このアセリア(世界) 4
何とか今日中です。
俺の持つ山のようなスキルの一つに<共有>というものがある。
意味はそのままで、他人と何かを共有する能力だ。取得時は特に考えず、あれば便利かと思ってとったのを覚えている。たしか消費ポイントも10か20だったはずで、特筆するようなことはなく俺も大量にあるスキルのひとつという認識だった。
その真価に気づいたのはいつだったか。たしか、ソフィアたちと王都のダンジョンに潜った時のことだと思う。
あのときは双子メイドとジュリアが主に戦っていたのに、ウィスカのダンジョン並にアイテムがボロボロ落ちるからおかしいなと思っていたが、そんなこともあるのかとそのままにしていた。
あの3人も慣れた冒険者ではないから、どこがどのようにおかしいのか気づけなくてその場での指摘がなかったが、レイアを従者にしてすぐの頃に異変に気づいた。
魔族の女が人間の町で生きていくのは何かと不便だろうから、俺達もできる所があれば手伝ってやろうと相棒と<念話>をしたのだが、なんと当の本人からいらぬ気遣いだと断られたのだ。
俺達は声を出していたわけでない。つまり<念話>の内容がレイアにも聞こえていた事になる。どういうことだと色々探っている内に、ある結論に達した。
<共有>は俺が仲間だと思った人間とあらゆるスキルを<共有>する。起動方法はその相手に触れる事だ。俺が仲間だと思った奴にはその場で発動する。なので実はレイアは出会った頃からは考えられないほど強くなっているし、最近行ったクロイス卿の”接待”も実はパーティを組んで行動していたので、二人のレベルも急激に上がっているはずである。二人がそれに気付かなかったのは幸いだが、スキルが”生え”ているかを確認する手段は非常に特殊だし(教会にてとある儀式を受けると解るらしい)、パーティ編成と解散は俺の意思で解除できるので、戦闘中も外しておいたのだ。おそらく帰った後に謎の強化が己の身に起こっている事を認識しただろう。
レベルアップにおける能力の成長は体を休めた後に起こるのは知られたことだ。戦闘中にいきなり身体能力が上がったら、やりにくくて仕方ないから有難くはある。
そして<共有>の面白い所は、<共有>を所持する全ての人物のスキルを皆に<共有>させることにある。
つまり、二人が持つユニークスキルが、俺にも手に入っているのだ。だからこそ何とかなると二人に豪語したわけなのだ。そうでないとせっかくのユニークスキルを活かせないからな。
『俺の<共有>によって俺達三人(実際はレイアも含めて4人だが、ここは省く)にそれぞれユニークスキルが手に入っているな?』
俺はそう言ってそれぞれに確認を促したが、二人はそれどころじゃなかった。
『凄ぇぇ!! なんだこの量のスキルは!? しかも面白そうなもんばっかりあるじゃねぇか!』
『<鑑定>ってやっぱりあの鑑定かしら。<マッピング>と<アイテムボックス>も気になるわ』
『お、さすが二人ともそこに目をつけるとはやっぱり日本人だねぇ。私も<鑑定>を見つけた時は飛び上がって喜んだよ!』
『<料理>もレベル7まであるじゃないか。どんな補正が掛かるか今から楽しみだな』
『私は魔法が使ってみたいな。ユウさんのスキルでは殆どの魔法を網羅しているみたいじゃない』
人の話を聞いちゃいねぇな……。
二人は<共有>によっていきなり増えた大量のスキルに大興奮だった。そんなもん後でも見れるから先にこのとんでもないユニークスキルを俺らで最高に楽しく使い倒す方法をだな……。
『<大親方鍛冶>ってのもやってみたいぜ。一度は鍛冶職人にもあこがれたんだよな』
『私は<弓術>を極めてみたいわ。前は途中で諦めざるを得なかったから。和弓とはなにもかも違うんでしょうけど同じ弓だもの。こちらでも試したいわね』
しばらく経ったが終わる気配がないな……。
「ふふふ、我が君よ。ここは堪えてやって欲しい。私も似たような覚えがあるのさ。リリィに初めて<鑑定>をしてもらった夜は興奮して中々眠れなかったよ。貴方とあと5年早く出会っていればどれほど違った人生を歩んでいただろうとね」
そのころは俺はまだライルの憑依霊だったけどな。
二人を見るレイアの視線は暖かい。かつての己を見ているんだろうが、さすがにもう充分我慢したよな。なにしろ俺はまだレイアの自己紹介さえも行えていないのだ。それもこれもリリィが話の順番をぶっ壊したからだ。あとでおしおきかな?
<ごめんって言ってるじゃないのさぁ! だから蜂蜜禁止はやめて!>
<そろそろ話をしたいんだが、いったん切るぞ>
俺は二人に向けてパーティ申請を解除した。一度でも行えば編成と解除は何時でもどこでも行える便利機能だが、この能力はスキルではないはずだ。俺は稀人じゃないからユニークスキルなど持っていないが、使える物は有難く使わせてもらおう。
『ああっ!』
双子らしく揃って声を上げたが、続いて見た俺の表情で事情をようやく把握したようだ。二人して俯き加減になっている。
玲二はともかく雪音までこんなに熱中するとは予想外だ。だが、二卵性とはいえ双子だから性格が本質的に似ている事はおかしくないか。これまでの物静かな印象と違って中々興味深いな。
『おいおい、いきなり消す……いや、ごめん』
俺が二人にパーティの仲間に入れる前にあれだけ念押ししたのはこの申請方法にある。
レイアの時に試したが、この申請は俺だけしかできないのだ。つまり俺が嫌だといえばパーティはいやでも解散する。ユニークを活用するために俺の方法を実践した後でもし解散すると二人のスキル構成はひどいことになるはずだ。
二人にも益はあるが、この提案は俺が一番得をしているのだ。俺は手を貸すだけで失うものは少ないが、二人はこの世界で生きていく大事な手段を他に捧げてしまった後なのだ。
だからちゃんと考えて答えが欲しかったのだが、このままでは俺が二人を束縛するようなものだ。だが、もう後戻りはできないし、させない。最後まで俺の味方になってもらうからな。
『もともと君たちのユニークに関する話をしている最中だ。俺のスキルはあとでゆっくり<鑑定>でもして楽しんでくれ。話をしていいか?』
『ごめんなさい。続けてください。私の使えないスキルをどのように扱うつもりなのでしょうか?』
『そうだった。どういうことなんだよ? さっきのスキルの数々は凄かったけど、俺達のユニークには関係ないだろう?』
やはり二人は俺のスキルの数々に目を奪われてそれぞれのユニークスキルが自分にもあることに気付いていないようだ。
俺は改めてパーティを編成し、二人にその項目を確認してもらった。
『それぞれにユニークがあるのを確認したな?』
『ああ。姉貴のスキルが俺にもある。<共有>ってぶっ壊れスキルだな』
正直な話をいえば、ユニークがそれぞれに渡っている必要はなかったが、嬉しい誤算だった。二人がユニークスキルにだけスキルポイントを振るために俺のスキルを<共有>する必要があったのだ。
『さっきこっちは試したが、二人は自分以外のユニークにポイントは振れるのか?』
『ああ……いや、駄目だな。自分のしか反応しない』
『こっちも同じです。それで、ここからさきどうするんですか?』
そう急かすなよ。順を追って説明する必要があるのさ。
『じゃあ次は俺を<鑑定>しろ。やり方は俺を一秒以上凝視すれば勝手に発動する。魔力、そっちでなんて言うんだっけ……ああ、MPを消費するから感覚でわかるはずだ』
じーっ。
いや、俺の顔を見る必要はないだろう。体でも勝手に発動するんだが……気恥ずかしいが、目を逸らすとそれはそれで負けた気分になるな。
『これか<鑑定>か。またお約束って、なんだこりゃあ!』
『貴方はユウキ・ゲンイチロウさん……』
『これが<鑑定>だ。そっちが俺の勧誘を受けてくれた礼代わりで特別に<鑑定>させたが、他人に使うときは気をつけろよ。相手の秘密も丸見えだからな、もしその相手に露見したらまともな人間関係は望めないぞ。それより、見て欲しいのは俺のスキルポイントだ。二人が欲しいスキルがあったらこっちのポイントを使え。その代わり、二人が得たポイントは、わかるな?』
『なるほど、そういう理屈か。俺達は自分のポイントをユニークのレベルアップに使う。もし他のスキルが欲しいならユウの残りから使えばいいんだな。確かにこれならいけそうじゃないか! でもユウのステータスどうなってんだよ。明らかにおかしいだろ。どうすればそんなレベルになるんだ? 俺のスキルの影響でHPなんて5桁いってるじゃねぇか』
『自分のステータスなんて見れないから最近は全く把握してないんだよ。でもとうとう万の大台か。お前のユニークが育てばどこまで行くか楽しみだな』
『大体1レベルに5ポイント入るから、まずは100ポイント貯めてレベルを上げよっか』
『ユウのスキルポイントを使わせてもらえれば話は早かったんだが、そこまで上手くは行かないか』
『レイ! ユウさんに対する口を改めなさい。この方は目上よ』
俺の年齢を見たらしい雪音が玲二を叱るが、俺は気にしていない。ジジィらしいけど、記憶もないしな。それに体が若いから気分も若くなるようで、自分が年寄りだという自覚はあまりない。
『かまわないぞ、俺達は仲間じゃないか。俺の事情もおいおい話していくが、そこまで気にしなくてもいから。むしろこれからは雪音のスキルに関する話だ。これが本題だぞ』
『は、はい。ユウキさんがそう仰るなら……』
ユウキか。元の苗字らしいか、あまり感慨はないな。だが、ユウもユウキもそこまでの違いはないか。
似たような名前がいて混乱するなら別だが、そうでないなら呼び方は好きにすればいいさ。
その後は雪音のスキルをどう活用するかを話し合った。彼女のユニークスキル<アイテムクリエイト>は無から有を作り出す常識を超えたとんでもないスキルだが、その代償も図抜けている。
作りたい品物の文字数によって消費魔力が劇的に変わってくるという個性的過ぎる仕様なのだ。
一文字でも10だけで済むMPが、二文字で400に、三文字では27000もの大量のMPが必要なのだ。
だからこそ玲二のユニークで俺のMPを底上げして、全体量を増やした上で<MP急速回復>で必要量を確保しなければならない。
幸い、アイテム創造における必要MPは必要量を貯めてゆく方法を取っていたので、必要量全てを一気に用意する必要はなかった。これがもし全て用意する必要があったら完全に詰んでいただろう。
5文字になるとアイテム創造に必要なMPは億を超えてくる。そうなれば玲二のスキルのレベルアップに期待するしかないだろう。
そこまで説明すると雪音は猛然とアイテム作成に取り掛かった。と言ってもやることは俺が彼女の作成アイテムにひたすら魔力を送り込むことだけだ。どれくらい減ると魔力枯渇状態になるのかは既に特訓で把握しているので、限界を見極めて送り続けた。
<MP急速回復>は全体の総量の割合で回復量が決定する。今の俺は大体8秒でゼロから満タンになるので一秒につき1600ほど回復している計算だな。
見るつもりはなかったが、雪音が必死になって作成しているアイテムは3文字だから必要量は27000だ。俺が手伝えば30秒と掛からずに完成するが、他の奴なら数日、いや数週間は掛かるだろう。なにしろ普通の魔法使いはMPが50もあればいいほうだ。俺の知り合いは魔法王国ライカールの人が多いので平均的に高い者が多いが、大体はそんなものだし、回復手段はマナポーション以外は睡眠しかない彼らでは数ヶ月単位で時間が掛かるだろう。
彼女の名誉のために明言は避けるが、今作っているのは女性には大事なアイテムだ。やはり着の身着のままは辛いだろう。それにこちら産はものが悪いから、素肌に当たる部分の物は良いものを選びたいだろう。
だがここで雪音に悲劇が襲う。彼女が作成したアイテムは本来、男女別の品物だが、その場合文字数がとんでもないことになるので三文字で対応せざるを得なかった。
その結果、このユニークスキルで初めて作成されたアイテムは……。
『あ、トランクスじゃん。ありがと姉貴。マジ助かるわ。どうもこっちのものはゴワゴワするんだよな』
『こっちじゃない!』
半分涙目の雪音は第一号を玲二の顔に投げつけると新たなアイテムの作成に取り掛かった。
結果、5度の失敗を経て雪音は満足の行くアイテムを手に入れた。その後、そのアイテムの効果はレイアにも伝わり、彼女の絶賛を経て俺の周りの女たちに急速に広まったようだが、当然ながら俺が関われる話ではない。
むしろ、この世界の話が全く進んでいない現実に頭痛を覚える始末だった。
『おかしい。一応俺達は教団の追っ手から身を潜めているはずなんだが』
『ユウ、そんな事よりスキルでドーナツ作ってよ。約束でしょ』
『いや、三文字ならケーキやプリンで行こうぜ。そのほうが楽だろうし』
『ケーキ!! プリン!! しゅ、しゅごい。ゆめのようだわ!』
どうしてこうなった……。
楽しんで頂ければ幸いです。
明日はスキル一覧を公開したいと思います。最初期以来ではありますが、一応色々加わったので。
すみませんが明日中は間違いないですが更新時間は未定とさせてください。遂にストックが切れました。今日のが短かったのはキリがよかったのと、ストックがなくなったからです……。




