◆◆ 30日目 ◆◆卍 その1
四個のインペリアル(45名パーティー)を率いて突入してきたレスターは、遺跡内部の光景を見て唖然としました。
かつてはガーゴイルとゴーレムのひしめき合っていたエントランスホール(のようなもの)は、うーん広々しています。モンスターがいないとこんなに粛々とした味わいがあるんですね。かつてはさぞかしご立派なことだったのでしょう。
というわけで、入り口に戻ってきて休憩していたわたしたちは、お気楽に手を上げます。
「やっほう、レスター。先遣隊の任務果たしたよー」
わたし以外の四人はなぜか疲労困憊の様子ですけれど、なぜでしょうね。
朝ごはんが食べ足りなかったのかなー。
お気楽に笑うわたしに、レスターの呆れたツッコミ。
「そういうことじゃねえよ……」
えっ?
と、小ボケるのは置いといて……
大掃除完了! です。
これでしばらく復活もしないことでしょう。
しっかしわたしたち強くなったなあ。
装備を新調したのもそうだけど、攻撃が当たる当たる。
こないだ死線をくぐってきたかいがあったってもんだね……
あ、バトル中の詳しい話は、後述のレポートに書いてありますので。
で。
レスターはわたしを上から下まで胡散臭そうに見回した後、とてつもなく胡乱な……訪問販売員を睥睨するような目でつぶやいた。
「チートか?」
間髪入れず――レスターの頭を張り倒す。
言うに事欠いて!
72時間マジメに修行してきたシスくんに謝れ!
◇唐突にリレーレポート~<ルルシィ・ズ・ウェブログ>の全て~
・一番手、ルルシィール。
というわけでね、こっそりと始まりましたこの企画。
一度やってみたかったんだよねー。
舞台はここ、【朽ち果てた遺跡ゲラルデ】からお送りいたします。
知られざるわたしたちの活躍を記しておこうと思いましてね。
現在、早朝からわたしたち<ウェブログ>は、他の人たちが寝静まっている間に遺跡の中に入り込んで大暴れしております。
ま、他のギルドの人たちも遊びながら死闘している(矛盾)みたいですけどね。
あちこちで悲鳴が。
「ちょっと先輩ぃ! 戦闘中ですけどぉ!?」
おやここからも。
ゴーレムの攻撃を受け止めているルビアちゃんでした。
うん、わかっている。
だから急いで書くね! うなれわたしの閃光の指圧師!
==スキル発動、超速筆記!==
わたしたちの戦い。よっちゃんが釣ってシスくんが一撃入れて、ルビアかわたしかそのままシスくんが相手をタウント(挑発)するっていうのが一連の流れ。
これが常勝無敗、<ウェブログ>の黄金パターンね。
よっぽどの敵を相手にしない限り、単体相手じゃあこのパターンで崩れることは早々ありません。
みんな超頼りになるからね。
というわけで今回この攻略法をみんなにそれぞれの視点から書いてもらいましょう。
たまにはこういう変化もないとね。
そろそろ『ただの一人称小説だろこれ……』ってツッコまれるからね。うん違わない。
==ここまで0・5秒==
とかなんとか言っている間によっちゃんが新しい敵を引っ張って来ました。
そこにシスくんの“スレッジハンマー(大型の槌)”がぶち当たります。
一撃でわたしの新調した戦斧二発分ぐらいのダメージ与えるんだからね……同じ前列として、やんなっちゃうよねホント……
とか凹んでいる場合じゃない。
今回はどうやらルビアちゃんが《タウント》で引きつけてタンクをやるようです。
「絶対に~許さないんだからぁ~!」
アニメ声でアニメっぽいセリフを吐いていますね。多分スイート。
大ぶりで見切りやすいゴーレムのパンチなんだけど、接触しただけでもHPガリガリ削られてゆくからホントにメレー(殴りかかる人)殺しなんだよなあ、あいつら。
あれですあれ、某狩りゲーのドラゴンの足踏みでHPが減ってく感じ。
というわけで距離を取って盾を構えておくのが一番の防御策。
そのためには前衛が稼ぐ以上のヘイト(敵対心)を、あんまり近接攻撃しないルビアが稼がなきゃいけないんだけど、それって結構難しい。だってこのゲーム、基本タウントが一種類しかないから。
じゃあどうするか? 単純明快。
スレッジハンマーを構えていたシスくんがゴーレムとガチの殴り合いを開始しました。そこにルビアの「《ヒール》ですぅ~」と気の抜けた回復をした途端、ゴーレムは再びルビアに向き直ります。
再びルビアがブン殴られることになりました。
おわかりいただけただろうか。
これぞネトゲお馴染みのヒールヘイト(回復による敵対心)です。
コンシューマーゲームしかしない人には馴染みがないかもしれないけど、世界初の大作MMORPG『ウルティマオンライン』(名前出して平気かな? ドラクエとかFFみたいなもんだから大丈夫?)の時点ですでに実装されていた伝統あるシステムです。
ヘイトっていうのは“モンスターがわたしたちにどれくらいムカついているか”っていうことなので、アタッカーは「スゴイ痛い攻撃してくる! 実際ムカつく!」って殴られるし、ヒーラーは「アイツスッゴイ回復してる! 実際ムカつくヤバイ級!」って感じでさらなるヘイトを稼いでしまうのです。
ディアブロ、ウルティマオンライン、エバークエストの三種のネットゲームによってMMORPGは完成され、現在のネトゲはグラフィックが進化しただけでシステムの全ては御三家の模倣、あるいは劣化コピーと言われているけれど――まあ個人的にはその説は言い過ぎだと思っています。少なくとも“ワールドオブウォークラフト”は御三家に並んだと言っても差し支えないんじゃないかな。陽の目を見ていたら『666』だってそれぐらいいっただろうに――たいていのMMORPGには実装されているシステムだね。
これのバランスによって、一気にゲームバランスが崩壊してしまうという恐ろしい代物です。
某ネットゲームでは、アップデートによってヒールヘイトが倍増し、ヒーラーたちの屍山血河が砂漠に生まれたとか生まれなかったとか……
話題が逸れた。
ネトゲの話になるとついつい語り過ぎちゃうね。てへ。
続きは“ルルシィさんのよくわかるネトゲの歴史”にて。書く予定はありません。
というわけで無事ヒールヘイトでモンスターのターゲットを奪い返したルビアちゃんは、再びゴーレムの攻撃を食い止めるわけですね。
これぞ世間で『ドM』と呼ばれるタンクの所業です。
仲間を守って受けるそしりは誇りである……
「先輩まだですかぁ!?」
うん、ごめんごめん今行く今行く。
というわけで、ダイアリーはよっちゃんにポーイ!
・二番手、ヨギリ。
……唐突に日記を渡されたでござる(゜-゜)
師匠曰く、
「釣りのときとかに気をつけていることでも書いてー! うおりゃー!」
との事で候。
合戦の最中で在るというのに。
……
拙者、魔物の体力を見極めて動いているでござるヽ(`▽´)/
釣り師として“りんく”と“あど”を避けるのは当然としても、殲滅速度を高めるためには主人達が戦っている最中に既に動いていなければ一流のシノビとは言えませぬ。
未だ修行中の我が身ではござるが。
素早く闇に溶け、姿を隠しながら魔物に手裏剣を投げつけ候。
陣地に帰還した際に、丁度化け物が地に伏せているならば幸。
もしまだ魔物がしぶとく最後の足掻きを見せているというのなら、《影縫い》にて釣ってきた魔物を足止めし、拙者も追い込みに短剣を振るうのでござる。
しかしこの石の怪異。
あらはなり。
拙者の短剣術が通らぬ(/_;)
だめーじはんげんなのでござる……
屈ず。
困ず。
更に、せっかく師匠から賜った短剣の追加効果“すたん”すらも耐性値が高く効きづらいとの有様……
にんともかんとも(ノД`)シクシク
拙者の短剣に出来る事は、せいぜい嫌がらせが関の山なのでござる。
本来ならば、師匠やルビア殿、シス殿が少しでも傷を負わぬように、全力で相手を叩き伏せるのが拙者の役目であるはずなのに……
いっぱいみんなの役に立ちたいのに。
うちもニンジャの真似なんてしてないで、ハンマー買ってくればよかった(;_;)
ハッ。
拙者、何も言っていないでござる(^-^;)
しかしニンジャのワザは短剣だけに或らず。
忍者八門という言葉が有り候。
其の内のひとつ、これからお見せするのは骨法術でござる。
拙者の秘密特訓の成果、とくとご覧あれ。
ならば次は……
シス殿、日記を宜しく御頼み申すm(_ _;)m
・三番手、シス。
マジで言ってるの?w
戦闘中に日記書いてなさい、って……
……ルルシさんさっきの戦闘で頭打ってたっけ。
っていうさ、あの人おかしいんだよw
こっちゃ死ぬほど重てーハンマー振り回して、やってんのに。
あの人、俺が一発殴る間に大斧で二回殴ってますからね。
DPS(秒間ダメージ)変わんねーじゃねーかwww
STRのバケモンだ。
内部ステータスはきっと極振りになっているんだろうなー。
うおww
ヨギリさんすげえ。
足掴んでゴーレムの体ブン投げたよ今!
「骨法術でござる」って絶対違うと思うそれ。
素手って投げ技もあるのかこのゲーム……
奥深すぎw
やべえwwwテンションあがってきたwww
めっちゃスキル上げのチャンスなのに!
なんで日記書いているんだー俺ー!
国語あんまり得意じゃないんだよなあ……漢字覚えられねーし、古文とかイミフだし……
どんぐらい書けばいいんですかねルルシさん、これ……
「今の二倍ぐらいで」
なんつー無理ゲー。
「戦闘中になに考えながら戦っているか、書けばいいでしょー!」って。
なにって、別になあ。
まずヨギリさんが敵運んでくるっしょ。
お出迎えにタウントするっしょ。
で、ルルシさんのリチャが復活してそうなら任せて、ダメそうなら俺が《ウォークライ》してさ。
あールビアさんのMP残りこんぐらいだなー、とか、イオリオ今唱えてんのあれだなーって思いながら、水薬飲んだり飲まなかったりして。
敵の視線の動きとか挙動から、大体今ヘイトはこの人これぐらいで、俺はこれぐらい稼いでいるから、これぐらいの攻撃力でぶっ叩いてー、ってやって。
イオリオが大技唱えるから、じゃあその前に思いっきりタウントして引きつけてー、とか。
ルビアさんがタンクやるだろうから今回はちょっとスキル控えめに殴って、次はガチで沈めてー、とか。
そんなんだよ。
状況見ながら動いている感じかな。
みんながやりたいようにやってさ、それで勝ったら最高じゃん。
だから俺は、そうなるようにしているってわけです。
つか、個体の体力も攻撃力も戦闘パターンも微妙に一匹一匹違うんだよねこのゲーム。
多分、内部データで敵にも《スキル》が設定されているんだと思う。
それはそいつの経験で、生きてきた中で微妙に変化しててさ。
面白いんだよなー。
オークの中にもさ、微妙に感知距離が違ったりしてたやつがいて、それはきっと《遠視》スキルの差なんだろうなって、イオリオと話してたっけ。
うわwwルルシさん《テンペスト》で足止め中のゴーレム巻き込んだww
二匹相手にタンク状態ww
いやでも、あの人ホント硬くなったよなあ。
ブリガンダインもすげーけど……
あの人、両手斧でさばくの巧すぎない?
つーか防御の才能があるんだよな、きっと。
攻め時と守り時がわかっているっていうか……
うん。
俺も修行あるのみだな。
さ、働くかー!
次はイオリオ、よろしくなー!
・四番手、イオリオ。
まあmedi(MP回復)中だから良いが……
僕が普段の戦闘中になにを考えているか、か。
そんなのは至極単純だ。
『いかにMP消費を少なく相手を倒すか』
これに尽きる。
例えば《ヒール》によって“ゴーレムの攻撃を三発分回復できる”としよう。
同様に、一発の簡単な魔術によって“シスの近接攻撃三発分のダメージを与えられる”とする。
ゴーレムとシスの攻撃速度は同等。
さてここで問題だ。
消費MPが同じ場合、どちらを使うのが効率的だ?
ああ。
そうだな、《ヒール》だ。
なぜなら、シスひとりを回復させている間に、シス+マスター+ヨギリさんがそれぞれ攻撃を与えるからだ。
これを“燃費”、あるいは“MP効率”と呼ぶ。
もちろん相手を早く沈めたほうが圧倒的に戦況は楽になるため、これは時間対効率を考慮していない机上の空論だがね。
うちのパーティーは殴り屋が多いから、《ヒール》が優勢になるのは仕方ないな。
だが、魔術師の仕事は単なるダメージ屋か回復屋か、というのは少し思慮が浅薄だ。
もっとも少ないMPで最大の効率を実現するもの。
それはdebuff(弱体魔術)だ。
ゴーレムに効きやすいのは今のところ、土術の《スローリー・バイト》。それと風術の《ターン・オア・ターン》のふたつだな。
前者はゴーレムの動きを鈍化させることができる。単純だが効果的だ。奴の攻撃は避けやすくなるし、こちらの攻撃は当てやすくなる。
後者は少し変わっていて、ゴーレムをその場で方向転換させる術だ。行動阻害術の一種だな。全力で拳を振りかぶったときなどに唱えると盛大に奴が空振る。胸がすくような面白い術だが、効く相手が少ないのが欠点だがな。というかゴーレムしか見たことがない。
大抵のdebuffは少ないMPで唱えられる。
術者の腕があがればあがるほど効果的だ。
さらに四属性均等に存在しているから、術のスキル上げが一属性に偏ることもない。
一石三鳥だな。
おっと。
ルビアさんが手を挙げている。そろそろ準備をしないとな。
そういえば言ってなかったか。
僕とルビアさんで決めているハンドシグナルがあってね。
立てる指の数で、MPの大まかな残量を相手に伝えるのだよ。
僕たち術師は詠唱の最中だったりして、口が効けないことが間々あるからね。
彼女は指を二本立てて上に向けているだろう? それは『残りMPが20%です』というサインなのさ。
今度はルビアさんがmediしている間に、僕が回復屋を担おう。
いつだったかシスに聞かれたことがあったが。
「イオリオってあんま攻撃魔術使っているイメージねーよなー」ってな。
そのときは聞き流していたのだが、改めて答えよう。
『僕にとっての魔術とは、事象を実現するための手段だ』と。
魔術師のMPは可能性の数値だ。
僕たち魔術師には、僕たちしかできないことが多々ある。
大量の魔物を破壊魔術で蒸発させるのもそうだ。<キングダム>には専門の魔術師集団が結成されており、ドリエさんがその指揮を取っている。
束ねた破壊魔術の威力は、前衛が何人集まっても比肩することができないだろう。
一瞬で一撃で巻き起こる大虐殺。
身一つでそんなことができる人間がどこにいる? 僕たち魔術師ぐらいなものだろう。
しかし、魔術師にできることはそれだけではない。
味方の傷を癒し、debuffを使い敵を弱らせ、buffをかけて仲間の戦力を底上げすることができる。まだまだある。『666』ではまだ見つかっていないが、転移術は魔術師の特権だ。時には生命を復活させることもできるだろう。
どうかね。破壊魔術は時に魂が震えるほどの力の充足を得ることもできるだろう。
だが、それすらも魔術師の可能性のひとつでしかないのさ。
僕は必要に応じて、クレバーに魔術を使うことに喜びを感じるな。
この、“あらゆることができる”という感覚は、何物にも代えがたいと思うがね。
キミにはわからないんだろうな、シス。
少し喋りすぎたかな。
それじゃあ、最後はルビアさんだな。
・五番手、ルビア。
まったくもぅ~~~~~~~。
みなさん、あたしに隠れて楽しそうなことしているんですから。
ルビアちゃんプンプン☆ ですよ。
さてさて。
なにを書きましょう~?
あ、こないだ食べたヴァンフォーレストのスイーツが~、って。
え、戦闘に関することしか書いちゃダメなんですか?
ぶー。
先輩のケチぃ。
まあいいです。それじゃあえっと、どうしましょ。
《ヒール》の種類でも書きます?
じゃあ箇条書きに。
リジェネ・ヒール、クッション・ヒール、エリア・ヒール、フラッシュ・ヒール、マックス・リバイブ。あ、エンチャント・ヒールっていうのもありますね。
それぞれ呪言を変えることによってできる、ヒールの派生術です。
《リジェネ・ヒール》は徐々にHPが回復していき、《クッション・ヒール》は一定数のダメージを無効化する膜を作ります。
どちらもあたしのメインヒールです。
このふたつに共通しているのは、ヒールヘイトがとても少ないことですね。
モンスターさんは目の前で傷を癒すと怒るのに、こういう絡め手を使うと案外気づかないんですねー。
おばかさぁんですね、えへへ。
次に《エリア・ヒール》。文字通り範囲回復なんですけど、回復量は単体に比べて低いし、MP辺りの回復量も低いし……すっごいソンした気分になるので、ピンチ以外は使いませぇん。
みなさんを一斉に回復させると、その分モーレツな勢いでモンスターさんが襲いかかってきますからね。
きゃー♪ って感じです。
《フラッシュ・ヒール》はちょっぴり特殊です。
MP消費はとっても少ないんですけど、その代わりにあたしのHPを消費しちゃうんです。その度合はスキル値によって変わって、今は大体消費の二倍ぐらいを回復してくれます。
これ覚えたてのときは、永久機関ができるかも!? ってはしゃいじゃったんですけど、でも実際はそんなにうまくいかないんです。
魔術なのにこれ、再詠唱時間が必要なんですよね……
2分に一回しか使えないんです。
切り札的な……感じですね。
《エンチャント・ヒール》はモンスターを殴れば殴るほど自分が回復するっていう、不思議な魔術です。
あんまり回復値も多くないし、使い道あるのかなー……ってちょっと思いましたけど、イオリオさんに言われて気づきました。
これ、リジェネ・ヒールと重複するんです。
ソロのときはそのふたつをかけていれば、他のヒールなんていらない子状態なんですよ。
オトクですねえ。
でも先輩は振りの遅い武器をメインに使っているので、先輩相手にはやっぱりいらない子状態です……
最後に《マックス・リバイブ》。
MP消費がすっごく多いんですけど、その代わり最大HPを越えて体力を回復することができるっていうすっごいヒールです。
ヒールの王様です!
キングオブヒール!
覚えた時はテンション上がりましたけど、やっぱり普段はあんまり使い道がなかったりします。
どうでしょうか先輩。
ヒール道も奥が深いのですよ。
これらを状況と残りMPによって使い分けつつ、前衛の仕事もこなしているんですからね。
……逃げているだけのときも結構ありますケド。
でもあたしがこんなにヒールをガンバっても、先輩は【ギフト】を使って自分でHPをドンドン減らしていっちゃうのです……
うう。
自殺願望でもあるんでしょうか。
困った人です。
これでも一生懸命《医学》とかお勉強して、先輩の役に立てるようにって。
付いていけるように、って。
ちゃんとずっとがんばってきたんですからね。
それがわかったら、これからもあたしを敬う心を忘れないように!
これから先も、ずっと、ずっと……
永遠に、ですよ!
・再び、ルルシィール。
安定のルビアちゃんオチ。
……って、あ、あれ?
なんかみんなすごい良いこと書いているな……
図らずとも寄せ書きみたいになっちゃった。
うん、まあ。
ありがとうね、みんな。
この日記、持って帰りたい。
素敵な言葉をありがとうございます。
ここを脱出したら、みんなで美味しいものでも食べに行こうね。
と、ゆーわけで、レスターたちも加わって、怒涛の殲滅戦の開始だ。
ここまで来たら倒していったほうが早いもんね!
前回あれほど苦戦した相手だし、今回は<キングダム>の戦力も底上げされているし。
参戦してくれたギルドの中にも、かなりやる人が混ざっているようだし。ブネさんとか。
その上、四倍の戦力で敵軍をフルボッコだよ?
そりゃあもうスイスイ進むさ。
前回大苦戦した四つの目の石碑から先も、わたしたちは難なくクリアリングしてゆきます。
戦術はただひとつ、制圧前進あるのみです。
五つ目。六つ目。いいよいいよ。大勝利。
これは新人賞取れる展開だよ……!
完全に私欲のために戦っています、今のわたし。
みんなはパーティーのために戦ってくれているっていうのに、わたしってやつは……
ま、まあいいとして。
そして、いよいよやってきました。
深い地下への通路を潜っていって、あの巨大な扉が待つ大広場。
八体のゴーレムが鎮座する地点に。
「さすがにここだけは200名が同時に突っ込むわけにはいかないねえからな。1ファランクスで一匹ずつ始末するぜ」
彼の言葉にギルドマスターたちはうなずきました。
それから、戦うギルドの選別が始まり……
レスターがわたしに問いかけます。
「<ウェブログ>は1パーティーで挑むのか?」
そりゃ、わたしたち4人+よっちゃんしかいないし。
ってなんでため息つくのよ。
「お前らホントに……そんなんでよく生きているよな」
なに言ってんのさ。
なにやってても、100%勝てるような戦いなんて、つまんなくない?
さも当たり前のように、わたしは返します。
「冒険してこそ、冒険者でしょうが」