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彼女の道 3 進軍開始

お待たせしております。




「10日で領都まで陥落せしめると申すか!? そのような事が……」


 シアンがぶち上げた大見得にラカンが大仰に驚いて見せるが、いかにも演技臭い反応だ。事実、彼の顔には無謀だと書いてある。共にメイファに忠誠を誓った同志である手前、声に出していないだけだろう。


 なにしろ<マップ>で見るとこのセンシュの街から領都シンタオまで、体力に自信のある俺達が普通に徒歩で向かっても10日は優にかかるのだ。いや。天候などを考えたらもう数日見たほうがいいだろう。

 俺はシアンと共に頭を捻ったので理屈を理解しているが、普通に考えて時間と手間ばかりかかる行軍(軍隊は行軍を開始した瞬間から崩壊し始めるという格言を俺は支持する)をするとなれば倍の日時がかかると見ていいだろう。

 それに懸念すべきは領都までの距離だけではなかった。そして弟のラコウがそれを口にする。脳筋の猪武者との評判だが、やはり頭を使っている。世間での噂は誤った風評といえるだろう。


「商都ナーキンはどうするつもりだ? 地理的にも街道と繋がっている商都を素通りは出来ないだろう。東部にある3つの都だけあって商都にはまともな部隊が駐屯しているはずだ。放置すれば挟撃を受けるのは間違いない」


 これからが自分の軍師としての将来を決めると知ってシアンの顔、特にその瞳は炎が燃え盛っている。言葉の訛りは消して、言葉遣いも冷たいものになっていた。彼女の覚悟が窺える。


「もちろん商都を陥としてから領都へ向かう計画です。それを含めて10日と言うとります」


「……!!」


 金剛兄弟はおろか、この場に同席しているリュウコウ、そしてエイセイまでも絶句している。平然としているのは共に策を練っていた者達だけである。

 その中でも真っ先に口を開いたのはやはりというか、ラカンだった。


「不可能だ、と言いたいが、その顔では策があると見てよろしいのだな? 衰えたりといえども東部天軍は10万を号するという。殿下のために命は厭わぬが、無駄に死ぬのは御免蒙る」


「もちろんです。アタシらの計画を詳細に語らせてもらいます。まずはこれをご覧下さい」


「おお! これはなんと詳細な! 街道はおろか、丘の位置や補給に使えそうな小川まで……!」


 そう言って俺達が座る卓の前にシアンが広げたのは東部の詳細な地図だった。もちろん書いたのは俺である。<マップ>を写すだけでいいので楽だったし、さすがに東部全体を記すわけではなくこのセンシュの街から商都、領都までの経路を示したものである。


 地図にすると改めてわかるが、ここから領都に向かう為には街道を通って商都を超えてゆく必要がある。他の道もあるとはいえ、相当の遠回りになるし、そもそも流通の中心地だから商都とまで呼ばれるほど交通の便が発達している。東部の領都と繋がっていないはずがないのだ。



「さて、皆様の疑問にお答えする前に、敵の現状をお伝えしておきましょうか。これはアタシより当事者としてリュウコウさんに話してもらったほうが確実かと。お願いできますか?」


「確かに私が適任だろうな。皆様、改めてご挨拶申し上げる。私の名はリュウコウ、名高き金剛兄弟のお二人とコセツ家の秘蔵っ子にお会いできて光栄だ。さて、私は天軍の主計部に奉職させてもらっている。実働部隊の皆様におかれては存在さえも定かではないと陰口を叩かれていますがね」


「なんと、おぬしが噂の数字の怪物か! 流石は殿下、押さえるべき人物は皆揃えておりますな!」


 ラカンの賞賛の声にメイファは微妙な顔だ。リシュウ老師を褒め称えるのは気が進まないらしい。


「リシュウ師の推挙によるものだ。彼の者の東方の三賢と謳われた知見は衰えておらぬようだ」


 ちなみに他の二人はとっくに鬼籍だそうで、彼以外の賢者はもう存命していないそうである。

 誉められた当人はまんざらでもない顔をしている。かの爺さん、メイファを散々からかうものの、そっけない扱いをされると傷つくらしい。どんだけ素直じゃないんだろうか。子供たちの成長を語る時の素直な顔をメイファに僅かでも見せれば大分関係は好転すると思うが、まあ無理だろうな。

 二人にはあれ位の距離感がちょうどいいのかもしれないが。



「流石は名高き大賢者殿ですな。ああ、もちろん主計部の皆を疎かにする愚かな事はしないつもりだ。一度でも遠征をして夜営をすれば主計部の事を嘲笑う将校など居なくなるでな」


 ラコウのとりなしにリュウコウは深く頭を下げた。ラコウはそう持ち上げているが、実際に後方担当の発言力など実働部隊に比べれば限りなく低いだろう。何処の世界も血と汗を流す連中が一番幅を利かせるものだ。


「恐縮です。それでは始めさせていただきます。東部天軍は公称10万と謳っておりますが、それはまあお約束と言うもので、実際は総数8万5千で組織されております。もちろん書類上のものであり、その実体は惨憺たるものです」


「これだけ天軍が腐っておれば無理もないであろう。実情は6万もおれば上等ではないか?」


 メイファの言葉にリュウコウは首を横に振り、とんでもない数字を口にする。


「10日前の数字になりますが、東部天軍の総兵数は2万4千あまりです。これは各部隊から要求される物資の必要数から割り出した数字であり、実数にあまり相違はないかと」


「馬鹿な!! いくらなんでもその数はないであろう! 天軍の威光は欠片も消え去ったか!」


 ラコウの驚愕の叫びに俺は少し疑問を抱くが、口にする前にリュウコウが答えを話してくれた。


「御二人とその部下の所属は未だ禁軍(中央軍の総称)のままになっておりますから。御二人は完全別会計ですし、受ける影響は少なかったのでしょう」


「そ、そうなのか? 転地の命は受けたが、その際に転属になったとばかり……」


「やはりご存じなかったのですな。大叔父であられるシキョウ元大将軍のご意向です。御二人を東部に派遣しても籍を禁軍に残す事で、その意思を表されたのです。この私めをつけたのもその一環です」


 兄弟の背後に控えている男たちの一人、歴戦の気配を感じさせる古兵が告げた。名をモウカクというらしいが、俺でさえ背筋を正したくなるような古強者だ。


「なんと! やはり知らなかったのか、弟よ。叔父御の配慮はそれ以外にも色々とされておるぞ。だからこそ俺はこの地での任務を続ける気概が湧いたのだ」


「知っていたのなら教えてくれても良いでは……いや、すまぬ。話の腰を折った。続けて欲しい」


「はい、先ほど申しましたとおり、現在の天軍の総数は2万4千ほどです。さらに多くが屯田兵として自活を行うべく各地に散っており、部隊として駐屯しているのは6箇所に留まります」


 リュウコウは手にした筆で駐屯地を記入して行くが、その場所は俺が書き入れた地図の枠外にあるものや、俺達が向かう領都の更に向こう側であったりして、直接の障害になりそうなのはやはり商都ナーキンと領都シンタオにいる部隊だけと思われる。


「ふむ、こう見ると希望が見えてくるな。()()()()が急ぐと告げた理由も理解できる」



「しかし実数が4分の1というのはいささか納得できぬ数字だ。何か理由があるのだろうか」


 メイファが額を押さえながら感情を殺した声で誰ともなく呟いた。王統の一家からすれば理由もなく軍が弱体化しているとは信じられないのだろう。


「殿下には申し上げにくいのですが、東部天軍は完全に腐敗しきっております。詳細をお話しますと、まず太守から御領を守護すべく、天軍に兵部費は定数分は満額支払われております。兵部費を削る事は軍を敵に回す事と同義ですので、これは間違いこざいません」


 太守が金を横領しているわけではないとまずリュウコウは告げた。全ての罪を太守に押し付けられれば楽なのだが、そうは問屋がおろさないようだ。


「続けよ」


「はっ。満額支払われた金額を10割としますと、まず将官用の取り分として3割がいずこかへ消えます」


「なっ! そのようなことが……あるのだな。それもまだ続きがありそうだ。私はもう口を挟まない、全てを告げてくれ」


「残り7割となった兵部費ですが、そこから2割が御用商人への懐に入り、そして現地部隊の将校、下士官達の横流し、装備の横領へと消えてなくなり、残るのは2割半かと。数字で見る限り、そのようにしか判断できません」


「そ、そこまで天軍は腐り果てているか……そなたの言葉を疑いたくないが、間違いのない事実なのだな?」


 メイファは希望に縋るような顔でリュウコウを見るが、彼も苦い顔ではっきりと事実を口にした。


「誠に恐れながら、部隊が訓練や遠征時に主計部に要求する物資から割り出される数字ですので、多く見積もる事はあっても逆はないかと」


「メイファにとっては衝撃の事実だが、俺達にとっては敵の弱体化は悪い事ではないだろうさ。それに彼の情報は何処にどれだけの部隊がいるか判明しているもの大きい」


 主計部の給料は薄給だと聞いている。彼等の()()()がいくらだったのかは聞かないでおいてやるとするか。20人いた部署が三人に減らされて激務だったようだし、文字通り一人で10人分くらいの仕事をしていたはずだ。ある程度の役得があってもいいだろう。


「ええ、数字に間違いはありません。なにせ各地から要求が来て各種事務作業をしているのは我々ですから。ナーキンには正規部隊が2000名、シンタオには4000名が配備されています。自費で兵士たちを養うような奇特なことでもしていれば話は別ですが、そんな変人はいないでしょう」


「リュウコウ殿、ありがとうございます。そういうわけで、私たちの敵の数は判明しています。そして先ほども申したとおり、時間は我々の敵です。古来より多くの反乱が起き、その殆どが鎮圧されてきました。その最たる理由は兵の精強さでも、戦術の拙さでもありません。時間を掛けすぎたからです」


 己の言葉が周囲の皆に伝わるのを確認して、シアンは続けた。


「私が10日で領都まで攻め上がると告げた最大の理由もそこにあります。恐らくこの決起も商都、そして領都に伝わるのは時間がかかるでしょう。決起と同時に門を閉め情報の漏洩を防いだものの、私の見立てでは申し上げた期日には早馬が到達しているはずです。専門家の皆様に伺いますが、謀反の知らせが届いた後、領都で為される反応はどれほどの時を必要とするでしょうか?」



「そうじゃな。まずは反乱の規模の調査から入るはずじゃ。その後に討伐軍を編成し、部隊の選定、指揮官の任命となるじゃろう。あのケイトウめのことだ、それすら部下任せにするじゃろう。部隊も恐らく領都からではなく周辺の部隊に集合をかけるであろうな。儂は一報が入ってから5日はかかると見ておる」


 ソウジンの見立てに誰も異論を挟まなかったのを見てシアンは畳み掛けた。


「これまで鎮圧された反乱には特徴があります。それは首謀者が王侯や豪族で確固たる根拠地が存在し、形勢が悪くなると撤退して勢力を整えて時間をかけたことに起因します。そうなれば連戦連勝できるようなよほどの戦上手でない限り兵力差に押しつぶされて終わりです。なにしろ正規軍はその気になれば国中から戦力を集められますから。兵は拙速を尊ぶと申します、私が掲げた10日と言う期間は敵が我等の反乱を知ったときにはその眼前に現れ、相手の準備を許さないことが第一義です」


「目的の意義は理解した。問題はそれをどう実行し、成功させるかだ。それも考えてあるのであろうな?」


 ラコウの試すような視線にシアンは自信に溢れた声で答える。少なくともシアンの説明を聞いて戦力の基幹となる金剛兄弟の理解を得られたようだ。尤も、目的地までの道のりに倍以上の日時がかかるという最大の問題点が解決されていないことだ。


「もちろんです。まず、最も時間のかかる行軍の手間ですが、これは数を減らすことで対応する予定です。ああ、申し上げておりませんでしたが、この戦いは御二人の麾下の兵200、ソウジン元将軍の手勢100とそちらのエイセイ殿の配下、約200。計500人で戦い抜く考えです。補充、援軍などは想定していません」


「馬鹿な! 数倍の兵力を相手に戦えと申すか!? 無論のこと、殿下の御為とあらば百倍の敵でも戦う気概はあるが、ものには限度があるというものだぞ」


「御言葉ですが、例えばこのセンシュの街では多くの志願兵が殿下の旗の下に集おうとしていますが、彼等が信頼の置ける戦力とお考えですか?」


「弟よ、シアン殿の言うとおりだ。使えぬ味方は見捨てられぬ分、敵より数倍厄介なものだ。彼等を錬兵する時間など我等にはない。この街で防備を固めてくれる程度で充分だ。それを考えた上でシアン殿は献策をしておるだろう」



「わ、我等も戦力の一員として数えて下さるのか!?」


 シアンの言葉にエイセイが感激の声を上げた。先ほどまでは自分達は場違いではないかと小さくなっていたのだが、主戦力と見做されて嬉しそうだ。


「当然です。貴方がたも殿下のために命を懸けて戦う同志です。その事は殿下もお認めですし、なによりそちらのユウキ殿が強く推して下さいました。私としては貴方がたの潜在能力は魅力的ですが、何よりもユウキ殿を信じていますから、ユウキ殿が信じる貴方がたも信じます」


「エイセイ、そしてハンカイとカンシンであったな。そなたらにも期待しているぞ」


「お、俺達のような下賎な者の名まで覚えていて下さるとは! このカンシン、殿下に永遠の忠誠を誓います」「お、俺もです!」


「もったいない御言葉、なによりユウキの兄貴の舎弟として恥ずかしくない行動を殿下に誓います」


 何故にエイセイが俺を絡めるのか不思議だが、まあいい。エイセイの部下であるハンカイはこの街で噂を流すなど搦め手をやらせたら右に出るものは居ないし、カンシンに至っては恐るべき腕前の剣士だった。その技の冴えはフェイリンが目をむくほどであり、流浪の民である彼をエイセイが食客にしていたという。


 そしてエイセイだが、この場に二人を連れてくるあたり優秀な部下の能力を理解し抜擢することができ、そして能力を認める度量がある。つまり人の上に立つ才に溢れているということだ。

 正直、武侠をまとめるより天軍に入って指揮官やっていたほうがよほど出世できそうであるが、本人は堅苦しいのが苦手らしい。

 だがメイファならこの稀有な男を使いこなせると思う。未だに俺を立てるような事を言っているが、これから全てを手に入れるだろうメイファの元に居た方が、よほど栄達できると思うが。



「私は使えない戦力より信頼の置ける小勢の方が有効であると考えます。それに天軍と真っ向から争うつもりもありません。天帝に弓引く形となっていますが、殿下にとっては実の兄上、皇軍相撃など殿下の美名に決して消えぬ傷がつきます。実力行使は極力最小限に、私は武力衝突はナーキンとシンタオのみで起きると見ています。もちろん陥落させるための策も備えてありますのでそれをご説明いたします。お二人の判断はそれを聞いてからなさってもよろしいかと」




 出立は翌朝の夜明けとされた。早い時間だが、出陣する殆どの者が早い時間に酒を呑んで寝こけていたので問題はないだろう。どのみち日が暮れたら寝るしかないような世界であるから、朝も早いのだ。


 そして結果がどうなったかといえば話し合いが終わるころには金剛兄弟はシアンの事を軍師殿と呼ぶようになっていた。


 こうして俺達は数は少ないながらも一枚岩として纏まる事に成功したのだった。




「さあ、どんどん乗り込んでや! 遅れれば遅れるほど後がつかえてまうからな!」


 シアンの指示の元、約500人の男たちはメイファの言葉の後、100台もの馬車に乗って移動を開始した。


 これがシアンと俺達が考えた移動法、味方の兵数が少ない事を逆手にとった対応策だ。この百台もの馬車に兵士たちが分乗して移動を開始する。行軍に必要な物資は既に途中の村に手配済みであり、俺達は移動するだけでよかった。物資を積んだ小荷駄こそが速度を遅くさせる最大の要因であり、それを取り除く事によって俺達はこの世界の常識では考えられないような移動速度を達成していた。


 この行動に必要な手配はすべてシアンの実家の商会とソウジンの手勢によって行われていた。シアンの実家がここまで協力的になる事は予想外だった。もちろんメイファが東部を支配する事になれば、その恩恵は計り知れないが、今の自分達の立場を見れば巨象に挑む蟻の様なものだ。事情を知らぬ他者から見れば俺達など踏み潰されてお終いと考えるだろう。

 シアンの事を信じているにせよ、相当の力の入れようだった。彼等の尽力によって馬車100台の用意は行われたからだ。当然メイファは事がなった暁には相応に報いると約束しているが、俺達への資金援助こそないものの、かなり俺達に金を掛けている。


「そりゃもうアタシが拝み倒したからや。助けれくれんとアタシが整備した情報網を滅茶苦茶にしてやるでと脅したのも事実やが、弟は快く助力してくれたで」


 今の商会の主はシアンの弟が家督を持っているらしい。ふと横暴な姉に苦しめられる弟の姿が目に浮かんだが、余計な事は言わないでいいだろう。



 そして行軍は常識を超えた速度で行われた。幾度もの替え馬が用意され、既に野営地の準備さえ整えてあったので兵士たちは一日中馬車に揺られ、日が落ちた後は飯を食って休むだけの一日を送ること二日。


 俺達は商都ナーキンの姿をその眼に捉えた。徒歩で六日かかる距離を二日で踏破した事になる。

 もちろん全てが上手くいったわけではない。天候こそ崩れる事はないとわかっていたものの、10台近い馬車が壊れ、その倍近い数が不具合を起こしていた。最終的には金剛兄弟の兵は神気使いで占められており、自らの高い身体能力に物を言わせて徒歩で行軍したりしたが、大きな問題は起きなかった。



「おお、見えましたな! あれが商都じゃ。あの様子、我等に警戒しているようには見えん。やはり無理をしてでも先を急いだ甲斐があったというもの。さて、始めると致そうか」


 ソウジンが指摘したとおり、俺達の接近にも商都の門は閉ざされていない。恐らくはまだ伝令が飛んでも来ても俺達の到着は先だと踏んでいたのだろう。商都とよばれるだけあって物流を止めると被害は大きい。出来る限りは日常を維持するつもりだったのだろう。



 多くの商隊が門の前で商都に入るべく列を成している光景を見ながら、俺達は策が上手く行っている事を確信した。しかし今すぐあの列を蹴散らして商都に押し入るわけには行かない。


 何故ならば我々の目的は領都の太守の討伐であり、商都の混乱はメイファの望むところではない。商都を傷物にしても最終的には誰も喜ばないし、無辜の民を殺して回ればメイファの名は地に落ちる。



 俺達はこの状態の商都へまずは我々の接近を知らせ、降伏勧告をするところから始めるのだ。


 回りくどいのは承知の上だが、多くの血を流した上でこの商都を手に入れるのは誰にとっても不幸であるし、初戦であるから誰が見ても文句のつけようがない勝利で飾る必要があった。



「さて、仕込みは上々、商都をいただくとするか」


 そう呟くと、俺はひとり商都の城壁の上を跳び越してこの都の中に入った。


 既にハンカイの手の者が色々工作をしているし、今回は俺の興味を引くものがあったので、それを利用してこのナーキンを陥とすのだ。


 悪いが、俺に目をつけられた時点でこの都の運命は決まっている。人死には極力押さえるから悪く思わないでくれよな。


 俺はそう心の中で呟いて目的の場所へと進んで行った。

 




 



楽しんで頂ければ幸いです。


ちょっと変な所で切りますが、一応攻囲戦の予定なので次は刃を交えます。


相手が全く臨戦態勢ではないのですが、ここで殴りかかっても遺恨が残るので相手にある程度準備させてから戦うという面倒な羽目になってます。

シアンの準備させずに突っ込むというのは周囲の天軍に呼応させないという意味であり、この場合は都に突っ込むと虐殺になるので少しは体裁整えさせようね、と言う話です。

錦の御旗というのは強力ですが、戦い方が限られるのが面倒な所です。



次は日曜でお会いできればと思います。

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