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番外編5 王と娘。 

 『ジル・ド・レイ事件』が終結し、オルレアン騎士団隊舎の中はまさに戦争、というほど慌ただしさに満ちていた。


 今まで死んでいたと思われていた大量殺人者が生きていた、というだけでも驚きなのに今は亡きその人物が秘密裏に行っていた犯罪の数を考えるだけでも頭を抱えたくなるというのに、フランスどころかヨーロッパ全土を巻き込みかけた大事件に発展しかけたのである。


 この忙しさも、妥当と言えば妥当なのかもしれない。


 しかし、隊舎の中で喧騒とはかけ離れた場所があった。


 机とイスのみが置かれたこの部屋は、本来は事情聴取などを行うための部屋である。


 実際は容疑者と聴取をする騎士、そして記録を書きとめる記録官の3人が入るのが普通であるが今回は2人のみであった。


「お父様が国を離れるなんて、意外ですね」


「我が娘が重要参考人として牢に入ったと聞いたら、すぐにでも駆けつけるのが親というものではないかな?」


 ローマ国王はそう言って娘――セレナをジッと見つめた。


 彼は先程自分が言った通り、セレナのことを聞くとすぐに支度をしてフランスに駆け付けたのである。


「…ありがとうございます」


「ふぅ。親に対してそんなに畏まらなくてもいいんだがなぁ。お前がそうなったのは、10年前からだったな」


 ローマ国王は悲しそうに表情を歪めた。


「全てを、話さないといけないな」


 彼はそう言って語りだした。


 自分の息子であり、セレナの兄でもあった男のことを。











「俺に、王位を寄越せ」


 ぎらつかせた目を向けながらハイランド・ズークは言った。


 いや、今はハイランド・ズーク・ローマ(・・・)と言った方が正しいだろうか。


 ローマ国王は突然現れた長男内心動揺しながらも、彼は威厳ある態度を崩さない。


「ふむ。王位、か」


 自らの顎を撫でながら一旦言葉を切る。


 こちらに優位があると見せつけるように。実際、交渉などでは心をコントロールするのは大切なことだ。こちらの態度次第で侮られも、見下されもする。


「しかし、お前が来てからまだ数日と経っていないが、いきなり王位が欲しいと言われてもな?お前が昔からいて、それに私が王位を継ぐにたる、と思っていればすぐにでもくれてやったろう。だがお前は私に何も示せてはいない。そんな奴に王位を渡せと?――笑わせるな」


 ローマ国王はキッとハイランドを睨みつける。


 その迫力にハイランドは身を震わせた。それは恐怖か、それとも憤怒か。


「…俺は長男だぞ、王位継承権は一位のはずだ」


「それはそうだが、勉強不足だな。この国には継承指名権があるのだよ――私がセレナを指名すれば、彼女に玉座を譲り渡すことになる。お前ではなく、な」


 ハイランドはその言葉に唇を噛みしめながら憎悪の目でローマ国王を睨んだ。


「…後悔するなよ」


「お前もな」


 そう言ってハイランドはずかずかと足音を響かせながら王座の間から出て行った。


「――これは、何か企んでいそうだな…。ガンテを呼んでみるか」


 そう独り言を漏らして彼は手紙をしたため始めたのだった――――。











「そんなことが…」


「後はお前も知っての通りだ…ガンテがやって来てそして――ゴーシュ君と出会った」


「……」


 ローマ国王は悲しそうに続ける。


「そして、ハイランドはゴーシュ君の手によって死んだ…全てを話さなかったのは私の責任だ。そうすることでお前には辛い道を行かせることになってしまった…すまない」


「いえ…それに、ゴーシュさんには許してもらいました。これは自分のけじめだ、って」


「律儀な男だ、まったく。あの後、城に訪ねてきたときも彼は覚悟の上で私に口止めを頼まれたよ…行方をくらまして、どこに行ったかと思えばフランス革命の折り先頭に立っていたと本人に聞いて驚いたし…あ」


 その時、彼は己の失言に気が付いた。


 恐る恐るセレナの顔を見る。


 …顔は笑っているが、背後に、オーガ()を見た気がした。


「ひっ…」


「つまりお父様?お父様はゴーシュさんが姿を消さ際に私に口止めを頼んでいったあげく、その後も何度か連絡を取っていたんですね?そう言えばあの時ガンテさんが突然現れたのもそれじゃないと説明できませんよね、ゴーシュさんと繋がっていないと」


 この時点で、二人の立場は逆転している。ある意味、この部屋の意義に最も即していることは確かだったが。


「あの、それは…何というか」


「お・と・う・さ・ま?」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」


(すまん、ゴーシュ君…幸運を祈る)


 そう心の中で彼は謝りながら、全てを話していくのであった。





 この後、怒り心頭のセレナと事情をしったニーナが団長室に乗り込んでいくことになるのは、言うまでもない。





「聞いていますか?お父様!!」


「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ」












セレナとニーナが乗り込んでくる1時間前



 きゅぴーん


「今、確かに悪寒が奔ったぞ!?」←見切りの才発動



どうも、本作の作者の漣連です。


番外編5はいかがだったでしょうか?楽しんで読んで頂けたのなら幸いです。


今回の番外編5で考えていたお話は全て放出しました。完結後にも、たくさんの読者の方に読んで頂いきました。


お気に入り登録や感想、誠にありがとうございます。おかげで今日までの間、モチベーションが下がらずに投稿をし続けることが出来ました。


また何かご感想があれば返事をさせて頂きます。


今の所、「転生先のサーカス団は傭兵団!?」はこれで最後の更新になるだろうと考えています。


しかし、何かご要望があれば暇を見て更新しようと思います。これからもよろしくお願いしますね^^


また、新作は現在プロット作成の段階です。当初予定していた12月の初めに投稿する、というのはもしかしたら難しいものになりそうです。


その時は活動報告にて報告しますのでご容赦下さい><


それでは、またの機会にお会いできるのを楽しみにしています。


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