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世界最強になった俺、史上最強の敵(借金)に戦いを挑む!~ジャブジャブ稼いで借金返済!~  作者: リキッド


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王都にて 10

お待たせしております。


評価、ブックマーク本当にありがとうございます。

一旦エタった今作にこのような評価をいただけるだけで涙が出てきます。

本当に更新速度が、やる気が沸いてきますね。



「やあ、来たね。こっちだこっち。いや、いきなり呼びつけてすまなかった」


王都のダンジョン探索をした翌々日の昼、俺はとある酒場に顔を出していた。酒樽の看板が出ているが、酒場といっても昼は普通に飯も出す店のようで、周囲の客は庶民ばかりだ。地理的には貴族街に近いはずなんだが、なかなかに繁盛しているようだ。



 奥の卓に座っている男が俺を手を挙げて呼んでいる。俺と歳の方はそう変わらないだろうが、その立ち居振る舞いは俺から見ても堂に入っている。動作一つ一つ取っても妙に品があり、身分などあまり気に留めない自分でさえこれが本物の貴族かと思わされる。なんだろう、生まれが違うというのはこういうことなのかだろう。

 ああ、ソフィアは別格だ、あれは本物のお姫様で比較対象にならない。


「なに、どの道こちらからも話をしないといけないとは思っていたから、渡りに船という奴だ」


「そう言ってくれると助かるよ。何か飲むかい? 正直ここは酒より飯のほうが評判良いけれども」


 リットナー伯爵家次男、バーナード・サンド・リットナーはまだ幼ささえ感じさせる顔に苦笑を浮かべた。調べた所では確か歳は16。俺の体も15歳、冬には16になるからほぼタメだ。お互い気安いのはそこも関係しているかもしれない。


「軽く何かもらえれば。流石に酒は止めとくよ。バーナード殿下と同じもので」


「止してくれ。僕の数少ない友は僕をバーニィと呼ぶんだ」


「分かったよ、バーニィ。君と同じものをくれ」


 昼間でも僅かに薄暗い店内の、三人掛けの卓につきながら目の前の男について思う。


 これで会うのは2度目で、初対面は公爵家でいきなり横で土下座していた関係なんだが、不思議とウマがあった。少し話しただけで妙に話が進み、俺が例の教団の儀式についての意見を述べ終わる頃にはもう既に長年の友人のように接しており、今もこのような感じだ。


 だがその表情は、お世辞にも良いとはいえない。前に本人の口から聞いたが、公爵家令嬢を浚ってきたのはなんとこいつの独断らしいのだ。

 

 バーニィ自身にもなんか深い家庭の事情がありそうだが、公爵は誘拐自体はあまり怒っていないようだった。なにしろ本人も今年は順当に言って我が孫であろうと思っていたほどだという。

 

 無論、殺される振りをするだけで危害など加えられるはずもないが、今回は本物のガチ野郎どもが狙って押し寄せてきて、本来すぐにつけるはずの連絡も連中の眼があるうちはできずに遅れてしまった。だからこそ俺がこの件に絡めた訳でもあるので、そこは感謝すべきか。

 なにしろこのままではあのシルヴィアが殺されてしまうのだ。毎晩差し入れを手にお邪魔しているのですっかり仲良くなれた。あの天真爛漫な可愛い子が理不尽な理由で害されるのを黙って見ているわけにもいかない。


 そして、性質の悪い事に今まで教団と王国の間を橋渡ししている伯爵や公爵も立場上、彼らの儀式の参加を断ることができないそうだ。むしろ建前では喜ばねばならず、バーニィや公爵は本部連中とやらがこのタイミングを狙い打ちにしたのは間違いないという。


 そんな中、俺はそこへ『こんなんどうですかね?』とある提案をした訳なんだが、昨日の夜になって儀式の日取りが決まったからこれからのことを話し合いたいと連絡が来たわけである。


 昨日は朝から晩までひたすら6層を潜らされて流石に疲れた。アイテムドロップ率は俺が居ないと上がらない事は皆承知しているので、俺に不参加の道はなかった。一昨日は思わぬ罠に時間を取られて本来の目的である蜂蜜狩りができなかったので、彼女たちは大いに燃えていたのだ。護衛の俺に否やはないが王城に上がるまでの暇潰しにしては熱が入りすぎている気もする。



 

 

この酒場の看板ウエイトレスを呼んだバーニィは俺の分も頼んでくれた。混雑している店内を踊るように移動して客を捌いていくウエイトレスを見て思わず感心してしまう。

 こっちのほうが断然似合っているじゃないか。


 バーニィが口にしていた飲み物はブラックサイという豆茶の一種だ。一般的に広まってはいるものの、嗜好品としては少々値が張るので俺は殆ど飲んでこなかった。最近は自分の金以外で振舞われる機会が多いから相伴にあずかって居る。

 ここの店のブラックサイは深く炒ってあるのか、中々味わい深い。淹れ方一つで店の個性が現れるので、サイ目当てに訪れるに人もいるんだとか。俺の全くはっきりしない記憶の中でこれに似た飲み物があった気がする。苦味が癖になる味だ、ああ……なんだっけかなこれ。良く飲んでた気がするんだがなあ。


 


「で、日程が決まったって?」


「ああ、君とともに居る方が”上がられる”日の夜だ」


 お前のことは調べたぞ、と暗に表情が語っている。まあ、知らなきゃ俺が逗留しているホテルまで分かるはずもなく、調べれば誰々が泊まっていることも調べがつくだろう。何しろ伯爵家だけでなく公爵家も手を貸しただろうから驚く話ではない。


「同じ日なのには理由があるんだろう?」


「もちろん、やんごとない方々を招いて儀式を盛大なものにするためさ。”出演者”の格といい、奴等が自分たちの勝利の瞬間を喧伝するには格好の舞台だろう」


 バーニィの表情は平静を装っていたが、その声音は怒りを隠せていない。思わず周囲を見回すが特に注目はされていないようだ。


「そいつは困るな。あいつらは知らない仲じゃない。余計なゴタゴタに巻き込みたくはないんだが」


「すまない。だが、本来アレは本当に大きなイベントなんだ。国賓で招かれる方を招待しないほうがかえっておかしいくらいだし、本部もそれを望んできた。恐らくはこの国の一番”上”から直々にそちらへ話が通されると思う」


 まあ、あいつらなら自分たちで自分の身は守れるだろうが、俺からも話しておいてくれってことだろう。



「分かったよ。それで、紹介はしてくれるのかい? それとも俺から聞いたほうがいいのか?」


 我ながら意地悪く聞いてみる。バーニィはさもありなんという顔で俺の後ろの卓に声を掛けた。


「クロイス卿、お聞きの通り、俺は約束を破ってませんからね。ユウ、一応僕は反対したんだ」



「ははは……いや、すまん。噂のルーキーの話を聞いたらどんな奴かこの目で見たくなってな」


「まったく……趣味が悪いですよ、後ろで盗み聞きなんて」


「そう言ってくれるな、こっちも簡単にはいそうですか、よろしく。という訳にもいかんのは分かるだろう?」


 そう言って俺の斜め前に座った男は年の頃は30後半だろうか、金髪の美男子だった。若いころは、いや今も女にため息をつかせているだろうその顔は今は僅かに焦っていたが。細身だが引き締まった体をしているのが服の上からでも分かる。表情は朗らかだが相当な実力者だ。バーニィに剣の腕では一歩譲るかもしれないが、彼は強大な魔力を感じさせる。おそらくは俺と同じ魔法戦士だろう。


 本人は俺を試そうとしていたようだが、始めから気付かれていたわけだから焦るのも当然かもしれんが。


 ちなみに俺はこの酒場に入ったときからこの男に注目していた。バーニィがいるのはもちろん分かったが、ただでさえ飛び抜けた実力者なのに酒場中の視線を一度浴びた後、皆が興味を失って逸れていく中でこの男だけが何気ない風を装って常に俺を見ていたからだ。さっき見回したときにはこの男は除外した。常に俺の行動を確認していたから既に注目されていたしな。

 

「先ほどの非礼は詫びよう。私の名はクロイス・ウォーレンという。家名を全て入れるともっと長ったらしいがな」


「ユウと名乗っています。失礼ですが公爵家に連なる御方でしょうか?」


 立ち居振る舞いから明らかに貴族だということはわかっていたが、バーニィが敬意を払っているとなると相当の高位貴族だ。しかもウォーレンって公爵家の家名だったはずだが、あの爺さん、孫娘以外に身内がいないと聞いてたが……。


「なに、いわゆる不肖の息子という奴さ。優秀な兄貴たちがいたからな、俺は15で家を飛び出して好き勝手に生きてきたんだ。戻ってきたのはつい最近さ」


「その結果が20代でAランク冒険者になれたんですからもっと誇っていいのではないですか? ユウ、この方は大陸でもトップクラスの冒険者でもあるんだ」


 Aランク冒険者だって!!?? 引退したAランクはいたけど現役の人は初めて見たぞ、これが冒険者の最終到達点か! 只者じゃないなと気配で感じていたが、それほどの人物だとは思っていなかったぜ。


  


 冒険者は6つのランクに分かれている。一番下は俺のいるFランク、上が目の前のクロイスがそうであるというAランクだ。構成比は当然Aが一番少なく、一番多いのがB、C、Dランクだ。EとFは新人だから頭数に入れるのもどうかという話だ。 

 すぐに上がるFや依頼を規定回数こなせば上がるEと違い、一般冒険者といわれるDランクからはランクアップがとても大変らしい。ライルからの知識だが、腕はもちろんのことリーダシップや協調性なども考慮されるらしい。俺が会った”五色”はDランク、”ヴァレンシュタイン”がCランクで、彼らとて優秀な冒険者だと俺は思っているが、その彼らでも簡単にランクは上がらずにいるらしい。だからこそヴァレンシュタインが今回のクエストでなんとかして上がろうと気合が入っていたわけだ。俺みたいなド新人に良くしてくれるわけだ、下の面倒見の良さも重要な評価点なんだろう。

 Sランクも居るみたいだが、あれは別格だ。クロイス卿は会ったことがあるようだが、”人間の形をしたなにか”という表現が一番的確というのが本人の弁だ。Aの上という扱いではなく、Aの遥か彼方の異常な存在という位置づけらしく、みんな実在を知ってはいるが公式には存在しないランクだ。




「私など下のほうだよ。事実、Aランクといってもピンキリだからな。本物のトップランカーと上がりたてでは大人と赤子以上の差がある。それに実家に戻った俺は半分引退したようなもんだ。だが、史上最年少で『暗黒騎士』の称号を取ったお前に言われるのは光栄だな」


 知らない単語だったのでバーニィに聞いてみたのだが、奴は頑なに話そうとしなかった。仕方なくクロイスに振ると苦笑交じりに教えてくれた。


「『暗黒騎士』というのは教団における儀礼的な称号のひとつだ。教会の『聖堂騎士』と対を成すもんだと思ってもらってもいいが、その意味合いは全く違う。騎士団の本部、現役の騎士たちから地獄すら生ぬるいといわれる猛訓練を潜り抜けた本物の猛者にしか与えられないものなんだ。良くある貴族の遊び場みたいな温いもんじゃない、本当の最精鋭の集まりだ」


 ある部署に数年在籍すれば名乗れる聖堂騎士とは違ってな、と続けるクロイスはまるで我が事のように誇らしげだった。しかも彼はまだ治まらない様子で、


「暗黒騎士が俺たちの中で評価されている一番の理由はその選定方法にある。その地獄の訓練で鍛え上げられた連中はその称号を得るに相応しいと思う奴を他薦させるんだ」


 それも複数人の票が必要なんだぞと何故かクロイス卿の方が得意気だったが、俺にもようやくその凄さは理解できてきた。自身の有能さを他人の評価で証明するというのは只事ではないしな。


「しかも定員は60名きっかりだ。合格ラインは存在しない」


 そりゃ凄い。おそらくそのときの推薦数を加味した上で成績上位者と前回の下位者が入れ替わるのだろう。公正を期すために全員が同じ訓練を施されるに違いないが、その中でのトップ60ってことはバーニィも大陸有数の実力者ということになる。内に秘めた物はそれくらいあるだろうと思っていたが、やはりそうだったか。

 お偉い貴族の息子が箔をつけるためにちょっと手を回して手に入れられる物じゃない事は分かった。

 

 その暗黒騎士とやらは教団の本部に所属していると聞いて、狂信者のイメージが強い俺は大丈夫なのかと思ったが、所属が本部なだけで騎士そのものは各地に散っているらしい。バーニィも実際ここに居るわけだし思想的な問題はないようだ。そもそも『暗黒騎士』を結成、維持管理しているのも貴族側らしい。



「そんないたいしたものでもないですよ。先輩方はそりゃ凄かったですけど、俺はそんなに……」


「16で徽章もちなんてこの大陸(アルガルド)でも何人もいないぞ。それに入団が決まった時はお祭り騒ぎだったそうじゃないか。陛下からもお褒めの言葉を戴いたと聴いているぞ」



 目の前の会話を聞きながら、俺はこの二人の関係性が気になっていた。賞賛の言葉をうけてえらく恥ずかしがっているバーニィに対してもっと自信を持てと肩を叩いているクロイス卿はまるで歳の近い親子にさえ見える。


「お二人は随分と親密のようですね」


「ああ、今回の事情だけで考えれば険悪でもおかしくはないのか。なに、俺とコイツの兄貴とは同い年でな、他に歳の近い奴も回りに居なかったから良くつるんだものさ」


 公爵家で末っ子だったクロイス卿はバーニィを自分の弟のように可愛がってきたということか。


「遅かれ早かれ教団本部が大陸南部の貴族権益を奪おうとしてくることも分かってたからな。親父も頭では分かってるから、そこまで怒られはしなかっただろう」


 クロイス卿はそこまで言うと手の中に握っていた石を卓の上に置いた。もしやと思い視線を彼に向けるとゆっくりと頷いて見せた。間違いなく盗聴を防ぐ能力か、防音の機能を持った魔道具だろう。いくら顔見せのためとはいえ街中の酒場で交わすにはあまりにも際どい会話だったから俺もおかしいと思っていたんだ。



「まあ、それも今回の件が無事に済めばの話だ。聞けばこの難題を華麗に解決できそうな話があるそうじゃないか。だが、当日いきなり本番ってわけにもいかないだろ。なにしろ可愛い可愛い姪っ子の命がかかってる。そこで俺が検分役を買って出たというわけさ」


 嫉妬さえわかないほど整ったクロイス卿の瞳が怜悧さを増した。どんな誤魔化しも許しはしないだろうその表情は彼の本質を物語っている。今まで饒舌さが嘘のようだ。いや、それすらもこちらを惑わす手管なのかもしれなかった。



「クロイス卿、止してくださいよ。元はといえば俺が余計なことをしたのが原因です。ユウは俺たちに何の義理もないのに助力を申し出てくれたんですよ」


「いや、それはもちろんわかってるが………」


 だからこそしっかりと話をしておく必要がだな、とか何者か分からんやつをいきなり計画の中央に据えるのは危険だとか、俺にとっても至極当然のことをクロイス卿は言い募ったが、バーニィは俺が全て悪いの一点張りで話が進まない。こいつは内に溜め込みそうな感じだな。性格なのかもしれない。




「俺は明日の流れについて話を聞きに来たつもりなんだが……」


「お、おう。そうだったな、それについてはおいおい話す。とにかく俺がここで言いたいことは一つだけだ。お前の腕を見せてくれ」


 そりゃ計画の要が実力の分からない輩じゃ納得できないだろう、俺でも嫌がるから当然承諾した。


「それはもちろんかまいませんが、何をどうすればいいですかね」


「丁度いい場所がある。もともとその場所の都合をつける為にバーナードと共にここで待ってたんでな」


 バーニィが杯を空けると立ち上がった。


「ついて来てくれ。ちょっと歩くから、そこまでの道中で色々話すよ」


 俺は杯を飲み干すべく、奮闘する羽目になった。移動することは予想できたのでもっと早めに飲んどけばよかったな。

 忙しく働くウエイトレスに()()()()()と伝えて彼らのあとを追う。





 俺たちはバーニィを先頭に連れ立って歩いていた。横にはクロイス卿が居る。並んで歩いていると俺より頭二つ分くらい背が高い。俺が低いというよりもこれからが成長期なんだと信じたい。ライルは貧農とまでは言えないが、満足に2度の食事を取れるような環境ではなかったから、これから一杯飯を食っていければまた変わってくると思う。正直、今は自分の体とはいえ他人事感が拭えないのは事実だ。

 身体能力は各種スキルで底上げしてあるから不足を感じなかったが、今になってもう少し身長が欲しいと思うようになった。牛乳でも飲もうかな。





「嘘だろ!? お前ホントにFランクなのかよ!?」


「ホントです。ほら、ギルドカード」


 俺は真新しいギルドカードを取り出した。ちょっと前にドロップアイテムを換金するときに提出したくらいなので殆ど新品だ。

 

 今、俺たちは他愛ない会話をしている。実際は互いの挙動でお互いの情報を読み合っているという表現が正解だけれども。その中で冒険者としての話が出たのだった。


「本当にド新人じゃないか……まだ一月にもなってないのか。さすがにまだランクアップはできないよな」


 今でもBランクは堅いぜ、と褒めてくれたがホントにそんなすぐ解るものなんだろうか。


「おいおい、この世界で長いこと飯食ってれば相手の力量くらいひと目で解るようになるさ。それにお前、<鑑定>持ちだろ?」


「……どうしてそう思うのです?」


 俺の中で何かが起動した。彼とは初対面で自分の力を見せ付けたりもしていない。だが、決め付けたように俺のスキルを当ててきたことに警戒心が募る。


「そんな構えるなよ。簡単な推測さ、あいつの屋敷の地下でアレを見たんだろう? 持っているんだったら<鑑定>系のスキルで調べるはずだからな。それにきちんと対処したんならアレが何か知っているはずで、教団に無関係の人間がそれを知るには<鑑定>でも使うしかないからな」


 そう語るクロイス卿は、俺と微妙な距離を保ち続けている。具体的には俺の間合いからごく僅かに外れ、すぐに行動できるように利き手らしい右腕は常に空けている。それでいて実に泰然としているから普段からこんな感じなんだろう。

 それでいて状況判断も的確で、数少ない手持ちの情報で俺の力量も把握してきている。

 これがA級冒険者かと感心しきりだ。


「俺も一時組んだ奴の中に<鑑定>持ちがいたのさ。有効範囲や何が分かるかとかは理解してるつもりだ。その方がお互い都合いいだろ?」

 

 <鑑定>持ちは良い所だけ見れば王侯貴族に召抱えられたり、一生食べていける仕事だと思われている。しかし、別の面では人の隠したい秘密を丸裸にする魔物のような扱いを受けることも事実だ。その人間の内面を読み取れるわけではないが、大衆にそこまでの理解を求めるのも無理な話だ。一般人は<鑑定>持ちを羨みつつ畏れている。その中ではクロイス卿はかなり苦労してこちらとの距離感を測ってくれている。拒絶から入らないだけ感謝すべきだろう。


「気を遣っていただいたようで助かります」


「俺の知ってる奴も町に居づらくなって冒険者やっているような奴だった。生き難くなるようなやり方は止めた方がいいな、そいつの末路を知っているだけに気になっちまうのさ」


 おおう、既に他界しているのか。今までの出会いが幸運だったと思うことにしよう。俺の悪評はライルの悪評でもある。故郷の家族にこれ以上心配かけるわけには行かない。






「登録をしたのはウィスカか。あそこは冒険者の質が二極化してるよな。新人にはなんとも微妙な街だろう?」


「たしかにそれはありますね。冒険者は皆街の中か、外で依頼を受けていますね。迷宮に潜る冒険者なんてウィスカの中で一割もいないと思います」


 なにしろ日は浅いとはいえ毎日出入りしていた俺が、迷宮内で遭遇したパーティの数は片手に満たないのだ。事前情報で手に入れた有名な一流所くらいしかまともに探索してないような気がする。

 その理由はウィスカのダンジョンを一度でも経験すれば嫌でも理解できると思う。


「こちらも聞きたいのですが、今までクロイス卿はどちらに? 貴方ほどの方が王都に居ればここまでの事態にはならなかったのでは?」


 俺の問いにクロイス卿は厳しい顔をした。やはり自覚はあるようだ。


「それを言われると辛いな。親父の、公爵家の領地はここから東にあるんだが、ある町で名代としてある裁判に参加していてな。連絡を貰って可能な限り早く戻ってきたんだが、領主裁判で俺が途中で抜けるわけにも行かなくてな」

 

 昨夜戻ってきたばかりだという。そういえば公爵も使える男は戻るまでしばらくかかると言っていた。例の連絡手段も彼は渡されていなかったという。



 その時、頭上から鐘の音が聞こえてきた。回数から昼の二時とわかったのだが、ほぼ真上から聞こえてきたということはここって教会地区なのか? 俺たちはどこに向かっているんだ?


「お前の疑問は分かるよ。まあ、『木を隠すなら森』というやつだ」


 クロイス卿は行き先を知っているらしいが、こっちの方角でいいのだろうが。一応俺たちは『暗黒教団』に関係する場所に向かっていると思うのだが。


 周囲は教会地区らしく法衣を身に着けた人々が行き交っていたが、奥まった場所に行けば人通りは閑散としてきた。石造りの平屋建てが密集したこの地区で働く人間たちの住居が主に集まっている所らしい。


「もう少しだ。この先に用事がある」


 男三人が連れ立ってつらつらと歩いている。話しているのは主に俺とクロイス卿でバーニィはたまに話を合わせるだけだが、彼は彼で忙しそうだ。最初は道中で話があるといってたが、切り出される気配はなかった。



 そうしてたどり着いたのはごく普通の一軒家の中庭だった。


 対応に出てきた中年のおっさんと言葉を交わしたバーニィが俺たちを招き入れたのだが、その中庭には古井戸が一つあるだけだった。<マップ>で捜索すれば何があるかなどわかりそうなものだが、無粋なのでやめておく。


「リットナー家の機密の一つだ。聞いてはいたが、俺も見るのは初めてでな」


 クロイス卿も楽しげに見つめる中、バーニィは慎重に周囲をうかがった。俺も<マップ>で人気は確認して、俺たち以外は家の主人しか居ないことは判明していた。


「少し下がっていてくれ」


 バーニィが井戸の淵を掴んだと思ったら、そのまま手前に引き始める。すると重々しい音をたてながら井戸そのものがズレはじめたのだ。


「まさか、井戸が動くのか!」


 普通、井戸の底に何かあるのだとばかり思ってたが、まさかこうくるとは思わなかった。井戸があった場所を見れば横穴が開いていて、その先に地下への階段が見えていた。


「なるほど、これは気付かれないわけだ。誰もが枯井戸の底を探そうとするだろうしな」


「この役目を仰せつかって五百年、一度も見破られなかった秘密です。二人とも秘密に願いますよ」


 クロイス卿と共に首肯する。事実を知ったら卒倒する奴も出てくるんだろうが、まあ俺は関係ないし。


「もちろんだ。だが、お前の兄貴も知っているんだろう?」


「いえ、俺の独断です。兄貴は俺がここになにがあるかを知ってはいても、どうやって行くのかまでは知らないはずです」


「おいおい、やめてくれよ……そういうのは話し合っておけ。……分かったよ、俺からもフェンデルにとりなしてやるから」


 クロイス卿は乾いた笑いを浮かべているが、バーニィは既に開き直っているようだ。


「このまま連中の思う通りになれば何もかも意味がなくなりますよ。我が家なんて真っ先に潰されて役目も全て奪われるでしょうし。まあ、そのときに俺は生きていないでしょうけど」


「まあ、それはそうだが……あと、お前が死ぬ前提で話を進めるなよ」


「もしお嬢様に何かあればたとえ公爵閣下がお許しになっても俺はどのみち、あの人に殺されるでしょう。それよりユウ、本題はここからなんだ。ついて来てくれ」



 残りの借金額  金貨 15001632枚  


 ユウキ ゲンイチロウ  LV118 


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75

 職業 <村人LV134〉


  HP  2011/2011

  MP  1382/1382


  STR 334

  AGI 311

  MGI 325

  DEF 295

  DEX 259

  LUK 196


  STM(隠しパラ)560


  SKILL POINT  470/480     累計敵討伐数 4521



前書きでそんな事を言いつつ、全後編になってしまいました。


今日中にもうひとつ上げるつもりで頑張ります。


作中で出たSランクは現在4人です。ひとりはウィスカに居ますので間もなく遭遇予定です。

(全体量の約三分の一が王都に居るという事実からは目を背けています)

ギルドの全体会議でこいつやばくね? Sランクでいいんじゃね? くらいのノリで決まります。

ふざけんなとお思いの方もおられるでしょうが、出席者がどいつもこいつもAランクの実力者なので

その連中がこいつヤバ過ぎと推す奴がどれほどなのかはおわかりいただけるかと。


ユウの百分の一ほどの強さを誇ります。ぶっ壊れスキルを持つ人類最強戦力の一つです。


なおこの作品でもSはSUPERではなくSUPREMEの意味のつもりです。仏語やんかといわれると土下座体勢に入ります。


 それではまた後で。

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