8話
いや、実際ステータス制は素晴らしいと思う。
戦って、自分が成長した事がハッキリと数値で実感できるのだから。
成長を実感できない努力はホント辛いと思う。
今の俺だよ。
どうせなら強くなって、さすが俺とチヤホヤされたいんだよ。
その点、世の最強系主人公達は、些細な事でステータス、スキルレベルがうなぎ登りだ。
目に見えて成長する自分に、やりがいを覚えるだろう。
なおかつ、他者のステータスと比べる事で自分の最強っぷりを実感できる。
素晴らしいじゃないか。
俺も恩恵にあずかりたい。
チーレムしたいね。
……はいはい、分かってる分かってる。
自分が雑魚だったら、そのダメっぷりを突きつけられるだけだってのは。
もっと前世からコツコツ真面目に頑張っていれば。
本当に悔やまれる。
……そう、真面目にコツコツ、MMOで廃人やっていれば、ステータスの引き継ぎが出来た筈なのに。
……あー、いやだめだ。
ゲームの世界でまで人付き合い出来るかって、チュートリアルで投げ出してたわ。
どうして俺はダメだったんだ。
いや、今も十分ダメだけど。
人生二週目でもコレかと思うとホント死にたい。
三週目にかけたい。
フラグ立つような美少女との出会いとか。
可愛い幼馴染ヒロイン希望。
「――気を抜くな」
俺を叱責し、剣を構える同居人。
切っ先に見据えるのは、巨大なミミズ。
鈍重そうな見た目とは裏腹に、俺たちがいる通路の壁を、重力を無視したかのような軽やかさであっちこっち這いずり回る。
額のヘッドライト、その照らす光から逃れるように。
こちらの死角より襲ってくる為に。
要するに、うねうねぐねぐね超キモい。
直視したら、逆に集中乱されるレベル。
ま、キョロキョロうろたえたフリすれば、背後から突進してくるワンパターンなんすけど。
チョロいわ。
身を翻しつつ僅かに横へステップ。
自分が僅か前にいた場所へ水平にした刀を突きだしておけば、そこを通るミミズの脇が裂けていく寸法だ。
ズバーッと。
刀の切れ味が良いからなのか分からんが、余計な体液とかあんまし飛び散らない。
それでも、ミミズは大ダメージで、のたうってる。
トドメを刺してから、先へ進む。
いやチョロい。
どうせだったら、俺みたいなコミュ障にも好感度クライマックスなチョロインでも出てくりゃ良いのに。
甲斐甲斐しく尽くされたい。
なんなら、さっきのMMOじゃないけど、忠誠度最大値のNPC使い魔系ヒロインでも大歓迎。
ホントに出てきたら、まず罰ゲーム疑うけど。
その上で、この世界の幸福な存在全てを呪うけど。
手始めに、何故か現状テンション上がってるウザい刀を、火口にでも放り込むけど。
今はとりあえず、鞘に戻す。
俺のようなトーシロでも魔物を切れる、使い勝手が良い武器であるのは事実だしな。
このダンジョンで、もっと使いやすい武器見つければ用済みですよ。
人生の足を引っ張る呪われた刀とか、絶対に破棄してやる。
鋳潰す、絶対に。
「どれだけ切り裂こうと、血で染まる事の無い刀身。見事な物だな」
「譲って差し上げても、いいですよ」
是非とも貰ってやってください。
「遠慮しておこう。俺には不釣り合いだよ」
どういう意味で不釣り合いなのか。
あんたディスられてんぜーと、内心で刀をイビる。
心のカルマがジャスティスよりもイビルへ傾きつつある現状だった。
これも妖刀のせいだから。
そうに違いないから。
しばらく進む。
……そろそろ半日くらいかな。
しんどいんだけど、休憩できる所とか無いもんかね。
セーブポイントとか、ワープゾーンだとか、付き物だろ?
キョロキョロしても、それらしい物は無い。
明かりはないので、魔道具のヘッドライトで視界の先を照らすのみ。
継ぎ目のないツルツルした通路は赤黒く、時々血でも通っているのではと思わせるように脈打つ。
グロい。
地味に胃に来る。
時々ある分かれ道。
同居人は分岐点に着くたび、床に書き込まれた印を確認する。
「先人が残した踏破の証だ。印と、対応する位置は頭に入れている」
マッピングされている模様。
ゲームの攻略本によくある、チェックポイントか。
入る度に内部構造は違ったりしない模様。
「分岐は変わらないが、その間の距離や道幅、傾斜の角度は変わる。変化に惑わされ、自分がどこに居るかも定まらなくなる事もままあったらしいな」
文献によれば先人がこれに気付くまで二十年近くかかり、安全な探索の為に印を付けられるようになるまで、更に十年費やしたそうだぜ――。
俺だったら一生気付かなかったな。
なだらかに下っていくばかりで階段も無い。
道は同居人に任せて着いていくだけだが、時折魔物がどこからともなく現れて、その度に少しずつ神経削られるし。
マップも何もなかったら、豆腐メンタルが潰れてる。
そういや死体がいつの間にか消えてる謎。
マナになって、レベルアップの糧となる設定だったら大歓迎。
「――今日は順調に進めているな。この調子なら、ダンジョン内の未到達領域まで十日はかからないだろう」
なげーよ。
荷物投げ出して逃げたい。
背負った食料も五日分がいい所でしょうに。
さっきのミミズは食べたくないよ。
ハンバーガーの肉がミミズだってのは、単なるデマなんだからな!
……流通を考えたら、ミミズの方が高くつくらしいよ。
そして黙々とテクテク進む。
胴体だけで俺の頭くらいある蜘蛛とか、定番のスライムを斬り伏せつつ。
どれも怖かった。
蜘蛛は脚がカサカサ、スライムは水たまりのような形状からボコっと膨らんで。
本当に俺の精神がヤバイ。
何処かで一息つきたいと、切に願う。
その願いが叶うまで、一昼夜歩き通したんではないかというくらい、歩き通した。
同居人が、補助となる杭を打ち立て、簡易的な結界で安全地帯を作る。
そしてご飯タイムと、干し肉をかじる。
疲労で喉を通らないという事も無く、なのに不思議と少量で満ち足りた。
そういう不思議パワーが満ちているのか。
「ダンジョンでは、倒した魔物が先へ進む糧になる」
お、ステータス鰻登りかな?
「体力の回復を少し補ってくれるのさ」
しょっぱい。
もっと融通きかせろよ。
睡眠も仮眠程度で行けるらしい。
そしてもう充分歩いたろと思ったが、ここに至るまで朝から夕飯時くらいだったらしい。
体感時間とのズレが大きかった。
体力云々でなく、発狂しかねない。
容易く帰れない閉塞感が半端じゃない。
息苦しい。
天窓の一つも付けて、陽当りを、どうか。
帰りたい。
陽のあたる場所なら、弟子に甚振られようと笑顔でいられる自信ある。
マゾ開眼したっていい。
そもそも、何で俺みたいなガキ連れてここに来たの?
達成目標は何?
十日近くかけて、さっき仰った未踏破領域だかに行くんですか?
往復二十日ですか?
吐き気してきた。
そう言っても、同居人は先へと俺を促すばかりだった。
「お前の千人斬りは、百年前にここで発見された。お前はきっと、この先へ進むべきなんだ。その時が来たのさ」
その言葉に疑問符を浮かべながら、進む。
なんだかんだで、未踏破領域の先まで進む事になる。
……そして俺は、困難に直面する。
そこで失う事になる。
刀を。
ひゃっほい。
つづくかもわからん
久々に文章書いたもので、この程度のクオリティでも難産でした。
やっぱり数書かないとダメですね。