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異世界人召喚 4

お待たせしております。



『最後に、ここから先の対応を確認させれくれ。手段としてはこのまま脱出するのが一つ。この場合は最悪、二人がこの連中に追われ続ける可能性が拭えない。そしてもうひとつは目撃者を全て消すことだ。ここは地下だから、毒ガスでも流せば簡単だ。どっちを選ぶ?』


 俺の唐突な提案に二人は当然面食らったが、ここはちゃんと聞いておきたい。この命がボロ切れみたいに安い世界では、簡単にそういったやり取りが発生する。俺だって自分から関わったとはいえ、王都への商隊護衛任務で暗殺集団と殺しあう羽目になったりした。

 この世界に来たばかりの彼らにいきなり選ばせるのは酷だろうが、なるべく早くここの現実に慣れておくべきだと思って提案した。事実、二人の安全に関わる事だしな。


『ちょ、ちょっと待ってくれ。いきなりそんな選択肢選ばされても』


『悪いがお前たちが決めなければならない。俺は顔を見られてないから完全に二人だけの問題なんだ。俺のお薦めは皆殺しだが、その結果は二人が背負わねばならないことだ。だが、ここで見逃したって追われ続ける日々を送る羽目になるかもしれない。その時は手は貸してやれるが、二人とも顔をしっかり見られているんだろ?』


『それは……』


 二人は奥で少し話し合ったようだが、すぐに決断したようだ。この拠点を出るまでに決めてくれればいいと考えていた俺は、なかなか腹の据わった二人だと内心で評価を上げた。


『決めた。ここで殺しはしない。後で面倒になっても、それを払い除ける力があればいいんだろ?』


『そうだな。その通りだ。お前たちの決断を尊重する。では出発しようか。次の見回りまであと一刻(一時間)はあるが、恐らくその食い物のような何かを持ってくる朝には嫌でも気付かれるだろう。それまでに距離を稼いでおきたい。出来れば手筈を整えている村まで行きたいが、それは二人の体力次第だな』


 二人には黙っていた事がある。


 貴族側が把握していなかった地下拠点の存在をこちら側、特に公爵が許すはずがなかった。遅くとも今日(既に日は変わって現時刻は深夜二時だ。二人が起きていたのは、当然ではあるが極度の緊張で中々寝付けなかったからだ)の内に騎士団の強襲が行われる手筈だった。既に場所と入り方は通話石で連絡済なので入り口は土魔法でこじ開けられるだろう。逃げ場のない地下空間では凄惨な殺戮劇が行われるだろうが、俺にはどうしようもない。

 あの状態の公爵を止めるのは俺には無理だ。愛する孫娘を殺されかけた公爵の怒りは凄まじく、俺もこの人を積極的に敵に回すのを控えようと思ったくらいだ。

 そういうわけなので、ここにいる連中の運命は実は既に決まっている。

 だから、少し意地悪だが俺が問いただしたのはこの世界で生きていく覚悟そのものだ。

 彼らが即座に帰還を望むなら話は別だが、この命の安い世界で生きていくには相応の覚悟がいるからだ。

 

 このあたりもおいおい話しておく必要があるだろう。だが、俺達の関係がどうなるにせよ、リリィと会話できる時点で非常に貴重な存在なのだ。なんとか友好的にやっていきたいものだ。


『じゃあ、これよりスニークミッションを開始する! 各員の奮闘を期待する! 解ったかね、スネーク諸君』


『おいおい、ダンボールは用意してないぜ』


 満面の笑みを浮かべたリリィはぐっと親指を突きたてた。玲二と二人で同じ行動をしていてなんだか解り合っているが……雪音と俺は置いてけぼりだな。


『こほん。ではいきまっしょー』

 

 この相棒、ノリノリである。



 石牢を出た俺達は地上に向かって歩き出した。<暗視>のない二人のために<光源>で道を照らしつつ進んでいるが、二人は魔法で地下を掘り進んだ時にできる特有のざらつきがある壁を不思議そうに眺めていた。


『魔法で削るとこんな感じだ。そこまで珍しいものでもないだろ?』


『やっぱり魔法があるのか! 全く光が入ってこないから地下にいるんだと思ってたが、魔法なら何でもアリだな』


『玲、声が大きい。誰かが起きるかも』


 慌てて口を閉じる玲二に俺は心配は無用だと教えてやった。


『俺の半径5メトルは音が消えるようになっている。試しに出てみるか? 話し声も一切聞こえなくなる』

 

 俺の言葉どおり先に走り出た玲二は<消音>の効果をその身で感じたようで、興奮して戻ってくる。


『本当だ。凄いな、こんな魔法があるのか』


『正確には魔法じゃなくて<スキル>だけどな。この話も落ち着いたらゆっくりしよう。今はここを離れるのが先決だ』


 俺の言葉に異議を挟む者はなく、俺達は地上を目指すことにした。寝静まった深夜の行動なので、誰にも見咎められる事もなく例の内側からしか開かない石扉の前まで到着した。


『ここが出口だ。今開ける』


 俺は指摘されないと気付かないような巧妙に隠されたスイッチを押すと、重々しい音を立てて扉が開き始めた。先程もそうだったが、かなり大きな音が立つので玲二と雪音は不安そうな顔をしていたが、<消音>の効果範囲に出て本当に音が消えているのを確認すると安心したようだ。

 やはり異世界人にはスキルという超常現象を頭から信じるのは難しいよな。俺も始めてみた頃は原理はどうなっているのか不思議だった。すぐにこういうものかと諦めて受け入れたが。



『外だ……マジで森と湖の中なんだな』


 彼等にとっては2日ぶりとなる外の空気をめいいっぱい吸い込んでいる中、俺は周囲を確認していた。特に夜行性の獣が活動しているのを見つけると、<威圧>して追い払う。



『うわっ!ユキ、月見ろ月!』


『そんな!』


『ん? 月はいつも通りだろ?なにかおかしい所あるか?』


 頭上で輝く月は今も森の切れ目から月光をここまで届かせている。俺にとっては見慣れた月だが、日本人には違うのかもしれないな。


『いや、月はあそこまで大きくないし、あんな欠け方しないって。くそっ、心の何処かでまだ、性質の悪いドッキリなんじゃないかと思っていたが、さすがにここが異世界だと認めなきゃ駄目だな』


 俺も月を見上げたが、いつも通りの大きな月と()()()()が二つある。今日はそれが重なって月が欠けて見える。


『あんな穴あきドーナツみたいな月が地球にあるわけないものね』


 何気ない雪音の一言をリリィが聞き逃さなかった。


『ドーナツ! あの、甘いお菓子でしょ! ユウ、私食べたい!!』


『解った解った。これが終わったら作ってもらうから』


 約束だからね、忘れないからね、と念押しする相棒に玲二は小声で聞いてきた。


『なあ、あの妖精はなんでこんなに日本のサブカルネタに詳しいんだ?』


『元々は、俺とそういう会話をしたかったみたいなんだよ。なのに俺の記憶がないから出来なかったんだ。今は念願叶って興奮しまくってる状態だ。すまんが、しばらく付き合ってやってくれ』


『それはいいけどよ、記憶喪失なのか?』


『う~ん、それも話が長くなるから後でな。それより、いまのところ周囲に害意を持った奴はいない。()()なら今だぞ』


 光源の魔導具と、円匙を二つ取り出した俺はアレを促した。あの石牢にそれらしいものはなかったから、俺ならそろそろ限界だろうと気を利かせたのだ。


 円匙は、はじめの頃に魔塵の中からドロップアイテムを捜すときに買ったものだ。まさか、ここで役に立つとは思わなかった。


 俺がスキルの光を出し続けているので戻る場所に迷うことはないだろう。




 それぞれがもどってきたところで行動を始めたのだが、二人の顔色が冴えない。尋ねてみるべきか考えていたら、玲二から質問を受けた。


『なあ、この世界の文明レベルってどんもんなんだ? やっぱよくある中世ヨーロッパクラスか?』


『中世ヨーロッパって暗黒時代だぞ? そこまでは悪くないな。それに魔法の存在が定義をややこしくしているな。言うなれば近世の手前くらいかな?』


『つまり、トイレは基本コレになるってことか』


 思い詰めた顔をしているが、随分と綺麗好きなことだ。貴族だって毎日風呂に入ることはなく、体を拭く程度なんだが……意外と魔道具でなんとかなるかもしれないが、ここから先はセラ先生の領分だな。



 夜の森に足を踏み入れながら、俺はそんなことを思った。


 これから先、この二人と深く、そして長い付き合いになるとはこのときは夢にも思わなかった。



 残りの借金額  金貨 14878541枚


 ユウキ ゲンイチロウ  LV621 


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75


 職業 <村人LV681〉


  HP  7568/7568


  MP  6587/6587


  STR 1384

  AGI 1312

  MGI 1451

  DEF 1258

  DEX 1321

  LUK 785


  STM(隠しパラ)1521


  SKILL POINT  2770/2780    累計敵討伐数 56280


楽しんで頂ければ幸いです。


この話は前話のすぐ後なのでステータスの変更はありません。


召還者の詳しい話は次で行います。ユニークスキルもそこで公開予定です。


時事話ですが、台風がやってきております。皆様も安全に充分ご注意ください。

なろうは家に篭もらざるを得ない日には最適なサイトですね。電気があればという前提ではありますが。私も仕事が休みになったのでストック頑張りたいと思います。

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