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転生先のサーカス団は傭兵団!?  作者: 漣 連
(イギリス編)
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騎士の実力

 振り下ろされる白刃。どうしようもなく避けようがない一撃に、俺は覚悟を決めた。

 右手に力を込め、その剣戟に合わせるように振るう。その行動は、誰の目にも蛮行として映っただろう。素手で剣に敵うわけがない。それは至極当たり前の思考だっただろう。

 しかし、この世界にはそれを覆しうる力が存在する。

 魔法、である。

 モードレッドの剣がゴーシュの腕を斬り飛ばすと思われたがしかし。実際に宙を舞ったのは、モードレッドの振り下ろした剣先だった。

 くるくると回転し、寸断された剣の先が地面に突き刺さる。

 俺の手には、半透明の剣の姿に形どられた魔力の塊が握られていた。振り上げたまま、その反動を活かして横なぎに剣を振るう。

 モードレッドは素早く後退し、寸断された剣の断面を撫でた。

 断面は、まるで舐め溶かされたかのように滑らかな切り口をしていた。純粋な剣の切れ味ならば、おそらくブリテンの騎士が持つ剣を上回るものは存在しないであろう。

 しかも、魔法に対しても強い耐性を持つ魔剣を一方的に断ったというのであれば、それは一体いかなる存在なのであろうか。


「テメェ、一体何をした?」

「そう簡単に教えるわけないでしょ」

「は、違いねぇ」


 だったら、とモードレッドは剣を構えた。


「その手品、種ごと切り裂いてやるよ」


 ヤバい、と思う時間さえ与えてくれなかった。

 瞬きした次には、目の前でモードレッドが剣を振り下ろさんとしている。


「はっやすぎ、だろっ!?」


 自分でも、よくぞ反応出来たと拍手喝采を送りたい。

 振り下ろされる剣に合わせて、魔力を集めた剣で身を守る。

 モードレッドの剣は、俺の剣に当たった部分から先ほどと同じように寸断された。しかし、モードレッドは意に介さず剣戟を重ねる。そして、その度に剣が寸断される。

 それを三、四回繰り返すとモードレッドは後ろに退いた。その時には既に、モードレッドの剣は元の長さより半分以下になってしまっていた。

 再び、モードレッドは寸断されてしまった剣の断面を撫でる。すると、わずかにだが篭手の指先に溶けた鉄が付着していた。


「成程な……。最初は単純に焼き切ったかと思ったが、そうじゃねえ。断面に熱は感じられない。熱で溶けるような軟な剣じゃねぇし、そもそもテメェの剣からは熱なんて一切感じられなかった」


 モードレッドは自身の中で分析したことを、言葉として整頓する。それは、先程までの粗暴な振る舞いからは予想できない知性が感じられた。これはおそらくだが、彼の騎士も俺と同等の、あるいはそれ以上の〝直感力〟を持っているのではないだろうか。

 知性的な直感ではなく、野生的な、生物が根源的に持っている本当の意味での直観だ。だとすれば俺が敵う要素はほぼ絶望的だ。

 身体的なスペック。才能。装備差。あまりにも多くの要素で俺は負けている。


「これは、溶かしているっつーよりは内側から溶けたっていう方が正確か?」

「ああもう、その通りだよ」

「何だよ、種明かしはしないんじゃなかったのか?」


 揶揄うように彼の騎士は肩を竦める。


「正解を言い当てられちゃ、隠していても意味はあまりないからな」

「はん、素直なこって」


 そう、俺の手に固められた魔力の塊はモードレッドの指摘通りの効力を発揮していた。考え方としては、電子レンジに近い。電子レンジは物を温める際に、物質中の水分を振動させることによって熱を発生させている。

 物理的な熱で溶かすのではなく、内側から〝溶かさせる〟。この差は小さいようでいてその実、果てしなく大きい。

 まず第一に、魔力的な抵抗を発生させないという点である。分類としてはエンチャント、効果を付与する類だからだ。魔法同士のぶつかり合いは引き算のようなものだ。

 双方の持つ魔力が数値で、その過多によって勝敗が決まる。燃え盛る炎にコップ一杯の水では到底消すことは出来ないが、濁流の前ではどんなに大きな炎でも太刀打ち出来ないようなものだ。

 しかし、この魔法は言ってみれば木の枝に火を付けるようなもの。先程、魔法同士のぶつかり合いを引き算と例えたが、この場合は足し算だ。つまり、対象がどんな魔法的な耐性を持っていようと上から〝書き加える〟。

 これが、モードレッドの剣を寸断せしめたからくりだ。

 だが、それも見破られてしまえば意味はない。

 いや、まったくもって意味はないとは言えないが、しかしモードレッドはれっきとしたブリテンの騎士。俺の魔法を加味した上で追い詰めてくるだろう。

 そんな俺の考えを読んだかのように、モードレッドが剣を構える。先程までとは違った構えだ。今までが体の前に正眼で構えていたならば、今見せているのは、剣を体の後ろまで振りかぶった構えをしている。

 明らかに大振りの構え。おそらく、これからがモードレッド本来の剣技になるのだろう。


「次は、俺の魔法を見せてやるよ」


 そう言って、モードレッドを中心にして莫大な魔力の波濤が発せられる。


「円卓騎士・モードレッド。参る」


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