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因果応報。

 ああ、私の目の前で忠誠を誓った主が焼かれようとしている。


 何故だ!?


 何故コイツ等は主を認めようとしない!?


 フランスを救ったのは誰だ?


 ――――我が主だ。


 王を助けたのは誰だ?


 ――――我が主だ。


 …私を、薄汚れた人間であるこの私を信じてくれたのは誰だ?


 ――――我が主だ!


 ああ、私の目の前で忠誠を誓った主が焼かれようとしている。





 …なのに。なのに、何故私は聖処女を、ジャンヌ・ダルクを救出しようとしない!?


 ――――焼かれてしまえ――――


 …違う。


 ――――貴様など、灰も残らずこの世から消えてしまうがいい――――


 私は…!


 ――――さぁ、苦しむその顔を私に見せてくれ――――







 ――――クるッてルノか――――?





「ははは」


「ははははははははは!!!!!」


「ははhはハはhはははハははhハははhははハはは!!!!!!」


 
















「馬鹿な…!何故この場に『逆鱗』がいる!?」


「ふん。そんなの、コイツが呼んだからに決まっているだろうが」


 そうつまらなさそうにガンテは親指でゴーシュを示した。


「貴様がもうすぐ行動を起こすだろうとは薄々感づいてた。なにせ、派手に使い魔を放ってるんだ、気付かない方がおかしい」


「ぐぐぐ…!」


 悔しさのあまりか顔を真っ赤に染めたジルに、俺は手刀を向ける。


「観念しろ、ジル・ド・レイ。完全に〝摘み〟だよ」


 そう言うと、ジルは人形の糸が切れたようにカクン、と顔を落とした。


「       」


「あ?何か言ったか」


「クカカ…クキキ…」


「クカカカキクケコカーーー!!!」


 尋常じゃない雰囲気に俺たちは息を飲んだ。


 〝暴走〟


 ちらりと頭に不吉な予感がよぎる。


「親父!」


「いちいち言われんでも分かっとるわ!」


 親父が豪槍を振り上げた瞬間、ジルの持つ召喚の書から眩いばかりの光が漏れた――!


「チッ」


 すぐに行動しなかったことに舌打ちをして、手で陰を作ってジルの方を見る。


 


 メキメキ…



 肉が蠢くような音が耳に入る。


 少しずつ薄れる光の中、巨大なシルエットが俺の目に入った。



 それは、〝悪魔〟としか表現しようのないモノだった。


 心臓と同期しながら脈動する、赤く浮き上がった血管。


 禍々しくそそり立つ2本の角。


 学芸員塔を飲み込んで地に根を張る下半身。



『グオオオオオオオオゥ!!!!!』


 〝ジルだったモノ〟はパリ中に響く雄たけびを上げた。


悪魔と遊べば(デビル・メイド・)悪魔になるデビル・アンド・デビル…」


 セレナが、ポツリと呟きを漏らした。


 ズズズ…!


 突然、地面が揺れた。


「これは!?」


 むせ返るような濃密な魔力の気配に俺は推測を言う。


「恐らく、フランス…いや、ヨーロッパ中の龍脈から魔力を吸収しているんだ…!奴は、自分を起点にして大爆発を起こそうとしている!」


「クソ!」


 親父が手に持っていた豪槍を投げようとして、俺は慌てて止めた。


「待て、親父!もしアイツに傷をつけたら、その時点で多分爆発する!」


「じゃあどうしろって言うんだ!!」


「それを今考えているんだよ!」


 ジワジワと高まっていく圧力――このままじゃ俺たちは死ぬ。


 ジルに傷一つつけることなく倒せる可能性。


 考えろ、考えろ考えろ!どうすればいい!?




 ―――――君のその眼は飾りかい?


 ―――――せっかく僕がプレゼントしてあげたっていうのに


 ―――――さぁ、やってしまえ。君なら分かるだろう?



 その時、俺は理解した。


 ああ、これもあの糞ったれのシナリオなのだと――――


「親父、槍だ!」


「おう!」


 俺は親父から投げ渡された豪槍を構える。


「ゴーシュさん!?」


「大丈夫だ…俺を、信じろ!」


 ヒュッと。


 俺は豪槍を投擲した。








 時間が止まる。



『オ、』



『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!??』


 ジルから、青白い炎が燃え上がる。


 俺が貫いたのは――召喚の書だった。


『ガアアアアアアアアアアアア!!!』


「な、何が?」


 セレナの疑問の声に俺は答えた。


「これは予想だが…ジルは、恐らく悪魔に魂を売った時、〝不滅の体〟を願ったんじゃないかと思う。じゃないと、今この時代まで生きているはずがない」


「だが、悪魔との契約は魂を売ることだろ?ならどうして生きていられる?」


「ああ。こいつは、自分が殺してきた子供たちの魂を悪魔に渡し続けていたんじゃないかと思う」


 俺は悲鳴を上げ続けるジルを眺めた。青い光の粒子がいくつも天に昇ってゆく。


「なら、死んだ子供たちの魂を束縛し続けていた召喚の書を破壊すれば、どうなると思う?」


「あ…」


「そう…。子供たちの魂が解放されれば、奴は自分の体を維持できない。一人でも奴を助けようとする魂がいれば話は別だけど…そんなの、いるわけがない」


 苦しみ続けるジルを見て、言った。


「これは、言ってみれば因果応報さ」


『イヤダァ…!シニタクナイ…シニタクナイヨォ…!』


「なら、そう言って助けを求める子供にお前は手を差し伸べたのか?」


『!!』


「お前は、死ぬべくして死ぬんだ。精々地獄で可愛がってもらえ」


 地面から、ジルより一際大きな腕が生える。


 その手は、ジルを掴んで地面に沈んでいった。


『イヤダァァァアァァァアアァァァアァ!!!!!』



 断末魔を残して、消えた。


次回、最終話です!!

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