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このアセリア(世界) 5

お待たせしております。

やはり昨日は無理でした。すみません。



「で、どこまで話したっけ?」


「まだなにも。そういやスキルの話しか出来てないな」


「やれやれだな。ずいぶん経つのにまだ何も話せてないじゃないか」


 このグダグダの元凶は今は側にいない。先ほど創った大量のケーキとプリンを見てソフィアたちと食べるべく王都へ転移していた。


 ちなみにあいつは自力で転移を覚えた。転移環で何度か転移を経験したら自分でも出来るようになったとか、訳のわからん事を言っていた。もはやリリィにそこらへんの理屈を求める事は諦めているので気にしない事にする。彼女の転移はスキルじゃないので俺達が<共有>できないのは残念の極みだな。


 あと、<アイテムクリエイト>にとんでもない穴が見つかった。創造に文字数の二乗の魔力が消費される事はかわりないものの、個数に信じられない秘密が隠されていたのだ。


 結論を先に言うと、二個目のアイテムを作成するときに必要な魔力はたったの”1”である。


 ケーキを目一杯作って欲しいというリリィの要求に一回ずつ設定し直すのも面倒だと思った俺は、まとめて10個ほど一気に作ることにした。いつもの画面でそのように選択した俺は、その表示を見て愕然とした。

 てっきり10個分の必要量である27万のMPが表示されると思っていたが、そこにあったのは2万7千飛んで10という数字だったのだ。


 これはいくらなんでもあり得んだろうと思わず二度見はおろか三度見したが、結果は変わらない。一つ一つ作る無意味さを感じた俺は一気に数百個まとめて作る事にした。


 稀人のユニークスキルに若干の知識があったレイアは、その無茶苦茶な設定にも苦笑いで済ませていた。

「いやー、このガバガバ具合。凄そうな設定作ったけど細部が超適当な感じ、これぞまさにユニークスキルって感じ」

 

 リリィが笑いながら総評するが、もちろんそこまで使い勝手は良くない。先ほどの雪音の失敗を見る限りでも必要のないアイテムを大量に作ってしまう可能性はあるし、俺のぶっ壊れたステータスで無理矢理ゴリ押ししているから簡単に作れているだけで、実際は酷く大変な作業のはずだ。そういう意味で複数作成は救済措置なのかもしれない。


 それにケーキと一言で言っても色々な種類がある。俺はその中の一つを大量に作っただけだ。今回はショートケーキだったが、それも自分で選べるわけではないので、同じ味ではいつか飽きるだろう。


「何が出るか解らないワクワク感はあるけど、いらないものを大量に作ってもしょうがないしね」


 俺は<アイテムボックス>があるので何時までも保管しておけるから、そういう意味でも便利だな。


 同じ要領で大量に創った牛乳プリンを抱えてリリィは王都へ転移したというわけだ。ソフィアたちも俺が今何をしているかは知っているはずなので、結果報告をかねているかもな。



 あと、雪音の失敗も将来の糧となっている。一度でも作成したアイテムは次の作成時に選択肢に上るようで、次回は間違えることなく作れそうだ。

 つまり、いまはひたすら作成を繰り返して、一覧を作って行くことが急務となるだろう。



 だが、そろそろスキルの話は置いておこう。目玉ではあるが、話が一向に進まない。



「二人には彼女の自己紹介がまだだったよな? あれ、そういや相棒の説明って俺したっけ?」


「リリィ本人から紹介はしてもらいました。私はそちらのかたと昨日挨拶を終えていますが、玲二は寝てましたので」


「そうだよな。じゃあまずそこからだ。彼女はレイア。訳あって俺の従者をしてくれている」


「雪音とは昨夜のうちに挨拶を済ませているが、私の名はレイアという。縁あって我が君の奴隷をしている者だ」


「奴隷ですか?」


 雪音の目がひどく冷たくなった。今まで信じていたものが失われたような凍てついた視線を感じる。



「従者だ。奴隷じゃない、意味は全く違うからな」


 奴隷も従者も主人に従う点は同じだが、待遇は全く異なる。奴隷は買いきりだが、従者は俸給制だし、何より嫌なら辞められる。

 その分、奴隷の方が国法で権利がきちんと定められたりしていて、主人の心ひとつで待遇が変わる従者の方が大変かもしれない。


「やっぱり奴隷はいるのか?」


「むしろいないと国の経済が回んないぞ。安い労働力は奴隷しかないからな」


「産業革命がなきゃ人手は必要かぁ」


 だが、俺の言葉も実際は形骸化してきているみたいだな。奴隷は高い買い物のようだし、魔法や魔導具で代わりになっている所もあるだろう。

 多分、犯罪奴隷や借金奴隷の維持するために制度自体を残しているんじゃないだろうか。



「奴隷だとしても、それを悲観するつもりはない。我が君ほど自らの奴隷に金を掛けている方は居ないだろう。衣食住全ての面倒を見てもらっているし、奴隷をホテルの最上階スイートに住まわせる男は我が君位だろうさ」


「だから奴隷じゃなくて従者な。それと、雪音と玲二は()()()()()()


「? 何の事ですか?」


「俺は気づいたぜ。レイアさんの口の動きと発している言葉が違う。これが<異世界言語理解>ってやつか」


 雪音は奴隷という否定的な言葉に気をとられていたようだが、玲二はこのスキルに気づいたようだな。


「ああ。昨夜の内に取っておいたんだが、便利そうに見えてかなりのポンコツスキルだから信用するなよ。今にして思えば消費ポイントが5しかないってのは少なすぎたな」


 レイアは先程二度奴隷という言葉を使ったが、実は二回目以降はきちんと従者と言い直していた。

 

 だが、雪音はそれらすべての単語を奴隷と認識していた。<異世界言語理解>は、そのように理解して雪音に示したのだ。


 <異世界言語理解>は様々な言語を自分の知る言葉として変換するスキルのようだ。リリィが絶対に必要だと言い張っていたし、レイアと会話するときに不便だから取得した。

 あと、リリィは日本語が堪能だ。何故なら俺が教えたからだ。正確には幽霊時代の俺がこの世界の言葉を教わる代わりにリリィに日本語を教えていたようだ。俺はその頃の記憶があやふやなので詳しく覚えていないが、それ以外にリリィが日本語を覚える手段はないし、俺も相棒からこの世界の知識など様々な事を教えてもらった。



 だが、このスキルを使ってみるとかなり危ういものだと解った。

 今の奴隷と従者のように、似た意味の言葉を勝手に変換してしまうのだ。日常会話程度ならともかく目上や貴族相手にどんな言葉を使うか解ったもんじゃない。このスキルは聞く言葉はもちろん、話し言葉にも適用されるからだ。


「聞くのはともかく、話すのは教えるからちゃんと勉強した方がいい。これから偉いさんに会うんだから、そのときは話せない体でやり過ごすぞ」


「ええ? 王様にでも謁見するのか?」


「いや、二人の調査を俺に依頼をしたウォーレン公爵に会う。国王に次ぐ第二の実力者だが、あちらは俺達に好意的だ。権力者と面通ししておくと色々楽でいいぞ。それに今回は初めから歓迎されているんだ、顔を繋いでおけよ」


「な、なんで歓迎されてるってわかるんだよ」


「そりゃあ、暗黒教団から離反したからさ。その相手の一番の目論見を潰したという事実だけで公爵の歓心を買っている。もし二人があちらに残ってたら俺達殺し合いになってたかもしれないな」


 なにしろ教団は時間と労力を掛けて最強の切り札を切ったのに、その稀人がこちらについたのだ。公爵としては地獄に居るグレンデルに最高の意趣返しとなった。この事実だけで彼は二人を歓待するだろう。


「つまり、私達は幸運だったと」


「今となってはそうだが、日本人なら元々何とかして逃がそうとは思ってたよ。だが、言葉が通じないのは参ったけどな。だが、そのためにもスキルなしで会話ができたほうがいいぞ。自分じゃちゃんとした言葉のつもりでも相手にどう聞こえているかわかったもんじゃないからな。この世界は無礼討ちが普通にある世界だ。貴族相手にヘマをすると護衛の騎士が激昂して後ろからバッサリ、何てこともありえる」

 

 今回は言葉が喋れないと言い張る事もできるが、スキル頼みはやめたほうがいいと告げると二人も俺の言う事を理解してくれたようだった。会話の最中に時折レイアが不思議そうな顔をするので、言葉がうまく伝わっていないことは理解しているようだ。


 その後は、今回の話のあらましを伝えておいた。暗黒教団の件、この事件を主導していたグレンデルと公爵家の受難とその解決。そして奴の置き土産の異世界召喚までを説明すると二人は話の流れに納得したようだった。




楽しんで頂ければ幸いです。


次でこの話はラストです。危なすぎるので彼らを連れてダンジョンには向かいません。

せいぜい向こうが連れて行ってくれと言われて王都のダンジョンで遊ぶくらいです。

主人公としては自分の生き方をこの世界で探してくれればそれでいいと思ってます。

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