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世界最強になった俺、史上最強の敵(借金)に戦いを挑む!~ジャブジャブ稼いで借金返済!~  作者: リキッド


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高級奴隷 3

お待たせしております。



 こじんまりとした宿を一件借り上げた後、俺は宿の主に2刻(2時間)ほど宿を離れてくれるように頼んだ。主は嫌な顔をしたが、少なくない額の金を渡すと買い物をしに行くと告げて出て行った。



 宿の大部屋にまずは女共を連れ込んだ。本命のおっさんは小部屋に移動してもらっている。色々と玲二がおっさんに説明をしていると思うが、できれば変わって欲しかった。玲二が有無を言わせずにおっさんを案内してしまったからな、リリィもあっちについていってしまった。


 こっちを呪殺しかねない目で睨む女達を説得をするのは並大抵の苦労ではなさそうだ。


「枷の鍵だ、まずは拘束を解くといい」


 俺は彼女達の前に鍵を投げて寄越した。疚しい事がない証明に自分達で枷を解いてもらう意図なんだが、間違いなく伝わってないだろうな。


 改めて女4人を観察する。さっきまでは美人×4の認識でどんな女なのか一切に気にしていなかったが、こうして見るとなかなか特徴のある4人だった。



 先ずは赤毛の戦士の女。小柄だが、油断なくこちらを見ている。次に凄い目でこちらを睨んでいる長い金髪の長身の女は弓の使い手だな。片側の腕だけ筋肉が発達している。


 残りの二人は共に銀髪だが、顔が似ていないので姉妹と言うわけではなさそうだ。

 眠そうな顔をしている僧侶の女といやに怯えている魔法使いか。なかなかバランスの良いパーティだが、全員女でしかも美人なんて有名にならないはずがないが……俺知らないんだよな。

 

 ライルが著名な冒険者は諳じていたので俺も大体は知っているつもりだったのだが、最近結成したのかな?




「ちょっと!こんな部屋に押し込めて何をするつもりよ、この変態!!」


 考え事をしていたので無言だったのだが、それが不安になったのか弓の女が険しい声で詰ってきた。


「特になにもしないよ、と言いたいがまずは僧侶の姉ちゃんだ、前に出ろ」


「な、何を……」


「何って治療だよ、あんたが一番ひどい怪我じゃないか。肋や色んな骨がヒビ入ってるぞ」


 呪いの解呪の前に治療が必要な女達だった。近寄って回復魔法を使おうものなら何を言われるか解ったものではないので遠距離から全員を回復させた。


「これは、<ヒール>!?こんな子供が?」


「いえ、<ハイヒール>ですね、私も杖なしではできない魔法です」


 回復を受けた僧侶の女性が冷静な声で答えた。かなり驚いているはずだが、熟練の僧侶は魔法の行使に邪魔な感情を排する訓練を施されていると聞くが、その通りの冷静さだ。


 非合法であることを伝えて黙っておくように頼んだ。一応は俺の奴隷になるのだろうが、強制力はない。無理矢理言うことを聞かせる奴隷紋を必要とする奴隷は凶悪な犯罪奴隷位なものだという。


 奴隷紋も魔術のひとつだからそれを行うには当然費用がかかる。大抵はこのように話し合って物事を進めるのが普通だ。



「で、お前達は何かと戦って呪いを受けたのか? 僧侶の姉ちゃんだけが深手を負ったということは、後衛まで抜かれたって訳だな?」


「あんたに教える義理はない」


 小柄な戦士が簡潔に答えた。言葉には明確な拒絶がある。


「確かに俺に答える義理はないな。彼女達を買い取ったとはいえ、正式な首輪をしているわけでもないからな」


 うん、面倒臭くなってきた。もう彼女達は別にどうでもいいや。丁度任せられる奴も来たことだし、後は丸投げして商人のおっさんのところに行こう。


「ユウキ様、こちらにおいででしたか。ギルドとの交渉について報告にまいりましたが、立て込んでいるようですね」


 俺の状況を知らぬはずがないユウナが意地悪を言ってくるが無視をした。


 俺の機嫌を知ったユウナは即座に居ずまいを正すと俺に跪く。その光景を見た女達が息を呑むのが聞こえた。


「あの女達にこちらの説明と、事情をきいておけ。俺は本命の方に行く」


 立ち去り際に置土産の<解呪(ディスペル)>を使うと、彼女達の腕にあった恐ろしげな黒い点がたちどころに消え失せた。


「ウソ!? そんな、僧正様の解呪でも消えなかった最上級の呪いなのに!」



 扉の向こうから何か聞こえたが、俺の興味は既に失せていた。精々かかった資金分を返してくれれば後は何でもいいや。



 別の部屋には玲二とリリィが先程購入した対本命の奴隷であるエドガーさんと話をしていた。


「あ、来ましたね、あいつが俺達のリーダーのユウキですよ」


 寝台に腰掛けていたエドガーさんは、すぐに立ち上がるとこちらも深く跪いた。さっきもユウナがあの女達に見せつけるために行ったが、あれは片膝を着ける目上に行うもので今のエドガーさんのそれは両膝をついた奴隷の行為だ。


「この度はご縁により奴隷と相成りました、エドガーと申します。必ずやお力になることを誓います」


「これはご丁寧に。ですがまずはお立ちください。私にとってあなたは奴隷ではない、立派な人物なのです。まずは自己紹介からとしますが、私はユウキという冒険者をやっているものです。ここにいるのは仲間の玲二ともうひとり、私の相棒がおります。どうぞよろしく」


 エドガーさんは相棒が見えない人だったので、リリィにはわざわざ実体化してもらって挨拶した。

 彼にはそうする価値があると見ていたからだ。



「ご主人様、私のような盛りの過ぎた奴隷にそのような言葉遣いををなさるものではございません。本来は主人に対して大変非礼ではございますが、そのままではあなたの主人としての沽券に係わります」


「貴方のような大人物にお会いできたのです。礼を尽くすのは当然です」


「な、何を申されますか。私のような小者に……」


 このままではらちが開かないので、前置きはここまででいいだろう。


「私は<鑑定>持ちです。あなたの実力は理解しているつもりです。あの奴隷商は気付いていないようでしたので、彼女達には都合の良い隠れ蓑になってもらいました」


 俺の言葉にエドガーさんは雰囲気を一変させた。これまでの冴えない風体が、いきなり風格のある佇まいに変わったのだ。

 何よりその目だ。先程も一瞬だけ見せた激情に燃える力ある眼を見れば誰もが一目置く男であることが理解できるだろう。



「失礼致しました。我が主には擬態は失礼にあたりますな」


「いえ、お気になさらず。今の姿はより頼もしく感じますよ」


 堂々と立ち上がったエドガーさんを椅子に座らせた。これでようやく本題に入れるな。


「我々の願いを聞いて頂きたいが、その前に何か口にされた方がよろしいでしょう。あの程度の奴隷商ではまともな食事も提供されなかったでしょうから」


「彼等は盗賊上がりだそうですが、人相ほど悪い人間では無かったですな。品位は有りませんでしたが、あの不幸な女達に対する分別はありました。奴隷の体調を気にする繊細さは持ち合わせていなかったようですが」


 歓談しながら俺はマジックバッグから湯気の立つ食事を取り出した。

 その時の彼の眼が鋭い光を放ったのを俺は捉えていた。


「素晴らしい品ですな。商人垂涎の<鑑定>とその鞄だけで金貨数百枚の価値があるでしょう。私のような人間を必要とされなくてもよろしいのではないかと勘ぐってしまいますな」


「詳しい話は後でしますが、あなたの力を欲している人物が居るのです。後で本人から聞いてください」


 ここで皆で昼食を摂った。エドガーさんは類い稀な商人として料理の質やその食材の鮮度や味にまで細かく驚いていた。


 俺達は自分の事をあまり話さなかったが、エドガーさんからもたらされる様々な話題は俺達を飽きさせない。先程まで売られて行く奴隷だったとは思えないほどの話題の豊富さとその情報の”鮮度”は、彼の特殊さをより浮き出させた。



 俺はここでセリカ達を待つつもりだったのだが、予想外に長引いている。セリカは俺が凄腕の商人を捕まえたときいてすぐにもこちらへ来たがっていたが、一応の主役であるクロイス卿の奴隷購入がなかなか決まらないようだ。

 なんでもフィンさんと人材について揉めているとか如月が<念話>で伝えてきた。



 ここで待ってもいいんだが、どうしようかな。ちなみに隣の女性陣だが、すぐにユウナが<消音>を使ってしまったので、中の様子よくわからない。なんだか不穏なので放っておくに限る。



「ご主人様、よろしいでしょうか?」


「どうかユウキと呼んでください。貴方に比べれば私は若輩者です」


<中身はジジイな若輩者もいたもんだな>


<まぜっかえすなよ。いきなりあなたより年上ですが、とでも言えってのか?>



「それではユウキ殿、分不相応であることは重々承知なのですが、この愚物の願いを一つ聞いてはいただけないでしょうか?」


 奴隷が主に要望を口にするなど普段はあってはならないことだが、エドガーさんの尋常ではない気配を感じた俺はその先が気になった。


「私に出来ることであれば何でも」


「私はこの王都の出身なのですが、ここで何をするにせよ、力になってくれるであろう男がいます。どうか一度会わせては頂けませんか?」


「もちろん構いませんよ、そちらの都合がよければ今からでも。私の待ち人はまだ時間がかかりそうなのでね」



 そういうことになった。

 恐らくエドガーさんは初めからこれを狙っていたのだろう。どう見ても高級奴隷であるはずの彼がわざわざ擬態までして故郷に帰った理由、<鑑定>で見た話が事実ならば彼はその協力者に会いに行こうとしているのだろう。

 俺としても是非とも気になるところだ。



 まだ戻らない宿の主に読めるか知らんが書き置きと僅かな追加料金を置いて行こうとするが、女達が気になったので扉を叩いて覗き込むと……奇怪な光景が広がっていた。


「ユウナ、なにしてんの?」


 ユウナが戦士と狩人の二人を地に這わしていた。


「ちょっと、なんでスカウトがこんなに強いのよ……」


「私達の全ての面で上を行かれた。何度やっても勝てない」


 悔しげに呻いている女達なので、ユウナはかなり苦労して手加減したようだ。普通の手加減なら殺さないだけで意識を奪っているからな。


「初めに上位者が誰か教えているだけです。ある意味で男以上に位階は大事なので、初めにキッチリ教え込んでおく必要があります」


「まあ、何でもいいが。俺らはここを離れるが、そっちはどうする?」


「この者達にある程度身の回りの品を揃えてやるつもりです。そのあとで本人達の口から正式な謝罪をさせますので、お時間を頂戴できればと思います」


「別に要らんけど……わかった、全て任せる。とりあえず何でも使ってもいいぞ、居場所は後で知らせてくれ」


「畏まりました」


「なんでそんなに強いのに、あんな男に従っているの!?」


「まだ教育が足りないようですね。我が主に対する侮辱は万死に値しますが、死にますか?」


「女子供には優しくしてやれよ。それが俺の流儀なんでな」


 それだけ言って俺は扉を閉めた。なんだか俺に買われなかった方が幸せだったかも……いや、その場合はあと5日で死んでたか。



 <消音>が聞いているはずなのに、なぜか悲鳴が聞こえた気がした。





 玲二とリリィはクロイス卿の下へ戻るそうなので、ここからは別行動だ。


 エドガーさんは力強い足取りで王都を歩いて行く。その姿は先程までの奴隷の服ではなく、上等な生地の高価なものだった。


 いまさっき与えたものだが、まるで数年来ずっと着続けていたかのようにしっくりする見劣りのしない姿だった。俺では服に着られてしまうだけだろう。こればかりは本人の貫禄が大事だ。


 俺が持っているモノだけあって、それは様々な魔法防御が施されたダンジョン産の高級品だ。彼はその価値を一目で見抜いてこんなものを着れないと一度は固辞したが、そのみすぼらしいナリで行くのかと問うと渋々従った。


王都の入り組んだ南地区の下町を迷いなく進んでいるエドガーさんの足取りは次第に重くなってきた。余人には計り知れない思いがあるのだろうが……あれ?この先って確か……。



 一軒のどこにでもあるような仕立て屋の前で立ち止まったエドガーさんは意を決したように店内に足を踏み入れた。確か彼の本職は石工だったはずだが……ここは手下の家かな?



「失礼するよ。ここに店主のゾンダはいるかね?」


「ゾンダは奥におりますが……失礼ですがお名前を伺っても?」


「エドガーという者だ。彼とは兄弟分なんだが、まだ私をそう思っていてくれるかは……」


「エドガーだとぉ!? またつまんねぇ騙りが来やがったか! 追い返せ、今こっちは頭からの依頼で手一杯なんだよ!」


 奥から聞きなれたダミ声が飛んできた。間違いなく俺の知っている人物だが、その声にエドガーさんは肩を落とした。



「申し訳ありません、うちの大将は今取り込んでまして……」


「いや、詮無いことだ。全ては7年前の私の愚かさから始まったこと。ゾンダが私に愛想を尽かしても不思議ではない。ただ、あの夕焼けの下で誓った言葉だけは偽りではないと、後で彼に伝えては貰えないだろうか」


 俺に手間を取らせて申し訳ないと頭を下げたエドガーさんだが、背後から何かが壊れる凄い音を立てながら走ってくる気配がした。


「か、か、必ず、必ず生きて帰ってくると信じていたぞ……兄弟、エドガーの兄弟!!」


「まだ、私をそう呼んでくれるのか、ゾンダの兄弟よ」


「たりめえよ、俺とお前は五分の兄弟分じゃねぇか! 俺はお前が絶対に生きていると信じて今日まで耐えて来たんだぜ」


 男くさい顔のゾンダから大粒の涙がこぼれ出す。激情家でも人情家でもあるゾンダは頭は回らないものの、その性格を慕って多くの人間が集っている。だから本当は彼にあの集団を任せたかったのだが……今はその話はいいか。


 号泣する男二人に周囲が唖然とする中、一人の少女が飛び込んできた。


「お父さん、大声で何やってんのよ! そこからでも響いてる……まさか、パパ? パパなの!?」


「ジャンヌ!? 嗚呼、私のジャンヌ! 無事だったのか! いや、ゾンダが助け出してくれたのだな!」


「ええ、パパの商隊が皆殺しにされたと聞いて、うちの商会が潰される前にお父さん、ゾンダさんが助けてくれたの! もちろんママも無事よ。お婆ちゃんの国でパパの帰りを待ってるわ!」


 初めて会った頃から娘が美人過ぎて似てない親子だなとは思ってたが、やはりそういう関係だったのか。友人の娘を匿っていたのにその彼女が敵組織の人質に使われていたのならゾンダの口惜しさも理解できなくはないか。


「おお、神は私を見捨ててはおられなかったのだな、兄弟よ、私はお前にどれほどの物を返せばいのだ!」

 

「俺達は兄弟だ。俺がお前の家族を見捨てるはずがないだろう」


「お父さんとお母さんは本当によくしてくれたわ。この国でパパの帰りを待つと決めた私を実の娘の様に可愛がってくれたの」


 思いがけぬ親子の再会に俺の涙腺も攻撃を受けているが、ここは影の一手だ。



「ああ、そうだろうとも。マリーさんはそういう人だし、お前の姿を見ればわかるさ。それにしても綺麗になった、お前の多感な時期に側に居てやれなくてすまなかった」


「ううん、大丈夫よ、それに私一人じゃなかったし」


「? それは一体どういう意味だ?」


「お嬢様!、そんな大声で何を……エ、エドガー会頭! 必ずお戻りになると皆信じておりましたぁ!!」


「会頭だって!?」「まさか、ボスが戻られたのか!?」


 ジャンヌを追って入ってきた女性の声に釣られるように数人の男女が駆け込んできた。その顔には一様に感激と涙があった。男たちの方は見覚えがあるな、あの夜の騒ぎで共にゴミ掃除をした仲だ。


「お、お前達、エマ、マルクにリッド、アベルまで! よ、よくぞ無事で……!」


「お前の商会の従業員は可能な限り助け出したぞ。みんなお前の帰りを待っていたんだ」


「皆、すまん! 全ては私の見通しの甘さが引き起こした事だった。危険なことは予想していたが、そのせいでエマとリッドは兄を失ってしまった」


「会頭の責任ではありません。全てはバーリガ商会の陰謀だったのです! 私達の解散させられる時にバーリガ商会のグエン会長が現れました。我々と敵対していた彼がこの国の裏社会に手を回したに違いありません!」


「それは薄々私も感じていたが、ゾンダはそれを見越して警告してくれたのだ。それを私は約束の納期が近いからと制止を振り切って商隊を出発させたのだ。全ては私の愚かさゆえに破滅を招いたのだ」


「いえ、こうして御無事に戻られたのです。兄達も天上の世界で喜んでくれているはずです」


 皆が抱き合って再開を喜ぶ中、如月からの<念話>が届いた。セリカが俺が手に入れた商人に会うためにすぐ近くに来ているようだ。護衛もなしに危険だなと思ったが、どうやらロキの分身体を連れているようだ。あいつの能力は地味に便利だな、簡単に褒めると肉を要求するので滅多に言わないが。



「ええっと、なにこの愁嘆場?」


 セリカの言葉にも無理はない。喜びの再会なんだが、皆がボロボロに泣いているので途中から来たら意味不明だよな。


「場がもう少し落ち着くまでちょっと待ってろ。あれに割って入る気か?」


 ボク仕事をしましたよ、褒めて褒めてとしつこいペットをあしらいながらセリカを待たせた。

 釈然としない顔をして待っていた彼女だが、場の中心にいるエドガーさんの顔を見るや顔色が変わった。


「あの人、まさかランデック商会のエドガー会頭!? 7年前の事件で行方不明になってたけど、生き延びていたのね! なんてこと、これぞ天の配剤だわ!」


「あ、こりゃ頭にセリカのお嬢まで! とんだ所をお見せしやした。呼びたてて頂ければこちらから参りやしたものを」


「頭、と言ったかゾンダ。あの方は奴隷の私を買い上げてくださった主なのだ」


「奴隷!? お前が奴隷だと!? いや、そうやって生き延びていたのか……精しい事は後で聞かせてくれ」


 


「俺に用はないよ。用事があるのはセリカのほうさ。エドガーさん、先程話した担当者が彼女です」


「お嬢さんが私を? 失礼、どこかでお会いしましたかな? 商人なので人様の顔は忘れる事は恥ずべき事なのですが、耄碌しまして」


()()()()()、エドガー会頭。私はセリカと申します。このたび私達はこの王都で商売を考えておりまして、是非経験豊富な会頭に是非お力を貸していただきたいのです」


「セリカさん、遂にあの商品を売り出し始めるんですね! それをパパが係わらせていただけるなんて! パパ! このお話は受けなきゃダメよ! 絶対に!!」


 セリカから試供品の提供を受けているジャンヌはそれがどういうものか知っているため興奮して実の父親に詰め寄っているが、当の本人は父親の顔から商人としての顔に戻っていた。


「全てを失った私にこのような話をいただけるのは光栄の極みでございますが、即答できぬ事をご容赦願います。奴隷の身でありながら不遜ではありますが、どのようなご商売をされるのか伺ってよろしいでしょうか」


 セリカはエドガーさんの慎重さに満足の笑みを見せた。いくら奴隷の身であっても言うべき事は言う。言われた事に従う召使いではなく商人としての対応に心強さを覚えているようだ。

 確かに店を任せるなら自分で考えて判断する人物の方がいいな。


「勿論です。これから私達の商材と計画をお話しますので、ご検討いただければと思います。ですが、先に一つだけお教えできることがあります。私たちは既に王都での店舗を確保しました。東地区の一等地にあるロギン通りの3番地になります。もうお解りですね?」


「ま、まさか、その場所は……失われた我が商会の!」


「セリカさん! セリカさんが建物を買ってくれたんですね! いつか買い戻そうと誓っていたんですが、セリカさんなら安心です!」


「ええ、だから私はエドガー会頭の姿を見た時は天の導きだと思ったわ。買った建物の元所有者が現れるなんて、こんな偶然中々ないでしょう?」

 

 セリカがこっちを見てくるが、本当に偶然だからな。お前だって途中まで一緒だったじゃないか。買った建物だって詳細は聞いていないし、あの短時間でそこまで手を回せるなら苦労はない。出来過ぎなので疑いたくなる気持ちもわかるがな。



「頭、この度はなんと礼を言って良いか。言葉になりませんや」


「俺は何もしてないんだがな。全てはエドガーさんの才覚だよ」

 

 ここに来るまで少し話したが、どうやら彼はこの王国に奴隷として移動できるように調整していたようだ。俺の前に主人となった人物と交渉し、あえて高級奴隷から立場の低い借金奴隷へと変わって移動しやすく手を打っていたようなのだ。危険な賭けだと思うが彼ほどの人物が勝算無しにこのような事をするとは思えない。多分この国にさえ来てしまえばソンダのようになんとかする伝手はあったのだろう。むしろそれまでの準備を整えるために7年と言う時間が必要だったのかもしれないな。


「むしろ彼に謝罪をしなくてはいけないかもな。彼の敵はたぶん俺達が既に叩き潰してしまっただろう?」


「手を回した組織こそウロボロスでしたが、命令した黒幕のバーリガ商会はまだ健在ですし、兄弟の復讐相手は事欠きませんや。それより兄弟が奴隷だったっていう話なんですが……」


 ゾンダの顔には兄弟分を憂う色があった。確かに商会の主が奴隷では外聞が悪いだろう。


「心配しなくていい。見れば解るが首輪も奴隷紋もない、ちょっとした方法で手続きを誤魔化してな、今の彼は自由の身だよ。少しでも安く上げるために考えたんだが、結果的にはこれでよかったな。それより俺が頼んだ件が難航しているのか?」



「い、いえ、難航と言うより話が大きくなっちまってるんです。無縁仏の葬式出すには教会は煩いんで神殿に居る知り合いに頼んだのですが……」


 俺がゾンダに頼んだ事とは俺の<アイテムボックス>に今も眠っているあの倉庫の地下に居た死者達の弔いだった。

 完全に俺の自己満足なんだが、誰も見取られる事なく非業の死を遂げた彼等の為に盛大に見送りをしてやりたいと思い、こういったことに詳しいらしいゾンダに一切を頼んでいたのだが、どうにも雲行きが怪しいようだな。


「寄進が足りなかったか? それは失礼したな。なにせ相場が解らんからな」


 懐から先程も使った金貨の束をいくつか取り出して渡そうとしたんだが、逆に止められてしまった。


「逆でさぁ。額が額なもんで俺の知り合いの神殿の奴は他の神殿にも声をかけたんです。他は知りませんが王都の神殿はどこも困窮してますから、突如降って沸いた超大口の依頼の寄進を他の神殿でも分け合おうとしたんでしょう」


 ん? たしか金貨7、80枚程度を革袋に入れて渡したと思ったが、そんなに多かったかな? 数十人いる亡骸を盛大に送ってやろうとしたのでかなりの金額になると思って手付けのつもりだったんだが。


「結局6大神殿全てが名乗りを上げる始末でして、その調整がありまして」


 なんか面倒な話になってないか? 


「俺のせいで面倒をかけてしまったな。誰か他の手が欲しいか? ジークやゼギアスあたりを呼ぶか?」

 

「いえ、とんでもねえ。どいつもこいつも今回の話に有り難がっているんでさぁ。前に会った万物(マナ)神殿の偉いさんなんていたく感激していたぐらいです。ただ、ちょいと瑞宝に話をしてもいいですかね? あいつはこういった根回しが抜群なんで」


 ああ、確かに瑞宝はそういう所があるな。あれだけいた違法奴隷の女達も彼女がきっちり纏め上げて目立った衝突も起きていないらしい。俺には決して真似できない大したもんである。


「ああ、俺からも頼んでおくよ。それにしてもこぞって参加するほど神殿は儲かってないのか?」


 この世界の一大宗教勢力は間違いなく教会だ。古い神を信仰するこの大陸はおろか、現存する大陸全てに根を張っている巨大組織だ。

 逆に神殿関係は土着宗教というか、生活に密着した教えが多い。大雑把ではあるが主に支配層が教会を、平民が神殿を主に信奉しているといっていい。

 神殿は地水火風と時と万物、計6つの神殿があり、多くの信徒を抱えているはずだが、この王都ではあまり盛んではないようだな。


「今は寂れちまってますね。むかしは教会とも伍する大した勢力でしたが、とある事件があって以降はさっぱりです。実は頭も全く無関係ではなくなりましたがね」


 そこまで言われて俺の脳裏によぎるものがあった。


「ああ、5大組織とやらの最後の一つか? 名前は忘れたけど」


「はい、シュウカといいます。元々は王都の全ての組織の頂点に立つ大組織でした。大侠客”シロマサ”とその一党と言えば周辺諸国にまで名の通った大人物でした。俺とエドガーもあの人の杯で兄弟の縁になったんです。ですが、今から10年前に全てが終わっちまいました。もともとシュウカが神殿関係の雑事を取り仕切っていたのでそりゃあもう羽振りがよかったですよ。神殿が人を集め、それを目当てに商人が商売してまた人が集まってきてね、みんな笑ってる思い出ばかりでした」


 昔を懐かしむ顔のゾンダだが、俺はそのときかつてのクロイス卿の言葉を思い出していた。そのシュウカなる組織には偉大な跡目がいたという。その人が事故死して以来、シュウカは火が消えたようにその勢力を減じていったというが……。


「とにかく神殿にはさらに寄進しておいてくれ、配分は任せるが、葬儀はなるべく急いで欲しい」


「わかりやした。早急に纏めて報告に上がります」



 ゾンダに新たな金貨を数十枚渡し終えた頃には、セリカのほうも交渉を纏めていた。

 固い握手をする彼女とエドガーさんの顔を見ればよい結果になった事は明らかだった。


 こうしてセリカの念願だった商売はランデック商会のエドガー会頭との協力によって大いに加速してゆく事になる。

 初めは手に入った商人が一人だけと危惧していたのだが、各地に散っていたランデック商会の手代や番頭が次々と舞い戻り、その他社の追随を許さない高品質かつ魅力的な異世界産の商品は瞬く間にこの国はおろか周辺各国の富裕層に広まってゆく。


 金に糸目をつけない富裕層中心の商売は信じられないほどの利益をもたらし、商品提供者として雪音は契約により総売り上げの三割にあたる莫大な報酬を手にすることになる。



 それはいずれ俺の借金返済に大きな影響を及ぼすのだが、それはまた先の話である。



 残りの借金額  金貨 14778562枚



 ユウキ ゲンイチロウ LV1214


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75


 職業 <村人LV1341>


  HP  110510/100510

  MP  1635110/163510


  STR 16028

  AGI 15865

  MGI 16897

  DEF 16271

  DEX 16042

  LUK 9279


  STM(隠しパラ)4245


 SKILL POINT  4795/5600   累計敵討伐数 128477

楽しんで頂ければ幸いです。


すみません昨日の内に上げるつもりが寝落ちしました。

女奴隷たちの扱いは雑です。おまけなんで、これ以上触れるかどうかなほど雑です。

主人公は既に興味をなくしています。


次話の予定は日曜で頑張ります。

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