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まだ終わらない。


「――――以上が、今回の事件の顛末です」


 俺は、大統領の前で『ジル・ド・レイ事件』を説明していた。


 あれから1週間。その後の処理――学院での学芸員塔倒壊の後始末、ジル・ド・レイの犠牲になった子供たちのリスト、旧フランスが設置した魔方陣の撤去――などで報告が遅れてしまったため、俺が直接言いに来た、という訳だ。


「そうですか。ご苦労様です、ゴーシュさん――いや、白騎士さんと言った方がいいですかね?」


「ご自由に。もうセレナや妹にも顔がばれてますし、どっちでも同じですよ」


 俺はため息をつきながら返事を返した。


「ふふ。あなたとは10年の付き合いになりますが、未だに苦労を進んで背負い込む性格のようですね」


「あんたは相変わらず捻くれた性格が治らんな」


「いえいえ、あなたが革命の後で私に〝大統領〟なんて役職を押し付けるものですからね。ぜひ知り合いのあなたに力を借りたいと思っただけですよ」


 強かに微笑む目の前の男に軽くイラッとしながらも、次の案件に話を移した。


「で、あの話はどういう風に落ち着いたんで?」


「ああ、そのことなんですが――――」







「ふぅ」


「お疲れ様です、団長」


 俺は部屋に戻って一息をついた。


「アレン、学院の復旧作業はどれくらい進んだ?」


「そうですね、約半分は終了したでしょうか。この調子だと今月中に片が付きそうです」


 アレンから現在の状況を質問しながら把握していく。今は動ける騎士は全員動かしているのでここには人が少数しかいない。


 そんな中、コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。


「どうした?」


「はい。なんでも、団長の知り合いという方々が見えていまして…」


 俺は、さて誰だろうか?と考えを巡らしながらアレンに退室するように言い、その人物を入れるように伝えた。


「「失礼します」」


 …あれ、最近聞いた声のような――――


「どうも、ゴーシュさん」


「ひ・さ・し・ぶ・り。ごーしゅにぃ」


 2人の浮かべる微笑みに、俺が今まで経験したことのない戦慄が背筋を走り抜けた。


 何これ、超恐いんですけど…。


「あ、ああ。久しぶり。セレナは言うほどでも無かったか?それにしても、ニーナは大きくなったなぁ」


 取り敢えず当たり障りのないことから話題を出した。一体何の用事でここに来たんだろうか?


「うん、ゴーシュにぃ。取り敢えずさ、聞きたいことがあってきたんだけど…」


「単刀直入に聞きます。私たちに、言わなければならないことがあるんじゃないですか?」


 ……!!!


 まさか、あのことがばれた!?この微笑も、ブチ切れ秒読み開始の合図だというのか!?


 だとしたらマズイ、絶体絶命だ。ここはなんとかして2人の怒りを鎮めなくては…!!


「…スマン、2人とも。確かに、俺は隠し事をしていた…でも!これはお前たちを傷つけさせないようにするためだったんだ」


「はぁ、やっぱりですか」


「今度、お前たちには黙ってイギリスに行くことになっているんだが…心配するな!ちゃんとお土産は買ってきてやるから安心しろ!」


「「………」」


 あれ、反応がない?


「私たちが聞きに来たのは、10年前失踪する前に父――ローマ国王には行先を告げていた、ということだったんですけど?」


 ―――――――え?


「へぇー、そうだったんだー。また私たちに黙ってどっか行こうといてたんだー…」


 墓穴を掘っちまったァァァァァーーーーーーーー!!!!


「いや、これはその、任務?で仕方がなくですね」


「「言い訳になると思ってる?」」


「…ですよねーー」



 ドカゴシャコン、パリン!


 まて、話せば分かる!


 問答無用ォォォォォォーーー!!


 ドパラタタタタタタタタタタタタタタ……!!


 うぉわぁ!!当たったら死んでんぞ!


 いっそ死ねェェェーー!!


 理不尽…ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!



 ……今日も、何事もなく?平和な一日だった。

















「ひ、酷い目にあった…」


「クスクス、君はいつ見ても面白いなぁ」


「チッ今日は厄日か」


「酷いっ!?」


 俺が視線を上に向けると、あの時話しかけてきた子供が宙を浮いてこちらを見ていた。


「ふん、胸糞悪い…何の用だ?」


「いやね、そろそろ答え合わせといこうかと思ってさ」


「俺がこの世界に転生された本当の理由、か?」


「ぴ~んぽ~ん!大当たり!」


 子供――本人の言うところ、自称『神』は俺の隣まで下りてきた。


「恐らくだが…今回の『ジル・ド・レイ事件』は、俺が居なかったら解決していなかったんじゃないのか?」


「…続けて」


「そのことに危機感を覚えたお前は、ちょうど都合よく死んでしまったイレギュラーを利用することにした」


「そして、そのイレギュラーはお前の思惑通り行動し、ジル・ド・レイを打ち取った…つまり、この俺ってわけだ」


「…すごいね。もしやとは思ってはいたけれど、ここまでとは。君を選んだ僕は鼻が高いよ」


「ふん、胸糞悪い…そんなに、人間が『神器』に近づくことが拙いのか」


「……」


「ジル・ド・レイは結局逆上してせっかく集めた魔力をヨーロッパ全土を爆破させるために使ったが…本当は『神器』に至るために集めていたんだろ?」


「本当にすごいね…。そこまで気付くとは」


「誰かさんからはた迷惑なプレゼントを押し付けられたからな」


 俺は『神』を睨みながら続ける。


「まさか、イギリスもお前が一枚噛んでいるのか?それとも、また誰かを転生させるつもりか?」


「いーやー?本当はそのつもりだったんだけど…。僕がどう足掻いても、もう『神器』が復活する因果律が確定しちゃったんだ」


「だから、君もお役御免。はれて自由の身になるわけだけど、どう?元の世界に戻りたい?」


「断る」


「ふーん、何で?」


「ここは、もう俺が守らないといけない奴がいるからな…。それに、もう貴様に振り回されるのはごめんだ」


「ちぇっ、つまんないの」


 俺は確認したいことは全て聞いたので、椅子から立ち上がって部屋から出ようとした。


「あ、そうそう。君とはもう二度と会わないと思うよ。さよならの握手でもしない?」


 俺は、後ろを振り返って言ってやった。


「しねーよバーカ」


 そのまま、振り返らずに部屋を出て行った。


「…ふぅ、なかなか面白い人間だったな、彼。ちょっともったいない気もするけど…まぁ、潮時かな」


 『神』はその時、何かに気付いたのか窓を振り返った。




















            「そうそうそれと…君、いつまで見てるわけ?」

















                                    ~Fin~

僕は、昔から『物語』を考えるのが好きでした。こうして僕の考えた『物語』がたくさんの人たちに見て頂くことになろうとは。


人生、何があるか分かりませんね。


みなさん、「転生先のサーカス団は傭兵団!?」を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。


ここまで来れたのも、読者のみなさんがこの作品を読んでくれている、という事実があったからこそです。


本当にありがとうございました!!


さて、気になっている方がいればいいな、と思いますが、次回作は未定です。ちなみに、サブタイトルは『まだ終わらない』ですが、ゴーシュの物語自体はここで本当にお終いです。


ですが、これから先も彼は精一杯生きていくだろう、そういう思いを込めてこのサブタイトルにしました。


一応、別の作品のプロットは考えていたり、途中で放り出している作品があったりとゴチャゴチャしているのですが、ここで一つの区切りにしたいと思います。


何か新しい動きがあれば活動報告にアップしますので小まめに見て頂けたら望外の望みです。


また、外伝などは後日完成次第更新します。


それでは、またここで新しい作品をお見せできる日を楽しみにしつつ、一先ずキーボードを打つ手をしばし休めたいと思います。


それでは!!              


          漣 連   2011/11/15

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