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番外編2 秘密のファンクラブ。

「最近、視線を感じるの」


 とある日の午後、私はセレ姉と一緒にテラスでティータイムを楽しんでいた時のこと。


 『学院襲撃事件』からそう日が経っていない頃である。


「視線?」


 そう、この頃私はどうしてか視線を感じるのだ。それも複数。


 簡単な任務しかやったことが無いとはいえ、私は仮にも傭兵だ。


 視線には人並み以上に敏感だと自負している。


「うん。なんて言うか…こう、モヤっとした感じ?」


「モヤっとって…。もっとこう、具体的な表現はないの?」


 私はセレ姉の言葉にうーん、と首を捻りながら考える。


「傭兵時代、殺意の視線しか受けなかったから…」


(それもどうかと思う…)


 セレ姉は苦笑しながらティーカップに注がれた紅茶を一口飲む。


「それだったらほら、あれじゃない?恋の視線だったりして」


「ほあ?」


 まったく、突然何を言い出すんだと思ったらセレ姉は爆弾を投下した。


「だって、ニーナさんの非公式ファンクラブだってあるのよ?」


 咽た。


「ゲホッゴホッ…何それぇ!?」


 私が食って掛かると、セレ姉は何でもないように微笑む。


「この前、ニーナさんが『学院襲撃事件』の時に活躍したって話が広まっててね?それで実際にあなたのことを見た子たちがファンクラブを作ったんですって」


 な、何それ!?聞いたこと無いんですけど!?


「だって、本人が知ってたら非公式にならないじゃない?」


「(パクパク)」


「ああ、そうそうそれと――先輩が一枚噛んでるみたい」


 私はその言葉を聞いた瞬間バッと駆け出した。


「うふふ」


 セレ姉は一人残されたまま、優雅にカップに口を付けた。












「(ミュラー先輩!この前頼んだの、出来てます!?)」


「(おう、出来てるぜ~。…これだ!ニーナの湯上り姿の写真だ)」


「「「(キャ~~!!)」」」


「(なんて可愛いの!)」


「(ぱ、パジャマ姿…!!)」


「(鼻血出そう…)」


「(これ撮るの大変だったんだぜ~?なにせ、難攻不落の女子寮だ。さらにアイツは視線に敏感だからな、この抜群の角度を撮るのに何時間待ったか…)」


「(でも先輩、どうやってこれを?ニーナ様の部屋は3階でしょ?どうやって…)」


「(それは協力者がいてだな…)」



 ガッシャ―ン!!



「見ぃつけたぞミュラァァァァーーー!!!!!」


「やっべ、見つかった!じゃ、また今度な!」


 ミュラーは手を振って窓から脱出、ニーナはそれを追って嵐のように部屋から出て行った。


「ああ、何てカッコいいのかしら、ニーナ様…」


「これ、宝物にするわ、私!」


「私も!」


 女子って、本当にたくましいっ。










「死ねぇぇぇぇぇーー!!」


 パン、パン、パン!!


「うおっ!?撃ってきやがった!危ねぇじゃねぇか!?」


「大丈夫、簡単には死なせないから!」


「あ、そう?それは良く…ねぇ!!何する気だお前!?」


「傭兵に伝わる15の拷問!まさかその練習をあんたでやる日が来るとはね!」


「じゅうご!?死ぬ死ぬ死ぬ!それ普通に死ぬから!吐く前に死ぬから!」


「当ったり前でしょ!殺す気でかかってんだから!」


「ちくしょー!!」



 ――――その日、彼らの愉快な追いかけっこは日が暮れるまで続いたという。














「ただいまー…」


「あら、おかえり。ニーナさん」


 私が寮に戻ると、そこにはセレ姉がいた。


「そういえば、先輩はどうなったのかしら」


「…()り損ねた」


「あらあら、先輩も大変な一日だったみたいね」


 セレ姉はティーカップに紅茶を注ぎながら苦笑する。


「はい、紅茶。今日はゆっくり休みなさい」


「はーい…」


「(あ、ニーナ様と話してるのって…)」


「(ほら、ニーナ様のファンクラブの名誉会長、セレナーデ様よ)」


「(いいなぁ、ニーナ様と話せて)」


「(羨ましいわよねー)」


「(ねー)」




 幸か不幸か――この会話はニーナに聞こえることは無かった。


 セレナは机に突っ伏したニーナの頭を撫でながら、静かに微笑むのだった。


~舞台裏~


「(先輩、こっちです)」


「(おう、サンキュー。しっかし、お前の部屋がニーナの部屋のちょうど真向いとはなぁ。狙ってか?)」


「(ノーコメントで)」


「(ははは…)」



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