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世界最強になった俺、史上最強の敵(借金)に戦いを挑む!~ジャブジャブ稼いで借金返済!~  作者: リキッド


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魔法の園 15

お待たせしております。



「とりあえず二手に分かれてみるか」


「そうですね。どちらを尾行しているか、それで解るでょうし」


「しかし、なんだろうなあいつら。どう見ても本職(スカウト)じゃない」


「ええ、私でも解る技量です。素人臭いですね」


「その割には王都に来てまだ数刻(時間)の俺達に人数をかけた尾行なんて贅沢な真似をしている。ますますよく分からんな」


「そうなると、ここは相手の出方を見てみるのも手ですね」


 俺達は魔導具屋の中でこれからの事を話し合った。

 

 もしここに身内が居れば安全第一で動きもするが、自分の身は自分で守れるジュリアなら話は別だ。尾行者の思惑を探ってみるのも悪くない。


「だが子爵令嬢を尾行とか、何を考えているんだろうな」


「よりにもよって貴方を尾行するとは、命が要らないようですね」


 俺達は互いの顔を見合わせて、いやいや尾けられているのはそっちだろと言い合ったが、実際はどうなのだろうと疑問を覚えている。


 俺は過去にウィスカやアルザスで幾度かスカウトによる尾行を受けたが、来たばかりの異国の王都で即座に尾行される謂れはない。


 ジュリアにとっても同じだろう。それ以前に彼女は今アルザスにいるはずの人で、本来ここに居ない人間だ。もしその謎を追っているのなら普通こんな素人を使わないだろう。そうすると彼女を尾行している線は限りなく低いとみていい。


 人違いである可能性が一番高いのだが、それはそれとして誰と間違えたのかも気になる所だ。



「すべき事も決めた事だし早速行動に移りたいところだが、まずはここで何か買わないとな」


 俺は魔導具店の品揃えを見回した。貴族も多く利用する高級店だけあって、店の入口には係員が立っている。冷やかして帰るだけ、という目論見の客にはキツい環境だ。

 俺一人なら知った事かと平然と出てゆけるが、女連れでそれをやる度胸はない。野郎は見栄を張ってナンボ、甲斐性の問題だ。


 そしてジュリアの前でイリシャやシャオに何か買うか、とやれるほど外道にもなれない。

 この店の魔導具は家具型よりも身に着ける装身具型が多かった。先程ジュリアが修理に出していたのも魔導具に問題があったのではなく、装飾が欠けてしまったからのようだ。


「ジュリア、気になった品はないか?」


「あ、はい。これなんか……いえ、何でもありません」


 俺に買ってもらうのを恐縮したのか、視線をそらすものの俺はジュリアのお気に召した指輪を確認して、店員を呼んだ。


「こちらの品を頼む」


「かしこまりました」


 呼ぶと同時に白金貨を渡して会計を済ませた。隣でジュリアが必死になにか言っているが、俺の耳は全て聞き流した。


「どうする? 箱に入れてもらうか?」


「……いえ、この場で身につけていきます」


 指輪を入れるべき飾り箱と釣り銭を受け取るが、中々値の張る品だった。たかだか光源の魔道具に金貨20枚かと思わなくもないが、こういうのは他の部分で金を取るからな。

 それに贈り物は額の問題ではないし、俺の見ていない所で笑み崩れるジュリアが見れたので良しとしよう。




 しかし、一体どういうことなんだ?


 残念ながら、尾行は俺にぴったりと付いてきていた。それも相当にお粗末な尾行だ。

 折角多人数で追っているのに連携もしていない。一人なんか俺から視界に入る位置を陣取っている。


 これが本職なら不自然に立ち止まってみせたり、後ろを振り返るだけでお前らに気付いているぞと意思表示できるのだが、ここまで素人だと解ってもらえないかもしれない。


 本当に何が目的なんだと、今すぐ問い詰めたい気分だ。



 俺は通話石をさり気なく取り出し、ジュリアに連絡した。


<ジュリアか? やはり目的は俺だったようだ>


<そのようですね。私の方には尾行はありません。合流して大元を突き止めましょう>


<いや、それには及ばない。君は屋敷に戻れ。そろそろソフィアが心配しているだろう>


<妹が心配するのは別の意味でだろうな。むしろしばらく戻りたくないのだが?>


<ソフィア達にはまた今度買ってやるさ。転移環の設置場所は解っているな?>


 ジュリアはソフィアの大切な姉にして護衛だ。詳細が明らかになっていない状態で俺の面倒に巻き込む気はなかった。


<了解した。お早いお戻りを>


 俺の声からこれ以上問答を続ける気はないと悟ったジュリアは大人しく従った。


<ああ、夕飯前には終わらせるさ>



 俺はそう答えたが、その約束を果たすことは出来なかった。




「ねぇねぇ、なんか面白いことやってるでしょ!」


「面白いかどうかはこの先の展開次第だなあ」


 いつの間にか面倒事の予感を感じ取ったらしい相棒が転移して俺の肩に座っていた。


「ユウってさ、つくづく自分の周りの人たちに危害が及ばないと何もかも適当になるよね」


「否定はしないな。特に他国に来れば俺の事なんて誰も知らないだろうし、好き勝手させてもらうさ。毎日毎日穴倉篭もってデカい鬼ども潰すのも飽きてくるんだ、たまには変わった刺激が欲しいしな」


「だから掛かっているその魔法もそのままにしてあるんだ?」


 実は今、俺は認識阻害の魔法を受けている真っ最中だ。


「ああ、地味だが意外と凄いぞこれ。気付かないでいると視覚だけ阻害されて奴等の狙い通り誘導されちまうな」


「と言ってもユウには全然効いてないんだけどね」


「そりゃまあ俺も似たような魔導具持ってるから、その系統の魔法に掛かると受ける僅かな違和感に覚えがあったからな」


 それにたとえ視覚が駄目になっても俺には<マップ>がある。<マップ>は脳裏に思い浮かべる事も出来る(というかウィスカのダンジョン6層からの暗闇はそれができないと対処不可能だった)ので正直これさえあれば目を瞑っていても思い通りに歩けるのだ。

 向こうさんが俺を何処に誘導したいのかはともかく、その意図を挫いて俺は適当に歩いている。


 ライカール王都の目抜き通りをぶらぶらと歩き、屋台で見た事ない食い物を見かけては買い食いをしたりして相棒と観光を楽しんでいると、俺の視界の端にチラチラと映りこむものがあった。


「あー……、魔法掛けてるのあの娘じゃないの? ユウキ見てめっちゃ泣いてるし」



「ううう。な、なんでこっちに来ないのよ……魔法は効いてる筈なのに……私のただ一つの特技が役に立たないなんて」


 俺が見ているのに気付かないのか、一人の女の子がべそをかいている。あの格好からして魔法使いなのは間違いないだろう。魔法王国と世界に名乗るだけあって、この王都の殆どは魔法職と言えるだけの魔力持ちばかりだが、いかにもなローブを身に纏っているのできっと魔法使いなんだろう。

 しかし、この件を仕組んだのが誰だか知らないが、俺の事をよく解ってるじゃないか。こちとら泣いてる女の子には弱い。声を掛けず素通りは出来そうにない。

 仕方ない、虎穴に入らずんば、という奴だな。



「いつかユウは女が原因で道を誤る気がする……そんなホイホイ釣られちゃってさぁ」


「その時は相棒が気付いて止めてくれ、期待してるぞ」


 はいはい、と気の無い返事のするリリィに苦笑しつつ、人目のない場所まで移動した俺は尾行する対象から急に接近されて戸惑っているフードを目深に被った女の子に声を掛けた。



「よう、俺に何の用だい、お嬢ちゃん」


「え!? あ、その、えっと、わ、私は……えと」


 しどろもどろになっている俺よりもいくらか年下な少女に話しかけたが、一向に話が進む気配がない。もういっそ投げ出してさっさとこの王都から出ちまうかなと思いかけたとき、ようやく少女がまともに喋った。


「あ、貴方には私達と来てもらうわ!」


「あん? 誰が行くか面倒臭い」


 人を尾け回した挙句、自分達と来いとか完全に誘拐だろうが。誰が聞くかそんなもん。


「ああっ、ちょっと!」


 もっと面白い展開を期待していた俺は興が削がれたので、その少女から背を向けたのだが、いつしか俺の目の前には3人の男が行く先を塞いでいた。


「マール。この役立たずが、結局こうなったな」


「ご、ごめんなさい……魔法は効いてるはずなんだけど」


「言い訳はいい、この出来損ないめ。この事は上に報告するぞ。我等はこの男を本部に連れてゆく事が任務だ。別に五体満足でとは言われていない、梃子摺らせてくれたが骨の数本も折れば大人しくなるだろう」


<おお! 何か面白くなってきたじゃん!>


 肩の上の相棒がはしゃいでいるが、俺は相変わらず状況が読めなくて困っている。俺を何処かへ連れて行きたいようだが、こいつら何者だ? まるで腕に自信があるような口振りだが、とても荒事に慣れている様には見えない中肉中背の男たちだ。


 だが状況は思ってもいない方向に変わっていた。なんとフードを被った少女が男たちの前に立ちはだかったのだ。


「待って! この男は私が本部に連れてゆく指令を受けたの! あんたたちはその補佐でしょ! 勝手な事しないでよ!」


「黙れ。その結果がこの体たらくではないか、だいたい指令とはいえお前に従うこと自体が耐えられんのだ、この()()()()が! 身の程を弁えろ!」


 当事者であるはずの俺を蚊帳の外にして何故か激昂した三人のうちの年嵩の男が少女に向かって腕を振り上げた。


「あっ……」


 少女に向けて放たれるはずだった拳を受け止めた俺はその拳ごと握り砕き、聞くに堪えない野太い声の絶叫が上がる。


「ぎゃあああっ! お、俺の手がぁ!」


「俺を放って何を勝手に盛り上がってやがる。色々と言いたい事もあるが、とりあえずお前等は死んどけや、女に手を上げるクズ野郎共が」


「こ、こいつ、俺達を誰だと思ってやがる!」


「知るかボケ。雑魚が一丁前に吠えるなよ」


 三人の男が地面に沈むまでに要した時間はごく僅かだった。



 

「うそ、こいつら下の方とは言えれっきとしたCランクなのに……」


 血溜まりに沈む男どもを見て言葉を失っている少女に俺は声を掛けた。


「おい、マールとか言ったな。気が変わったぜ」


「え、な、なに?」


 呆けた顔でこちらを見る少女に俺は獰猛な笑顔を浮かべた。


「この屑どもの親玉の面を拝んでみたくなった。案内しな、お前たちの根城によ」


「わ、わかったよ、こっちについてきてよ……」



 マールの怖々とした案内で連れて行かれた先は、意外なことに大きくて立派な建物だった。


「なんだよここ、意外だな。もっと人気のない怪しげな屋敷に連れ込まれると思ったぜ」


「なによそれ。私達をなんだと思っているの?」


「何って、人を尾行してた怪しい連中だろ?」


 俺の当然の物言いに、マールと呼ばれた少女は怒ってみせた。


「あ、怪しいって! そりゃ私も上からいきなり命令を受けたけど、私たちはれっきとしたクランメンバーよ!」


「クラン? おい、今クランって言ったか?」


 驚いて聞き返す俺に、マールは首から提げたペンダントを掲げて見せた。


「そうよ! 私たちはクラン、“マギサ魔導結社”の一員、それも正式クランメンバーなんだからね!!」


 おいおい、マギサ魔導結社っていえば、7大クランの一つじゃないか。俺でさえ知ってる有名所だ。魔導の名がつく通り、魔法使いが多く所属するクランだ。本拠地はライカールだと……じゃあまさかここって総本部か?


 一体何故世界に名だたる7大クランのひとつが俺を誘拐じみた真似までして呼びつけるんだ?

 


 俺は困惑と共に、非常に強い興味を感じてクランハウスの中に足を踏み入れるのだった。




楽しんで頂ければ幸いです。


すみません、日付超えてしまいました。今日中にもう一本あげる予定でおります。



 もしこの拙作が読者様の興味を引いて頂けましたら評価、ブックマークなど入れていただくとこれに勝る喜びはございません。何よりも作者のモチベーションが超絶鰻登りになります。更新の無限のエネルギーの元になりますので、何卒よろしくお願いします!

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