冒険者登録 4
お待たせしております。
油断していたら日付が変わってしまった(汗)。
<マップ>で見て解っていたが、雪音は女性陣に囲まれていた。
「貴方がお持ちだという例の物について話をうかがいたいのだけれど」
「ちょっと貴方、私のほうが先にこちらに来ていたのよ! 優先権はこちらにあるわ」
「それを言うならこのホテルは私の親族が経営しています! 真っ先に話をする権利は私が持っているのではなくて!?」
揉めている。だが、聞くまでもなく話の内容はおおよそ理解できていたりする。昨日の内に雪音から”試供品”を周囲の方にセリカを通じて渡してみるとの話を聞いていたからだ。
「昨日の今日でコレか。いや、解ってはいたけどな」
「異世界に日本の生地を持ち込めばこうなるよな。特にインナーは着心地が段違いだぜ。男物でさえそうなんだから、女物は天と地だろうな。金持っている貴族なら飛びつくだろうさ」
そんなものなんだな。俺は男だからそこまで気にしなかったが、直接肌に身につける物はやはり肌触りが全く違う。そこのあたりを聡い女性は見逃さなかったという事か。そして身の回りに気を使える女性は総じて金を持っている。
つまりは雪音は自分のスキルで金儲けの手筈を着々と整えているというわけだ。
それにしても、アレは脱出できるものなのだろうか? 俺が玲二から連絡を受けて既に二刻(二時間)は経っている。その時にレイアと共に既に出掛けるという話ではなかったか?
玲二は俺に連絡すると同時に雪音にも話は通してあるとのことだから、まさかずっとそうなのか?
「セリカはどこにいるんだ?」
この状況を作った元凶を探すと、雪音を取り巻く女性陣を遠巻きから眺めていた。いや、眺めているというよりも、あれは何をしているのか知らんけど研究とか勉強している目だな。
だが、このままでは埒が明かないのでセリカを手招きして、雪音を連れて来て貰うことにした。当然自分で中に分け入って連れ出すような愚は冒さない。興奮している女性陣のなかに割り込む勇気など持ち合わせていないしな。
「おいおいセリカ、ずいぶんと盛況のようだが俺達の予定は知ってるはずだろ? あのご婦人方から雪音を連れ出してくれないか?」
俺の前に現れたセリカは上機嫌だったので、俺の頼みを二つ返事で引き受けてくれた。
「いいわよ、それとこっちも相談があるんだけど」
「わかった、後で聞く。今はギルドを優先させてくれ。時間帯を外すと混むんだよ」
頷いたセリカは鬼気迫る表情で押し寄せるご婦人方を綺麗に捌くと、雪音をこちらに寄越した。
諦めきれない人には後に時間を設けて対応すると言ってあれほど興奮した集団をあっさりと解散させてしまった。手慣れた鮮やかな手際だった。
「お待たせして申し訳ありません」
「いや、構わないぞ。それにしても大人気だな。こうなる事を予想していたのか?」
俺の問いに答えた雪音は得意そうだった。出会った頃は石牢の中でさえ艶のある黒髪の中に清楚な印象を受けた彼女だが、今は大分表情が増えてきたように思える。
「まだまだこれからです。インナーで名前を売った後に本命の化粧品で攻めます。絶対に成功させてみせますから、纏まった量のお金を用意できると思います」
いや、本心から金は要らないんだが、雪音は本当に俺の前に金貨を積みそうだな。そんな事をさせるために仲間にしたわけではないと何度も言っているんだが、これに関しては玲二も聞いてくれないのだ。
このままだと俺は稀人を稼ぐ道具として仲間にした極悪人ということになってしまうな。
何か手を考えないと。
「それよりレイアはどこに? 確か共に居るという話だったよな? あいつがいればこんな状況にはならなかったと思うが」
「レイアさんはお店に呼ばれたとかでそちらに向かわれました。本人は残ると言って聞かなかったのですが、向かってもらいました」
別に俺が命令したわけでもないので守ろうと守るまいと気にはしないが、レイアも律儀だな。
「まあいいさ、それにとても忙しそうだな。そっちの都合が悪いなら雪音だけ別の日にしても構わないが」
「いえ、忙しいのは今だけですから。後の事はセリカさんが手伝ってくださるそうですし。私たちと大して年も変わらないのにもう既に大きな仕事をいくつもされているとか。尊敬してしまいます」
「姉貴は行動力あるなあ。もうそんなに手を広げているのかよ。前じゃ考えられないな」
からかうような玲二の言葉に雪音はひどく真面目な顔をして答えた。
「当たり前でしょ。せっかくあの日本から異世界に来たのに、全てを懸けて取り組まなくてどうするの。それにレイ、あなたいつまで筋トレを続けるつもりなの? あなたのアレを強化した方がより私たちに恩恵が大きいってことは言わなくてもわかるでしょう?
「そりゃわかってるさ、明日までの約束だっただろ? それまで許してくれよ」
雪音のレベルは俺の<共有>によって順調に上がっている。相棒曰くパワーレベリングとやらの成果で、レベルアップに伴うスキルポイントの入手により、雪音のユニークスキルもレベルが上がっている。
だが、玲二は敢えてスキルを不稼働状態にして<共有>によるレベルアップを拒み、暇を見つけては体力と筋力の錬成に努めていた。今も非常に重い背負い袋を担いでいて、修練に余念がない。
それというのも、俺とリリィがレベルアップにおける恩恵について口を滑らせたからだ。
まず間違いなくレベルアップに伴うステータスの上昇具合はレベルをあげる前の数値に比例する。
例えば力を10にしてレベルを上げていく時と、15にして上げるときでは、2割近い差が現れるという。リリィの言葉なので間違いはないのだろう。
であるならば、レベル1の状態でできる限り各種ステータスを上げておく方が、最終的な数字の差は大きくなる計算だ。
それを聞いた玲二は猛然と体を鍛え始めた。
先程指摘した、各種ステータスが50もあればそれ以上はあっても使いようがないという事実を伝えるのが憚れるほど熱心に取り組んでいた。あそこまで熱心ならきっと結果はどうあれ、本人にもいい経験になるのではないかと思って放置したのだ。
玲二に言わせると筋肉痛もポーションで消えるし、辛い鍛練も最後にステータス画面を確認して数字で結果が現れるのを見るとやる気に繋がるようだ。
確かに頑張りが数字に出るのは分かりやすくていいな。特に玲二はユニークスキルで効果が倍になっているようなものだから、すぐにステータスに反映されるのだろう。
雪音としてはアイテム創造に非常に膨大な魔力を消費するので、弟にも早くユニークスキルのレベルを上げてほしい本音が見て取れるものの、強く言って解らせるほど切羽詰ってもいないという状況だろう。
それ以前にまだこちらに来て一週間程度しか経っていないのだ。もう少しのんびりしてもバチはあたらないと思うが、雪音は非常に熱心だし、何より表情が輝いているのでとやかく言ってはいない。
雪音が己のユニークスキルを使い倒して充実した日々を送っているのと同じように、玲二もハンク爺さんへの弟子入りと体を鍛え続けることで時間を有意義に使っていると言えた。
俺達はあのご婦人方がひっきりなしにやって来て出掛ける準備どころでなかったらしい雪音の支度を待っていた。
「それより、ユウキさん。今日の経験値でとうとうスキルがレベル3に上がったんです!」
「へえ。どんな効果になった?」
「名前を入れて創造をする際に、はじめて作るものでもいくつかの種類が登録されているみたいなんです。まだその種類は多くないですが、これでもう目的の物を求めて延々と作成をする場面は減ると思います」
二人のユニークスキルは<共有>によって俺も使えるようになっているが、スキルポイントを使ってのレベル上げは本来の所持者だけにしかできない。
なので、有り余っていた俺のポイントで玲二ら二人が欲しいスキルを取る代わりに、自分たちの得たポイントは全てユニークに振るように頼んである。
そもそもレベル上げ自体も俺がダンジョン探索中の戦闘で滅茶苦茶上がっているようだ。ウィスカに戻ってからの二日は、二人を各所に案内していたから午前中のみの探索だが、それでも雪音のレベルは50を越えたようで、今さっきユニークスキルのレベルを3にあげたようだ。
俺も自分に備わっている<アイテムクリエイト>がレベル3になっている事を確認し、試しに何か作ってみよ「お菓子!」……はい、わかりました。
俺の一人言じみた考えにも容赦なく割り込んでくる相棒だが、俺に否はなど言えるはずもない。
折角なんでここにはない最近よく作らされるチョコレートにするか。チョコと3文字で入れると確かに、今迄作ったことのない種類が並んでいる。へえ、苺味や抹茶味なんてあるのか。
「とりあえず全部ね」
はいはいわかってますよ。それ以前に創造したものを除き、新たに表示された5種類の品を作成に入ると、消費する魔力が減っている事に気づいた。
「レベルが上がって使う魔力も軽減されたんだな」
「はい。レベル2で10%引きだったのですが、3に上がって15%になりました。4文字以降のアイテムを創造するときに大きく効果を発揮すると思います」
確かに5文字になると3億以上の魔力が必要だからな。一割軽減でも3000万も減るなら大違いだ。
それぞれ5個ずつ作成し、相棒が桃源郷に旅立っているのを眺めていると、不意に玲二が声を掛けてきた。
「ああ、そうだった。なあユウキ、一つ欲しいスキルがあるんだけどさ」
「別に俺に聞かなくても取っていいぞ。俺はもう特に必要なものないからな」
「いや、そうはいかないって。許可は取るさ。姉貴もリリィも見てくれ、絶対に使えるスキルなんだよ」
そう言って玲二が自分のスキル画面をこちらに見せてきた。
「なに? えっと、<余剰魔力格納>? どういうスキルなんだよ」
魔力を格納? どこに? スキル相手に理屈を考えても意味はないと思い知っていてもつい考えてしまうな。
「俺もなんだこれと思って調べてみたらさ、上限一杯で使えていない魔力を別に貯めておけるらしいんだよ。ユウキも寝てるときとかどう頑張ってもMP無駄にしてるだろ? 姉貴のスキルは滅茶苦茶使うんだから、あった方が絶対便利だと思うんだよ。ただ消費ポイントがな……」
玲二の言うとおり、獲得するための消費ポイントが80もあった。まだ保有ポイントは4桁あるのだから気にする必要はないんだが、やはり俺が獲得したからか玲二には遠慮があるようだった。
「取ったぞ。これでレイア含めて4人分になるのか。やはり<共有>は便利だな」
逡巡する玲二の目の前でさっさと取得する。言い出した本人が止める間もなく取ったので玲二は口を開けて固まっている。さて、どんな能力かな?
「あ、勝手にその格納庫に貯まっていく感じなんだ。でも一万しか入らないや。もう貯まりきっちゃった……って良く見ればこれレベル制じゃん。レベル上げると上限上がるタイプだよきっと」
リリィは俺の性格を熟知しているので、俺に代わってさっさと<余剰魔力格納>のレベルを上げていく。レベルアップに伴う消費ポイントは一律20だったのでリリィは気持ちいいほどガンガン上げてゆく。
レベル2で上限が5万に、レベル3で10万になりレベル4で一気に飛んで100万(スキル系は途中で一気に跳ね上がる傾向にある)となり、レベル5で1000万だ。
「い、いや、やりすぎだろ……ここまでしてくれなんて……」
「何言ってんだ、冷静に考えろよ。知っているだろうが、今の俺は一秒でだいたい2000くらい魔力が回復する。単純計算で一時間に720万だぞ? <共有>込みで4人分とはいえ寝ているうちに溢れ出ちまう。ここはもうちょっと取るべきだ」
さらに20ポイントを消費してレベル6にあげると容量が一億になった。<共有>所持者同士なら一人分が満タンでも自動的に他者の格納庫へ移動する便利機能だった。容量の上がり方が雑だなぁと内心思ったが、俺以外にこのような取り方をする奴はめったにいないだろう。
普通は得たポイントで武器や魔法の取得をするだろう。一端に戦えるようになればさらにそのレベルを上げるはずだし、こういった横道に全力を注ぎ込むアホは俺くらいだろう。
だが、そもそもスキルポイントを”振れる”のは稀人とリリィの手を借りた俺だけだと言う事実を知るのはもう少し後だったりする。通常の<鑑定>ではスキルポイントまでは見れないみたいだ。
「レベル6で一億か。これなら一晩中でも満タンにならないだろう」
これで大分マシになったはずだ。それにしてもこんなスキルを見つけてくるとは、やはり日本人とはこの世界に価値をもたらすためにやってきたというのは本当なんだな。俺も二人を見習って何か取れるスキルはないかと探しはみるのだが、全く見つけることができなかった。
そもそものスキル欄が膨大すぎるのが悪いのだ。戦闘、生活、生産など、一応の括りはあるものの量があまりにも多すぎてよく見ていられない。二人はそれを楽しんで選んでいるというのだからもはや人種が違うとしか思えないな。
「スキルポイントを一気に200も使っちまった……」
「気にすんなって。レベルが上がれば勝手に増えていくんだ。ただ貯めるよりこれくらい使ってやったほうがいいのさ」
愕然としている玲二の肩を叩いた。
「それに、包丁がほしいんだろ? 五文字までの道のりは果てしないんだ。これくらいしないと何年掛かるかわからないぞ?」
「そりゃあそうなんだが……」
玲二は自分だけの包丁が欲しくて創造しているものの、「ナイフ」ではいくらやっても包丁には巡り合えなかった。数多くの異世界産のナイフは道具屋に売り払い、物珍しさからかなりの金になったが玲二の目的は果たせていない。
いっそのこと鍛冶で何とかすべきかと思った。俺のスキルにはそれらしいものもあったはずだが、いきなり見知らぬ奴に鍛冶場を貸せといわれて頷く鍛冶師はいない。
玲二は最後の手段として自分の中にある<アイテムクリエイト>で包丁を創造することにしたのだ。
だが、そこからも長い道のりだった。何しろ五文字の創造に必要な魔力は3億を超える。俺も常に玲二に魔力を渡す事にしているわけでもなく、昼間はダンジョン探索を行っているから進捗は遅々として進んでいないはずだ。
だからこそ、玲二はこのスキルを探していたのだろう。
「へえ、いいスキルじゃない。でも、そもそもレイのスキルを上げていれば起こらない問題だってわかっているわよね?」
「う……わ、わかってるよ、でも使えるだろう? ユウキがこんなに一気にポイント使うなんて思ってなかったんだよ!」
「はいはい喧嘩しない。とりあえず登録を先にしにいこうぜ」
スキルを取ったのは俺だし、これは絶対に使えるスキルだろう。それにこの程度のポイントなら五日位ダンジョンに篭もれば取り返せるさ。
俺たちは連れだって冒険者ギルドへ向かう。既にユウナに二人の事を説明済だ。俺の口振りから大体の素性を掴んでいるだろうから、それなりの配慮をしてくれていると思う。
「よう、来たな。今日は良い出物はあるか?」
「そりゃありますけど、そっちこそ金の準備は大丈夫なんですか? ツケは効きませんよ?」
「ギルドが冒険者に素材は欲しいが金は待ってくれなんて恥ずかしいこと言えるか! 心配するな、今のウィスカは実績だらけだ。総本部から常時白金貨50枚常備許可を得たからな。しかも追加要請も可能と来た。いくらでも買い取ってやれるぞ」
ギルドマスターであるジェイクといつもの会話をしながら査定部の人間を呼び出した。
その横では……。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。それではこれよりお二人の冒険者登録を開始しますね」
稀人の二人に配慮をしてくれると思っていたが、いくらなんでもギルドマスターの部屋で登録をしなくてもいいだろう。
「こちらに各種記載をお願いします。全てを記入する必要はありませんが、記載する情報が多いと依頼を斡旋するときに助かります」
ランカさんが二人の担当になってくれるのか、簡潔な説明を続けてくれている。
玲二がどうするんだ?と視線で聞いてくるが、判断するのはお前たちだぞ。
勝手に決めろと言いたくなったが、一応助言するなら自分の手の内は極力晒さない方がいい。特にギルド職員は担当冒険者の守秘義務など一切守る気などない。俺の情報が大っぴらになっていないのは、身内であるギルド専属冒険者である点と、俺の秘密を守れと金を渡しているからだ。
不要な出費と思うかもしれないが、秘密というのは金と手間をかけて守らせるものだと俺は思っている。
二人が稀人であるという話も、いずれ絶対に広まるだろう。これは防げないが、その時にそれまでの準備を怠っていなかったかでその後の対応は変わる。最悪、準備さえしておけば今回の稀人は金髪碧眼の兄弟らしいと間違った噂を流しておくことだってできるのだ。
そんな感じの内容を<念話>で二人だけに伝えておいた。
俺が査定係の担当者を青ざめさせ、ジェイクに追加の白金貨の要請をさせた所で二人の冒険者登録は終わったようだ。ランカさんから真新しいギルドカードをもらった二人は晴れて新人冒険者だ。
ギルドマスターのしつこいほどの目配せを受けていた俺は仕方なく二人に紹介することにした。
「こちらはギルドマスターのジェイクさんだ。あまり縁はないと思うが、一応紹介しておくよ」
「なんだよその紹介は。ったく、今紹介されたが、俺がウィスカのギルドマスターをやっている”現在世界一幸運な男”ジェイクだ。伝説の稀人に会えて光栄だ」
「そんな、俺たちはそんな大したものじゃ」
玲二はそう謙遜するが、俺はもう異世界人という存在を完全に評価している。唯一無二であるユニークスキルを抜きにしてもその価値観、考え方だけでこの世界に利益をもたらせる存在なのだ。二人は胸を張っていいと思う。
「何を言うんだ。稀人と言えば歴史の節目に必ず現れる世界を変える存在だ。それがまさか俺のギルドに来てくれるなんてな。これもお前のお陰だな!」
「ああ、そうそうギルドマスター。二人は俺の仲間であって、戦いの道具でも政治の駒でもないので悪しからず」
予想していたのか、俺の釘刺しにもジェイクは全く動じることなく続けた。
「解っているさ。お前を敵に回す馬鹿はここにはいない……はずだ。ギルドも全面バックアップするから、なんでも頼ってくれ」
「そのときは宜しくお願いします」
冒険者に憧れを持つ玲二はともかく、雪音はあまり関わらないだろうなと思いつつ、俺たちはギルドの受付側に回った。
「あら、ユウさん。こちらに御用ですか?」
今日の担当であるらしいヘレナさんが、声をかけてくきた。ちょうどいいので初心者が必ず受ける依頼を受けよう。
「森の中に関する依頼をいくつか見繕って欲しいんですが」
「貴方が今更森に? といいたい所だけど、後ろのお二人の為ね。わかった、用意するわ。その代わり……」
おいおいこの人、通常業務に対価を要求してきたぞ。この女、わかっちゃいたけど自由すぎるだろ。
「ギルドマスターの部屋にいろいろ置いてきました。マスターの許しを得たなら、そこからどうぞ」
「ありがとー。やっぱり大好きよ、ユウさん」
俺に依頼表を渡すとなんとそのままヘレナさんは立ち去ってしまった。普通はここから依頼の受注を行う手筈で、二人にそれを見せようとしていたのだが……あれでよくクビにならないな、あの人。
「ヘレナさんはその辺のギリギリを見極めるのが神懸っています。あんなでも必要な時はちゃんと仕事をするんですよ」
俺達に遅れて受付に戻ったランカさんに依頼の受注を頼んだ。
依頼にはいくつかの種類がある。受注をしてこなすものと、それが後からでも間に合うものだ。例えば俺がかつて行ったような護衛依頼は前者だし、納品依頼のような数を集めて後から依頼とすり合わせるようなものは後者になる。
森に関する依頼は後者が主だ。常時依頼の薬草納品やホーンドウルフの間引きを兼ねた狩猟など討伐部位を持ち帰れば後からでも依頼達成となるものばかりだ。だが、後付の依頼は予定数に達してしまう場合はそれ以上は減額の買取となるので注意が必要だ。
俺はとりあえず毒消し草の材料にもなる特殊な薬草、パテキア草の採取依頼を受けた。1房で銀貨一枚の可もなく不可もない、いたって標準的な依頼だ。
だが、依頼の未達成が続くとランクが下がったりするから注意が必要だ。このパテキア草の採取依頼も初めて森に入る人間には厳しい依頼だ。珍しい薬草は分布する場所もそれを知る冒険者たちの秘密事項だし、余所者に奪われないように隠すから初心者には難しい中級者向けの依頼になる。
この薬草に関しては昔に採取したことがあるので、もし今日が無理ならそれを提出すればよい。
「受付嬢の皆さんとずいぶんと仲がよろしいのですね?」
冷たい視線を送ってくる雪音だが、ギルドで一番の権力者に媚を売っておくのは悪い話ではないだろう。
「ユウさん、最近森の中で異変が散見されるそうです。貴方にとって脅威でも何ともないとは思いますが、一応注意を」
ランカさんからの情報を背中に受けた俺達は、ウィスカの郊外にある”恵みの森”へと足を向ける事にした。
そこで二人に魔法の練習を付けることにしていたのだ。
楽しんで頂ければ幸いです。
日本人二人によってスキル欄は順調に改良されていきます。
そしてレベルアップと共に加速してゆくチートは留まる所を知りません。




