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ルルシィ・ズ・ウェブログ  作者: イサギの人
第三章 北伐のゲオルギウス編
35/60

◇◆ 25日目 ◇◇★

 

 わたしはヴァンフォーレストのプライベートルームに寝転んでいました。

 そうです、なんとわたしはテレポートを覚えたのです……! すごいでしょう!


 うう、ぐあいわるい……

 

 ハッ!

 う、うっせーよ! そうだよ死んだんだよ!

 ナイトゴーレムにやられたんだよ!

 認めるよ! ばーかばーか!

 しかも死んだの<ウェブログ>でわたしだけだよ!

 部屋でひとりだよ! 咳をしてもひとりだよ!

 うわーん! 【犠牲】なんて取らなきゃ良かったー!

 


 ちなみに今回は、死亡直後以外は誰からもコールがかかってきません。

 前回、門限を過ぎた時の過保護なパパのように連絡してきたルビアちゃんも、一切お電話してきません。

 あの子からのコールですら、ないと寂しく感じるなんて……

 いや、でもわたしからは絶対にかけないぞ……絶対にだ……

 はー……なんで携帯ゲーム機もないの……暇だよー、暇を持て余すよー……

 でもわたしのゲーム内の友達めっちゃ少ないしなー……

 ハッ、エルドラド兄さんでも呼びだそうかな!(半分本気)

 


 

 そんなとき。


「 女 神 お ね え さ ん ! 」


 美少女が部屋に飛び込んできました。これが地上に舞い降りた天使……?

 羽はどこに置いてきちゃったの。


「具合大丈夫? おねえさん、辛い? モモが看病してあげるからね……」


 わーちょーかわいー。

 褐色のマイ・ガールがやってきました。


「ありがとうね、モモ……」


 わたしは力なく微笑む。


「でも誰に聞いたの? わたしが衰弱中だって」

「それはサーチして……ルビアちゃんとかが違うところにいるのに、おねえさんだけコッチに戻ってきてたから、もしかしてーって……」


 んー……?

 なんだかちょっと違和感を覚えたような気がするけど、まあ気のせいかな。

 そうかー。優しいコだなー。


「モモは良い子ねえ……」


 頭を撫でると、モモは顔を真っ赤にして両手を振る。


「そ、そんなコトないよー。モモはただ、おねえさんのことが……その……」


 ごにょごにょと口ごもる。

 なにかしら……

 この感じ、女子高時代に見知らぬ女の子に告白されたときのような……

 いやいや気のせい気のせい。

 モモちゃんは純粋にわたしを慕ってくれているだけだもんねー。


 と、急に彼女はこちらに迫ってきて。


「そ、それよりおねえさん、汗とかかいてないかな!

 モモが濡れタオルで全身隅々拭いてあげるケド!」

「え、いや、フツーにシャワー浴びているから大丈夫だけど……」

「えあー……」


 なんでがっかりした顔をしているの?


「じゃ、じゃあご飯? やっぱりおかゆがイイかな? モモが食べさせて……」

「それくらいひとりでも食べられるから大丈夫よ、モモちゃん。ありがとうね」

「えあ~~……」


 なんで今度は頭を抱えてゆらゆらと揺れるの?

 あれ、この子こんなにグイグイ来る子だったかな。

 わたしのことを心配してくれているのはありがたいけど……


「あっ、じゃあ添い寝……とか! 衰弱早く治るカモ!」


 いやいや、ちょっと待って、ちょっと待って。

 システム上そういうのはないから、ないから。

 こんなに止めているのになんで潜り込んでこようとしているの? いやちょっとキミ。

 


 

 すごく積極的なモモちゃんを前に何度も何度も(この際女の子相手でもいいかな……手ェ出しちまうかな……)とか思いつつ、しかし相手が未成年なので自重しつつ……

 いや、冗談です、はい。

 まあ、なかなか煩悶しました(どっち)。


 ていうかモモちゃんも「ルビっちがいない今がチャンスなのにぃ……!」とか言っていた気がするんだけど、どういうことなの。いつからわたしを狙っているの?

 わたし女性ですよ?

 まさか『おねえさん』って呼び名もアレなのかしら。

 スール的な……私立リリアン女学園的な……?

 残念だけど、わたしホントにノーマルなんです。

 ごめんねモモちゃん……お願いだからわたしの可愛い妹ポジションでいてちょーだい……!

 その先はムリ……!


 ていうかこの世界、肉体関係的にはどこまで性的なことができるのかな……

 キスは大丈夫だろうけど、その先ってどうなんだろう。

 全裸になることもできるし、もしかしてそっから先もオールオッケーなのかな。

 今度ルビアで軽く試してみようかな……って。

 いやホント、ホントにノーマルだよ!?

 ソッチのケないよ!?

 

 

 昨日は午後ちょい過ぎぐらいに死んだので、割と早い時間に衰弱完治しました。

 っていうか、ちょうどよく北伐メンバーも帰還してきました。

 わあい。ナイスタイミング。

 わたしはもうひとりじゃないんだ。こんなに嬉しいことはない……



 ギルドハウスでお茶をしていると、まずはイオリオがやってきます。

「おかえりー」と手を振るわたしの横を華麗に通り過ぎ、自室へ入ってゆきます。

 そして大量の本を抱えて出てきて。


「これからしばらく<キングダム>に篭る。解読作業があるんだ。またな」


 そう言って一瞥もせずに去ってゆきます。

 この間、15秒ぐらい。

 そらわたしの笑顔もひび割れますわ。

 ……あ、アンタ、ホントにわたしに気があるのかぁあああ!?



 次に戻ってきたのはシスくん。

「おかえりなさい」とにこやかに迎えると、彼はわたしの横を通り過ぎ(以下略)部屋を出てきて言います。


「俺は今回の戦いで自分の弱さを痛感した……これからしばらくひとりで修行の旅に出る。探さないでくれ」


 なんなの?

 ホントにわたしのこと好きなの?

 あれイオリオのドッキリだったの?

 残されたわたしは呆然だよ。



 最後にルビア。っていうかなんで三人別々に帰ってきているんだ。

 っていうかね、わかったの。結局わたしの味方って瑞穂しかいないんだな、って。

 うん、こっちにおいで。

 いつもごめんね、きょうだけはめいっぱい優しくしてあげるから……


「ふぁぁぁ~……急いで戻ってきたから眠いですぅ……おやすみなさぁい」


 バタン。

 ご丁寧にお部屋には鍵までかけられました。

 うんうん、疲れたのね。

 おやすみなさいね。

 フフフ……

 

 わたし……このギルド抜けようかしら……


 コールボタン、ぽち。

 あ、よっちゃん?

 ちょっとスキル上げ手伝ってほしいんだけど……

 うん、ありがと……

 

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