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世界最強になった俺、史上最強の敵(借金)に戦いを挑む!~ジャブジャブ稼いで借金返済!~  作者: リキッド


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異世界人召喚 3

お待たせしております。



 閂を外した俺は石でできた扉を開けて中に入った。地下だからという理由を引いてもまともな環境じゃないな。空気が淀んでいやがる。風を起こして空気を入れ替えた。


『失礼するぜ。しかし暗いな、良くこんな中で我慢出来たな』


 部屋のなかは薄暗く、今のままでは制服を着た年若い男女がいることくらいしかわからない。


『本当に光が要るときはスマホのライトを使ってた。今はバッテリーを抑えるために電源を落としてる』


 すまほ? 摩訶不思議な言葉を使っているが、日本語なのか?

 

 だが、それ以上に食いついたのが相棒だった。さっきまで人見知りの気が出ていたが、そのすまほとやらの誘惑には勝てなかったようだ。


『スマホがあるの!?見せて見せて!』


『うわっ、なんだこの小さいのは!?』


『まさか、妖精? 本当にファンタジー世界なのね』


『二人とも、相棒が見えるのか!?』


『ああ、見えるぜ。正直、非現実的すぎてまだ夢の中にいる気分だけどな……』


 なんと異世界人は相棒が見えるようだ。これは何としても仲間に引き入れなければならないな。リリィの友達百人大作戦の成功のためにも、素で相棒が見える奴は最優先で仲間候補だ。


 少年の方から自分の身長ほどもあるすまほを受け取りながらわーわー興奮しているリリィは「これでかつる!」とか良く解らん事を言っている。ああなったらとりあえず放置が正解だ。


 まあ、とりあえず灯りをつけるとしよう。俺は<光源>で灯火をいくつか作り出すと俺達四人の間に浮かせた。これで満足に話し合いができるってもんだ。



『色々聞きたいこと、話したいことがあるが、まず聞こう。二人とも……』


 魔導具が二人の顔を照らし出したのを確認してから会話を始めようとしたが、俺は驚きに固まった。


 とびきり綺麗な女がいた。そして、ほぼ同じ顔をした男がいた。やはり双子か? 何か最近双子に縁があるな。アンナとサリナに始まり、今も協力してくれている騎士のアインとアイス。そしてこの双子だ。その他の共通点はとびきりの美形であることと魔力の親和性が高いことだ。それぞれ魔力総量の多寡はあるものの、魔力の質というか特徴がそっくりなのだ。もしかすると単体では扱えないような大規模魔法も双子なら可能なのかもしれない。



 話が逸れたな。二人の整った顔を見てたら、どこにでもいる普通顔のライル(俺)と比べると劣等感でも抱きたくなるが、こちとらジジイらしいからな、我ながら随分と達観している。


 どうあがいても変えられないもので比べあっても空しいだけだ。誰だって己の人生を手持ちの手札で勝負し続けなければならない事には変わりはない。

 外見より中身を磨くことの方がよほど価値があるはずだ。負け惜しみではない、本当だぞ、本当。


 こちらが訊ねたはずなのに俺が固まってしまったからか、向こうから質問してきた。


『その言葉……日本人、なのか? 見た目はどっから見てもヨーロッパ系だけどよ』


『正確には元、がつくみたいだがな。俺の名はユウだ。冒険者をしている。ここには依頼を受けて二人を存在を確認しに来たところだ』


 できれば救出に来た、という事にしたいがこの二人にも都合はあるだろうし、やはり”確認”が妥当だな。


『俺は玲二。こっちは姉の雪音。俺達はいきなりここに飛ばされてきた上、今までずっと放置されている状況だ』


 俺達は互いの自己紹介を簡単に済ませると、早速本題に入る。


『早速なんだが、さっき言いかけた二人に聞きたい事とは、ここを出るか、それとも留まるかを問う事だ。俺としては共に来て欲しいが、強制するような話でもない。今は扱いが最悪でも、いずれ好転するかもしれんしな。二人のこれからの人生だから、よく考えて答えて欲しい』


 公爵からは具体的な命令も指示も来ていないが、暗黒教団の手勢が増える展開を歓迎はしないだろう。だが、他人に命じられて殺しをする気はないし、憎くもない大人になりたてのこの二人を手にかける気はなかった。


『そんなの決まってる。ここから出してくれ。こいつらの世話になるなんて冗談じゃないし、ユキをこんな場所にいつまでも置いておけない』


 玲二と名乗った少年は一切躊躇することなく断言した。それは姉である雪音も同様らしい。相当腹に据えかねているようだな。


『俺としては願ったりだが、本当にいいんだな?』


『ああ、ここの連中は絶対に信用できない。俺達を見る目だけで確信した』


 その口調には齢に似合わない苦さを感じた。恐らくだが、これまで相当苦労した人生だったのだろう、その吐き捨てた言葉には不釣合いなほどの重みがあった。


『わかった。じゃあここを脱出する前提で話をしよう。確認だが、二人はここで召還されたんだな? 他から連れて来られたって訳じゃないな?』


『ああ、そうだ。俺はバイト中にいきなり真っ暗になって気付いたらここだった。何故か違う場所にいたはずのユキも一緒でな。俺達を召還した連中はひどく混乱していたみたいだが、言葉が通じないし有無を言わさずここに放り込まれて放置だぜ? 飯もろくに与えられず暗闇で二日だ』


 部屋を見渡せば粗末な食事が手を付けられずに放置されている。味方と思えない奴が出す食事に手をだす気になれないのは解るが、もう二日経ってるんだよな。


『出されたものに手を付けないのは感心だが、腹の具合は大丈夫か? 何にも食ってないんじゃないのか?』


『手荷物ごと召還されたから隠し持っていたシリアルバーを少しだけ食べた。荷物も没収されたからそれも回収したいんだが……』


 荷物のある場所に心当たりはある。この地下拠点は召還を行う魔法陣がある大広間と居住空間と倉庫しかない。そこまで整備された拠点というわけではない。一見すると地下倉庫のような印象さえ受ける。

 そんな簡単な構造の拠点内で彼らの荷物があるとすれば倉庫か、大部屋ではない個室だろう。個室は使用者がいるが、睡眠中だし<隠密>と<忍び足>を併用すれば気付かれない自信はある。


『とりあえず何か腹に入れていたほうがいい。ここは超のつくド田舎だ。ここを出ても一番近い村まで一刻はかかるぞ。体力勝負になるから力を戻しておいてくれ』


 荷物は学生鞄と青いナップザック(背負い袋)だという。異世界品なら絶対目立つだろうからすぐに見分けが付くと思われる。玲二と雪音に<アイテムボックス>から湯気の立つ出来たての食事と水分を渡して俺は彼らの荷物を探しに出た。


『えっ! 今、どこから物を出したのです? 手品みたいに空中から物が……』


『さて、ここで問題です。若い日本人なら一般教養だろうけど、ユウは今どこから物を出したでしょう? ヒントはテンプレ!』


『異世界テンプレってことは……まさか空間収納か?』


『正解! いや~、日本人は話が早くていいわ~』


 二人はリリィと楽しくやっているみたいなので俺はさっさと荷物を回収してこよう。

 偉そうな奴が使っていそうな個室には鍵が掛かっていたが俺にはなんの問題もない。難なく鍵を開けて中に入ると、室内には豚のように太った男がいびきをかいて寝ていた。地位のあるやつなんだろうが、今はどうでもいい。この豚に用がありそうな人たちは今騎士団を率いてこの拠点に殺到している最中だ。その時は彼が一番人気になるだろう。

 

 玲二と雪音の荷物はすぐに解った。他の荷物とは明らかに違う異質な鞄が二つあったのでそれを取って石牢に戻った。



 二人に確認させると荷物は欠けることなく戻ったという。荒らされていないか一番不安だった雪音の鞄の鍵は番号を合わせる目盛り型だから壊される事なく無事だったようだ。


『準備はいいか? ここは人里離れた森の中だ。さっきも言ったが一番近い人里まで歩きで一刻(一時間)はかかる。体力は戻っているか?』


 俺は玲二にのみ尋ねた。雪音はそもそも服装がまずい。制服はスカートなので足元が見えている。道無き夜の森を歩く格好ではないから、多分俺が背負う事になるだろう。その分、玲二はゴム底の靴を履いているので歩きも心配ないだろう。

 しかしやはり俺は彼らが呼び出された世界の人間で間違いないようだな。ゴムなんてこの世界には今までなかったのに、ゴム底などという言葉を自然に発している。記憶はなくても知識として知っていたんだろう。



『大丈夫だ、問題ない』


 その時、リリィの瞳が怪しく光った、ような気がする。


『そんな装備で大丈夫か?』


 唐突に問いかけられた玲二は驚きながらも、口元を歪ませて応えた。


『大丈夫だ、問題ない』


 二人で何かを解り合った顔をしているが、俺と雪音の冷たい視線を受けて、慌ててその場を取り繕った。


『いや、一番いいのを頼もうとしたわけじゃないから!』


 いや、意味が解らんのだが。玲二は噴き出しているから解っているんだろうけど、そろそろ真面目にやらんかい! 一応これでも見つかったら命懸けの脱出行なんだが。


『はーい』


 反省する気がなさそうな相棒の声に、ああこれは俺がしっかりする場面だと諦めた。



楽しんで頂ければ幸いです。


リリィがようやく日本人に会えて楽しさ天元突破しております。

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