惑っている。そして戸惑っているのは俺の隣にもう一人。


「お、おねえちゃん……」


 か細い声を上げたのはノーマ君7歳である。

 瑞宝に弟がいるとは聞いていたが、その姿を見た者は殆ど居なかった。付き合いの長いゼギアスでさえ顔を見た事がないというほど隠していた存在だった。

 どうやったのか謎だがその彼の人質に取られて彼女は”ウカノカ”に逆らえなくなっていたのだが、まさか弟も船に同乗させているとは予想外だった。


 しかし、このノーマ()であるが……(くん)、ねえ。


 俺は背後に居るオウカ帝国の一団の一人、カオルの顔を見ていた。


「な、なんですか、ユウキさん?」


「いや、特にお前に関係する話じゃないんだがな」


 不思議そうな顔をするカオルだが、まさかお前さんの真逆の存在が現われるとは思っていなかった。


 ノーマ君は肩までの艶やかな金髪を持つ細身の男子であるが、俺には無理に男装させた女児にしかみえない。

 先生もさっき姉妹ってはっきり口にしてたしな。


 女装する男子と男装する女児がこの場にいるというかなり混沌とした状況になっている。




 そして混沌は加速する一方だ。


 隣ではセラ先生という有名人の存在に興味を示した凛華が目を輝かせているし、隣の部屋からは一体何の騒ぎなの? と顔を出したエレーナがいる。間違いなくこっちに来るだろうな。

 先生はこの状況を解っているくせにそんなことお構いなしで瑞宝に釣られるように前に出たノーマに次々と言葉をかけて怖がらせている。


「お主がレダ直系、最後の生き残りか。ふむ、確かに面影がある。あの時、お主は高熱を出しておってろくに話も出来なかったからのう」


「え、えと、あの、お、おねえちゃーん……」


 無遠慮に話しかける先生にどう見ても人見知りをしているノーマ君は瑞宝に助けを求めているが、当の本人はリエッタ師の胸に突き立った魔導具のナイフを見て絶句している。


「か、頭、これは一体!?」


 そして俺の服の裾を思いっきり掴んで引っ張ってくるのは当然馬鹿弟子だ。


「師匠、師匠! あの超美人は誰なんです!? 凄い魔力ですよ、あの人! 先生って事は師匠の師匠!? でもさっきセラ先生って……あれ? ど、どういう事なんですか?」


「雷華よ、あの瑞宝なる者が申していたではないか。グラン・セラとな。あれほどの勇名を騙る愚か者はおるまい。してユウキよ、私に紹介はしてくれるのだろうな?」


 多くの女が俺に対して説明を求めてくる。なんでこんな面倒臭い状況になっているんだ。こちとら国相手に大博打を仕掛けようとしている矢先だってのに。


 全てをあきらめた俺は無言で嵐が過ぎ去るのを待つのだった。




「しっかしまさか瑞宝さんがエルフだったなんて驚きだよな」


「元から偽名っぽい名前だとは思ったし何かあるんだろうとは思ってたが、種族を隠していたとはな。姉弟子といいこっち側のエルフは何か秘さないといけない事情でもあるのかね。まあそこまで興味はないけどな」


 その夜、仲間たちの集いで玲二が開口一番につげた今日一番の驚きの事実はこの場の話題をしばらく独占した。


「ユウキも気づいてなかったのかよ。俺はそっちの方が驚きだぜ」


「謎めいた美人に秘密はあって当然だろうが。そのほうが面白いし、敢えてそのままにしておいたんだよ、俺に危害を加えるような話じゃなさそうだったしな」


「ですが、確かに何かありそうですね。気になるようでしたらお調べしますが」


 ユウナがそう提案してくるが、俺は即座に否定した。


「いらんいらん、絶対俺に関係する話じゃないし。今それどころじゃない。君とレイアには一番大事な箇所を担当してもらうから、それに集中してくれ」


「畏まりました」


 レイアは今マール達と同じ部屋で休んでいるからこの場にはいない。悪いとは思うが、監視だらけの王城で彼女が向こうに居てくれているから俺がこの場にいられるのだ。



「今の状況だと作戦は明日決行かい?」


「ああ、欲を言えば警備上の隙が出来る4日後まで待って万全を期したいが、時間の余裕がない。明日でケリをつける」


 如月の問いにそう俺はそう答えた。魔導具の効果時間切れ寸前まで待つのも手ではあるが、もし何かあったとしたら対策が取れない。


 その対策というのもとても誇れたものではない。


 ポルカが作製したエリクシールが望む結果をもたらさなかったら、側にいるユウナとレイアがこっそり蘇生魔法(アレイズ)をかけまくるという寸法だ。仮にも蘇生魔法と銘打っているんだ。二人で数百回もかければ一回くらいは偶然成功するかもしれないしな。


「ユウキは蘇生魔法をとことん信用してないね」


 如月が俺の考えを知って苦笑する。


「エクスポーションで失った手足が生えてくる世界に文句つけても始まらないが、エリクシールの文献でも蘇生した記録がなかったしな。たぶん同じ効果な気がするが、まあ保険として備えておくさ」


「クロノブレイドの力はあと3日は残ってるんだっけ?」


「ああ、そうだ。多分だが、リエッタ師の意識は戻ってる気がするな。俺達が何をするか分かって魔法抵抗を弱めているような印象を受ける。そうじゃないと説明ができないし」


 既に俺が初めに仮定した5日は過ぎているが、時を止める魔導具はまだ効果を発揮している。途中で彼女の抵抗が一気に弱まった為だ。

 その事実はクランの皆に彼女の意志を感じさせ、エリクシール製作を一層邁進させる原動力となった。


「警備責任者が僅かな間不在になる絶好の隙なんだが、いくらなんでもギリギリ過ぎてな。もし手違いでもあって失敗したら全部台無しだ。それを思えば明日は、まあ悪くない方さ」


 警備の人数は普段と変わらず21人だが、責任者は魔導院が受け持ち騎士団から16名もの人員が派遣される。

 ここで大事なのが、吟零草を直接監視しているのは魔導院の者たちであることだ。騎士団も要求したようだが、普段から生育を管理している魔導院に主導権があるのは仕方ないことだった。

 色々と権力争いの匂いがするが……実に有り難い。美味しく横から掻っ攫わせてもらおう。


「しかし凄ぇなスカウトギルド。何でもかんでも調べ上げて来るな」


 警備人員計画表を眺めている玲二が感嘆の声を上げた。それも無理もないことでこの情報は警備が始まる前日にユウナがギルドから手に入れてきたものだ。


「そこはたやすく入手するユウナの腕を褒める所だな。内部情報を手に入れるには相当の金と労力がかかってる筈だ」


「今回はさほど苦ではありませんでした。幸い、ギルドマスターがかつてリエッタ様に恩を受けていたらしく、我々の動きを知り協力してくれましたので」


 行く先々で色んな人を助けてきたリエッタ師の行いが今返ってきているというわけだ。まさに人徳ってやつである。



 その時、屋敷の転移環に反応を感じた。転移環をおいてある部屋はこの屋敷でも奥まった場所にあるので、迎えに行くとトテトテと小さな足音が聞こえる。


「にいちゃん、つかれた」


 俺よりも帰宅が遅かったイリシャを出迎えると神秘的な印象を受ける巫女服を身に纏った妹はその姿のまま俺に向かって倒れこんできた。

 比喩ではなく本当に倒れこんでくるのだが、既に慣れたものなのでそのまま腕の中に抱え上げた。

 最近のイリシャは巫女の仕事の一つとかで沐浴をよくするようで、その際に使われる香油の香りがした。俺としてはあまり好みの香りではなく、本人も好きではないようなので<浄化>で消し飛ばした。


 これでいつもの俺の妹に戻った感じがする。


「おつかれさまだな、大変なら我慢せずに俺に言えよ? なんとかしてやるから」


「つかれたけどだいじょうぶ。これも必要なことだし」


 俺の腕の中でむん、と張り切っている妹だが、こちらは心中複雑だ。イリシャは春先(大体70日くらい先だ)に行われる公会議とやらで正式な”時の巫女”として御披露目させる予定らしいが、この妹はそこで巫女の世界を牛耳ると息巻いている。

 牛耳ってどうするかといえば……俺にくれるんだそうだ。


 正直貰って俺に何をしろというんだ? という疑問しかないんだが、明確な目標を得たイリシャは熱意を持って頑張っている。それは今日の遅い帰宅を見れば解るとおりで、兄貴としては応援してやりたいが

、どうすればいいんだろうか。

 とりあえずはこれにより負担が増しているコニーたち侍女や巫女見習いに差し入れの量と回数を増やすくらいしかやれていない。


「ごくらく」


「まだ夕飯食べてないだろ? 疲れてるだろうが、ちゃんと食べて寝ないとダメだぞ」


 神殿の最秘奥である巫女に二食が出ないなどという事はないが、巫女の食事は体にはいいらしいが俺から見ればとても質素であり、妹の健やかな成長(只でさえ栄養の足りていないイリシャは年齢の割に小柄なのだ)を願う俺はそれ以外にも屋敷で食べさせている。


 しかしながら我が妹は幾ら食べても目方が増えないという周囲の女性陣から嫉妬の炎を燃やさせる体の持ち主であった。

 雪音などは特に気にしていて、俺は何度ももっと食べた方がいいと口にした事があるが、こればかりは女性の(さが)だと聞いてはもらえない。

 女が美しさへ求める飽くなき探究は”美の館”の繁盛ぶり事が端的に証明しているし、その莫大な売り上げの一部を享受している身としては、解りましたと引き下がるほかなかった。

 太っている事は富の象徴でもある(貧乏人は太れるほど食えないので、結婚相手が肥えていると相手方の親は金銭面で苦労する事がないと安心するほどだ)ので、けっして悪い事ではないはずだが、女性にとってはそういう次元ではないらしい。


 だがそれはそれとしてイリシャが軽いのは気に食わない。痩せ衰えていた初めて出会った時の空恐ろしさを思い出させるからだ。同じく食べられなくて軽かったシャオは今では随分と俺を安心させる重みとなってきているだけに余計感じるな。


「だいじょうぶ、なんともないよ」


 <共有>も無いのに兄の内心を読む事に長けている妹たちにはお見通しだった。しかし、俺は引き下がらない。今日はとっておきの武器があるのだ。


「そうか、今日はたい焼きがあるんだが、イリシャがそこまで言うなら……」


「それはべつ。甘いものはべつばらだから」


 早く早くと急かす妹に癒されながら俺は皆が集まる談話室に向かうのだった。



「あ、イリシャおねーちゃん、おかえりなさーい!」


 姉の帰還を見たシャオがこちらへ駆け寄ってくる。先ほどまで猫のクロと一緒に謎の遊びをしていたが、姉を見て一目散に駆けてきた。忠実な護衛であるクロはその後を付いていこうとしたが、雪音にその身柄を横から強奪されていた。イリシャの護衛である駄犬は俺が談話室の扉を開けたら既に転移しててきており、盛大に欠伸をしている。こいつ普段から寝てばっかりだな。それでいて神殿の巫女見習いに神狼として毎日毛繕いしてもらっているからその白銀の体毛はきらびやかだ。何か無性に蹴りたくなってきた。


<わふ。い、今、身の危険を感じたワン>


 俺は欠片も感じないが、他のものから見ればこいつは大層な神威とやらを放っているらしい。なのでこいつを護衛にしているイリシャの権威向上に一役買っていると聞いてからは特別扱いもある程度は許しているが、締めるべき所は締めないとな。


<我はご主人しゃまの忠実なる下僕でありますワン。だから生肉は許して欲しいワン。あれはもう美味しくないワン>


 最初の頃は生肉でも喜んで食ってたくせに随分と舌が肥えたもんだ。


「兄ちゃん、ロキはちゃんとまもってくれてる。わたしもあんしん」


<い、妹しゃま! 一生お護りするワン!>


「ときどきみんなからお肉をやいてもらってるけど」


「お前、他所で買い食いはするなと何度言えば」


<ち、違うワン。自分の手持ちから小腹が空いた時に……>


 俺はかねてから護衛中は飯を食うなと厳命している。厳しいようだが食うと眠くなるそうなので禁じている。そもそも食事を必要としない不思議生命体なので肉は完全にこいつの趣味だ。イリシャを護らせるに当たってこいつにはかなりの便宜を図っている。肉保存用の時間停止機能がついているマジックバッグを個人で持っている犬は世界できっとこいつだけのはずだ。今では好みのタレを玲二たちに強請って数十種類完備している有様なのである。

 イリシャが屋敷に居る時は何時でも何百枚でも食っていいから護衛中は止めろと言い含めていたのだが。


<あ、あわわわわ……>


 こりゃ仕置くかなと思っていた俺の思考は下からの衝撃に中断された。


「とーちゃん、シャオも!」


 妹を腕に抱いていたのを見て羨ましくなったのか、娘が俺を登ってきた。これも既に慣れたが駆けたまま飛び掛ってくるので衝撃は中々だ。俺以外にはしてはいけないよと伝えているし、こちらの言葉をメイファと同じ時期に覚えてしまったほど地頭は良い子なので他ではやらないだろう。


 俺が手近な椅子に腰掛けるとシャオがもぞもぞと動き、膝の上のイリシャにのしかかるように抱きついた。具体的には、妹が俺の膝とシャオに挟まれている感じだな。これはシャオが姉とじゃれ付くときに良くやるのだ。


「シャオ、おもい」


「えへへ、おねーちゃん」


 その様子に俺の心の平穏が満たされてゆくのを感じ、仲間たちとのこの時間を何があっても守り抜かないといけないと覚悟を新たにするのと同時に、一つやっておかねばならない事を思い出した。


 俺は二人をそれぞれ抱き上げると、しっかりと抱き締めた。


「にいちゃん……」「どしたの、とーちゃん?」


 シャオが疑問の声を上げたのに対し、イリシャはどこか諦めたような声だった。妹は何でもお見通しだな。


「いやな、たぶん4、5日帰れなくなると思うから、こうやって二人の感触を覚えておこうと思ってな」


「え、やだ! とーちゃんかえってこないのやだ! いつもかえってくるのおそいのに!」


 ライカールで色々やっているが、これでも毎晩帰宅をしている。その最たる理由は俺が仲間や家族の顔を見たいからで、転移環さえあれば機密上の問題こそあれ帰宅は出来たからだ。


 だが、今回ばかりは難しい。やろうと思えば短時間だけでも出来なくはないかもしれないが、今回は”成功後”が出たとこ勝負な面が強く、状況が不透明だからな。


「俺も二人やソフィアの顔が見れなくなるのは嫌なんだがなぁ」


「じゃあかえってきて! シャオもやだ!」


 目に涙さえ浮かぶ娘の姿に俺は一瞬で白旗だ。とりあえず何とかする方法で考えよう。

 だが、援軍がシャオの横から現われた。


「シャオ、だいじょうぶ、兄ちゃんはかならずかえってくるから。シャオをおいて行ったりしないよ」


「ほんと? イリシャおねーちゃん」


 俺はシャオが嫌がっていた理由を読み間違えていた。明るく元気な子なので見逃しがちだが、まだ幼いのに産みの親と死に別れ、メイファとも遠く離れた場所に別れているのだ。

 別離に強い恐怖を感じて当然だった。これが俺が軽く考えすぎていたな。


「うん、兄ちゃんがかえってくるばしょはここだけだから。みんなといっしょにまつ。シャオもできる?」


「できる。でもとーちゃん、はやくかえってきてね」


「ああ、もちろんだ」


 というか、絶対に帰って来るのが確定した。最悪相手を買収するか<洗脳>すればいいんだ。後遺症さえ残さなきゃ大丈夫だろ。


<ユウキ、それはマズいから。普通に自分で掛けた誓約破ってるから>


 俺と<共有>している玲二は俺の予定を知っているから<念話>でそう茶々をいれてくるが、それがなんだというのか。俺の家族に会いに帰って来る事以上に優先すべき事があると言うのだろうか。


<いや、まあやり方次第じゃそこまでひどい事にならないと思うけどね>


<そもそもユウキさんがそこまでする意味もないと思いますが>


 如月や雪音も俺の計画に色々言ってくれるが、根底には俺を案じる気持ちがあるのはわかっている。俺にはもったいない仲間たちである。


<これも義理の一つさ。仕掛け人である以上、俺が最後まで見届ける必要もあると思うぞ>


<説得力ないなぁ>


 俺はそう言い訳したが、相棒や仲間に隠し事は無理だった。たい焼きの山から顔を上げたリリィがそうぼやいた。相棒はなにやらたい焼きを使って怪しげな作業をしている。普通に考えて菓子が”泳ぐ”はずがないんだが、仲間が止めに入らないから何があるのだろうか。


「でも兄ちゃん」


「ん、どうした?」


 俺をじっと見つめるイリシャの虹彩異色(オッドアイ)は吸い込まれるように美しい。これを不吉の証なんて言いだした奴は頭がおかしいんじゃなかろうか。


「でも、()()はわたしもばかだとおもう」


 未来が”視え”ていたらしいイリシャのあまりにも率直な意見に虚をつかれた俺は思わず動きを止め、そして不意に湧き上がるおかしさを感じて笑ってしまった。


「むう」


 馬鹿にされたと感じたらしい妹は俺の胸をぽかぽかと叩き始めた。それを遊びだと思ったらしいシャオも参加してきて俺の胸は叩かれ放題だ。


「ああ、すまんすまん。言われてみれば確かに馬鹿そのものだと思ってな。つい笑っちまった」


「でもやるんでしょ?」


「ああ、それしか思いつかなかったからな。俺の頭は二人みたいに出来が良くないのは知ってるだろ」


「そんなことない。兄ちゃんはあたまいい。わたしも如月お兄ちゃんもたすけてくれたし」


 俺をぎゅっと抱きしめる妹の暖かさを感じながら、俺は別のことを考えていた。



 まあ、馬鹿は馬鹿らしく盛大に馬鹿なことをやるとしようか。





「でも、ちゃんとソフィアおねえちゃんに言って行ったほうがいいよ」


「う、ああ、そうだな。気が重いがちょっと話してくる」


 今は他国の姫さんたちと通話石で夜の会話を楽しんでいるソフィア(その国の姫)に話をするべく俺は立ち上がるのだった。




 翌日、昼下がりのマギサ魔道結社に多くの者達が集まり始めていた。


 その者たちは性別も老若男女問わず様々であるが、ただ一つの強固な目的の元、確たる決意を秘めて足を運んでいた。


 クランのほうでも既に受け入れの準備を整えており、普段は倉庫、かつて総本部が隆盛を誇っていた頃は別館(アネックス)と呼ばれる館に彼等を収容した。


 その数、なんと500人を越えた。


 これは俺の想定をはるかに超える数であったが、男女比が6対4ほどだし、年齢的にも若すぎたり齢を行き過ぎていたりしたので、俺が見込んだ()()としては250人くらいである。もちろん予想以上だ。

 完全に嬉しい誤算である。”クロガネ”連中も数が多かったので丁度釣り合いが取れた格好だ。

 女性陣も母を救えと大いに意気盛んであるが、彼女達の活躍の場ももちろんある、というか他所に頼むのがちょいと不安だったので実に助かった。


「しかしこんなに集まるとはな。百人も来れば上等だと思ってた」


「おいおい、これでも相当絞ったんだぞ。うちのクランを舐めんなよ。って、ああ、そういう意味か。クランとしては冒険者として活動している奴が所属してるが、お袋の”子供達”は独立してる奴の方が圧倒的に多いからな。大抵がこの王都で暮らしてる」


 悠久の時を生きるエルフとして多くの孤児達を救い続けてきたリエッタ師だ。救われた孤児が曽祖父だけど、一家揃って彼女に世話になってきたというような家庭もあり、ラルフが王都中の”子供達”に声をかけた結果、選抜に選抜を重ねてこの数だという。


「ちゃんと見極めたんだよな。あそこなんてもうすくお迎えが来そうな婆ちゃんじゃないか」


「あれはゼッタの婆ちゃんか。あの人はこの王都でも有数の水魔法の遣い手だぞ。お袋助けて死ねるんなら本望だって息巻いてるし、幼い家族がいる奴や、年老いた親が居る奴は除外した。むしろ説得する方が疲れたぜ。どいつもこいつもお袋に恩返し出来ると聞いて参加したがってよ」


 もちろん命の危険があると言い含めているとラルフが断言したが……まあ俺も覚悟を求めただけで実際に死んでもらうつもりはない。

 何しろ今のクランはハイポーションの所有数ではぶっちぎりで世界一だろうし、即死さえしなければそこらに置き切れなくて無造作に大樽で山ほど置いてあるハイポーションを杯で飲めば治るだろう。恐るべきはポルカの技量と<至高調合>である。ポーション瓶はとうに枯渇し、買い取るはずだった冒険者ギルドも薬師ギルドから価格崩壊甚だしいからとりあえず止めてくれといわれて在庫が溜まる一方だ。いずれ需要が高い新大陸や戦争中のオウカとグラにでも売りに行けばいいと思っている。

 なにしろポーションは消耗品だ。使えばなくなるから危険な場所では需要は山ほどある。



 死んでもらうつもりはないが、死ぬかもしれない覚悟を持ち本気で挑んでもらう必要がある。


 何故なら相手が相手であり、本気でないとこちらの意図が見抜かれてしまう恐れがあるからだ。

 だから俺はこの期に及んで詳細を誰にも明かしてない。今のこの場に集った者達も、概要を説明するから時間をくれと話してある。


 もちろん嘘である。


 説明はするが、この場で決行する。


 ルーシアやラルフ、リッドなど主だった者には伝えているが、一番の懸念は情報漏洩である。

 なにしろ作戦が単純極まりないし、計画が漏れれば即座に対策が取れる。

 もっと入念な計画をといわれるかもしれんが、逆に訓練も連携もないやる気だけの烏合の衆に微に入り細に入る行動を命じても混乱するだけだ。果てにはやる気が空回って暴走しかねない。その相手が王家だと、間違いなくクランは破滅する。


 誰にでも迷いようのない単純な命令を簡潔に下す。これを念頭に計画を立てる必要があり、至極簡単な企みを実行に移すのだ。




「皆、よく集まってくれた。本当に感謝するぜ、お袋のため、どうか力を貸して欲しい」


 別館に集まった500人を越える”子供達”に向けて壇上のラルフが声を張り上げた。この場にはもう一人の幹部であるルーシアも王城から戻ってきている。

 普通なら平民が王城から頻繁に出入りなど勝手に抜け出す俺以外は不可能なのだが、元王宮鍛冶職人であるベル親方の存在がある。彼は未だに王宮の裏口を誰に咎められることなく歩ける人物であり、手伝いと称してルーシアを連れ回していた。もちろん小うるさく言ってくる真面目な衛兵はいるが、そこは俺の十八番である賄賂(酒と食い物)の出番である。

 それに俺案件だと執政であるセイブル侍従長からの御達しもあったようだ。

 見知らぬ王宮で心細い思いをしているポルカやマールには彼女の存在は大いに助けになったに違いない。今二人の下にはレイアとユウナが居る。今頃、二人には今回の計画の詳細が明かされているだろう。


<いや、直前まで詳細は明かさぬつもりだ>


<同意見です。マールは場慣れしておらず、動揺が見られます。あの者の性格なら直前に教えて余計な緊張は最小限にすべきかと>


<わかった、判断は二人に任せる。俺達は所詮裏方だしお前達が全ての要だ、頼んだぞ>


<お任せあれ、我が君。まあ大船に乗った気でいてくれ>


<本来であれば私がそちらに行くべきなのですが、事実としてユウキ様が外出している今、警戒は緩んでおります。このご英断、必ず生かして成功させてごらんにいれます>


 <念話>の有効性はこのような2作戦を同時平行可能な点で圧倒的に有要だ。特に声に出さずに済むので隠密性にまで優れているときた。かつては<共有>している全員に駄々漏れしてしまう欠点があったのだが、これは仲間たちの試行錯誤にて解決している。なんでも特定の人員を選んで会話を繋げる手段かあるとか。玲二達が使っている”会話あぷり”にそんな機能があるから真似してみたとか異世界人すげえなとしか言えない。



「これまでお袋に会わせてやれなかったし、詳細も全然明かせなくてすまねえと思ってる。でも、みんな知っての通り、お袋がいなくなれば優位に事が進められると思っている奴等がいる。だが聞いてくれ、クランはお袋が育てたが、お袋の所有物じゃないってのはみんな耳にタコが出来るほど本人から聞いていたと思う。だからそう思う奴がいてもそれは仕方のないことだ。俺はぜってぇに認めねぇがな!」


 そうだそうだと声が上がる。総本部は母ちゃんがいる限り王都セイレンのモンだとも。彼等の熱意により真冬とは思えないほどの熱気が別館に篭もってきた。


「そしてここで一人紹介させてくれ。今回の件を計画した中心人物だ。みんな噂は聞いてると思うが、とんでもねえ有名人だ。最近の騒動でその力の一端はみんな解ってくれたと思う。”(シュトルム)”のユウキだ」


 ラルフの紹介を受けて俺は壇上に上がる。無遠慮な視線が突き刺さるのを感じた。


 その向けられる感情は様々だ。”他所者が何の用だ””こいつがあの噂の””本物かよ””騙りじゃねえのか”だの好意的なものは一つもない。


 本当に馬鹿なことをしていると俺も思う。クランの案件なのだから指揮権はラルフに渡した方が面倒は少ないとわかっているのだが、ザイン達があの連中と揉めた事で俺が仕切ったほうがクランにかかる迷惑が少なくなると判断した。元の計画では俺は端役だったのだが、一気に主役になってしまった。


 とことん趣味じゃないが、仕方がない。


「今紹介に与った冒険者のユウキだ。他生の縁があって今この場にいる。そっちも色々と思う事はあるだろうが、今回限りだ。従ってくれ」


 俺の物言いに非難の視線が集中するが、背後のラルフが威圧をかけて大人しくさせた。彼も俺が出張る事に難色を示したが、クランがリガ・ファミリアと派手に事を構える懸念を理解してくれた。

 クランのほうが戦力として圧倒的に強いのは確かだが、それと同時にクランには戦えない者達も大勢いる。そして性根の腐った連中はそういう者達を真っ先に標的にかけるからだ。


 予めそのことも含められていたのか、反感の視線はあるものの主だった行動に出る奴はいない、見た感じ脳味噌まで筋肉で出来ていそうな奴もいるが、これはラルフの幹部としての統率力の賜物だろう。

 まだ若いのに大したもんだ。大クランの幹部に選ばれるだけの事はあるということか。


「事情は漏れ聞いていると思うから、詳細は省く。気になるなら後で誰かにでも聞いてくれ。ここにいる皆にはある事を手伝ってもらいたい。だがそのために必要な事があるから、まずはその準備をしてもらうぞ」


 俺は手を上げると既に準備を整えていたクランの者達が館の四方の隅に置かれていた物の布を取り払った。


 そこに置かれていたのは大量の酒の大樽である。横には食い物もたんまりだ。


「まずは飲め! 飲んで酔え! 話はそれからだ」


 俺が彼等に求める最も大事な要素。



 それは”酔っ払い”である。





楽しんで頂ければ幸いです。


一週間も空いてすみません。


野暮用終わったのに何故か後遺症が長引いて筆が進みません。困った。


今回は分量多いので許して。15000は分けた方がよかったでしょうか。長すぎて敬遠する人もいると聞くし悩む。


この長かった章を畳んでいきます。

酔っ払い云々はマジな話です、ネタじゃないです。


次は水曜日、絶対に! 約束する!(追い込んで行くスタイル)


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